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コンタクト越しの世界

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 まずはカタログを見て、どういうものがいいかを決めていく。
 留依が使うような瞳の色が変えられるものがあって、それは青やらグレーやらがあって綺麗だったけれど、もちろん学校ではダメだ。普通の黒い瞳に見えるものではなくては。
 それから『どのくらいの期間、使うのか』というのを決める。
 これはちょっと悩んだのだけど、コンタクトを使うのが初めてだと言ったので、お姉さんがひとつの枠の中を示して言った。
「初めてでしたら、お試しも兼ねてこの1dayタイプがおすすめですよ。使い捨てタイプで洗浄がいらないんです。つけるのに慣れたり、使い続けられるか試すのにも良いかと思います」
 コンタクトを洗うというのもひとつの関門だったので、それがないのならと美久は「で、ではそれに……」と受け入れた。
 それからは「では視力を測って目の状態を見ますので」と美久だけ奥へ連れて行かれた。
 そこは眼科だった。眼鏡をかけているのでなじみが深い。ここはあまり緊張せずに視力検査を受けたり、機械の前でお医者さんに「目にキズもありませんね。大丈夫ですよ」と診てもらったりできた。
 でも最後。いよいよコンタクトをつけるとなったら、また緊張してきてしまった。
「大丈夫ですよ。簡単です」
 安心させてくれるように、看護師のお姉さんが教えてくれた。
 初めて見たコンタクトは薄っぺらくて、とてもやわらかで、ふにっと曲げられてしまう。美久は驚いた。
 てっきりガラスのようなものを入れるのだと思っていたのだ。「最近のコンタクトはとてもやわらかくて、目に負担が少なくて、扱いやすいんですよ」と言いながらお姉さんはパッケージを開けて、指にコンタクトを取って、つけかたを実践で教えてくれた。
 元々不器用ではないのだ。二、三回失敗はしたが、比較的すぐにつけることができた。
 そして「周りを見てみてください」と言われて、ぐるりと見た、部屋の中。美久はおどろいた。
 眼鏡もなしにこんなにくっきり世界が見える。
 眼鏡という、ちょっと重たくて世界をさえぎるものもない。レンズがくもって困ることもないだろう。
 おまけに痛くなんてない。目にしっかりくっついてくれていて、まだちょっと違和感はあるけれど、すぐに慣れてしまうくらいのものだと思った。
「……すごく、きれいに見えます」
 美久の声が感嘆だったからだろう。看護師のお姉さんはちょっと笑った。
「世界が変わって見えますよね。とてもきれいに見えていたら、嬉しいです」
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