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チョコとキスと想い出と

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 チョコも半分ほどなくなった。快は「残りは家でじっくりもらうな」と、ふたをした。確かに一度に食べるにはたくさんだったから。

 今ならいいかな。

 美久は思って、心の中でごくっとつばを飲んだ。
 そうしてからバッグにもう一度手を入れる。
「快くん、あの」
 チョコの箱を軽く包みなおして自分のバッグに入れたところである快に、声をかける。快がなにげない様子でこちらを見た。
 その瞳を見たことで、急にどきどきとしてきてしまった。
 だけど、これはとても大切なこと。
 美久はもう一度、心の中でぐっと力を入れて。

「これ、もらってくれる、かな」

 あるものを差し出した。
 それは封筒だった。薄いピンク色で、小さな赤いリボンをつけている。
 こんなラッピングのようなことをするほど価値があるものなのか、美久に自信があるかといったら、あまりなかった。
 少なくとも、チョコにラッピングしたときに比べたら、ずいぶん少ない。
 けれどむきだしで渡すような軽いものではないから。
 だから、ちょっとだけ飾ってみた。
「なんだ?」
 快は不思議そうな顔をした。けれど手を出して受け取ってくれる。
「あの、……読んでくれるって、快くんに言ってもらった……」
「え! あの小説か!?」
 美久の説明に、快の目が丸くなる。声も高くなった。
「そ、そんな、たいしたものじゃないけど……」
「いや、そんなことないだろ! えっ、すげぇ楽しみにしてたんだよ。見ていいか?」
 目の前で広げられるのは恥ずかしかったけれど、見て欲しい気持ちも確かにあって。たっぷりすぎるくらいあって。
 美久は「どうぞ」と言った。
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