黎明のクマちゃん

蟹虎 夜光

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第7話 取り残されたPrincess

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第7話 取り残されたPrincess

 翌日。大きな門を目の前に冷静なノアさんの隣で僕は足をガクガクと揺らしていた。

「震えているのか?」

「む、武者震いですよ……」

「そうか……。」

 昨日の夢のせいか、この家に行くのはやはり怖い。

 やっぱり……僕は……。

「人ってのは第一印象で全てが決まる……私が学生時代に先生が言ってたことだ。」

「第一印象……?」

「見た目や性格……人はそういうので偏見も交えつつあるが目の前にいた初対面の人間を判断する。」

「確かに……。」

「きっと君は彼女の声やおぞましい表情が第一印象になってるからそんなに足を震えさせているのだろうとな。」

「……」

「何も恥ずかしがることでは無い。君と同じ立場なら私はきっと……チビってる。」
 
「……」

 笑ってはいけない。そう言い聞かせていてもはっきり言ってこの人との会話は時々そういう面では拷問である。

「少し笑わせるつもりだったんだが……無理に耐えなくてもいいぞ。」

「え……あぁ、今日は笑ってよかったんですね。」

「あぁ……え?」

「え?」

「「え?」」

 そんな会話をしているとメイドが現れた。

「家の前でインターホンも押さずに何をやっているのですか?お嬢様なら……薬を服用したところですが。」

「そうか……」

「ところでご要件は?」

「あぁ……姉の仇であるジェイソンが殺害された事とそうだな……この弾についてわかることは?」

 そういうとノアさんは撮っておいたジェイソンが殺害された銃弾の写真を見せる。

「あの猫田組暗殺の時と同じと言われているがわかることは?」

「ノアさん……どうしてメイドさんに?」

「あぁ……君は知らなかったか。彼女は葛城めい。長年メイドとして又木家に仕えている方でかおり様がアンナに渡したいものを探るほどまで彼女達についてマスターしている。その裏でこういうのに詳しい。」

「……そういうノアさんは葛城さんに詳しいですね。」

「そりゃ……まぁな。」

 あ、この人なにか濁してるな。

(言えるわけがないでしょノア!考えてもみなさいよ!こんな平然とした態度をとっておきながら私はこの葛城さんに憧れてこの業界に入ったなんて言え……あっ)

