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序章
残念受付嬢、不埒な輩を射貫いてみた。
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…………………………………………………………
胸の鼓動が、
まるで他人のモノのように、感じられた。
…………………………………………………………
ここは、全国高等学校総合体育大会……所謂インターハイの弓道女子団体決勝戦。
三年生の私にとっては、ここで敗退イコール引退……最後の試合となってしまうのだ。
両校が5人ずつ射場に並び、先頭から1本ずつ、一人4本の矢を約30メートル先の的に向かって射込んでいく。
そして、1チーム合計20本のうち、総的中数の高い方が、勝利を掴むことになるのだ。
私は、「落」と呼ばれている、5人のうち最後に矢を射つ役割を担っていた。
このポジションは、チームで一番安定した射をしている者、もしくは部の幹部役が任せられることが多い。
三役では無い「会計補佐」の私が落を引いている理由は、ここ数か月の間、練習を含めて的中率9割をキープしている、その安定感にあった。
事実、今日の決勝トーナメントも、ここまで3試合全て的中させていた。
その勢いは止まらず、決勝戦も3本を射って3本ともに中てており、累計15射15中。これから最後の16本目を迎えようとしていた。
決勝戦の相手は、昨年の全国大会で準優勝した強豪校。
前の4人が射ち終わった時点で、17対16と、1本のビハインドであった。
(私が最後に中てて、必ず『射詰め競射』に持ち込んでみせる!)
同中の場合は、5人が1本ずつ射って的中数を競う「射詰め競射」となる。
矢を番えて弓を構えた私の耳に、相手チームの最後の選手が放った矢が、的を外れるガキンという音が届いた。
(……よし、いける!)
すうっと深呼吸を入れた私は、全身に「気」を纏っているようなイメージを生み出した。
身体の表面に、陽炎のような薄白い煙が立ち上り、それらを弓を押している左手と、弦を引いている右手に収斂させていく。
通算的中率を、約1割跳ね上げたこの集中法は、試合本番においても存分に能力を発揮していた。
数値から来る自信なのか、決して的を外すことが出来ないこの大一番で、最終奥義が完成したような感覚を掴んでいる。
(キチンと狙いを合わせなくても、いつ弦を離しても、的を射抜いていくイメージしか見えない)
心の余裕が生まれた私は、手元にある矢がぼうっと鈍く光っていることに、全く気が付いていなかった。
(今だっ!)
無駄な力を加えることなく、スゥッという静かな動作で弦を離す。
閃光とともに、唸りを上げた光の矢が、30メートル先の霞的に襲い掛かった。
バシイイィンという心地良い的中音を耳にした私は、残心……射離したあとの姿勢を充分に保った。
弓道場の側で見守っているチームメイトから、的中したときに掛かる声出しが聞こえて来るのを待っていた。
(ひとつ、ふたつ……あれ?)
目を閉じて歓喜の声を待っていた私は、未だに聞こえて来ないその瞬間に、疑念を抱いた。
(言葉を失うほど、完璧な射だったのかしら)
首を捻ったそのとき、足元からカランという金属音が響いた。
「なっ、ッ!」
音に釣られて頭を下げた私は、そこにあったものに、鈍器で頭を殴られたような衝撃を受ける。
(どうして? 確かに私は、的を射抜いたはず……」
私の足元には、茜色のシャフトにまだら色の鷹羽をあしらった、特徴的な矢が転がっていた。
見間違えることのない、試合の時だけに使用している自分の矢である。
『●●高校落、外れ。試合終了……』
(どうしてなの……)
進行役の規定に基づいた抑揚の無い終了宣言も、放心状態となっていた私の耳には、全く届いていない。
そのとき、セカイがぐるりと反転した。
…………………………………………………………
ぱちりと目を開けた都下瑛里(みやしたえり)は、ベットの上に手を伸ばした。
バイブレーション機能が働いているため、枕元で暴れていたスマートフォンを取り上げアラームを停止したあと、ゆっくりと身体を起こしていく。
「また、同じユメか……」
先ほど迄の夢は、ここ暫く彼女を悩ませている黒歴史シリーズの1つだ。
先月あたりから、相当な頻度で現れるようになっていた。
黒歴史と言っても、実際に16射15中という成績を残した彼女を責めるチームメイトは、1人も居なかった。
むしろ、最後の射まで相手にリードを許してしまったことを謝られるまであった。
その一方で、彼女の頭を支配していたのは、あの『幻の矢』は何だったのか、ということだ。
競技後に試合場の的を確認したのだが、瑛里の矢は3本しか刺さっていなかった。
つまり、足元に落ちていたのは、間違いなく自分の矢であると証明されたことになる。
それでも瑛里は、あの最後の射で身体の中を駆け抜けた感覚を「ニセモノ」とは思えなかった。
(光の……矢……)
タイマーをセットしていた炊飯器が奏でる電子音に思考を遮断された彼女は、一度全てをリセットさせるべく、洗面台へと向かって行った。
…………………………………………………………
「お早う、都下さん」
「お早うございます」
正面玄関から入って来た初老の男性が手を挙げると同時に、瑛里はようやくサマになってきたお辞儀をして挨拶を返す。
胸元に付けたネームプレートの位置が、ややズレていたのでコソッと直していると、先ほどの男性がうんうんと首を縦に振っていた。
「すっかり受付嬢さんだねぇ。元上司として部下の垢抜けた姿を見るのは嬉しいよ」
「いえ、まだまだ総務部時代のクセが抜けていませんよ、課長」
前職場でお世話になった上司が目を細めている姿を見て、瑛里は少し気恥ずかしそうに俯いた。
彼女の会社における『受付嬢』のポジションは、他の企業とは微妙に異なっている。
見た目が華やか且つ上品さを備えていることは勿論だが、それ以上に求められるのが「職務遂行能力」であった。
これは先代の社長が定めたもので、役員を含めた営業職は、外の業務に全力投球を行う。
そして、会社を訪れる顧客は余程の事がない限り、受付に居る担当者が全ての業務を対応するのだ。
そして、瑛里の肩書は『営業部長代理』
まだ29歳でありながら、次長クラスの権限を有しているのだ。
当然、受付担当者になるためには、厳しい条件をクリアしなければならない。
所属している部署にて3年連続『特優』を取得、所属長の推薦を受けて初めて、年一回の選抜試験に臨む資格を得ることができる。
筆記試験、実地研修、適性検査をクリアしたひと握りの人間が、栄誉ある『受付担当者』の称号を得られるのだ。
そんな厳しい選抜試験をクリアした瑛里は、他者と明らかに差が付いている『ユニークスキル』を有していた。
「そう言えば、課長」
瑛里は一件思い出したことがあったので、元上司を呼び止めた。
「ん?」
「昨日お見えになられた丸●商事のN部長ですが、おそらく今日のお昼頃、例の新商品の件で催促の電話があると思われます」
