窓の外には黄色の月が

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襲撃

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 鍵!?
 もうひとつノアの心に衝撃が走った。
 では自分はこの家に閉じ込められたということではないか。
 声を聞いて誰かがきてくれたとしても、ドアを破らない限り入ってこれやしない。
 ドアを破るなんて簡単なことではないし、それでは遅すぎることになるだろう。
 本当に逃げ場などない、助けてもらえることもないことを実感してノアは絶望した。
 自分がまさか男に襲われようなどと思わなかった。
 第一、そういう趣味も無いのだ。片想いをしたことは何度かあってもすべて女性だった。男をそういう眼で見たことなどない。
 その自分がこのようなことに。
 ただ知識だけはある。男同士でどうセックスするのか、とか、そういうものは。
 そしてそれはある意味、女性を犯すよりも危険なものであることもわかっていた。
 『気持ち良くしてやる』などとんでもない。
 肉体的にも傷つけられるに決まっている。
 ノアの心に襲われるのとは別の、肉体を傷つけられる恐怖も追加された。
 ノアの心情を読み取ったようにジェームスは舌なめずりをし、そしてノアのシャツに手をかけた。
 脱がされる、と身を固くしたノアだったがそんなことは甘かった。
 布の裂けるビリィッと鋭い音が耳を刺す。
 ぶちっとボタンがはじけ飛ぶ音、こんこん、と床に転がる音までが妙に鮮明に聞こえた。
「綺麗な肌じゃねぇか」
 喉を鳴らしてジェームスはノアの胸を撫でまわす。勝手に触られていることよりもシャツを引き裂かれたことにノアは恐怖した。
 夏場の薄手のものだとはいえ、シャツを破るなんて、なんと乱暴で剛力なのだ。
 これでは、このあと。
 恐怖に身が震えた。
「いい顔だなぁ」
 ノアの恐怖を覚えた顔すらジェームスの気に入ったらしい。にやにやと粘つく声で言い、もう一度くちづけてきた。
 そして手を伸ばしてノアの下半身を撫で上げる。
 反応などしているはずがなかったが敏感な部分である。ひっ、と声が出た。
 このようなところ、他人に触られたことなどない。羞恥までもが生まれた。
 撫でまわされても感じることなどなかった。
 気持ち悪さしか感じない。当然のように反応もしない。
 それは気に入らなかったようで、ジェームスは、ちっと舌打ちをした。
「ニブいなぁ。直接触ってやらないとか」
 流石にパンツは引き裂かれることなくベルトに手をかけられた。
 カチャカチャと自分の手ではなく外されていく音、ずりおろされる感触。
 今度こそ嫌悪感がはっきり生まれた。
「嫌だ! やめ……うぐっ」
 もう一度、ガッと首を掴まれる。脱がそうとしているところを邪魔されたからか、刺すように睨みつけて顔を近付けられた。
 気道を塞がれてもう続きの悲鳴すらも発せない。
 息もできなくてノアが苦しさに苦悶の表情を浮かべたのを見たのか、にたぁと笑われる。
「うるせぇな、誰も来……」
 そして言いかけたのだが。
 バキィッとなにかが割れる、いや、折れるような鈍い音がした。
 直後、一拍遅れてガラスが砕けるガシャン、という鋭い音も。
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