レディ・クローンズ

蟹虎 夜光

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Headed for the truth

第2話 開業 喫茶店『アトーンマント』

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 驚きはしたものの、彼女達の動きは早すぎた。四人のネットワークによる協力作業を徹底することにより、彼女達はスピードをフル回転する。そして隣にいつの間にか喫茶店が出来ていた。
「こんなにも早いとは……。まぁここの土地全体我々の物でして、比較的色々と一之輔様にとっても私にとってもメリットになるのではないでしょうか。返済は売上でね!」
 恐ろしすぎるぜ、ホプス。あんたってやつは。
 ……けど、悪くない。喫茶店を開業することによって街の発展にもなるし稼げれば稼げるほど、ホプスに返済が出来る!色んな意味で名前を「罪滅ぼし」を意味する名前、喫茶店『アトーンマント』として開業することにした。
「ウチのメンバーで料理出来るのっていたっけ?」
 喫茶店をするにあたって答えは沈黙、俺達はいつも誰が料理をしていたのだろうか。

「日頃の記憶を振り返らせてくれ。」
 普段料理作ってるイメージの人はというよりかは各週ごとにそれぞれ料理の曜日を決めている。月曜日にはフォーサーが料理をしていて、火曜日にはファスタ、水曜日はセカンダがやって、木曜日はサーディ、金曜日は俺。土日はゲームで負けた人だったり外食だったり。
「なら、私がやろっか!一番上なんだし!」
「ファスタ……お前はダメだ。」
「なーんーでーよー!」
 はっきり言って彼女に伝えるべきかそれとも優しく気を使って伝えるべきか……。いやこの際はっきり言おう。
「第一話で玉子焼き焦がしてるドジっ娘に調理場預けられるかぁ!」
「うっぐ……ひっく……」
「あーあファスタちゃん泣いちゃった。んで誰やるの?」
 冷静なセカンダさんまじ凄い。
「正直料理出来る!ってイメージの人いないからなぁ。」
 たかがクローン、されどクローン。俗に言う人工知能と比べて彼女達はオリジナルの経験がある……はずなのだが、こうもメンバーによってバラバラだと元のオリジナルの方に文句を言いたくなる。いや、色んな意味で言えないな……。
「いや、こういう時は……」
「ん?」
 俺はある存在を思いついた。スマホを開き、ゲーマーが集まるチャットアプリ『ティスセン』を開く。料理スキルが高いが求職中の存在のあの人……。
「なんだ一之輔、スマホばっか見て。」
「たしかネット仲間に料理スキルが高い近所の人がいたんだよ。しかもちょうど仕事探してるって人!」
 そう、この人にしよう!

「お疲れ様、カヌーレでーす!」
 カヌーレさん。いつもチャットで会話してるからかどんな人か分からなかったけどまさか……髪色を金髪にしたファンキーな大人の女性だったとはね。
「んーっと君がフクスケさんかな?」
「は、はい!」
 この人はゲームのチャットでいきなり写真をあげて「今日はコレ!」と料理をする人である。ムキムキの男性アバターを使うせいでこんな人だとは思わなかった。とりあえず彼女から貰った履歴書を見よう。
「溝口つきな……32歳、資格は調理師免許と運転免許……」
 転職経験は散々で……ってただの狂ったおば……お姉さんじゃねーか。
「まぁ適当にやらせていただくよ。給料はもちろん貰うからな。」
「ちょ、ちょっと……まだ採用だなんて……」
「いやいやお姉さんにはわかるよ?自分達今不利な感じだろー?安心しろよ、経験なら負けねえから。」
 否めないのがなんとも言えん。

