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9.ウィントフォール
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いくつかの小さな島々を中継し、三人は目的の大陸『ウィントフォール』にたどり着いた。
(ここから出発したんだっけ)
港町フォースアベニューの町中を歩きながら、グレイは思い出していた。グレイとシエルは共にこの大陸の出身であり、幼馴染の間柄だ。だが、少なくともグレイはシエルと共にこの地に帰ってくることを想像していなかった。
「まずは宿を探しましょうか」
ルナがグレイとシエルに声をかけた。シエルは相変わらず聞いてるのか聞いていないのかわからない反応だ。
(仕方がない、いつものことだ)
そう考えたグレイはため息まじりにルナに返事をする。
「宿はこっちだ。ついてきな」
ルナの歩き方がいかにも旅慣れていない様子だったため、自分の知っている宿屋まで案内しようとグレイは先頭を歩きだした。
「ありがとうございます。この辺りは詳しいのですか?」
しまった。グレイは心の中で舌打ちをする。この地にはルナが食いつきそうなおとぎ話がある。シエルの力のこともあるし、また『天の英雄』とやらだと勘違いされても面倒だった。
「いや、一回来たことが……」
「グレイと私はこの大陸出身なんだ」
言いくるめようとしたところにシエルがかぶせてきた。本当にコイツは何を考えているんだ? グレイは頭を抱えた。
「そうだったのですね。教えて下されば良かったのに」
ルナが笑顔で返してくる。グレイが隠していたことはバレた様だ。
「聞かれなかったからな」
グレイの皮肉はどれだけ伝わったのだろうか。
……
宿で宿泊した後、グレイ達が向かったのはこのウィントフォールの内陸にある『パラティヌス遺跡』だった。グレイとシエルの遊び場だった場所だ。フォースアベニューからは馬車で一週間ほどかかる。馬車はグレイが選び、ルナが購入した。やはりルナは貴族らしく、金はたくさん持っているようだ。
(確かに銃の腕はまあまあだったが、よくも一人で旅をしているものだ。付き人の一人くらいはいないのだろうか? )
グレイが雪道を馬車で進みながらつらつらとそんなことを考えていると、馬車の中からルナが顔を出してきた。
「まだ遺跡にはつかねえぞ?」
「わかっています。まだ出発して二日目じゃないですか」
「シエルは?」
「寝ています。本当に良く寝ますね、シエルさんは」
本当にそう思う。シエルは力を持ってなかったらどうなっていたんだろうか? ……いや、多分、今みたいにはなっていなかっただろう。グレイは昔のシエルを思い出して暗い気分になった。
「どうかされましたか?」
ルナに声をかけられた。心配そうな顔をしている。グレイはルナに少し悪いことをした様に感じた。
「いや、何でもない。ところで俺になんか用事か?」
ぶっきらぼうに答えるとルナは少し戸惑い、意を決したように口を開いた。
「いえ、その、せっかくご一緒させて頂いているので、もう少しグレイさんのことを知りたいと思いまして」
遠慮がちに言う。確かに俺の様なコミュ障とシエルの様な不思議ちゃんが旅の同行者では居心地が悪いのだろう。グレイは巻き込まれた側だと思ってはいるが、それでも、ルナが少々不憫になった。
「グレイで良い。……それで、俺に何か聞きたいことがあるのか?」
ルナの表情が明るくなった。
「はい、ありがとうございます。グレイ。それでは私のこともルナとお呼びください」
グレイは少し気恥ずかしい気持ちを抱えながらもルナに返した。
「わかった、ルナ。それで……」
「あ、はい。グレイはここの大陸出身なのですよね? どの辺りに住んでらしたのですか?」
『やはり』と感じる質問だった。ルナはパラティヌス遺跡が目的でここに来たのだ。その場所について、グレイやシエルがどれほどの情報を持っているのか、もちろん気になるだろう。
(俺が隠してもシエルが言うだろうからな)
心の中で苦笑しながらも、グレイは正直に答えた。
