窓の外には黄色の月が

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!

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オオカミ少年が大人になる日

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 空には月。
 最大限に丸く膨らんで、煌々としていた。
 窓を開けて、つめたい空の中に浮かぶそれをノアは妙に落ち着いた気持ちで見ていた。
 自分がこんなに落ち着いてしまっていることを、ノアは少し申し訳なく思う。コリンは不安でいっぱいだろうに。
 でも自分がその不安を拭ってあげることが出来るのならば。
 彼を救ってあげられるのならば。
 なんでもしてやりたいと思う。
 申し訳なく思うというのに、ふ、と笑ってしまった。
 自分がおかしくなる。
 犬は嫌いだった。
 そこからの連想でオオカミ少年も嫌いだった。恐れていた。
 その自分が、いまや。なんという変化だろう。
 けれどその変化は今では嫌なものではない。
 むしろ嬉しいものであるといえた。
 だって、とてもあたたかな気持ちなのだ。
 誰かを想う気持ち。
 抱くのは初めてではない。
 が、状況は今までとはまるで違う。
 向こうからも好意を向けられているという嬉しすぎる状況なのだ。
 コリンが自覚しているのかは定かではないが。
 しかしある程度は思うところがあるのだろうと感じさせられる。
 それは一昨日の夜のキスからよりも、秋の日に森の奥へお出掛けをしたときの様子からより強く感じた。
 キスという行為の意味。
 そうしたいと思う理由。
 まるでわかっていないはずはない。
 そのあとになにがあるかをコリンが知っているかについて、ノアにはわからない領域であるというだけだ。
 でもどちらでも良かった。
 今は自分のほうが落ち着いてしまっているから。
 たとえコリンが自我を失ってしまっても受け入れようと思っていた。
 後悔などしない自信がある。
 だって、それに衝動が絡んでいようとも、コリンの気持ちは確かにその中に在ってくれるのだから。
 ノアが見つめる外の景色。
 ふと、ちらりとなにかが動いた。
 ノアは視線を空から地上へと向ける。
 そこには見慣れた姿が見えた。ノアの作ってやったオレンジ色の上着を着て、森から出てきたコリンが。
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