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画面の外に、本
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さて、その彼。というか、美雪の興味を惹いた、彼の持ち物。
スマホについている、なにか四角いものは、長方形で薄く、大きさはスマホの半分ほどであろうか。そこそこ大きい。ただ、薄そうで重たくはなさそうだ。
そんな、なにかのモチーフの付いたストラップである。
ストラップなのは確かだ。ストラップ穴があるスマホは多くないけれど、カバーについているのだろう。彼の持っているスマホには素っ気ない、なにも飾りのついていない紫色のカバーがついていたので。
そして美雪の見たところによれば、それはどうやら『本』のようなのだ。
長方形で、なにか模様が入っているそれ。タイトルなどの文字らしきものはない。
しかしそれを本ではないか、と美雪が思ったのは、偶然似たようなものを別のところで見たことがあったからであった。
彼のスマホにぶら下がっているそれは、たまに変わっていったのだ。
平均、十日に一度ほどであろうか。赤い表紙、青い表紙、柄がメインのもの。そのときによってさまざまなデザイン。
それを初めて美雪が「あっ」と思ったのは、紅、一色の表紙に、金色の線のふちどりがついているものだった。
ちょうど先日、学校の国語の時間に見たところだったのである。
偶然であった。海外文学の話になったときである。
「イギリスで一番有名なファンタジーものといえば、『不思議の国のアリス』でしょうね。読んだことのあるひとも多いんじゃないかな」
穏やかなおじさん先生の国語教師はそう言って、国語資料集のあるページをみんなに開かせた。
そこには先生の言った通りの『不思議の国のアリス』の本が載っていた。
ただし最近本屋で見かける、アリスのイラストが描いてある、一般流通しているような表紙ではなかった。
そのデザインがまさに。
紅、一色の表紙に金のふちどり。
それだったのである。
そこには『不思議の国のアリス:初版本』と書いてあった。
ただの授業でちらっと見ただけのそれが、ほんの少しであっても印象に残っていたのは、単に美雪が『アリス』を好きだったからである。
とはいえ、ディズニーアニメのキャラクターがくっついた文具や小物を持っている程度ではあったが。
それでも子供の頃はアニメを見たし、小学生のときにはテニエルの絵の付いた、しっかりとしたものを読んだ。そして物語やキャラクターとして好きになった。
まぁその経緯はともかく、それらしきものが彼のストラップとして目の前に出てきたのである。そこから『本ではないか』と思うようになった次第。
確かに一旦そう思うようになってしまえば、彼のスマホについているそれは、本の表紙のデザインといってまるきり違和感がないものであった。
そこから思うようになった。
あれはなにか、実在の本を模して作られているものなのかな。
きっかけになった紅の表紙のものは、『アリスの初版本』であった。そこから連想するなら、有名な本の初版本をモチーフに作られているとか。それはありえそうなことだった。
そのように、美雪は時々変わっていくその『本』に想いを馳せるのだった。
もしあれが実在の本を模して作られているミニチュアのストラップなのだとしたら、スマホで本を読んでいると思しき彼は、それにちなんで取り換えているのかもしれなかった。
単に、新しいものが手に入ったから付け替えているとか、それとも単に気分で「しばらくつけたから違うものにしよう」としているだけかもしれないが。
なんにしろ、スマホで読書をしながら、『本』を形としてそのスマホにくっつけているとは、なかなか洒落たことである。
シンプルに本が好き、なのだろう。それは彼の、通学時間にスマホから目を離さず文字を追っていく様子。それからたまに変わっていく『本』からよく伝わってきた。
美雪はそのうちに、彼の『本』が変わっていくのを楽しみにしているようになった。
今、彼がなにを読んでいるのかなどはわからない。変わらずに読書アプリを弄っているような指の動きをするし、たまに背中を向ける姿勢になったときは、ちらりと見えるスマホ画面はやはり文字でいっぱいになっているのであった。
