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1人と1匹の一夜

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 不意に、アマリアの頭の中に違うことが浮かんだ。

 あたたかな体温をくれるひと。

 いつもそばにいてくれた。

 手から、肩から、ときには抱きしめてくれた全身から……。

 伝わってきて、感じられたそのとき、アマリアはどきどきしたり、逆に安心を覚えたりした。

 どちらも心地良い感覚だった。

 まるでレオンはアマリアにそのぬくもりを、かりそめのものでも分け与えてくれているようだった。

 すりすりとアマリアに擦り寄る。

 あたたかさに、たまらなくなってきた。

 アマリアはスカートの裾を持ち上げ、しゃがみこんだ。

 腕を伸ばしてレオンを抱きしめる。

 レオンは逃げる様子など見せなかった。

 ただ、くぅん、と鼻を鳴らしてアマリアの腕に収まっている。

「……レオンさん。私、……どうしましょう」

 呟いていた。

 返事なんてないのに、聞いてしまう。

 レオンなら受け止めてくれる気がした。

 実際、言葉はなくても、アマリアの抱えているものはきっと受け止められていた。

 ここにいてくれる優しい感触とぬくもりが伝えてくる。
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