孤島のリリア

無垢 れあ

文字の大きさ
1 / 9

身の上の話なエピローグ

しおりを挟む
吸い込んだ息と塩風が肺の奥まですぅっと通り抜けた。

青空とそれよりほんの少し濃い海だけが
少ない取得である孤島、
この初島ういじまは別名魔女の島。
至る所に魔女伝説が染み付き、それを証明するかのように
神秘的な自然や建造物が島のあちこちに散らばる。
この島の子供達は日曜日の朝のヒーローよりも先に
魔女伝説を聞いて憧れる。
そんなちょっと変わった島である。

始祖の魔女リリア。
この島に降り立った最初の魔女の名前とされている。
彼女の取り決めで魔女の中でも選ばれた者は
最終的にリリアの名を受け継ぐ資格を得る。
そしてその中から1人が選ばれ、
この島で自分の前任の魔女の手によって
魔力を預けられた橋渡し役からそれを譲り受ける。
その瞬間からその者は魔女リリアの名前を受け継ぐのだ。


リリアの名前を受け継いだ魔女は島を守り、その力が完全に適合する前に橋渡し役を見つけ、自分のリリアの名前と力を全てを預ける。
橋渡し役はリリアの名前にふさわしい魔女を見極め預かった力を繋ぐ。

そうやって始祖の魔女リリアはこの島を永遠に守ることにしたのだ。

この逸話は初島の中でも最も有名とされている話で、
初録麗麗亜伝しょろくれぃれぃあでんなんていう仰々しい名前と共に
言い伝えられているのだ。

だがまあこんな今の時代。
こんな言い伝えがまともに信じられるわけが無く、
一部の熱狂的な魔女支持者や魔女信者を除いて
お伽噺のようなものだと考えられていた。

子供達も中学校に上がる頃には、
「魔女なんているわけが無いじゃないか」
と口を揃えて言うようになった。

僕だって本気で信じていたわけじゃない。
ただ「本当に存在したらいいな」と思ってた。
しかし子供と言うのは残酷で、少数派マイノリティーは色々な標的になる。
自分とは違う者を除け者にして、集団が正しいと錯覚させる。
要はイジメや仲間外れと言ったものだ。
僕はそれらを体験する事になった。
きっかけは中学2年生の魔女についての地域学習時間、ドンピシャで魔女伝説にハマっていた僕は様々な小ネタやマニアックな話をクラスメイトにそれはもう話しまくった。思いのほかそれが皆にウケて一躍人気者になったのだった。
しかし、それを良く思わなかったのが普段から集団の輪の中心にいる者達だった。
些細な暴言や悪口。軽い暴力。そういった悪意が僕には向けられた。
メンタルは強い方だったし、腕っ節もそれなりに強かったので無視をしたりやり返したりと対して気にしてはいなかった。
しかし、これが幼なじみの久々利彩乃くくりあやのに飛び火した。
これが僕の逆鱗に触れた。
徹底的にやり返し、最後は主犯の男女数人に骨折をさせるまでに暴力を振るった。
完全な過剰防衛だった。
この事件で咎められたのは主犯の彼らではなく僕だったのだ。
もちろん次の日からクラスでの居場所を失った。
わかりやすく皆に、教師を含め全員に避けられるようになった。
ましてや孤島である。
あっという間に僕の噂は広がり、居場所は消え去った。
中学3年になってもそれは変わらず、彩乃を含めた数人の友人を除き誰も僕と関わろうとしなった。

ある日の帰り道僕は島一番の大きな高台へ向かった。
空虚な心と無気力感から酷く死にたいと思ったのだった。
もちろんそんな勇気も度胸も無く、ただただ青い海を眺めていた。

「少年。何を見ているんだい?」
誰もいないはずの高台に一人、背の高い女性が立っていた。
「海。」
そう答えた僕の頭にそっと手を置いてゆっくりとその人は頭を撫でた。
誰にも向けられなかった優しさに嗚咽と涙が溢れた。
まるでその人は全てを見透かしているかのように優しく微笑み抱きしめてくれた。



その人は...魔女だった。
本当に僕を見透かして、優しさで救ってくれた。
名前を聞くと
「それは肩書きか本名のどっちを指しているかな?」
と一言。
「本名。」
何故かそう即答した僕に黒い髪をかきあげながらまたにっこりと微笑んだ。

その人は柊 燈火ひいらぎとうかと言った。
そしてその魔女は...


僕を橋渡し役に選んだのだった。




そして5年後の今。
僕、桜木蒼介さくらぎそうすけは次の魔女久遠真衣くおんまいと出会うのであった。


続く
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...