黎明のクマちゃん

蟹虎 夜光

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第1話 I punti di svolta cambiano le persone(転機は人を変える)

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第1話 I punti di svolta cambiano le persone(転機は人を変える)



 今から数年前。私の両親は死亡したと言われた。

 死因は警察曰くなぜか不明で、他殺によるものと言われたまんま事件は時効となった。

 だが、その日現場にいた私はあの犯人のつけていた仮面を覚えている。

「私は……絶対にお前を!」

 

 そしてそれから現在まで。

 由緒正しい一族の家系、又木家またぎけの末裔である私……又木アンナまたぎあんなとその妹……又木カヲリまたぎかをりはなんとか今日まで生きてきた。

 が……さすがに二十を超えた私は独り立ちする必要がある。

「本当によろしいの?お嬢様。」

 友達と同居して、私は独り立ちする。

「というか独り立ちじゃないの!?なんで私と!?」

「だって……助手でしょ?」

「いやまぁそうだけど……なんか違うじゃん。」

 この子は私の助手兼大親友の伊地知しほりいじちしほり。私のサポーターでもある。

 何を隠そう私の職業は殺し屋。

 そして……彼女は、後始末担当である。

 私達はこのコンビで今日まで数々の悪党を退治してきた。

 そしてこれからもである。

「まったく……んでそれにしても、なんでこんな微妙な街なの?なんかこう……工業団地が近い感じのとことかさ!色々あるじゃん!組の事務所とか色んな。」

「……長期依頼ついでにこの田舎と都会の境目の街で独り立ちを学ぶ。いいでしょ?」

「はぁ……まぁ好きにしたらいい。」

 この子は私が何をしてもなんやかんやで許してくれるとてもいい性格の持ち主だ。優しすぎて本当にいつも助かる。

「でも……どうするの?この街に関して知識は……。」

「なくはない。だって地球だからな。」

「何その理論!」

 私が今向かうとこは森中市。東が大自然に溢れているのに対して西はオフィスなど大都会である。

「お嬢ちゃん達……これから向かう場所くらいちゃんと調べなよ。それに森中市だろ?」

「えぇ……まぁ。」

 タクシーの運ちゃんが話しかけて、しほりが対応する。

「あそこは西と東で差は激しいが、ありゃまるで誰もが物語のキャラクターって感じの街だ。市長の娘が主役でまるでやることなすことミュージカルだな。」

「ほう……私はその市長に依頼されてね。せっかくなので少し観光もしたいんだ。オススメは?」

「ちょっと観光なんて出来ないんじゃない?」

「いやできる。」

「できないよ。」

「できるもん!」

 お互いに意見を譲ろうともしない。

「まぁおふたりさん方、ラジオでも聴いとけや。」

 そんな二人に呆れて運転手はラジオを流す。

『森中市ラジオ~!今日もポップなニュースをお届けしていくこのコーナー!ポップモリモリ~!』

「……なんかふざけたタイトルだな。」

「そう?俺は結構好きだけどな。」

『森中市にあるふれあい動物園でなんとパンダの赤ちゃんが産まれたんだって!おめでとうござ――』

 そんなのを聴いているうちに私達は目的地に着いた。


 森中市役所。

「遠くから来た紳士淑女のみんな!ようこそ森中市へ!コホン……私はこの市の市長……の娘である、名を月ノ輪……って少しぐらい聞いたらどうだい!」

 私としほりは市長の娘ですら無視して、真っ直ぐ歩んだ。

「ごめんね、市長の娘ちゃん。また後で聞くからね。」

「しほり、そうやって約束したので解決してないのこれで百五件目……」

「まぁ……いずれ叶えるから。」

「ふぅん……いつになるか。」

 私達は顔色変えずに市役所に入っていった。
 

 市役所内にて。

 市役所の中に入り、市長室の扉を開けた先には市長がおり、部下もいない不用心な状態で私達を待ち構えていた。

 まぁ、陰に隠れていることくらいバレバレだが。

「よくここまで来れたな、無事に。」

「私を誰だと思っての発言かな。」

「アンナちゃん、喧嘩売りに来たわけじゃないのにその口調で話さないの。」

「そうか……それで依頼は?」

「話をすぐに進めるねぇ!?」

「やれやれ、せっかちな娘だな。でもその前に……ちょっとこれを見てくれ。」

 市長はそう言うと週刊誌を渡してきた。出されたページには……私の顔が映っていた。

「これは……?」

「今日発表された週刊誌の記事でな……殺し屋の素顔ってタイトルと同時に君の顔が映ってる。中にはこの顔でしてるのもいるんだとか。」

「この写真……いつ撮ったんだ?それにしても綺麗に映ってるなぁ……やはり私は美少女のようであ」

「やれやれ、そこの事態を分からねぇイカレ女は黙った方がいいな。それに……今回の依頼はむしろこうなった以上、お互いに都合が良いと思う。」

 そう言うと市長は陰から自分の部下を呼んで、ある物……?を持ってきた。

「君、中のもん見せてやれ。」

「はい!……本当にあれですよね?」

「そうだよ。とっても面白いことになるよ。」

「大丈夫ですかね……」

 そう言って部下の人が見せたのは、クマの……着ぐるみだ。

「森中市のマスコットキャラクター……『クマチャ』。」

「名前そのまんまなんですね!」

