レディ・クローンズ

蟹虎 夜光

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Headed for the truth

第6話 観光 夏休みにはバカンス!

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「海サイコー!」
 今俺はなぜこうなっているのかその答えは分からない。
「おいお前らスイカ割りしようぜ!」
「スイカ持ってくるわね!」
 あぁ……夏休み。
「ちょっと凍らせてやろ……ふひひ」
 綺麗なお兄さんやお姉さんが海いっぱいに広がる景色に沢山存在している。まるで前回の物語を忘れるかのように暑い日差しを浴びながらも俺達は快適な海にいる。
「ほら!いっちゃんも遊ぼ!」
「アッハイ」

 およそ一週間前。アトーンマントにて。
「……」
 俺はホプスとの話の後、一人不貞腐れていた。彼女達が生まれた意味を今になって達成しているのはいいがそれまでの間、存在する意味が無いから彼女達は俺の世話係……。
「はぁ……」
 今までの彼女達に存在意義があるとすればそれはなんだろうか。怪物が現れたから遅くなっちゃったけど魔法少女になるべき素質を持つ彼女たちを魔法少女に今からさせてみようってことになりました……はぁ!?
 店に閉じこもり、俺は自然と思っていた事に対して怒りを露わにする。
「いっちゃん……どうしたの?顔怖いよ?」
 その苛立ちはファスタにも気づかれるほどに分かりやすいほどであった。
「……ごめん。」
「ちょっとちょっと!何謝ってるの!?どうした?いつものいっちゃんらしくないよ!」
 いつもの俺らしくない……か。確かに俺は感情を露わにするような性格はしていない。
「元気出してよ!ほら!海とかいってさ?」
「海って……いつ行くの。」
「一週間後とかなら良いでしょ!だっていっちゃん夏休みじゃん!」
 エコーボイスで脳内に直接やってくる夏休みじゃん!って声。展開的に次のシーンでは海に戻されるやつだ……。

「おりゃあ!」
 ほらね!スイカ割りをするセカンダがパーン!と決め込むシーンだよ!
「流石よ!セカンダちゃん!」
「ったりめぇよ!あたしを舐めんじゃねえ!」
 スイカ割りは盛り上がっていた。彼女達は用済みなんて事も知らずに楽しく遊んでいる。
「楽しくねぇのかい?フクスケちゃん?」
「あ、いやぁ……いきなりファスタが提案した事がこんなにも早く採用されるなんて思ってなかったし……」
 そう、こんなにも早いなんて誰が想像できたか。
「安心しなよ、私がドライバーとして雇われてるんだからすぐ出来るに決まってんだろ?」
 誰が三十路のファンキーなお姉さんがバスの免許持ってるから借りて行こうぜなんて想像するんだ!ありがとうございます!一生ついて行きます!
「いやぁ……あはは」
「なんだい文句でもあるんかい?全く君って子は暗いねぇ。なんかあの子達に言い難いことでもあるんだろ?」
「え!?」
「私だって下の子がいたりしたんだからなんでも分かるさ。ほら言ってみな?」
「そ、その……」
 俺はとりあえずカヌーレさんに全て話すことにした。

