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1章 異界の地
第十四話 サージュの町へ
しおりを挟む「ユウジ様はこれから何かをしたいと言う目標は有りますか?」
アネリアに連れられ、庭に出たユウジにアネリアが聞く。
「記憶が曖昧なので今思っているだけですが、仕事をして自分の力で生活してみたいですね…色々考えたのですが冒険者をやってみたいですね」
「冒険者ですか…ユウジ様の装備や身体能力を見れば冒険者で生活出来るでしょうね……」
ユウジの前を歩いていたアネリアが振り向く。
「ユウジ様は商会の仕事には興味は有りませんか?」
(…死ぬ前に十分やってきたからなー)
「せっかく丈夫な身体が有りますからね」
「そうですか…」
「冒険者は年齢制限とかありますか?」
アネリアが首を振る。
「基本的には年齢制限は有りません。ただし、ダンジョンに入るには冒険者ランクの制限があります」
「ランク制限ね……」
取り敢えずは冒険者ギルドへ行かない事には始まらないだろうし、せっかく証明書を作って貰えるなら、今のユウジには益しかないだろう。
だが、あまりモーズラント家に長く留まれば、何かしらの面倒に巻き込まれる可能性が高い予感がしていた。
「アネリア、証明書を作って貰えるだけで俺は十分だよ。明日証明書を受け取ったら冒険者をしながらコツコツやるつもりだよ」
少し俯いていたアネリアはユウジの言葉に肯く。
「ユウジ様がそう言い出すと予想していました…残念では有りますがユウジ様が決めたのなら仕方ありませんね」
(まぁ、この町にいる限り何らかの関わり合いは多分あるだろうな……)
ディナーは、メルカス伯爵を交え始終和やかな雰囲気だった。
メルカス伯に渡された手紙を、明日の午後に冒険者ギルドに持って行けば身分証を貰えるそうだ。
冒険者ギルドで身分証を受け取るのは、ユウジが冒険者として生活したいとディナーの時に話したからで、"それならば"と身分証の引き渡しを冒険者ギルドにしてくれたと言うわけだ。
「序にギルド証も発行して貰えば良い」
シレミナ夫人からは、アネリアを町に無事に戻してくれた御礼にと金貨の入った袋を渡され、当面の生活は大丈夫だろうと思っていたが、いざ寝室で袋を開いて見ると中には金貨百枚と白金貨が十枚入っていた。
日本円にすると、二千万と言う大金だったのだ。
宿屋暮らしをしたとして働かずとも余裕で三年は暮らせる…と思う。
(…だがせっかく異世界に来たんだから冒険者で食べていけるくらいにはせんとな)
俺はベットに転がり、明日からの生活に思いを耽りながら深い眠りに落ちていった……
翌朝部屋のテーブルの上に綺麗になった俺の服が乗っていた。
昨夜冒険の記憶をアップしていなかったのを思い出し慌てて携帯端末を取り出す。
(ん?メールが来てる?)
