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11.くすんだ宝玉
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開いた扉の先には小さな部屋とその中央にある台座が見えた。
「宝玉? でもなんかくすんでいる……」
台座に近づき、その上にある宝玉を眺めながらルナは感想を述べた。
(古い遺跡の奥にあるものだからしょうがないか)
そんな意味のないことを考えている途中で違和感に気が付く。
「グレイ? どうしたのです?」
グレイが一歩離れて立ち止まっている。表情は信じられないものを見るように驚愕したまま固まっていた。
「なんで……それが……」
様子がおかしい。この宝玉があることに恐ろしく驚いているようだった。「この宝玉がどうしたのですか?」とルナが聞こうとした矢先にシエルが口を開けた。
「これは私が村を襲った連中から奪ってここに戻したんだよ? グレイ」
……
シエルの言葉を聞いてグレイは驚きを隠せなかった。ここはかつてフラウ村で英雄神が祀られていた場所。ご神体として宝玉が安置されていた場所である。先ほどの扉は村の一族しか開くことは出来ない。
「この宝玉は……俺が村を出た時に……」
グレイは動揺で言葉を詰まらせながらやっとのことで言葉を紡ぐ。そんなグレイを冷ややかな目で見つめながらシエルは言葉をつづけた。
「これをずっと見せたかったんだ。この場所で、あんたに」
シエルの言うことが頭に入って来ない。
「なぜ、(この場所に宝玉が戻っている?)」
「なぜ、(俺が持ち出したと知っている?)」
グレイは質問を口に出せずにただシエルを見つめた。
「聞きたいことは大体わかるよ? まずはこの場所に宝玉が戻っているのは私が戻したから。当然だよね、村の生き残りは私とあんたしかいないんだから」
いつも必要最低限の事しか口に出さないシエルが流暢にしゃべる。だが、今のグレイにはそんなことは気にならなかった。そんな余裕が生まれる状況では無かった。
「あんたが宝玉を持って村からいなくなった数週間後に盗賊達が現れて町を蹂躙していった。みんな、死んじゃったんだ」
「お前……村が襲われた時、村にいたのか?」
盗賊によって村が壊滅したと言う情報を後から知ったとき、グレイは村の生き残りの情報を必死に集めたが、結果は0だった。シエルと再会した時に村の事を聞いた時の様子で、シエルは既に村を離れていたとそう思い込んでいた。いや、今となって思えばそうであってほしかったのかもしれない。
「この宝玉はあんたが夢を追うために売ったんだよね? そのせいで、この村に貴重な宝玉があると知った強欲な商人がこの村を盗賊に襲わせた。結果、村のみんなが死んだんだ」
グレイは膝から力抜け落ちるのを感じた。そうか……やっぱり……。
「村の宝を盗んでまでアンタは夢を追いかけたが、結果は……言うまでも無いね」
グレイは五年前、夢を追いかける旅賃の為に村の宝玉に手を出し、港で売り、売ったその金で船に飛び乗った。そして、船の中で何度も村のみんなに謝った。シエルにも何度も謝った。それが自己満足で何の意味も無いことを知りながら、グレイはずっと一人で謝り続けた。そして、その夢を叶えられずに無気力に生きながらもグレイはずっとそのことを悔やんでいる。だが、村が襲われた原因が自分であったことは本当に知らなかった。
「ずっと一緒に居て良く分かった。アンタは一人では何も出来ない。生き残る力もない。だからここに置いていく。ここにいる亜人は凶暴だからね。ゆっくり嬲り殺されるが良いさ」
シエルは無慈悲にグレイに告げると、状況に混乱しているルナの方に向き直った。
「悪いけど、アンタも置いていくよ。『天の英雄』なんて存在を探している人間、正直迷惑だからね」
「迷惑? どういう意味……」
「じゃあね。もし生きてたらまた会おう」
質問をしようとするルナを無視して、シエルは飛び出ていった。
「宝玉? でもなんかくすんでいる……」
台座に近づき、その上にある宝玉を眺めながらルナは感想を述べた。
(古い遺跡の奥にあるものだからしょうがないか)
そんな意味のないことを考えている途中で違和感に気が付く。
「グレイ? どうしたのです?」
グレイが一歩離れて立ち止まっている。表情は信じられないものを見るように驚愕したまま固まっていた。
「なんで……それが……」
様子がおかしい。この宝玉があることに恐ろしく驚いているようだった。「この宝玉がどうしたのですか?」とルナが聞こうとした矢先にシエルが口を開けた。
「これは私が村を襲った連中から奪ってここに戻したんだよ? グレイ」
……
シエルの言葉を聞いてグレイは驚きを隠せなかった。ここはかつてフラウ村で英雄神が祀られていた場所。ご神体として宝玉が安置されていた場所である。先ほどの扉は村の一族しか開くことは出来ない。
「この宝玉は……俺が村を出た時に……」
グレイは動揺で言葉を詰まらせながらやっとのことで言葉を紡ぐ。そんなグレイを冷ややかな目で見つめながらシエルは言葉をつづけた。
「これをずっと見せたかったんだ。この場所で、あんたに」
シエルの言うことが頭に入って来ない。
「なぜ、(この場所に宝玉が戻っている?)」
「なぜ、(俺が持ち出したと知っている?)」
グレイは質問を口に出せずにただシエルを見つめた。
「聞きたいことは大体わかるよ? まずはこの場所に宝玉が戻っているのは私が戻したから。当然だよね、村の生き残りは私とあんたしかいないんだから」
いつも必要最低限の事しか口に出さないシエルが流暢にしゃべる。だが、今のグレイにはそんなことは気にならなかった。そんな余裕が生まれる状況では無かった。
「あんたが宝玉を持って村からいなくなった数週間後に盗賊達が現れて町を蹂躙していった。みんな、死んじゃったんだ」
「お前……村が襲われた時、村にいたのか?」
盗賊によって村が壊滅したと言う情報を後から知ったとき、グレイは村の生き残りの情報を必死に集めたが、結果は0だった。シエルと再会した時に村の事を聞いた時の様子で、シエルは既に村を離れていたとそう思い込んでいた。いや、今となって思えばそうであってほしかったのかもしれない。
「この宝玉はあんたが夢を追うために売ったんだよね? そのせいで、この村に貴重な宝玉があると知った強欲な商人がこの村を盗賊に襲わせた。結果、村のみんなが死んだんだ」
グレイは膝から力抜け落ちるのを感じた。そうか……やっぱり……。
「村の宝を盗んでまでアンタは夢を追いかけたが、結果は……言うまでも無いね」
グレイは五年前、夢を追いかける旅賃の為に村の宝玉に手を出し、港で売り、売ったその金で船に飛び乗った。そして、船の中で何度も村のみんなに謝った。シエルにも何度も謝った。それが自己満足で何の意味も無いことを知りながら、グレイはずっと一人で謝り続けた。そして、その夢を叶えられずに無気力に生きながらもグレイはずっとそのことを悔やんでいる。だが、村が襲われた原因が自分であったことは本当に知らなかった。
「ずっと一緒に居て良く分かった。アンタは一人では何も出来ない。生き残る力もない。だからここに置いていく。ここにいる亜人は凶暴だからね。ゆっくり嬲り殺されるが良いさ」
シエルは無慈悲にグレイに告げると、状況に混乱しているルナの方に向き直った。
「悪いけど、アンタも置いていくよ。『天の英雄』なんて存在を探している人間、正直迷惑だからね」
「迷惑? どういう意味……」
「じゃあね。もし生きてたらまた会おう」
質問をしようとするルナを無視して、シエルは飛び出ていった。
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