二度目の生き方を探してく

嬉野 巧

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運とはズルく見えること

新しい人間関係

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 寮に戻って配られた資料に一枚ずつ目を通していく。目当てである学校行事の予定表に加えて、図書館の使い方や学習の手引きも配布されていた。


「兄さん。少し遅いですけど、昼食をとりますか? それとも夕食まで待ちますか?」


「あぁ、俺はこれ読みたいから夜に食べるよ」


 俺が答えると、コルアは「じゃあ僕も」と言って空になった段ボール箱を畳み始めた。


「兄さんは交流会、どうでしたか?」


「うん、顔見知りは出来た。さすがにまだまだこれからって感じだけど」


「そうですか。僕の方はソールドさんと一緒だったんですけど、似たようなものだと思います」


「ま、二日目だからな」


「明日からは通常の授業が始まるようですし、今日知り合った人とはしばらく顔を合わせる機会が無さそうですね」


「寮住み以外はそうだな……」


 答えながら、ふとタルタの顔が浮かんだ。これから食堂をはじめ、寮内で会うこともあるだろう。俺一人なら良いが、コルアやショウカが一緒の時はどうしようか。

 悩みながらだと手が止まる。チラチラとこちらの様子をうかがっていたコルアが「一息ついたなら、食事に行きます?」と声をかけてきた。


「あ。うん、そうするか」


 ひとまず、一番近い一ヶ月先の球技大会は確認できたのでコルアに続いて部屋を出た。


 翌日、授業が始まる。本当に基礎の基礎、実家の本で読んだ覚えがある中身だった。魔法やスキル、地理、歴史……コッチの世界を知る手がかりになるだろうと手を着けた知識がほとんどだ。


「スキルは元々素質のあるものしか取得できない。効果は該当する能力の底上げと上限解放である、と言うのが今の通説だね」


 先生の話をぼーっと聞き流しながら、机に広げた教科書を眺める。読んだ覚えも聞いた覚えも無いスキル『運』の一群。確かめる方法を思索していた。くじ引きとかだろうか。


 午前中の授業を終え、一度寮に戻って昼食を取った。寮に住んでいないフルー、ソールド、エイテムは教室で各自持参のご飯を食べるそうだ。教室を後にする俺たちの背中側から早速、談笑が聞こえてきた。たまにはランチボックスを持ってあの中に混ざるのも良いかもしれない。


 再び教室へ戻ってくると、正面のホワイトボードに「運動場へ移動」とあった。時間割には特別活動としか書いていなかったが、どうやら体育のようだ。


「着替えとか、あぁ。しなくて良いのか」


 昔の知識がつい口に出たが、振り返るとショウカもコルアも既にTシャツやジャージを着ていた。俺も両親が持たせてくれた作業着一式という農家のような格好をしている。制服がない上スキル関係の実技も豊富なので、こだわりのある生徒以外は普段から動きやすさを考えた服を選んで着ていた。


「ちょっとばかり早いけど、教室に残ってた子達はもう行ったみたいだしアタシらも行こうか」


 ショウカの提案に頷いて、俺たちは教室を出た。特設クラスから運動場までは校内をぐるりと回る廊下を端から端まで歩く。つまり、一番離れた場所にある。他クラスの前も通らなければならないので雑談は無し。かすかに漏れ聞こえる授業の内容は午前中に聞いたのと大体同じだった。

 Aクラスの教室。扉の窓から最前列が見えた。襟のついたジャケットをカッチリ着込んで真っ直ぐに背筋を伸ばしたタルタがいる。視線を感じ取ったのか一瞬だけこちらに目を向けたが、すぐに教師へと向き直った。

 タルタの口がパクパクと動く。その最中も授業の音はやまない。目が合った俺へのメッセージと思えば、何となく中身を読み取れた。


「はやくいけ」


 俺は一歩だけわざと足音を立てて踏み出して、授業に遅れないように早歩きで動き出した。タルタの視線がまた一瞬、こちらを向いた。
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