あの夏に嗤われて

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第3話 回想

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 七海と初めて会ったとき、綺麗な人だなと思った。アーモンド形の目だとか、細くてツンと尖った鼻だとか、薄い唇だとか、パーツの一つ一つが美しい形をしているなと思いながら見ていた。
 二度目に会ったときにそれを伝えると、

「じろじろ見てんなよ、きっしょ」

と悪態をついて彼女は嗤った。黙っていれば可愛いのになあと思ったけれども、口には出さなかった。

 それからゼミで仕方なく一緒にいるうちに、彼女の美しさがそれだけではないことに気づいた。とにかく魅せ方が上手いのだ。他人からどういう風に見られているかということを分析し、自己プロデュースをすることがとても上手い人だった。顎がスッキリと綺麗に見えるように髪を緩く巻いたり、瞳を印象づけるように前髪を眉下で揃えたり。  

 君はすごいねと僕は言った。

「私みたいになまじ可愛いと、あんたみたいなキモいのにジロジロ見られるから困っちゃうんだよね」

と鼻で笑われた。こっち見んなと、ついでにデコピンを食らった。つくづく照れ隠しがへたくそだなと、そう思った。

 付き合いたいと伝えたときは、「罵られるのが趣味なの? それとも、私の顔が好きすぎる面食いなの?」と呆れられた。どちらでもないよと答えると、七海はケタケタ笑いながら「ばーか」と僕を小突いた。黙っていなくても案外可愛いもんだなと、その頃には思えるようになっていた。

 なんでもすぐ表情に出たり、悪態ばかりつくくせに自分が暴言を吐かれると結構へこんだり、やたらとスキンシップを取りたがったり、思い出を写真に残して見返すのが好きだったり、他の女性と少し話しただけでむくれたり、用も無いのに僕の部屋で過ごすのが好きだったり。だんだんと、可愛いと思うところも増えていった。
 まだ、彼女と過ごすのは初めての夏だった。

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