「大きくもつぶらな瞳……そしていかにも熊であると言わんばかりのわかりやすいモチーフ……一番に大事なのはこの可愛さ!よく出来とるだろ?」

「確かによく出来てるが……」

「そうだろう、やはりイカレ女でもこの魅力がわかるかぁ。うんうん。」

 いかにも私がつくりましたと言いそうな市長はクマチャを自慢げな顔でみる。

「そして……ここからが重要。君にはクマチャとして活動をしてもらいたい」

「殺し屋の要素どこいった!?」

 思わずしほりはツッコミを入れる。

「あはは……まぁたしかに君の言う通り言葉だけなら殺し屋は不要……そこらのバイトとかに着せりゃいい話だが、クマチャはそうはいかない。」

 自慢げな顔をする市長の顔は段々と暗くなる。

「この街は治安がお世辞にもいいとは言えない。それどころかある問題を抱えていてね。」

「ある問題と言いますと?」

「君達と敵対関係にある組織……例を出すなら鹿野組とかがここをアジトにしようとしてる……だからこそ街の人間は生活が脅かされて誰も外に出れなくなってるんだ。」

「なるほど……つまり私がクマチャの状態でそこに突っ込んで相打ちで死ねば殺し屋はこの世からいない、こうして平和になるってか?」

「ちょっと!どこまで考えてそんな結論に!」

「ふん、面白い考えだが……まぁ言っちゃ悪いが私の答えはそのつもりだったんだ。」

「フン、お見通しってわけだったが……ひとつ言おう。」

 私は市長に指を指す。

「なんだね?」

「勝っちゃうよ、私。」

「……フン、やはり君は面白い。依頼した甲斐が有る。」

 市長と笑顔で見合った。

「あっちの部屋で着替えてくれるか?」

「では着替えさせてもらいます。」

 私は服を脱ごうとする。

「待ってアンナちゃん!試着室あるから!」

「そうか……」

「人の目くらい考えなよ……」

 私は面倒くさがりながら部屋に向かって着ぐるみに着替えた。

「……あったかい。」

「安心しろ、夏には冷房機能もある。」

「さいこう。」

「んで早速だが依頼だ。頼めるか?」

「わかった。」

 こうして又木アンナ、クマチャの中の人に任命!


 こうして数時間後。

「こんにちはぁ!みんなぁ!クマチャだよぉ!」

 クマチャは喋るタイプの着ぐるみとして、いま動物園の触れ合いコーナーでロケに出ることになった。

「アナウンサーの岸谷アナリきしやあなりだよ!」

「岸谷アナ!今日は何を紹介するの?」

 台本はスパイ任務での経験を活かして0.1秒だけの速読で丸暗記したため、あとは黙って指示通りにやるのみ。

「今日はね、パンダの赤ちゃんのティンティンを紹介しようと思うよ!」

「あー!最近ニュースになってた森中市のこの動物園で産まれたパンダの赤ちゃんだね!」

「うんうん!さすがクマチャ、詳しいね!」

「えっへへぇ~」

 よし、台本通り。

 このまま順調に進んで欲しいけど……少し妙だ。

 その異変の正体をクマチャは察した。

「ん?どうしたのクマチャ……急に屈んで。」

「岸谷アナ……嫌な予感がする。」

「あっはは……クマチャは警戒心が強いねぇ。」

「違う!これあかんやつ!」

 そのクマチャの声と同時に手裏剣が飛んできた。

 すかさずクマチャは岸谷アナを守り、手裏剣の攻撃を見事に外させた。

「えっ……」

「ほう……今回のゆるキャラは鋭いのう。」

「ふむ……まるで忍術そのもの。」

 クマチャは思いっきり手裏剣が飛んだ方向に飛び込む。

「バカめ!俺はこっちだ!」

「そんなの……予測済みだ!」

 大きな巨体から俊敏に動く機能性はもはや疑うもの。

 手裏剣をかわしてクマチャは手裏剣を投げていた忍者を華麗に殴る。

「ぐはぁ!!!」

「完璧……。」

 男の死を確認し、クマチャは満足気にその場を去る。

「すっ……すごい。ありがとう……クマチャ。」

「感謝されるようなことはしていない。」


 撮影も上手くいき、仕事を終えて私はクマチャの着ぐるみを役所まで纏った状態で、持ってった。

「疲れた……」

「お疲れさん。いい番組ができそうらしい。それに殺し屋まで仕留めてくれたなんて。ディレクターなんか映画撮れたって言ってたよ!」

「当然のことだ、着ぐるみは返せばいい?」

「それは君に任せよう……だが、もう一人の子は?」

「あぁ、しほりは……言われてみたらいないな。」

「気づかなかったの!?」

「あぁ……」

 その時、少し嫌な予感がした。私は思わず着ていたクマチャの鎧を脱いでさっきの現場に戻った。


「しほり!」

 駆けつけた舞台は番組をやっていた動物園の裏、そこにいたのは仮面を被った男と息をしていないしほりだった。

「……ふっ」

 男は鼻で笑って立ち去る。

「お前……」

 それにこの仮面は見覚えがある。……私の両親を殺した男の仮面だ。

「私は……絶対にお前を!」

「悪には制裁を。」

「悪はどっちだ!」

「いずれ会おう……可愛い顔した殺し屋マスコット。」

「待て!」

 私の声は届かない。

 だが……この街で会えたということは私の行動を把握してる人物が私の家族や友達を殺していて……考えても私の頭では答えにたどりつけない。

「クソォ!!!」

 私は近くにあった路地裏の家のレンガの壁を思いっきり殴った。

 こんなにすぐ戻っちゃうなんて。

 私はクマチャとして、あの街で追う必要がある。

 つづく
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