その話を聞いた課長は、少し表情を曇らせながら答えた。
「またか、あの人結構しつこいから、色々準備しておかないとなぁ」
彼の嘆き声が終わりかけた瞬間、瑛里のノートパソコンにウインドウが立ち上がった。
「私もそう思いましたので、昨日商品開発部に依頼していた進捗レポートが、いま届きました。転送いたしますので、午前中にお目通しください」
「有難う、やっぱりキミは優秀な社員だね」
瑛里は、様々な手段を以って集めた事象を脳内で演算、最適解をシミュレーションする能力に長けていた。
それはまさに、この会社の受付担当者に求められているスキルと合致するものだったのだ。
「いえいえ、自分の役割を果たしただけですよ」
ややオーバー気味に手を振ったとき、瑛里の耳に「キャーッ!」という黄色い歓声が届いた。
目を向けると、すっかり顔馴染みになってしまった若い女性社員数人が、頬を染めながら遠巻きにこちらを見ている。
「うーん、相変わらずモテモテだね」
元上司の苦笑している姿を見て、彼女は心の中で大きくタメ息を吐いた。
…………………………………………………………
「ねえ、なんで私はモテないのかな?」
店員に生ビールのおかわりを注文しながら、瑛里はエイヒレを勢い良く奥歯で噛み千切った。
暫くの間、もぎゅもぎゅという感触に集中している。
「モテない?熱烈な親衛隊が居るエリちゃんらしからぬ発言だね」
カウンターの隣に座っていた、黒縁眼鏡を掛けた優男風の男性が、彼女の発言に首を傾げる。
「……では訂正。何故私は『異性に』モテないのかな?」
「うん、それは極めて簡単な質問だね」
そう言った優男は、得意気に答える。
「答えは、エリちゃんに声を掛けてくるあらゆる男性よりも、エリちゃんの方が『オトコマエ』だからだよ」
「だってしょうがないじゃない。寄ってくるオトコは皆んな、私のことを見た目で勘違いしているヤツばかりなのだから!」
立てば芍薬、座れば牡丹。
歩く姿は百合の花。
ぱっちりとした瞳に長い睫毛、愛嬌のある口元に昏黑のセミロングヘア。
女優やモデル顔負けの抜群なボディスタイルも相まって、完璧な美人受付嬢と受け止められている瑛里の元には、社内外問わず色々な男性からのアプローチがあった。
元々根が真面目な彼女は、そのひとつひとつに誠実な対応をしていたのだが……
「まず、ファーストデートが『トリ●』という時点で如何なものかと」
げんなりした口調で、優男は彼女を嗜めた。
「はぁ?何を言っているの!この『トリ●』はコストパフォーマンスが最高な、まさに庶民の味方じゃない!」
瑛里は空になったジョッキを、ダンッとテーブルに叩きつけた。
そう、いま2人が座っているこの店も、駅前ビルの中にある『トリ●』だった。
「でも、会って数分間でエリちゃんがいきなり本性を曝け出してしまったら、あまりのギャップに驚いて、みんな逃げてしまうよね?」
「むぅ……」
運ばれて来た生ビールを半分まで一気に空けた瑛里は、注文用のタブレットから新たな酒の肴を検索している。
ため息を吐いた彼は、毎回お馴染みとなった言葉を放った。
「そんなだから、みんなから『残念受付嬢』って言われてしまうんだよ」
数ヶ月が経って、瑛里に声を掛けてくる男性はひと通り落ち着いたが、結局誰一人交際に発展しなかった。
その理由も含めて『都下瑛里は観賞用』『残念な美人受付嬢』という噂が広まってしまったのだ。
今では、彼女の立ち居振る舞いに感銘を受けている数人の女性社員を除いて、瑛里と積極的に関わろうとする者は居なくなっていた。
「フン、早々に『独身貴族倶楽部』を卒業したアキ君には分からないよね。この裏切り者」
下顎を軽く突き出した変顔をしながら、瑛里は隣の男性……向日原彰宏(むこうばらあきひろ)に文句を言った。
彰宏は、遠縁の従兄弟にあたる。
お互いの自宅が近かったこともあって、学生時代は幼馴染の感覚で過ごしていた。
現在は同じ『受付担当者』として職務に当たっており、ストレスが溜まった瑛里を定期的にガス抜きする、という重要な役割を受け持っているのだ。
「大きくなったらエリちゃんと結婚するんだぁ、って言っていたのに。いつの間にか可愛い奥さんを捕まえて……悔しいったらありゃしないわ」
「そんな幼稚園のときの話を持ち出されても……ボクたちの結婚式では、あんなに祝福してくれたじゃない」
「心では泣いていたのよ。そして、そのウラでは『怨嗟の炎』が渦巻いていたわ」
「何それ怖っ!」
身を引いた彼の左手薬指に、一際キラリと光るリングを目にした瑛里は、「フン」とそっぽを向いて、グラスに口を付けた。
(私のことを本当に分かってくれるのは、アキ君ぐらいだったのになぁ……)
単純なタイミングの問題だったのか、はたまた想う気持ちの反比例なのか、誰よりもお互いを理解し合っていた2人は、一度も恋人関係にならなかった。
(既に手遅れだけれど、逃した魚は意外と大きかったのかも知れないなぁ)
「エリちゃん、本当に居ないの?気になるヒトとか」
「え、あー、どうだろう」
彰宏の問い掛けに即答しようとした瑛里は、何故か続く言葉を喉の奥から押し出せないでいた。
(うーん、何だろう。何か忘れているような……)
「……そろそろ、お開きかな」
黙り込んでしまった彼女を見て、彰宏は柔和な笑みを浮かべながらタブレットを取り上げると、会計アイコンをタンッとプッシュした。
…………………………………………………………
「アキ君、もう一軒行こう、もう一軒!」
居酒屋を出たところで、瑛里は目の前に建っているテナントビルの看板を指差しながら騒いでいた。
「ホント、面倒臭い昭和の上司みたいだなぁ……」
スマートフォンの画面を閉じた彰宏は、彼女に向かって手を合わせた。
「ごめんね、エリちゃん。最近どうも悪阻が酷いみたいでさ」
彼の配偶者である営業部の女性は、先月から産前休暇を取得していたのだ。
「……ん、分かった」
半分酔ったフリをして絡んでいたこともあり、あっさり平静を取り戻した瑛里は、ひらひらと手を振り歩き始めた。
「早くサオリちゃんのところに帰ってあげなよ。私はひとり寂しく、ゲームセンターでプチ不良ごっこでもしてから家に帰るので」
「うーん、久しぶりにエリちゃんの限界突破パンチングマシーンを見たかったけれど、今日は大人しく帰ることにするよ」
「今日も楽しかった」と手を上げて見送る彼に、瑛里は「こちらこそ」と言葉を返す。
それだけでは不十分かなと思った彼女は、今日一番の笑顔を向けて付け足した。
「大変なときに、サシ飲み付き合ってくれてありがとうね。おやすみ」
(さて……と)
ゲームセンターに入るなり声を掛けてきたチャラいナンパ男の前で、瑛里はパンチングマシーンのストアレコードをあっさり更新してみせた。
あまりの衝撃にパッドがまだギシギシ悲鳴を上げている中、件のチャラ男はいつの間にか姿を消していた。
(ガンシューティングという気分でも無いし……向こうのメダルゲームでも覗いてみようかな)
店舗の奥の方に向かって歩き出した瑛里は、ふと誰かに凝視されているような気配を感じた。
足を止めて、ゆっくりと辺りを見回していく。
(特に異常無し……ん?)
