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美久vsあかり

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「幼馴染みよ。昔から知ってるの」
 でもあかりの答えは違っていた。付き合ってはいないのだ。
 ただ、美久はわかった。
 あかりは快のことが好きなのだ。そしてそれはきっととても深い想いなのだろう。
 片想いをしている相手の近くにほかの女の子がいるようになれば、おもしろく思わなくて当然。
 その気持ちは美久にもわかる。
 ただ……それなら美久に文句をつける理由にはならないだろう。
「でも今の快は誰かと付き合ったりしてる余裕はないの」
 なのにあかりは続けた。もっともらしく聞こえる理由を。
 それで美久が『あかりの片想いを優先させて、身を引く』と思ったのだろう。美久が引っ込み思案でおとなしい性格なくらい、もう同じクラスで長いのだからよく知られているし。
 でもやっぱり。

 ここで理不尽に負けたくない。

 美久は思った。
 見た目を変えたこと。
 それは美久に勇気をくれることだった。
 こんなことを言えば、恐れていたようにいじめられたり、殴られたりするかもしれない。
 それでも、美久がためらったのは数秒だった。震えるくちびるを動かす。
 心臓は冷えていたけれど、ここで逃げてしまったら後悔する。その確信が、美久を奮い立たせた。
「それは……」
 絞り出した。あかりがちょっと眉を寄せる。
 その瞳を見つめた。
 もう、クリアに見えるようになった視界で。
 まだ声は震えていたけれど、美久は言い放った。

「それは桐生さんじゃなくて、久保田くんが決めることだと思う!」
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