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18.酒場にて(2)
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「まずは仲間を集めねばなりません」
ルナが言うにはシエルはきっとグレイの近くにいる。だが、こちらから彼女に接触することは出来ない。なぜなら、彼女は自在に空を高速で飛行することが出来る。見つけられてもすぐに逃げられてしまう可能性が高いからだ。もしくは遺跡の時の様な目に合うことも十分に考えられる。だから、シエルからグレイに接触するための『きっかけ』を作らなくてはならない。
「……んで、なんで仲間なんだよ」
先ほどのルナの発言に対して、グレイは憮然として返した。それに対してルナはため息を一つした後、真剣な眼差しで切り出した。
「ハッキリと申し上げましょう。シエルさんは貴方に愛想を尽かしたのです」
「はあああ⁉」
「貴方は恐らく、夢を追っていたころと全く違う人間になっていた。……何年たってもずっと。シエルさんは貴方が元の貴方に戻るのをずっと待っていたのではないでしょうか?」
『昔と違う人間』……痛いところを突かれたグレイは動揺を抑えながら返す。
「……なんでそう思うんだよ。お前も見ただろう? あのシエルがそんな世話焼きに見えたのか?」
「女の勘です」
「なんだそりゃ⁉」
「でも、貴方は彼女に『自分が変わったところ見せなくてはいけない』……それはわかっているのでしょう?」
グレイは押し黙る。ルナの言うことは間違っていない。グレイは大きな過ちを犯した。シエルに黙って村を出て行っただけでなく、その時に持ち出した宝玉のせいで、シエルの親も友人も家も故郷も全てを奪った。話をして貰うにはその過去と向き合い、償う必要がある。だが、現状、償う方法はない。
「……あの遺跡にいた魔物達に違和感はありませんでしたか?」
「……違和感?」
急に話を変えられたことに戸惑いつつも、ルナの問いかけに対して思案をする。
「ゴブリンってあんなに大きかったっけか?」
幼少のころ、あのトラップを使ってゴブリンを倒したことがある。だが、今回、遺跡で遭遇したゴブリンはあれほどの体格をしていなかった。そして、直接、剣を交えた時もあれほどの強さがあるとは思いもしなかった。幼少時にゴブリンがあの強さであったら、グレイはその時、間違いなく嬲り殺されたはずだ。
「……あれは恐らく瘴気の影響です」
瘴気……以前、ルナが言っていた、この世界に災厄をもたらすもの……。
「貴方の村も、もしかしたら瘴気のせいであんなことになったのかもしれません」
「……どういうことだ?」
グレイの顔がこれ以上なく真剣になる。
「私にもわかりません。今となっては調べることも難しいでしょう。ただ、村を襲った者たちが瘴気の影響を受けたせいで無慈悲な行いを実行した可能性もあります」
「もしそうだとしたら、瘴気によって人生を狂わされそうになる人々を助けることが、貴方のシエルさんに対する償いにはなりませんか?」
故郷のフラウ村はもうどうしようもない。……だからこそ、そうなりそうな場所を、人を守れ……そう言うことをルナは言っていた。
「それが出来る人間に貴方がなれたら、シエルさんは貴方ともう一度話したくなるかもしれません」
「本気で言っているのか?」
「あくまで可能性です。ただ、私はシエルさんを見てそう思いました」
「どうしてだよ」
「女の勘です」
「またかよ⁉」
ツッコミを入れるグレイを見て、思わず笑うルナであったが、すぐに真剣な顔をして続けた。
「話を最初に戻します。私たちのこれからの活動は二つ。瘴気の影響を受けた暴漢や魔物から、人々や町、村を守ること。そして、瘴気を根本から解決するための方法を見つけ出すこと」
「だが、二つ目の『瘴気を根本から解決するための方法を見つけ出す』のは『天の英雄』とやらの仕事じゃないのか?」
そういうグレイに対してルナは静かに答えた。
「解決するのは『天の英雄』の力が無いと難しいのかもしれません。ですが、瘴気の正体や発生原因を調べることは出来ます。そして、それが一つ目の『瘴気の影響を受けた暴漢や魔物から、人々や町、村を守ること』を根本から解決するのです」
「……そんで、仲間、か」
「はい。貴方自身わかっていることと思いますが、実行するには私達二人では不可能に近いです」
シエルの力の無い、一般人が二人で空賊が跋扈する世界を駆け巡る……それは、三カ月以内に雲の藻屑になるコースでほぼほぼ間違いないだろう。
「当てはあるのか?」
「はい」