彼女の目は、一台のクレーンゲームへと向けられた。
それは、ごく普通のクレーンゲームだった。
天井から吊り下げられたぬいぐるみの紐を、アームの先に取り付けられたハサミを操作して切るタイプだ。
空間把握能力と、ギリギリまで強さを絞られたハサミのスイートスポットを見極める能力が求められる。
瑛里が注目したのは、吊り下げられたぬいぐるみの真ん中に居る、出自不明のぬいぐるみだった。
他のぬいぐるみは某テレビ番組のキャラクターだったり、人気アニメのマスコットだったりするのだが、その方面に理解のある彼女でも正体を掴めないものだった。
(うーん、あえて言えば、某名作劇場のマスコットをデフォルメした『あのコ』に似ているけれどなぁ……)
帽子や洋服を着込んでいるため、地肌の具合がよく分からない。
別のクレーンゲームを見に行こうとしたのだが、何かを訴えかけるような視線が更に強くなったので、瑛里は足を止めて件のぬいぐるみを観察した。
「なるほど、全部黒目だからどの位置でも目が合っているように感じたのかな」
漆黒の瞳が(早く取って取って)とせがんでいるように見えたため、瑛里はトートバッグから小銭入れを取り出して、コイン投入口に入れた。
アームに電気が入り、フレームが七色に光り始める。
「ええっと、こんなもの、かな?」
目視でおおよその位置を把握した彼女は、レバーの操作を止めると、決定ボタンをタンッと叩く。
アームに取り付けられたハサミが、ぬいぐるみを吊っている紐に目掛けて進んでいく。
(ありゃ、少しズレたかな)
ハサミの動いて行く方向が若干紐からズレていたので、彼女は早々と次の挑戦へと切り替えて、小銭入れの中から100円玉を3枚探し当てた。
そのとき……
シャキン!
ゴトッ!
(……えっ?!)
ほんの少し目を離した瞬間、紐が切れたぬいぐるみが、落とし口の中に転がり落ちていた。
「嘘っ」
慌てて取り出し口を開けた瑛里は、うつ伏せに倒れているぬいぐるみを取り出す。
「……かっ、可愛い」
なんとも愛嬌のある少し垂れ目気味の大きな瞳を見ていると、彼女はどんどん愛着が湧いて来た。
大きさもバレーボールほどで、ちょうど良い抱き心地だった。
気を遣って持ち帰り用のビニール袋を渡そうとした若い女性店員に断りを入れた瑛里は、ぬいぐるみをぎゅうっと抱きしめたままゲームセンターを後にした。
…………………………………………………………
昔から、お気に入りの人形やぬいぐるみに名前を付けていた瑛里。
「君の名前は……よし、『エリカル』にしよう」
そして、特に思い入れが強いものには、自分の「エリ」という名前を含めていたのだ。
後半の2文字は、某名作劇場から成るものだったが、深く触れないことにしよう。
「さあエリカル、お家に帰りましょう」
上機嫌で歩みを早めた彼女の耳に、「ん……いゃっ」という、女性のくぐもった悲鳴が届いた。
「!」
眉を顰めた彼女は、声が聞こえて来た方向に目を向けると同時に、ポケットからスマートフォンを取り出し、いつでも110番を押せるように構える。
「……チッ、大人しくしろッ……」
女性の悲鳴に混じって、やや苛立った男性の声が聞こえた瞬間、瑛里はスマートフォンの緊急通報ボタンを押下した。
電話に出た警察のオペレーターに現在地を伝えると、警ら中の警察官が到着するまで、5分程度掛かるとのことだった。
(マズいわね)
届いて来た声からすると、事態は非常に切迫しているようだ。
繁華街から二筋ほど入った『裏小路』と呼ばれているゾーンの角から、瑛里はそうっと顔を覗かせる。
(あの娘は……)
どこかで聞き覚えのある声だなと思ったら、悲鳴の主である若い女性は、瑛里の親衛隊グループに所属している1人であった。
まだ幼さを残した顔が、恐怖で歪んでいる。
鋭利な刃物で切られたのか、彼女のブラウスとスカートは大きく裂けており、その下にある肌着が露出していた。
腰から順に目線を移して行くと、太腿の辺りで一瞬ギラリと輝くものがあった。
(……くっ)
自動車のサーチライトが、裏小路に差し込んだ際に出来る明かりを元に、瑛里は女性を拘束している相手を観察した。
青ざめている彼女の背後から覆い被さるように、大柄な男性が身体を押し付けている。
左手にはアーミーナイフを持っており、彼女の左太腿をストッキングの上から弄ぶように細かく切り刻み続けていた。
そして、右腕は彼女の首元をガッチリ押さえながら、左の乳房を下着の上から鷲掴みにしている。
相当興奮しているのか、大量の唾液が男の口元から女性の首を伝って、露出している胸元へと流れ込んでいた。
(このままではマズい、何とかしないと……)
ただ漫然と警察の到着を待っていた場合、取り返しのつかない事態となることは明白だった。
しかし、多少武術の心得があるとはいえ、刃物を持った巨漢の男を相手に素手で立ち向かうほど、無謀な賭けに出ることは出来なかった。
(得物が欲しい。何か無いのか……)
そのとき、瑛里が抱えているぬいぐるみ(エリカル)が、ブルッと小さく振動した。
(え、もしかして怖気付いているの?いいえ、これは武者震いなんだから……)
エリカルの振動を、自らの身体が震えているものと錯覚した瑛里。
気合いを入れ直そうと頬を軽く叩いたとき、視線の先に「あるモノ」を発見した。
それは、粗大ゴミ廃棄場近くの電柱に立てかけられた、破魔弓と矢のセットだった。
観賞用として床の間に飾ってあったものが、役目を果たしたあと廃棄されたのだろうか。
理由は不明だが、いまの瑛里にとってはこの上なく好都合なものであった。
(あのタイプは……射ったことがある!)
