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一緒に本屋さんへ
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しかし予想外だ。もっと薄いかと思っていたのに、ちょっと重たいくらいに厚みがある。
それはそうか、ハードカバーの状態ですでに厚いのだから。
思って美久はぱらぱらとめくっていった。当たり前だが内容に違いはない。
ただ、巻末に解説が載っているようだ。
これはおもしろそう。
美久の興味を惹いた。
本についての解説を読むのも、作品に対する理解が深まるから。
「それ、俺も前に借りたなぁ」
美久の手にしていたものを見て、快が言った。
そういえば、快と初めて会ったときはこの本のコーナーだったわけだ。つまり、快もそこで手に取ったのだろう。
「面白いよな、それ。俺はまだ二巻までしか読んでないんだけど」
「うん、私もまだ四巻までしか……でもすごく文章がうまいし、それだけじゃなくて、興味を惹くように書いてあるっていうか……」
本の話なのだ。美久はいつのまにか普通に話せるようになっていた。友達と話すくらいには言葉が出てくる。
それに快が目を細めたのには気付かなかった、けれど。
「綾織さんも、一巻から図書室で借りたの?」
それは普通の質問だったので、美久は頷いた。「そうだよ」と。
しかし快はちょっと言葉を切った。
「……そうなのか。じゃ、もしかしてあれ……」
次に言われたことは、独り言のようだった。
美久はちょっと不思議に思った。なんだろう。あれ、とは。
でもその言葉はすぐに次の話題にチェンジされてしまった。
「文庫でも全巻出てるんだな」
聞くタイミングを逃してしまったことくらい、美久にもわかった。
けれど突っ込んで聞くのも立ち入ったことかもしれない。美久はやめておくことにして、ずらっと七巻まで並んだ文庫に視線を戻した。
「うん。できたら全部揃えたいんだけど……文庫本でもちょっと高い、よね」
一巻をひっくり返した裏には、1,100円、と書いてあった。文庫本にしてはちょっと高め。
でもそれも仕方がない。純粋に厚みがあるのだから、そのぶんであろう。
今日は一巻しか買えなさそうだ、と思う。
でもそれでもいい。最初から全巻一気に買えるとは思わずに来たのだから。
それにあと数ヵ月したらお年玉という収入もある。それを使ってまとめて買ってもいいかもしれない。
そういう算段をしつつ、美久は「じゃあ、これ買おうかな」と一巻を大切に手に持ち直した。
「うん、そうか」
快は言ってくれて、それから三階のレジでお会計をしたあとに二階へ降りた。
次は快の買い物。
新刊が見たいのだと言っていた。
「ああ、これ、これ。好きな作家でさ、ハードカバーで出たんだけど、やっぱ高いだろ。だから良さそうだったら図書室で入荷リクエストしようかと思ってて」
「そうなんだ。入るといいね」
快が手にしたのは、青いカバーの本だった。海をイメージしたような、爽やかなデザインの本。表紙からしてとても綺麗だった。
そしてそれだけではない。
その本を支える快の手。ごつごつしていて大きかった。しっかり男のひとの手だ。
あの手でさっき、自分の腕を掴んで助けてくれたのだと思うと、美久の顔がまたちょっと熱くなってしまった。
男の子に触れられて助けてもらったというのに、ちっとも怖くなかった。むしろ心底安心したのだ。それは不思議な感覚だった。
それはそうか、ハードカバーの状態ですでに厚いのだから。
思って美久はぱらぱらとめくっていった。当たり前だが内容に違いはない。
ただ、巻末に解説が載っているようだ。
これはおもしろそう。
美久の興味を惹いた。
本についての解説を読むのも、作品に対する理解が深まるから。
「それ、俺も前に借りたなぁ」
美久の手にしていたものを見て、快が言った。
そういえば、快と初めて会ったときはこの本のコーナーだったわけだ。つまり、快もそこで手に取ったのだろう。
「面白いよな、それ。俺はまだ二巻までしか読んでないんだけど」
「うん、私もまだ四巻までしか……でもすごく文章がうまいし、それだけじゃなくて、興味を惹くように書いてあるっていうか……」
本の話なのだ。美久はいつのまにか普通に話せるようになっていた。友達と話すくらいには言葉が出てくる。
それに快が目を細めたのには気付かなかった、けれど。
「綾織さんも、一巻から図書室で借りたの?」
それは普通の質問だったので、美久は頷いた。「そうだよ」と。
しかし快はちょっと言葉を切った。
「……そうなのか。じゃ、もしかしてあれ……」
次に言われたことは、独り言のようだった。
美久はちょっと不思議に思った。なんだろう。あれ、とは。
でもその言葉はすぐに次の話題にチェンジされてしまった。
「文庫でも全巻出てるんだな」
聞くタイミングを逃してしまったことくらい、美久にもわかった。
けれど突っ込んで聞くのも立ち入ったことかもしれない。美久はやめておくことにして、ずらっと七巻まで並んだ文庫に視線を戻した。
「うん。できたら全部揃えたいんだけど……文庫本でもちょっと高い、よね」
一巻をひっくり返した裏には、1,100円、と書いてあった。文庫本にしてはちょっと高め。
でもそれも仕方がない。純粋に厚みがあるのだから、そのぶんであろう。
今日は一巻しか買えなさそうだ、と思う。
でもそれでもいい。最初から全巻一気に買えるとは思わずに来たのだから。
それにあと数ヵ月したらお年玉という収入もある。それを使ってまとめて買ってもいいかもしれない。
そういう算段をしつつ、美久は「じゃあ、これ買おうかな」と一巻を大切に手に持ち直した。
「うん、そうか」
快は言ってくれて、それから三階のレジでお会計をしたあとに二階へ降りた。
次は快の買い物。
新刊が見たいのだと言っていた。
「ああ、これ、これ。好きな作家でさ、ハードカバーで出たんだけど、やっぱ高いだろ。だから良さそうだったら図書室で入荷リクエストしようかと思ってて」
「そうなんだ。入るといいね」
快が手にしたのは、青いカバーの本だった。海をイメージしたような、爽やかなデザインの本。表紙からしてとても綺麗だった。
そしてそれだけではない。
その本を支える快の手。ごつごつしていて大きかった。しっかり男のひとの手だ。
あの手でさっき、自分の腕を掴んで助けてくれたのだと思うと、美久の顔がまたちょっと熱くなってしまった。
男の子に触れられて助けてもらったというのに、ちっとも怖くなかった。むしろ心底安心したのだ。それは不思議な感覚だった。
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