「……とりあえずこれで厨房問題は解決っと。」
 実力はそれなりに知ってる。まさかモンスターブレイカーのゲームで知り合った人がここで役立つとは……ありがとう、魔法使いのカヌーレ。
「接客は……うーん、交互にやるか。」
 2チームに別れて交互にする。上の姉妹、下の姉妹これで別れれば完璧だろう。
「いざってなったらどーするんだよ。」
「そうだな……。ある程度何人かは雇いたいし、最悪いざとなれば……私が出る!」
 私が出る……一度言ってみたかったんだよなぁ!
「ところでお前ら魔法使いになるってどうなるの?」
「あっ、えーっとね。みんなのスマホがあるでしょ!」
 そういや親父が蒸発する前にコイツらにスマホ持たせてたな。おかげで連絡が取りやすい。
「これに変身アプリがあるから!それで転送するだけ!」
 それ……だけ?はえー、魔法少女もハイテクになったなぁ。
「んでほら仕組みとか色々あるだろ?武器とか妖精とか。」
「それならこの中にいる。せっかくいじめてみようと思ったのに。残念。」
 スマホの中に妖精……か。なんかてっきりふわふわしたもん想像してたけど電子化されとる!可愛くねぇ!
「どぉも!ファスタちゃんの妖精のアカバンです!」
 名前まで可愛くねぇ!!!!!これもう魔法少女じゃないって!ただの現実味のある地獄だよ!理科の実験どんなのかと思えば地味だった時ぐらい最悪だよ!
 んで他の子を見てみるか。まずファスタの妖精のアカバンにセカンダの妖精のウッツー、サーディの妖精がアオッパナ、そしてフォーサーの妖精がテロリン……可愛くない。
「私も変な感じはしたけど……これでいくしかないのね。」
 なんか周りに比べてサーディが疲れているように見えるのは俺だけだろうか。
「んま、さっさと動かしてやるしかないじゃない!」
「そうだね、セカンダの言う通りだよ!」
 上の姉妹はサーディに比べてやる気増し増し!そしてフォーサーは先に敵の墓を作る……そっとしておくか。
 んまぁ後のことを考えてあーだこーだ嫌な予感に突っ込みを入れるのも良くないしな。まぁ何かしらの可能性があるっしょ。気にせず気にせず。
「ところで魔法は……?」
「「「「「「「「……」」」」」」」」
 妖精も魔法少女も無言のままである。もしかして魔法が使えない魔法少女だったりするのだろうか……?え、そんなパターンある?前例が俺の知る限りだとわっかんね。
「んまぁ……なんとかなるわよ。」
「そうね、私たちならすぐよ!」
 どっから出てくるのその自信は……ねぇ、お二人さん。そんな二人を見る中、慌ててこちらに向かうカヌーレさん。
「大変だ!隣町に怪物が現れたよ!」
「怪物ねぇ……へー……は?怪物!?」
 魔法少女だって、自分たちじゃ用意出来ないものがある。そうそれこそ先ほど出たような怪物である。だが……今の彼女達が魔法少女と言えるには圧倒的に武器である『魔法』なんてものが存在しない。
『プルルルル……』
 俺の携帯が鳴り響く。あの人だろうと心の底からわかっていた。
「……もしもし、喫茶店従業員の皆様!」
 その予想は気持ち良いほどに当たっていた。ホプスだ。
「今、あんたの相手をしてる場合じゃねぇ!隣町に怪物が現れたんだ!」
「その怪物に関してですよ!」
「まさか俺たちで相手しろって言わないだろうな?ウチのクローン達は魔法もまだ使えな……」
「あー、みなまで言わないでください!こっちだって魔法少女呼べるなら呼んでます!」
 ホプスの電話を俺は素直に聞くことにした。

「はぁ!?魔法少女がみんな海外旅行!?」
「そうなんですよ、なのであなた達で対処してね!」
「……は?おいちょっと――」
 ……着信が切られた。最悪だ。
「……俺らに魔法は使えない。なら、俺達に出来ることだけでもしようぜ?」
 俺がクローンに顔を向けると、みんなの顔は不思議と漫画の主人公のように頼れる顔立ちをしていた。
「あの人も適当ね……でも、やるしかないわ!」
「全く……この怒りは隣町でぶつけてやる!」
「……救助だけでもやらなくちゃね!」
「暴れるぞぉ……」
 四人ともやる気だけ完璧なんだよな……。

to be continued……
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