さりげなく過去の黒歴史を曝け出した瑛里は、猛ダッシュで破魔弓へと向かっていく。
弓を掴んだ瞬間、彼女の全身に練りに練り込まれた濃厚な気が流れ込んで来た。
現役時代から相当なブランクはあったが、今この瞬間は、不思議とマトを外す感覚は無かった。
いつ矢を番えたのかも、記憶に無い。
瞬きをひとつ挟んだあと、狙いを付けた彼女の瞳は紅色に染まっていた。
そして、白銀に輝く光の炎を纏った一本の矢が、下卑た巨漢の頭部を真っ直ぐに捉えている。
『……全てを……射貫け……』
彼女の魂に、強烈に背中を押す重厚なメッセージが響いてくる。
「喰らえッ!」
ギリギリと引き絞った破魔弓の弦が臨界点に達した瞬間、瑛里はフウっと軽く吐息を挟みながら射離した。
白銀光の矢は、唸りを上げながら巨漢に迫っていき、一気にそれを貫く。
ビクンと大きく震えた男は、次の瞬間アーミーナイフを地面にカランと落としたあと、スローモーションのように後方へと倒れ込んで行った。
…………………………………………………………
突然巨漢から腕の拘束を解かれた女性は、前方へと崩れ落ちていく。
駆けつけた瑛里が、手にしていた自分のジャケットで、彼女の身体を包み込んだ。
恐怖のあまり、気を失ってしまったのだろう。
苦悶の表情を浮かべて目を閉じているが、呼吸と脈拍は正常の範囲と思われた。
(彼女は警察にお願いするとして、問題は……)
瑛里は、目の前に倒れている男の方に向き直った。
上半身は暗闇に隠れているが、迷彩服のズボンとコンバットブーツはピクリとも動いていない。
下顎に左手を当て、うーむと唸っていた瑛里は、おもむろにスマートフォンを取り出すと、ブラウザの検索サイトを立ち上げた。
「『強姦魔、死体、処理方法』……検索、っと」
「いやいや、死んでないカル!」
突然、瑛里の胸元からキレの良いツッコミと、ポフンという軽い衝撃を感じた。
「『心矢』に魂を貫かれた者は、『気精』が回復するまで、一昼夜ほど動けなくなるだけカル」
「えっ何?『シンヤ』『キセイ』?」
予想外の出来事と謎ワードの連発に、瑛里の処理能力が全く追い付いていない。
いや、ここに来て振り返ると、巨漢に立ち向かおうとしたときから、彼女の思考は少しずつズレてきていたのかも知れなかった。
「まったく、ここまでエリーがド天然だったとは……先が思いやられるカル」
彼女の胸元から、ひょいっと地面に降り立った『エリカル』は、その場でくるりとひと回りすると、ムンとひと伸びして胸を張った。
「もっとも、潜在スキルに関してはこちらの見立て通り……いや、それ以上であることが分かったので、良しとするカル」
「な……何で、ぬいぐるみが動いて喋っているの?!」
口をパクパクさせていた瑛里は、ようやく思考が追い付いてきたので、言葉を纏めながらエリカルに問い掛けた。
「何でって、わたしはエリーが思っているような『愛玩人形』ではないからカルよ」
そう言ったあと、自分の言葉が足りていないことに気が付いたのか、少し首を傾げて付け加える。
「正確には、愛玩人形を『憑代』にしているカルね」
「『ヨリシロ』って……じゃあ、エリカルは一体どこから来たの?」
「さあて、どこでしょうカル?」
「んもう、はぐらかさないで!」
更に追求しようとした瑛里は、エリカルの首元に掛かったリボンが、カラータイマーのように鈍く瞬いていることに気が付いた。
「ん……そろそろ、タイムリミットみたいカルね」
こちらもその点滅光に気が付いたエリカルは、オーバーオールのポケットから、キャンディが一杯詰まっていそうな『丸い平缶』を取り出した。
「エリー、ここを見るカル」
「えっ、なに?」
ようやく大通りからこちらに向かって走って来た2人の警察官に気を取られていた瑛里は、エリカルがずいっと差し出した平缶に目を向ける。
反射的に平缶を凝視した彼女の様子を確認したエリカルは、ニヤリと笑うと上蓋をグリっと捻って開けた。
次の瞬間、平缶を中心とした半径数メートルほどの空間が、みるみるうちに虹色の光の中へと包まれていった。
…………………………………………………………
「えっ、何これ?!」
事態を飲み込めていない瑛里は、突如奪われた視界を取り戻すべく、両手を左右に広げながらそろそろと歩き始めた。
数歩進んだところで、手のひらにザリッという感触を得た彼女。
身体を近付けて、その物体を確かめる。
それは、不揃いな土レンガが数多く積み重ねられた壁であった。
(こんな場所、裏小路にあったかな?)
