窓の外には黄色の月が

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!

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和解と告白

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「ああ……昔、野犬に襲われたことがあって……それで」
 本当のことをそのまま告げる。
「そうなんだ。それじゃ怖いよね。まぁ、誰にも苦手なことくらいあるか」
 コリンは納得したように言ったが、それは自分にも苦手なものがある、という口ぶりだったのでノアは軽い気持ちで訊いた。
「なにかあるのか?」
「オレは月が苦手なんだ」
 コリンはさらっと言った。
 けれどノアにはよくわからない。
 月が苦手とはどういうことだ。空に浮かんでいて別にそばにあるものでもあるまいに。
「なんでだ? 綺麗じゃないか」
 ノアが不思議そうに言ったことには、なんだか気まずそうな顔と声が返ってきた。
「それはー……、まぁ、それはいいや。でも犬に襲われたことがあるならあんなオレの姿は余計怖かったよな」
 濁された。
 思ったが理由を言いたくないこともあるだろう。自分とて今の今まで言わなかったのであるし。
「まぁ……確かにそうだが」
 あのときのコリン。
 牙を剥いて口元は血で真っ赤にして、狼そのものといった様子。確かに人間とはまったく違う生き物だと思わされたから。
「でもオレを助けてくれるためだったんだろう」
 ノアはそのまま言ったのだがコリンは俯いてしまう。
 持った紅茶のマグカップに視線を落とした。
「……そうだよ。ノアがあんなふうにされてると思ったら、オレすっげー嫌で……ノアに乱暴するなんて許せなくて……かっとしちゃって……」
 言われたことはあの行動とまったく一致していたが、ノアは不思議に思ってしまう。
 コリンの口ぶりは『単にノアが暴力を振るわれたことに怒った』というものだったから。
 まさか、あれがなんだったかを理解していないのだろうか。
 性的に襲われていたとは思わなかったのだろうか。
 確かにコリンが飛び込んできたとき自分は首を掴まれていたときのような気はしたが。
 それにしたって。
 服を引き裂かれて半裸にされていたのだから、単なる暴力だとは普通思わないだろう。
 ノアは思ったがどうやらそのとおりのようだ。
 コリンはまるで気まずそうな様子は見せなかったのだから。
 それどころか続けられた言葉にノアは仰天してしまう。
「ノアのことが好きだから」
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