わざわざ50男を異世界に転生?させたのは意味があるんですよね"神たま?"

左鬼気

文字の大きさ
39 / 70
1章 異界の地

第三十九話 聖絶

しおりを挟む
 
 《ユウジ…あの人の中に…》
 《いるのか!》
 《うん…知り合いよね?ユウジの記憶にあったわ》

 "何故!何故!"と何度も何度もユウジの頭の中をその言葉が巡る。
 ゲタとの付き合いは長くはないが、この世界に転生して初めて出逢った冒険者に特別な思いを抱くには十分な出会いだった。
 
 「おいおいゲタ…何殺気立ってんだよ…仲間だろ俺達は…」
 
 ジャンの言にゲダの口角が吊り上がる。

 「仲間? ああ、俺達は仲間だよな。仲間の俺に内緒でなーに依頼受けてんだよジャーン!ひでーじゃねーか…ああ?ローゼーそう思わないか?思うよな?思わないわけねーよな?」
 「…………………………」
 「…………………………」
 「…だから俺が今から殺してやるよ……あ?殺すのはユーリヒの小僧だったか?…まぁいいや、皆殺しだ!」

 ジャンが奥歯を噛み締める。

 「…………………ユウジ、居るんだろ?ゲダの中にあれが…」
 「…居ます…フェニルが確認してます…」
 「……………………………」

 ジャンやロゼの胸中を思えば言葉に詰まる。
 
 「グレイズの旦那、昨夜の化け物の再来だ…騎士を下げてくれ」

 ジャンの言葉に肯いたグレイズは、騎士達を馬車を守るように集結させる。

 「ロゼ、馬車を守る事だけ考えてくれ…バロンド、ユウジ…頼むぜ!」
 「全く…ゲダさんは俺の目指すべき人だったんだよ…まぁ俺は冒険者で、依頼は絶対だからな…私情を挟む気はないが…」
 
 俺はゆっくり肯き"わかりました"と応える。

 少し高台に立つゲダの殺気が膨れ上がり大気がビリビリと震えた。
 
 「うおぉぉぉぉー」
 
 ゲタの巨体が一回り膨れ上がった瞬間バロンドが後方に吹き飛んだ。
 
 「がっ!」
 
 咳き込みながら立ち上がったバロンドの金属製の胸当てが、砲弾を受けたようにグニャリと内側に凹んでいた。
 ゲダの立ち位置は変わらず、何らかの力が働きバロンドを吹き飛ばしたようだ。
 
 後方からロゼの詠唱が聞こえ馬車を中心にシールドが張られた。

 少し前屈みだったゲダがロゼに視線を移す。

 「おぅおぅロゼ。ちゃんとシールド張っとけよ?半端な魔法じゃ俺を止められないぜ?」

 一歩踏み出したゲダの顔に下卑た表情が浮かんだ。

 「そう言えばロゼ、お前男を知らなかったよな?良い機会だ俺がたっぷりと可愛がってからバラバラにしてやるからよ」
 
 ロゼの目に一瞬稲妻が走ったのも束の間、ユウジに向かい顎で指示するロゼを見たユウジは深い溜め息を吐いた。
 
 「えー…と………この薄汚い屑野郎!ロゼは俺の女だ!巫山戯ふざけた事かしてると消し炭にすんぞ、この糞がーー!」

 「……………………………………」←ジャン
 「……………………………………」←バロンド
 「…………………ほう…………」←グレイズ
 「…………………は?…………」←騎士一同

 ユウジの怒声にニヤニヤする者、肯く者と様々だったがゲダの表情は変わらずユウジを見て首を傾げた。

 「何処のガキか知らんが……」

 ユウジの背中に寒気が走り瞬間的に防御壁をイメージする。
 その直後、地鳴りのような鈍い爆発音が坑道内に響き、土煙がモウモウと辺りに広がって行く。

 「へーー…良く防いだなガキ…どうやったんだい?」

 土煙が晴れるとユウジ前には身の丈程の分厚いコンクリート壁が立っていた。その中央は半壊してボロボロと崩れ落ちユウジの足元に転がって来た。

 「まぁ良いか……ん?ジャーンなーに俺の死角に入ろうとしてんだ…よ!」

 ゲダが失った筈の左手を水平に振った瞬間ジャンが跳び上がる と、"ドン"と言う鈍い音がしてジャンの後方の岩肌に亀裂が入った。

 「…おいおい、何時からそんなこと出来るようになったんだよゲダ。大体何で左手動くんだ?教会じゃ接合しか出来ないと聞いたぞ?」

 ジャンの質問にゲダは左手を目の前でひらひらと振りながらニヤリと口角を上げる。

 「世の中には奇特な人間がいてよー。すげーポーションで俺の怪我治してくれたんだよ」
 「…ゲダ、お前のは怪我じゃねーだろ…」
 「細い事気にする冒険者はいねーだろ?ジャン。取り敢えず死んどけや!」

 ゲダが腰に差していた長剣を抜きながら一歩足を進めた瞬間ユウジの視界からジャンの姿が消えゲダの後方に現れた。
 
 (あれは"レイジ"!)