記憶を辿ってみたが、思い当たる施設は思い浮かばなかった。
(うーん、思ったより移動してしまったのかなぁ)
悩んでいても、結論が出ないと考えた彼女は、この現象に至った理由を知っている者……エリカルを探すことにした。
足を進めるにつれて、周囲に漂っていた虹色の霧煙がスゥッと晴れていく。
続いて、ローヒールで踏みしめている地面が、アスファルトから踏み固められた土の道に変わっていることに気が付いたが、彼女はもう驚かなかった。
欲しいのは、真実のみ。
「エリー、こっちカル!」
霧煙が完全に晴れるのと、エリカルの声が耳に届いたのは、ほぼ同時だった。
彼女は改めて、自分がどこに立っているのかを確かめる。
果たしてそれは、瑛里の想定を遥かに超えるものであった。
雲ひとつない、青い空。
その下に広がっていたのは、石組みの城壁に囲まれた、中世風の街並みであった。
「ようこそ、『マテリアルワールド』の入り口へ!」
『ボウ・アンド・スクレープ』と呼ばれる、貴族社会特有の慇懃なお辞儀をしたエリカルは、戸惑う彼女の手を取ると、新しいセカイへと誘うような口調で高らかに宣言した。
「『伝説の弓遣い(アーチャー)』エリー・ミヤシタ。私たちは、このセカイの真の護り手である貴女を、心より歓迎します!」
つづく
胸の鼓動が、
まるで他人のモノのように、感じられた。
…………………………………………………………
ここは、全国高等学校総合体育大会……所謂インターハイの弓道女子団体決勝戦。
三年生の私にとっては、ここで敗退イコール引退……最後の試合となってしまうのだ。
両校が5人ずつ射場に並び、先頭から1本ずつ、一人4本の矢を約30メートル先の的に向かって射込んでいく。
そして、1チーム合計20本のうち、総的中数の高い方が、勝利を掴むことになるのだ。
私は、「落」と呼ばれている、5人のうち最後に矢を射つ役割を担っていた。
このポジションは、チームで一番安定した射をしている者、もしくは部の幹部役が任せられることが多い。
三役では無い「会計補佐」の私が落を引いている理由は、ここ数か月の間、練習を含めて的中率9割をキープしている、その安定感にあった。
事実、今日の決勝トーナメントも、ここまで3試合全て的中させていた。
その勢いは止まらず、決勝戦も3本を射って3本ともに中てており、累計15射15中。これから最後の16本目を迎えようとしていた。
決勝戦の相手は、昨年の全国大会で準優勝した強豪校。
前の4人が射ち終わった時点で、17対16と、1本のビハインドであった。
(私が最後に中てて、必ず『射詰め競射』に持ち込んでみせる!)
同中の場合は、5人が1本ずつ射って的中数を競う「射詰め競射」となる。
矢を番えて弓を構えた私の耳に、相手チームの最後の選手が放った矢が、的を外れるガキンという音が届いた。
(……よし、いける!)
すうっと深呼吸を入れた私は、全身に「気」を纏っているようなイメージを生み出した。
身体の表面に、陽炎のような薄白い煙が立ち上り、それらを弓を押している左手と、弦を引いている右手に収斂させていく。
通算的中率を、約1割跳ね上げたこの集中法は、試合本番においても存分に能力を発揮していた。
数値から来る自信なのか、決して的を外すことが出来ないこの大一番で、最終奥義が完成したような感覚を掴んでいる。
(キチンと狙いを合わせなくても、いつ弦を離しても、的を射抜いていくイメージしか見えない)
心の余裕が生まれた私は、手元にある矢がぼうっと鈍く光っていることに、全く気が付いていなかった。
(今だっ!)
無駄な力を加えることなく、スゥッという静かな動作で弦を離す。
閃光とともに、唸りを上げた光の矢が、30メートル先の霞的に襲い掛かった。
バシイイィンという心地良い的中音を耳にした私は、残心……射離したあとの姿勢を充分に保った。
弓道場の側で見守っているチームメイトから、的中したときに掛かる声出しが聞こえて来るのを待っていた。
(ひとつ、ふたつ……あれ?)
目を閉じて歓喜の声を待っていた私は、未だに聞こえて来ないその瞬間に、疑念を抱いた。
(言葉を失うほど、完璧な射だったのかしら)
首を捻ったそのとき、足元からカランという金属音が響いた。
「なっ、ッ!」
音に釣られて頭を下げた私は、そこにあったものに、鈍器で頭を殴られたような衝撃を受ける。
(どうして? 確かに私は、的を射抜いたはず……」
私の足元には、茜色のシャフトにまだら色の鷹羽をあしらった、特徴的な矢が転がっていた。
見間違えることのない、試合の時だけに使用している自分の矢である。
『●●高校落、外れ。試合終了……』
(どうしてなの……)
進行役の規定に基づいた抑揚の無い終了宣言も、放心状態となっていた私の耳には、全く届いていない。
そのとき、セカイがぐるりと反転した。
…………………………………………………………
ぱちりと目を開けた都下瑛里(みやしたえり)は、ベットの上に手を伸ばした。
バイブレーション機能が働いているため、枕元で暴れていたスマートフォンを取り上げアラームを停止したあと、ゆっくりと身体を起こしていく。
「また、同じユメか……」
先ほど迄の夢は、ここ暫く彼女を悩ませている黒歴史シリーズの1つだ。
先月あたりから、相当な頻度で現れるようになっていた。
黒歴史と言っても、実際に16射15中という成績を残した彼女を責めるチームメイトは、1人も居なかった。
むしろ、最後の射まで相手にリードを許してしまったことを謝られるまであった。
その一方で、彼女の頭を支配していたのは、あの『幻の矢』は何だったのか、ということだ。
競技後に試合場の的を確認したのだが、瑛里の矢は3本しか刺さっていなかった。
つまり、足元に落ちていたのは、間違いなく自分の矢であると証明されたことになる。
それでも瑛里は、あの最後の射で身体の中を駆け抜けた感覚を「ニセモノ」とは思えなかった。
(光の……矢……)
タイマーをセットしていた炊飯器が奏でる電子音に思考を遮断された彼女は、一度全てをリセットさせるべく、洗面台へと向かって行った。
…………………………………………………………
「お早う、都下さん」
「お早うございます」
正面玄関から入って来た初老の男性が手を挙げると同時に、瑛里はようやくサマになってきたお辞儀をして挨拶を返す。
胸元に付けたネームプレートの位置が、ややズレていたのでコソッと直していると、先ほどの男性がうんうんと首を縦に振っていた。
「すっかり受付嬢さんだねぇ。元上司として部下の垢抜けた姿を見るのは嬉しいよ」
「いえ、まだまだ総務部時代のクセが抜けていませんよ、課長」
前職場でお世話になった上司が目を細めている姿を見て、瑛里は少し気恥ずかしそうに俯いた。
彼女の会社における『受付嬢』のポジションは、他の企業とは微妙に異なっている。
見た目が華やか且つ上品さを備えていることは勿論だが、それ以上に求められるのが「職務遂行能力」であった。