「フラウ村だ。これから向かうパラティヌス遺跡とは目と鼻の先に有った村」
ルナが驚きの表情でグレイを見た。
「もう、無いけどな」
(ここから出発したんだっけ)
港町フォースアベニューの町中を歩きながら、グレイは思い出していた。グレイとシエルは共にこの大陸の出身であり、幼馴染の間柄だ。だが、少なくともグレイはシエルと共にこの地に帰ってくることを想像していなかった。
「まずは宿を探しましょうか」
ルナがグレイとシエルに声をかけた。シエルは相変わらず聞いてるのか聞いていないのかわからない反応だ。
(仕方がない、いつものことだ)
そう考えたグレイはため息まじりにルナに返事をする。
「宿はこっちだ。ついてきな」
ルナの歩き方がいかにも旅慣れていない様子だったため、自分の知っている宿屋まで案内しようとグレイは先頭を歩きだした。
「ありがとうございます。この辺りは詳しいのですか?」
しまった。グレイは心の中で舌打ちをする。この地にはルナが食いつきそうなおとぎ話がある。シエルの力のこともあるし、また『天の英雄』とやらだと勘違いされても面倒だった。
「いや、一回来たことが……」
「グレイと私はこの大陸出身なんだ」
言いくるめようとしたところにシエルがかぶせてきた。本当にコイツは何を考えているんだ? グレイは頭を抱えた。
「そうだったのですね。教えて下されば良かったのに」
ルナが笑顔で返してくる。グレイが隠していたことはバレた様だ。
「聞かれなかったからな」
グレイの皮肉はどれだけ伝わったのだろうか。
……
宿で宿泊した後、グレイ達が向かったのはこのウィントフォールの内陸にある『パラティヌス遺跡』だった。グレイとシエルの遊び場だった場所だ。フォースアベニューからは馬車で一週間ほどかかる。馬車はグレイが選び、ルナが購入した。やはりルナは貴族らしく、金はたくさん持っているようだ。
(確かに銃の腕はまあまあだったが、よくも一人で旅をしているものだ。付き人の一人くらいはいないのだろうか? )
グレイが雪道を馬車で進みながらつらつらとそんなことを考えていると、馬車の中からルナが顔を出してきた。
「まだ遺跡にはつかねえぞ?」
「わかっています。まだ出発して二日目じゃないですか」
「シエルは?」
「寝ています。本当に良く寝ますね、シエルさんは」
本当にそう思う。シエルは力を持ってなかったらどうなっていたんだろうか? ……いや、多分、今みたいにはなっていなかっただろう。グレイは昔のシエルを思い出して暗い気分になった。
「どうかされましたか?」
ルナに声をかけられた。心配そうな顔をしている。グレイはルナに少し悪いことをした様に感じた。
「いや、何でもない。ところで俺になんか用事か?」
ぶっきらぼうに答えるとルナは少し戸惑い、意を決したように口を開いた。
「いえ、その、せっかくご一緒させて頂いているので、もう少しグレイさんのことを知りたいと思いまして」
遠慮がちに言う。確かに俺の様なコミュ障とシエルの様な不思議ちゃんが旅の同行者では居心地が悪いのだろう。グレイは巻き込まれた側だと思ってはいるが、それでも、ルナが少々不憫になった。
「グレイで良い。……それで、俺に何か聞きたいことがあるのか?」
ルナの表情が明るくなった。
「はい、ありがとうございます。グレイ。それでは私のこともルナとお呼びください」
グレイは少し気恥ずかしい気持ちを抱えながらもルナに返した。
「わかった、ルナ。それで……」
「あ、はい。グレイはここの大陸出身なのですよね? どの辺りに住んでらしたのですか?」
『やはり』と感じる質問だった。ルナはパラティヌス遺跡が目的でここに来たのだ。その場所について、グレイやシエルがどれほどの情報を持っているのか、もちろん気になるだろう。
(俺が隠してもシエルが言うだろうからな)
心の中で苦笑しながらも、グレイは正直に答えた。
「フラウ村だ。これから向かうパラティヌス遺跡とは目と鼻の先に有った村」
ルナが驚きの表情でグレイを見た。
「もう、無いけどな」
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