俺は送られてきたメールを開く。
《やっほー"神たま"じゃよー♥》
(…………相変わらずか…)
《初アップありがとね♥アップはイメージをそのまま投影されるから楽だし早いから便利だったじゃろ? 神の力は偉大じゃろ?ん?ん?》
(……………………………)
《アップの内容はどんな内容でもかまわん。出来たら一日一回のアップをして貰いたいのじゃ。我々の世界とお主の世界では時間の進み方に差が有るでの…》
(あー…なる程。浦島太郎やドラゴンボー○の世界観か…)
《お主の見て感じた物は我々にも重要な資料にもなる。これからも期待しておる。……報告に対しての報酬は一定だが、他の神々がお主に期待し、"いいね"ボタンを押せば報酬ポイントが増えるのじゃ。目指せ一万いいね!♥ ラブリー神たまからの感動のお知らせーでした♥》
(……………何人神がいるんだよ…)
あいも変わらずのメール文を読み終えたユウジは、機械的にポイント利用の画面を開く。
ステータス等は昨日と変わりは無いが、ポイントの欄に三十ポイントが表示されていた。
早速"ポイントを使う"を選ぶて画面が切り替わる。
ポイント 30
① 身体
② 武器
③ 魔法
④ 生活
(なる程…これから選んでいくのか)
俺は全ての項目を選び30ポイントで習得可能なスキルを確認していく。
(身体能力は多分高いから直ぐにはいらんな。 となると魔法と生活だろうな)
(जल दिखावट …आग दिखावट………読めん…言語能力レベル3はどう働いてるんだよ…)
何語で書かれてあるのかわからないではポイントを使うわけにもいかず、俺は直ぐに"神たま"に文字が読めない事を報告する為、昨夜からの出来事と一緒に送ると直ぐに返信が帰って来た。
《すまんすまん(笑)アプリの変更をするので製作者に連絡を取った。一日程経てば読めるようになるじゃろ。 お詫びと言ってはなんだが10ポイント付ける事にしたから今後も頑張って欲しい》
(なる程…"神たま"でもミスするのか…)
尤も、俺が抱く"神"の概念と"神たま"に違いが有ったとしても何ら不思議ではない。
そもそも以前の世界で神に直接関わり合った事も無かったし、自称"神"を名乗る者にも運良く?出会った事が無かったので、自分の勝手な想像の産物だった神と違うからと言って文句を付けるつもりも無かった。
(どうもあれこれ考え過ぎる…以前の記憶を持ったままの転生だとこんなものか…)
"コンコン"
「はい、起きてます」
使用人がドアの向こうから、朝食の準備が出来た事を伝えて来たのでベットを整えドアを開く。
使用人の女性がお辞儀をしてダイニングにへと案内してくれた。
「おはよう御座いますユウジ様」
「おはようアネリア」
席に着いていたのはアネリアだけで、シレミナ夫人の姿は無かった。
使用人が引いた椅子に腰掛けるとアネリアがユウジの疑問に答える。
「お母様は今回の事件に対応する為に朝早くから出掛けていますから私達だけで頂きましょう」
「そうか…シレミナさんは忙しいだろうな…」
「…大丈夫です。母はモーズラント家の当主として立派に役目を果たしますわ。さぁ冷めないうちに頂きましょう」
アネリアの言う事は多分そうなんだろう。モーズラント家には何やら俺が知る由もない秘密が有りそうだ。
いくら大きな商会とは言え伯爵を呼びつける等、俺の知る限りでは有り得ない。
この時代、貴族の力は絶大だとアネリアから聞いていたので、よけい不自然だと思わずにはいられなかった。
(…まぁ余計な事は自分自身に自信がついてからだな)
俺はモーズラント家で食べるであろう、最後の食事をゆっくりと取るのだった。
「いや、それはちょっと遠慮します」
「いえいえそれではお客様に失礼になりますので」
どうやら執事のセバスチャンは、俺をギルド迄馬車で送るつもりらしい。
「いや、あの…冒険者にもなってない新人がこんな馬車でギルドに行ったら笑われます…と言うより確実に因縁つけられますって」
「なる程…確かにユウジ様の言われる通りかもしれませんな…」
俺の目の前にはモーズラント家の家紋と、立派な旗まで付けたピカピカに磨き抜かれた三頭立ての馬車がデンと構えていた。
「ふむ、ではせめてこちらだけでも。こちらの逸品はかの名工シュルフガウゼン様が鍛え上げたタイランド鉱の名剣"アスレイト"。この名剣をもってすれば…」
「…いえ…本当に結構ですから…十分過ぎるくらい御礼は頂きましたから」
「さようですか…」
「セバス。ユウジ様は鉄の剣でもウルムを一瞬で切り裂く程の力量ですよ?大事ないと思うわよ?」
(アネリア…もっと早く助け舟出してほしいんだが…)
「ユウジ様。ここでお別れです。ユウジ様がこの町に居る限り、モーズラント家は何時でもユウジ様に門を開きます」
「ありがとうアネリア。もしかしたら力を借りる事もあるかもしれないが、アネリアも何かあれば俺も力を貸すよ…まぁモーズラント家で手に負えないような事態に俺に何か出来るかわからないが」
アネリアは肯く。
「御世話になりました。皆さんもお元気で」
執事のセバスチャンや使用人に見送られ、俺はサージュの冒険者ギルドを目指して歩き出す。
(異世界…さて楽しむかな…)
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