これは先代の社長が定めたもので、役員を含めた営業職は、外の業務に全力投球を行う。
そして、会社を訪れる顧客は余程の事がない限り、受付に居る担当者が全ての業務を対応するのだ。
そして、瑛里の肩書は『営業部長代理』
まだ29歳でありながら、次長クラスの権限を有しているのだ。
当然、受付担当者になるためには、厳しい条件をクリアしなければならない。
所属している部署にて3年連続『特優』を取得、所属長の推薦を受けて初めて、年一回の選抜試験に臨む資格を得ることができる。
筆記試験、実地研修、適性検査をクリアしたひと握りの人間が、栄誉ある『受付担当者』の称号を得られるのだ。
そんな厳しい選抜試験をクリアした瑛里は、他者と明らかに差が付いている『ユニークスキル』を有していた。
「そう言えば、課長」
瑛里は一件思い出したことがあったので、元上司を呼び止めた。
「ん?」
「昨日お見えになられた丸●商事のN部長ですが、おそらく今日のお昼頃、例の新商品の件で催促の電話があると思われます」
その話を聞いた課長は、少し表情を曇らせながら答えた。
「またか、あの人結構しつこいから、色々準備しておかないとなぁ」
彼の嘆き声が終わりかけた瞬間、瑛里のノートパソコンにウインドウが立ち上がった。
「私もそう思いましたので、昨日商品開発部に依頼していた進捗レポートが、いま届きました。転送いたしますので、午前中にお目通しください」
「有難う、やっぱりキミは優秀な社員だね」
瑛里は、様々な手段を以って集めた事象を脳内で演算、最適解をシミュレーションする能力に長けていた。
それはまさに、この会社の受付担当者に求められているスキルと合致するものだったのだ。
「いえいえ、自分の役割を果たしただけですよ」
ややオーバー気味に手を振ったとき、瑛里の耳に「キャーッ!」という黄色い歓声が届いた。
目を向けると、すっかり顔馴染みになってしまった若い女性社員数人が、頬を染めながら遠巻きにこちらを見ている。
「うーん、相変わらずモテモテだね」
元上司の苦笑している姿を見て、彼女は心の中で大きくタメ息を吐いた。
…………………………………………………………
「ねえ、なんで私はモテないのかな?」
店員に生ビールのおかわりを注文しながら、瑛里はエイヒレを勢い良く奥歯で噛み千切った。
暫くの間、もぎゅもぎゅという感触に集中している。
「モテない?熱烈な親衛隊が居るエリちゃんらしからぬ発言だね」
カウンターの隣に座っていた、黒縁眼鏡を掛けた優男風の男性が、彼女の発言に首を傾げる。
「……では訂正。何故私は『異性に』モテないのかな?」
「うん、それは極めて簡単な質問だね」
そう言った優男は、得意気に答える。
「答えは、エリちゃんに声を掛けてくるあらゆる男性よりも、エリちゃんの方が『オトコマエ』だからだよ」
「だってしょうがないじゃない。寄ってくるオトコは皆んな、私のことを見た目で勘違いしているヤツばかりなのだから!」
立てば芍薬、座れば牡丹。
歩く姿は百合の花。
ぱっちりとした瞳に長い睫毛、愛嬌のある口元に昏黑のセミロングヘア。
女優やモデル顔負けの抜群なボディスタイルも相まって、完璧な美人受付嬢と受け止められている瑛里の元には、社内外問わず色々な男性からのアプローチがあった。
元々根が真面目な彼女は、そのひとつひとつに誠実な対応をしていたのだが……
「まず、ファーストデートが『トリ●』という時点で如何なものかと」
げんなりした口調で、優男は彼女を嗜めた。
「はぁ?何を言っているの!この『トリ●』はコストパフォーマンスが最高な、まさに庶民の味方じゃない!」
瑛里は空になったジョッキを、ダンッとテーブルに叩きつけた。
そう、いま2人が座っているこの店も、駅前ビルの中にある『トリ●』だった。
「でも、会って数分間でエリちゃんがいきなり本性を曝け出してしまったら、あまりのギャップに驚いて、みんな逃げてしまうよね?」
「むぅ……」
運ばれて来た生ビールを半分まで一気に空けた瑛里は、注文用のタブレットから新たな酒の肴を検索している。
ため息を吐いた彼は、毎回お馴染みとなった言葉を放った。
「そんなだから、みんなから『残念受付嬢』って言われてしまうんだよ」
数ヶ月が経って、瑛里に声を掛けてくる男性はひと通り落ち着いたが、結局誰一人交際に発展しなかった。
その理由も含めて『都下瑛里は観賞用』『残念な美人受付嬢』という噂が広まってしまったのだ。
今では、彼女の立ち居振る舞いに感銘を受けている数人の女性社員を除いて、瑛里と積極的に関わろうとする者は居なくなっていた。
「フン、早々に『独身貴族倶楽部』を卒業したアキ君には分からないよね。この裏切り者」
下顎を軽く突き出した変顔をしながら、瑛里は隣の男性……向日原彰宏(むこうばらあきひろ)に文句を言った。
彰宏は、遠縁の従兄弟にあたる。
お互いの自宅が近かったこともあって、学生時代は幼馴染の感覚で過ごしていた。
現在は同じ『受付担当者』として職務に当たっており、ストレスが溜まった瑛里を定期的にガス抜きする、という重要な役割を受け持っているのだ。
「大きくなったらエリちゃんと結婚するんだぁ、って言っていたのに。いつの間にか可愛い奥さんを捕まえて……悔しいったらありゃしないわ」
「そんな幼稚園のときの話を持ち出されても……ボクたちの結婚式では、あんなに祝福してくれたじゃない」
「心では泣いていたのよ。そして、そのウラでは『怨嗟の炎』が渦巻いていたわ」
「何それ怖っ!」
身を引いた彼の左手薬指に、一際キラリと光るリングを目にした瑛里は、「フン」とそっぽを向いて、グラスに口を付けた。
(私のことを本当に分かってくれるのは、アキ君ぐらいだったのになぁ……)
単純なタイミングの問題だったのか、はたまた想う気持ちの反比例なのか、誰よりもお互いを理解し合っていた2人は、一度も恋人関係にならなかった。
(既に手遅れだけれど、逃した魚は意外と大きかったのかも知れないなぁ)
「エリちゃん、本当に居ないの?気になるヒトとか」
「え、あー、どうだろう」
彰宏の問い掛けに即答しようとした瑛里は、何故か続く言葉を喉の奥から押し出せないでいた。
(うーん、何だろう。何か忘れているような……)
「……そろそろ、お開きかな」
黙り込んでしまった彼女を見て、彰宏は柔和な笑みを浮かべながらタブレットを取り上げると、会計アイコンをタンッとプッシュした。
…………………………………………………………
「アキ君、もう一軒行こう、もう一軒!」
居酒屋を出たところで、瑛里は目の前に建っているテナントビルの看板を指差しながら騒いでいた。
「ホント、面倒臭い昭和の上司みたいだなぁ……」
スマートフォンの画面を閉じた彰宏は、彼女に向かって手を合わせた。
「ごめんね、エリちゃん。最近どうも悪阻が酷いみたいでさ」