「なるほどね。」
「はい……ホプスが言ってることにホプスが悪いわけじゃないのにこの間はすごくイラつきましたし……彼女達にそんなの言えるわけ。」
「ふーん、なるほどね。言っちゃえばいいじゃない。」
「言っちゃえば……いい?」
「不知火だってあんな子達になるか不安だったんだ。それにホプスはキザっぽいのかわからんけどあたしゃ態度がムカつくんだよ。むしろ話聞いてフクスケちゃんが代わりに怒りぶつけて少し気持ち良いなんて思った。」
「……魔法少女の研究のために作られた子がまさか自分の世話係だったなんて。人間って本当の役割が分からないのに生きてる……それに対してクローンは作られる事自体に目的があるんですよね……。」
「天職だとかそういうの……人間は考えたこともないしね。実は歌が上手くて歌手になって売れてるかもしれないしね。」
「カヌーレさんが歌手かぁ。」
 なんだろう、ヴィジュアル系すぎる。もはやそれ以外の何者でもない。
「……想像つく。」
「そうかいそうかい……」
 そう言うとカヌーレさんは笑いながら、クローン達の元へと向かう。
「私にもスイカ分けてくれよー!」
「もちろんありますよー!」
 なんだか、変に考えてる自分が馬鹿らしいのかもな。カヌーレさんみたいに俺も楽しく生きてみようかな。
 ……それにしても、彼女達は子供達には刺激が強すぎるのかもしれない。制作者の趣味が全開に出ている。
「……はぁ」
 クローンじゃなくてもスタイルの良いカヌーレさんもいるんだ、傍から見たら美女5人が遊んでいるだけの綺麗な空間なんだよな……。
「おい!お前も来いよ!」
「……分かったよ、今行く。」
 セカンダに言われた通りに俺は彼女たちの元へ近づく。なんかこういうの男として悪くないな。
「せっかくだし……写真撮ろ?」
 断られるかもなんて考えているフォーサーがカメラを持ってくる。可愛いヤツめ……カメラは俺が構えてやる。
「んじゃ写真撮るぞー」
 ピントを合わせてみんなで並ぶ……。3……2……1。
 綺麗な夕焼けとも重なり良い写真が撮れた……ん?いやちょっと待てよ。この写真逆に最悪だ。
「……おいおいおいおい」
「どしたのいっちゃん?」
「俺達が夕陽の影になって……全員シークレットキャラみたいになってるんだけどぉぉぉ!?」
 俺にカメラのセンスはアホかと言われるぐらいに絶望的だったのだろう。夜になるにつれて俺はこの写真の暗さをよりいっそう実感した。

「……みんな寝ちゃってるわね。」
「そうですね……」
 帰り道、起きているのは俺とカヌーレさんの二人だった。
「ゲームをしてた頃は家庭環境で苦労をしてるなんて知らなかったしそれどころかこんな可愛い子たちと生きてきたなんてね……。」
「……いい人生ですよ。」
「なんだか嬉しそうね。」
「そ、そうですか?」
「最初はあんなに暗い表情してたのに。なんだか嬉しそうな表情してるわよ。」
 悩みを抱えての海だったが、嫌いじゃない一日だった。素直に言えば、楽しいなんて言葉が出るくらいには。
「ほら、顔に出てる。」
「ちょっとからかわないでくださいよ。」
「弟持ってたんだ、男の子の考えくらい分かるわ。」
「そ、そんなぁ……」
「私、この子達見てたらなんだか甘えさせたくなるのよ。有り余った母性本能って奴かな?」
「は、はぁ……」
「どういう反応よ……。まぁ彼女たちも君も私をお母さんみたいに頼りなさいな、一之輔。」
「……はい」
 少しばかり甘えてみてもいいかもな、そう思わせてしまうほど彼女は寛大な心で接してくれた。
「……何泣いてんだよ。もうすぐ着いちまうから起こしてあげな。ここで寝かせてたら体痛めるよ。」
 涙が出るほどの優しさだったのだろうか……。今までの悲惨な数年が報われるかのようなそんな気持ちになった。父が蒸発したと思えば数年経って限界を感じたかのようにして母が自殺……今思えば我ながら過酷である。
 でも彼女たちが支えてくれて、一緒に悩んで一緒に助け合える……良い関係だ。父が昔に言っていた言葉が幼い俺には分からなかったが今思い出してわかった気がする。

 ある日の出来事。
「おとうさん、僕ね……友達と喧嘩したの。あの子がいじめられるのが見てて嫌だったから!」
「……そうか。いいか、一之輔……よく覚えとけ、その子を守れたなら誇っていい、それは親切って奴だ。……まぁ、喧嘩をしたのは良くないが親切ってのは親に縁を切られないような人間の心から起きる行動だ、忘れるなよ。」
「わかんないけど……わかった!」
「はは……そうか。」
 
 お父さん、今何してるかな。ふと思った疑問は外の風と一緒にまるで存在がなかったように消えていく。
 
「もうすぐ着くぞー。」

 つづく。
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