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二人きりの一夜
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「迷惑かい」
その細い声で言われる。
ずるい、と思った。
だってアマリアがそんなふうに思っていないことなんて、もう今ならフレイディのほうもわかるはずなのだ。
なのにこんなふうに聞いてきて。
「そんな、……はずは、ないです」
「ではそうしておくれ」
アマリアの声はもう途切れ途切れになってしまうのに、フレイディの言葉も、耳をくすぐる吐息も止まらない。
その声で決定を言われてしまった。
アマリアの肩に大きな手がかかり、そっと離される。
アマリアはほっとしていいのか、何故かすかすかするように感じた感覚を寂しく思っていいのかわかなかった。
ただ、とても優しいものになっているフレイディの瞳を見つめ返すしかない。
「さ、良い子で寝たまえ」
今のものははっきりからかい、というか、茶化しであった。
アマリアは緊張やらどきどきやらが少し散ったように思い、膨れてみせた。
「また子供扱いされますのね」
普段のものに近い声音と言い方で言えて、何故か自分にほっとした。
「若奥様として言っているというのに……」
「そうは聞こえませんわ」
やりとりはもうすっかり普通の空気に戻っていた。
やはりほっとするやら、何故だか少し惜しいような気持ちがあるやら。
しかしここまで大切にしてもらえていると伝えられて、これ以上抵抗などできない。
よってアマリアはお言葉に甘えることにする。
その細い声で言われる。
ずるい、と思った。
だってアマリアがそんなふうに思っていないことなんて、もう今ならフレイディのほうもわかるはずなのだ。
なのにこんなふうに聞いてきて。
「そんな、……はずは、ないです」
「ではそうしておくれ」
アマリアの声はもう途切れ途切れになってしまうのに、フレイディの言葉も、耳をくすぐる吐息も止まらない。
その声で決定を言われてしまった。
アマリアの肩に大きな手がかかり、そっと離される。
アマリアはほっとしていいのか、何故かすかすかするように感じた感覚を寂しく思っていいのかわかなかった。
ただ、とても優しいものになっているフレイディの瞳を見つめ返すしかない。
「さ、良い子で寝たまえ」
今のものははっきりからかい、というか、茶化しであった。
アマリアは緊張やらどきどきやらが少し散ったように思い、膨れてみせた。
「また子供扱いされますのね」
普段のものに近い声音と言い方で言えて、何故か自分にほっとした。
「若奥様として言っているというのに……」
「そうは聞こえませんわ」
やりとりはもうすっかり普通の空気に戻っていた。
やはりほっとするやら、何故だか少し惜しいような気持ちがあるやら。
しかしここまで大切にしてもらえていると伝えられて、これ以上抵抗などできない。
よってアマリアはお言葉に甘えることにする。
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