彼の配偶者である営業部の女性は、先月から産前休暇を取得していたのだ。
「……ん、分かった」
半分酔ったフリをして絡んでいたこともあり、あっさり平静を取り戻した瑛里は、ひらひらと手を振り歩き始めた。
「早くサオリちゃんのところに帰ってあげなよ。私はひとり寂しく、ゲームセンターでプチ不良ごっこでもしてから家に帰るので」
「うーん、久しぶりにエリちゃんの限界突破パンチングマシーンを見たかったけれど、今日は大人しく帰ることにするよ」
「今日も楽しかった」と手を上げて見送る彼に、瑛里は「こちらこそ」と言葉を返す。
それだけでは不十分かなと思った彼女は、今日一番の笑顔を向けて付け足した。
「大変なときに、サシ飲み付き合ってくれてありがとうね。おやすみ」
(さて……と)
ゲームセンターに入るなり声を掛けてきたチャラいナンパ男の前で、瑛里はパンチングマシーンのストアレコードをあっさり更新してみせた。
あまりの衝撃にパッドがまだギシギシ悲鳴を上げている中、件のチャラ男はいつの間にか姿を消していた。
(ガンシューティングという気分でも無いし……向こうのメダルゲームでも覗いてみようかな)
店舗の奥の方に向かって歩き出した瑛里は、ふと誰かに凝視されているような気配を感じた。
足を止めて、ゆっくりと辺りを見回していく。
(特に異常無し……ん?)
彼女の目は、一台のクレーンゲームへと向けられた。
それは、ごく普通のクレーンゲームだった。
天井から吊り下げられたぬいぐるみの紐を、アームの先に取り付けられたハサミを操作して切るタイプだ。
空間把握能力と、ギリギリまで強さを絞られたハサミのスイートスポットを見極める能力が求められる。
瑛里が注目したのは、吊り下げられたぬいぐるみの真ん中に居る、出自不明のぬいぐるみだった。
他のぬいぐるみは某テレビ番組のキャラクターだったり、人気アニメのマスコットだったりするのだが、その方面に理解のある彼女でも正体を掴めないものだった。
(うーん、あえて言えば、某名作劇場のマスコットをデフォルメした『あのコ』に似ているけれどなぁ……)
帽子や洋服を着込んでいるため、地肌の具合がよく分からない。
別のクレーンゲームを見に行こうとしたのだが、何かを訴えかけるような視線が更に強くなったので、瑛里は足を止めて件のぬいぐるみを観察した。
「なるほど、全部黒目だからどの位置でも目が合っているように感じたのかな」
漆黒の瞳が(早く取って取って)とせがんでいるように見えたため、瑛里はトートバッグから小銭入れを取り出して、コイン投入口に入れた。
アームに電気が入り、フレームが七色に光り始める。
「ええっと、こんなもの、かな?」
目視でおおよその位置を把握した彼女は、レバーの操作を止めると、決定ボタンをタンッと叩く。
アームに取り付けられたハサミが、ぬいぐるみを吊っている紐に目掛けて進んでいく。
(ありゃ、少しズレたかな)
ハサミの動いて行く方向が若干紐からズレていたので、彼女は早々と次の挑戦へと切り替えて、小銭入れの中から100円玉を3枚探し当てた。
そのとき……
シャキン!
ゴトッ!
(……えっ?!)
ほんの少し目を離した瞬間、紐が切れたぬいぐるみが、落とし口の中に転がり落ちていた。
「嘘っ」
慌てて取り出し口を開けた瑛里は、うつ伏せに倒れているぬいぐるみを取り出す。
「……かっ、可愛い」
なんとも愛嬌のある少し垂れ目気味の大きな瞳を見ていると、彼女はどんどん愛着が湧いて来た。
大きさもバレーボールほどで、ちょうど良い抱き心地だった。
気を遣って持ち帰り用のビニール袋を渡そうとした若い女性店員に断りを入れた瑛里は、ぬいぐるみをぎゅうっと抱きしめたままゲームセンターを後にした。
…………………………………………………………
昔から、お気に入りの人形やぬいぐるみに名前を付けていた瑛里。
「君の名前は……よし、『エリカル』にしよう」
そして、特に思い入れが強いものには、自分の「エリ」という名前を含めていたのだ。
後半の2文字は、某名作劇場から成るものだったが、深く触れないことにしよう。
「さあエリカル、お家に帰りましょう」
上機嫌で歩みを早めた彼女の耳に、「ん……いゃっ」という、女性のくぐもった悲鳴が届いた。
「!」
眉を顰めた彼女は、声が聞こえて来た方向に目を向けると同時に、ポケットからスマートフォンを取り出し、いつでも110番を押せるように構える。
「……チッ、大人しくしろッ……」
女性の悲鳴に混じって、やや苛立った男性の声が聞こえた瞬間、瑛里はスマートフォンの緊急通報ボタンを押下した。
電話に出た警察のオペレーターに現在地を伝えると、警ら中の警察官が到着するまで、5分程度掛かるとのことだった。
(マズいわね)
届いて来た声からすると、事態は非常に切迫しているようだ。
繁華街から二筋ほど入った『裏小路』と呼ばれているゾーンの角から、瑛里はそうっと顔を覗かせる。
(あの娘は……)
どこかで聞き覚えのある声だなと思ったら、悲鳴の主である若い女性は、瑛里の親衛隊グループに所属している1人であった。
まだ幼さを残した顔が、恐怖で歪んでいる。
鋭利な刃物で切られたのか、彼女のブラウスとスカートは大きく裂けており、その下にある肌着が露出していた。
腰から順に目線を移して行くと、太腿の辺りで一瞬ギラリと輝くものがあった。
(……くっ)
自動車のサーチライトが、裏小路に差し込んだ際に出来る明かりを元に、瑛里は女性を拘束している相手を観察した。
青ざめている彼女の背後から覆い被さるように、大柄な男性が身体を押し付けている。
左手にはアーミーナイフを持っており、彼女の左太腿をストッキングの上から弄ぶように細かく切り刻み続けていた。
そして、右腕は彼女の首元をガッチリ押さえながら、左の乳房を下着の上から鷲掴みにしている。
相当興奮しているのか、大量の唾液が男の口元から女性の首を伝って、露出している胸元へと流れ込んでいた。
(このままではマズい、何とかしないと……)
ただ漫然と警察の到着を待っていた場合、取り返しのつかない事態となることは明白だった。
しかし、多少武術の心得があるとはいえ、刃物を持った巨漢の男を相手に素手で立ち向かうほど、無謀な賭けに出ることは出来なかった。
(得物が欲しい。何か無いのか……)
そのとき、瑛里が抱えているぬいぐるみ(エリカル)が、ブルッと小さく振動した。
(え、もしかして怖気付いているの?いいえ、これは武者震いなんだから……)
エリカルの振動を、自らの身体が震えているものと錯覚した瑛里。
気合いを入れ直そうと頬を軽く叩いたとき、視線の先に「あるモノ」を発見した。
それは、粗大ゴミ廃棄場近くの電柱に立てかけられた、破魔弓と矢のセットだった。
観賞用として床の間に飾ってあったものが、役目を果たしたあと廃棄されたのだろうか。
理由は不明だが、いまの瑛里にとってはこの上なく好都合なものであった。
(あのタイプは……射ったことがある!)