それでも、そのときスマホにくっついている『本』。それの中身が今、スマホの画面に表示されていると想像すると、それだけで楽しいものであった。
スマホについている、なにか四角いものは、長方形で薄く、大きさはスマホの半分ほどであろうか。そこそこ大きい。ただ、薄そうで重たくはなさそうだ。
そんな、なにかのモチーフの付いたストラップである。
ストラップなのは確かだ。ストラップ穴があるスマホは多くないけれど、カバーについているのだろう。彼の持っているスマホには素っ気ない、なにも飾りのついていない紫色のカバーがついていたので。
そして美雪の見たところによれば、それはどうやら『本』のようなのだ。
長方形で、なにか模様が入っているそれ。タイトルなどの文字らしきものはない。
しかしそれを本ではないか、と美雪が思ったのは、偶然似たようなものを別のところで見たことがあったからであった。
彼のスマホにぶら下がっているそれは、たまに変わっていったのだ。
平均、十日に一度ほどであろうか。赤い表紙、青い表紙、柄がメインのもの。そのときによってさまざまなデザイン。
それを初めて美雪が「あっ」と思ったのは、紅、一色の表紙に、金色の線のふちどりがついているものだった。
ちょうど先日、学校の国語の時間に見たところだったのである。
偶然であった。海外文学の話になったときである。
「イギリスで一番有名なファンタジーものといえば、『不思議の国のアリス』でしょうね。読んだことのあるひとも多いんじゃないかな」
穏やかなおじさん先生の国語教師はそう言って、国語資料集のあるページをみんなに開かせた。
そこには先生の言った通りの『不思議の国のアリス』の本が載っていた。
ただし最近本屋で見かける、アリスのイラストが描いてある、一般流通しているような表紙ではなかった。
そのデザインがまさに。
紅、一色の表紙に金のふちどり。
それだったのである。
そこには『不思議の国のアリス:初版本』と書いてあった。
ただの授業でちらっと見ただけのそれが、ほんの少しであっても印象に残っていたのは、単に美雪が『アリス』を好きだったからである。
とはいえ、ディズニーアニメのキャラクターがくっついた文具や小物を持っている程度ではあったが。
それでも子供の頃はアニメを見たし、小学生のときにはテニエルの絵の付いた、しっかりとしたものを読んだ。そして物語やキャラクターとして好きになった。
まぁその経緯はともかく、それらしきものが彼のストラップとして目の前に出てきたのである。そこから『本ではないか』と思うようになった次第。
確かに一旦そう思うようになってしまえば、彼のスマホについているそれは、本の表紙のデザインといってまるきり違和感がないものであった。
そこから思うようになった。
あれはなにか、実在の本を模して作られているものなのかな。
きっかけになった紅の表紙のものは、『アリスの初版本』であった。そこから連想するなら、有名な本の初版本をモチーフに作られているとか。それはありえそうなことだった。
そのように、美雪は時々変わっていくその『本』に想いを馳せるのだった。
もしあれが実在の本を模して作られているミニチュアのストラップなのだとしたら、スマホで本を読んでいると思しき彼は、それにちなんで取り換えているのかもしれなかった。
単に、新しいものが手に入ったから付け替えているとか、それとも単に気分で「しばらくつけたから違うものにしよう」としているだけかもしれないが。
なんにしろ、スマホで読書をしながら、『本』を形としてそのスマホにくっつけているとは、なかなか洒落たことである。
シンプルに本が好き、なのだろう。それは彼の、通学時間にスマホから目を離さず文字を追っていく様子。それからたまに変わっていく『本』からよく伝わってきた。
美雪はそのうちに、彼の『本』が変わっていくのを楽しみにしているようになった。
今、彼がなにを読んでいるのかなどはわからない。変わらずに読書アプリを弄っているような指の動きをするし、たまに背中を向ける姿勢になったときは、ちらりと見えるスマホ画面はやはり文字でいっぱいになっているのであった。
それでも、そのときスマホにくっついている『本』。それの中身が今、スマホの画面に表示されていると想像すると、それだけで楽しいものであった。
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