 以前ジャンに見せて貰ったジャンの技だ。

 バロンドがジャンの"レイジ"に合わせるように咆哮をあげゲダの行動を阻害する。
 まだパーティを組んで間がないバロンドだが、冒険者として積んできた経験がジャンのスキルに絶妙のタイミングで合わせたのだろう。
 
 "ギンッ!"
 
 高い金属音が響きジャンがゲダから離れる。
 
 「あぶねーなジャン。だが肩口狙うあたりまだ覚悟足りねーよな。俺を止めねーと先がないんだぜ?」

 再びジャンの姿が消えユウジ達の場所に戻って来るとゲダを睨みながら自分に言い聞かせるように声を出す。

 「出し惜しみしてる場合じゃないな……」
 
 "お前等付き合い長かっただろうに…"とバロンドが重々しく呟いた。バロンドも長い冒険者人生で様々な事があっただろう事を感じさせる声だった。
 ロゼは唇を噛み無言だが、ロゼの生い立ちからすれば冒険者として長くパーティーを組んできたゲダは家族同然だろう。
 ジャンの後ろでユーリヒの馬車を守る位置にいるグレイズがジャンに"手伝うか?"と声を掛けるがジャンは首を振った。

 「奴は俺達が殺る!ロゼ、ユウジ頼んだぜ…バロンドも同じ冒険者なんだから当然付き合うよな!」
 
 バロンドが不敵な笑みを浮かべる。

 「当然だ。俺は冒険者を生業として女房とガキを養ってるんだ。依頼は絶対完遂する…例え俺が目指していたゲダさんだとしても依頼を邪魔するなら…」

 そう言うバロンドから気迫が熱となって体から溢れ出す。
 俺自身ゲダさんと顔を合わせたのは二度程だったが、ゲダの表情はまざまざと思い出すことが出来る。今目の前にいるゲダと記憶のゲダでは人相や雰囲気が全く違っているが…。
 
 「ユウジ…周りに被害が出ないようにとか考えるな…俺の"レイジ"を余裕しゃくしゃくで受けやがったからな…油断してると確実に殺られるぞ…」
 「はい…あのゲダさんはヤバそうですからね…」

 チラリとロゼを見るとロゼは肯き"死なないで"と唇が言っているのを見て俺は考える。

 《フェニル…俺のイメージ理解出来るか?》
 《理解出来ないけどイメージははっきり伝わってるよ。これユウジの世界では当たり前の事だったの?》 
 《まだ実用には課題があるが理論的には問題無い技術だよ》
 《ふーん、凄い世界だね。でもユウジのイメージさえはっきりしてれば理屈なんて関係無くガナで構築出来るからバンバン使っていいわよ》

 それは俺にとっては頼もしくも恐ろしい言葉だ。
 核爆発やブラックホールでさえ再現可能なわけだから、俺が生きて来た前世の記憶を持っている俺は、この世界を破壊する程の魔法を放てる危険人物なわけだ。
 俺は足下に転がっている小石を拾い上げ親指で小石を弾く形を取る。
 
 「これが私の全力だー!」と心のなかで某小説キャラのセリフと共に小石を親指で弾いた。
 
 ゲダの右肩辺りを青白い稲妻が走り抜け、後方が爆発した。
 これがかの有名な電磁砲。

 直撃では無かったもののゲダの右肩は真っ黒に焼け爛れ剣を握った手がダランと落ちていた。

 左手で焼けた右肩を押えながらゲダが俺を睨む。

 「何だ今のは?、ガキ!…おもしれー事しやがったな…確かロゼの男とかほざいてたか…おもしれーガキだから生かしてロゼがヒイヒイ言ってるのを聞かせてから殺ろうと思ってたんだが…やめだ!」

 ゲダの体から殺気が溢れ出しゲタの体を変化させる。
 それは昨夜の騎士同様の変化だが、その圧倒的な熱量は騎士のそれとは雲泥の差があった。

 「くそ!狙いが逸れた!」

 確実に致命傷になるように胸の中心を狙って放ったのだが…

 長引いてどんな変化をするかわからない相手は時間を掛けずに始末するしかない。
 幾つもある破壊のイメージを思いうがべ、この坑道で使えるか精査しながらも足下に転がっている小石を俺はいくつか拾い上げていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...