ルナが一拍を置いて目的地を告げる。
「まず向かう場所は砂漠の大陸『ゲライフ』です」
ルナが言うにはシエルはきっとグレイの近くにいる。だが、こちらから彼女に接触することは出来ない。なぜなら、彼女は自在に空を高速で飛行することが出来る。見つけられてもすぐに逃げられてしまう可能性が高いからだ。もしくは遺跡の時の様な目に合うことも十分に考えられる。だから、シエルからグレイに接触するための『きっかけ』を作らなくてはならない。
「……んで、なんで仲間なんだよ」
先ほどのルナの発言に対して、グレイは憮然として返した。それに対してルナはため息を一つした後、真剣な眼差しで切り出した。
「ハッキリと申し上げましょう。シエルさんは貴方に愛想を尽かしたのです」
「はあああ⁉」
「貴方は恐らく、夢を追っていたころと全く違う人間になっていた。……何年たってもずっと。シエルさんは貴方が元の貴方に戻るのをずっと待っていたのではないでしょうか?」
『昔と違う人間』……痛いところを突かれたグレイは動揺を抑えながら返す。
「……なんでそう思うんだよ。お前も見ただろう? あのシエルがそんな世話焼きに見えたのか?」
「女の勘です」
「なんだそりゃ⁉」
「でも、貴方は彼女に『自分が変わったところ見せなくてはいけない』……それはわかっているのでしょう?」
グレイは押し黙る。ルナの言うことは間違っていない。グレイは大きな過ちを犯した。シエルに黙って村を出て行っただけでなく、その時に持ち出した宝玉のせいで、シエルの親も友人も家も故郷も全てを奪った。話をして貰うにはその過去と向き合い、償う必要がある。だが、現状、償う方法はない。
「……あの遺跡にいた魔物達に違和感はありませんでしたか?」
「……違和感?」
急に話を変えられたことに戸惑いつつも、ルナの問いかけに対して思案をする。
「ゴブリンってあんなに大きかったっけか?」
幼少のころ、あのトラップを使ってゴブリンを倒したことがある。だが、今回、遺跡で遭遇したゴブリンはあれほどの体格をしていなかった。そして、直接、剣を交えた時もあれほどの強さがあるとは思いもしなかった。幼少時にゴブリンがあの強さであったら、グレイはその時、間違いなく嬲り殺されたはずだ。
「……あれは恐らく瘴気の影響です」
瘴気……以前、ルナが言っていた、この世界に災厄をもたらすもの……。
「貴方の村も、もしかしたら瘴気のせいであんなことになったのかもしれません」
「……どういうことだ?」
グレイの顔がこれ以上なく真剣になる。
「私にもわかりません。今となっては調べることも難しいでしょう。ただ、村を襲った者たちが瘴気の影響を受けたせいで無慈悲な行いを実行した可能性もあります」
「もしそうだとしたら、瘴気によって人生を狂わされそうになる人々を助けることが、貴方のシエルさんに対する償いにはなりませんか?」
故郷のフラウ村はもうどうしようもない。……だからこそ、そうなりそうな場所を、人を守れ……そう言うことをルナは言っていた。
「それが出来る人間に貴方がなれたら、シエルさんは貴方ともう一度話したくなるかもしれません」
「本気で言っているのか?」
「あくまで可能性です。ただ、私はシエルさんを見てそう思いました」
「どうしてだよ」
「女の勘です」
「またかよ⁉」
ツッコミを入れるグレイを見て、思わず笑うルナであったが、すぐに真剣な顔をして続けた。
「話を最初に戻します。私たちのこれからの活動は二つ。瘴気の影響を受けた暴漢や魔物から、人々や町、村を守ること。そして、瘴気を根本から解決するための方法を見つけ出すこと」
「だが、二つ目の『瘴気を根本から解決するための方法を見つけ出す』のは『天の英雄』とやらの仕事じゃないのか?」
そういうグレイに対してルナは静かに答えた。
「解決するのは『天の英雄』の力が無いと難しいのかもしれません。ですが、瘴気の正体や発生原因を調べることは出来ます。そして、それが一つ目の『瘴気の影響を受けた暴漢や魔物から、人々や町、村を守ること』を根本から解決するのです」
「……そんで、仲間、か」
「はい。貴方自身わかっていることと思いますが、実行するには私達二人では不可能に近いです」
シエルの力の無い、一般人が二人で空賊が跋扈する世界を駆け巡る……それは、三カ月以内に雲の藻屑になるコースでほぼほぼ間違いないだろう。
「当てはあるのか?」
「はい」
ルナが一拍を置いて目的地を告げる。
「まず向かう場所は砂漠の大陸『ゲライフ』です」
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