「あぁそれと……葛城さんは前職で」

「おっとノア様……それは禁句ですよ」

「おうふ」

 ノアさんは葛城さんに人差し指だけ口を触れられゆっくりと倒れて気絶した。

「ノアさん!?」

「では……運びましょうか。」

 僕はノアさんを運んで又木家の敷地に足を入れた。


 ノアさんを布団に入れ、葛城さんと二人で彼女の元へゆっくりと向かう。

「……やはり、まだ震えていますのね。」

「えぇ……」

「あの後、かおり様はずっと後悔しておりました。私はあのような態度をなぜ取ってしまったのか。ずっと心の奥底で葛藤しておりました。」

「……知ってますよ、めいさんこの話3回目です。」

「あら……私としたことが。ふふっ……けどそれくらい彼女は後悔していたんでしょうね……ただ、あんなことがなければ。」

「……」

 かおりさんは僕と同い年であり、今は息をしていてもまるで寝たフリのような状態で、簡単にまとめるとしたら彼女は今とやっては『植物人間』という状態になっている。

「かおり様……杉本友生様ですよ。」

「……」

 やはり反応はない。

 目の色は無のまま何も変わらないし、生きている方が辛いんじゃないかと思うくらい顔から辛さが滲み出てる。

「……せっかくですし、お散歩しませんか?」

 ふと、めいさんの提案により、僕らは外に出た。

 
 気絶してるノアさんを置いてくのは少し罪悪感が残る。

 けれど3人で外に出るとそこは美しく、様々な綺麗な色で造られた花園だった。

「友生様……知ってますか?」

「何を……ですか?」

「お嬢様は生前、かおり様と幼い頃……ここでいつも遊んでいたのですよ。追いかけっこをしたり、お絵描きをしたり……」

 車椅子で運ばれているかおりさんは手に持っている御守りを強く握りしめた。

「あぁ……うん……あぁ……」

 少しずつ口も開こうとしているのだろうか。

「……かおり様も懐かしく感じたのでしょうか。」

「……だといいですね。」

 かおりさんの表情が涙ぐんでるように見えてきた……。


 又木家は大豪邸でありながら、家族が使用するスペースはほんのわずかだった。

 家に庭があるがその庭は子供たち二人だけでは大きすぎるくらい広かった。

「お姉様!今日はどちらがちょうちょさんを捕まえたか勝負しますの!」

「……よかろう。」

 かなり年の離れた姉妹……ではあったが、周りの大人から見ても仲良しとわかるほどそんな問題は気にしなくていいと思えるほどに二人は仲が良かった。

「相変わらずあの子達仲良しね……。」

「そうだな……」

 両親も遠くから子供たちが遊んでいる光景を尊いものとして眺めていた。

「まるで本当の姉妹のようね。」

「あぁ……君は彼女達が大きくなったら告げるべきだと思うかい?」

「私は……いずれ彼女達が己自身で気づいていくものだと思っていますわ。」

 そんな二人の声も知らず、子供だった二人はただただこんな毎日が続いたら幸せだ……そんな事しか考えていなかった。

 
 そこから数年の月日が経つ。
 
「お姉様!」

「なんだ……朝から騒がしい奴だ。」

「お姉様、一緒に遊びましょう!」

「……私はもう、そんな歳でもないし両親……いや、あの人達の遺言では私はお前の姉ではない。」

「ゆいごん?」

「知らないならそれでいい。お前もいずれわかるはずだ。」

「おしえてよ!」

「いずれ知る……じゃあな、かおりちゃん。私は勉強をしなくてはならない。」

 反抗期なのもあってか知らないが、目の前のかおりはアンナにとって価値すらなかった。

 立ち去るアンナを見てかおりはふと思った。

「かっ……かっ……かっけぇですわ!!!!!」

 心の声は思わず外に響き渡った。

「うるさ……。」
 

 その反抗期も終えてせっかく仲良くなったと思った時に彼女はこの世を去った。

「……」

 そして不幸にも事故に見舞われ、彼女は今に至る。

 その人生の始まりに近いようなこの場所を残ったもう一人の彼女は涙ながらに見ていた。

「あ……あ……」

 それは楽しかった日々も辛かったあの日々も。

 彼女の涙と共に思い出は落ちてゆく。

「……彼女の反応を見る感じ、しばらくそっとしておいた方が良さそうですね。」

「そうですね……」

 めいさんの提案でその場を去ることにした。


「あぁ、それと……」

 又木家に戻る途中でめいさんが話題をふる。

「友生様はアンナ様の事件をどうお思いで?」

「え、あぁ……組織絡みの犯行なのは間違いないんじゃないかと。」

「あぁ、いえ……そちらの方ではなく。」

「え?」

「かおり様とアンナ様は血は繋がっておらず、アンナ様がかつて居た場所……そもそもご存知なかったり?」

「え……?」

「その反応だとアンナ様の過去については何も分からないようですね。」

 彼女の過去……あまり分からない。

「先程貰った銃の弾ですが……こちら、偶然にもアンナ様が生まれた街で作られたものだったんです。」

「そう……なんですか……。」

「えぇ……その街なんですが……とても危険な場所でして……。」

「ほう。」

「政府が隠蔽した無法地帯なのです。」

「……」

「地図にも乗ってない幻の島……鉞島まさかりとう。」

「鉞島……どうやって行けますか。」

「……今となっては行き方はありません。」

 暗い表情をしてるめいさんを見て急展開ながらも解決できない答えを追ってるんだと改めて悟った。

「ですが……手はあると思いますので、待ってていただけませんか。」

「もちろんです……」

 つづく
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