さりげなく過去の黒歴史を曝け出した瑛里は、猛ダッシュで破魔弓へと向かっていく。
弓を掴んだ瞬間、彼女の全身に練りに練り込まれた濃厚な気が流れ込んで来た。
現役時代から相当なブランクはあったが、今この瞬間は、不思議とマトを外す感覚は無かった。
いつ矢を番えたのかも、記憶に無い。
瞬きをひとつ挟んだあと、狙いを付けた彼女の瞳は紅色に染まっていた。
そして、白銀に輝く光の炎を纏った一本の矢が、下卑た巨漢の頭部を真っ直ぐに捉えている。
『……全てを……射貫け……』
彼女の魂に、強烈に背中を押す重厚なメッセージが響いてくる。
「喰らえッ!」
ギリギリと引き絞った破魔弓の弦が臨界点に達した瞬間、瑛里はフウっと軽く吐息を挟みながら射離した。
白銀光の矢は、唸りを上げながら巨漢に迫っていき、一気にそれを貫く。
ビクンと大きく震えた男は、次の瞬間アーミーナイフを地面にカランと落としたあと、スローモーションのように後方へと倒れ込んで行った。
…………………………………………………………
突然巨漢から腕の拘束を解かれた女性は、前方へと崩れ落ちていく。
駆けつけた瑛里が、手にしていた自分のジャケットで、彼女の身体を包み込んだ。
恐怖のあまり、気を失ってしまったのだろう。
苦悶の表情を浮かべて目を閉じているが、呼吸と脈拍は正常の範囲と思われた。
(彼女は警察にお願いするとして、問題は……)
瑛里は、目の前に倒れている男の方に向き直った。
上半身は暗闇に隠れているが、迷彩服のズボンとコンバットブーツはピクリとも動いていない。
下顎に左手を当て、うーむと唸っていた瑛里は、おもむろにスマートフォンを取り出すと、ブラウザの検索サイトを立ち上げた。
「『強姦魔、死体、処理方法』……検索、っと」
「いやいや、死んでないカル!」
突然、瑛里の胸元からキレの良いツッコミと、ポフンという軽い衝撃を感じた。
「『心矢』に魂を貫かれた者は、『気精』が回復するまで、一昼夜ほど動けなくなるだけカル」
「えっ何?『シンヤ』『キセイ』?」
予想外の出来事と謎ワードの連発に、瑛里の処理能力が全く追い付いていない。
いや、ここに来て振り返ると、巨漢に立ち向かおうとしたときから、彼女の思考は少しずつズレてきていたのかも知れなかった。
「まったく、ここまでエリーがド天然だったとは……先が思いやられるカル」
彼女の胸元から、ひょいっと地面に降り立った『エリカル』は、その場でくるりとひと回りすると、ムンとひと伸びして胸を張った。
「もっとも、潜在スキルに関してはこちらの見立て通り……いや、それ以上であることが分かったので、良しとするカル」
「な……何で、ぬいぐるみが動いて喋っているの?!」
口をパクパクさせていた瑛里は、ようやく思考が追い付いてきたので、言葉を纏めながらエリカルに問い掛けた。
「何でって、わたしはエリーが思っているような『愛玩人形』ではないからカルよ」
そう言ったあと、自分の言葉が足りていないことに気が付いたのか、少し首を傾げて付け加える。
「正確には、愛玩人形を『憑代』にしているカルね」
「『ヨリシロ』って……じゃあ、エリカルは一体どこから来たの?」
「さあて、どこでしょうカル?」
「んもう、はぐらかさないで!」
更に追求しようとした瑛里は、エリカルの首元に掛かったリボンが、カラータイマーのように鈍く瞬いていることに気が付いた。
「ん……そろそろ、タイムリミットみたいカルね」
こちらもその点滅光に気が付いたエリカルは、オーバーオールのポケットから、キャンディが一杯詰まっていそうな『丸い平缶』を取り出した。
「エリー、ここを見るカル」
「えっ、なに?」
ようやく大通りからこちらに向かって走って来た2人の警察官に気を取られていた瑛里は、エリカルがずいっと差し出した平缶に目を向ける。
反射的に平缶を凝視した彼女の様子を確認したエリカルは、ニヤリと笑うと上蓋をグリっと捻って開けた。
次の瞬間、平缶を中心とした半径数メートルほどの空間が、みるみるうちに虹色の光の中へと包まれていった。
…………………………………………………………
「えっ、何これ?!」
事態を飲み込めていない瑛里は、突如奪われた視界を取り戻すべく、両手を左右に広げながらそろそろと歩き始めた。
数歩進んだところで、手のひらにザリッという感触を得た彼女。
身体を近付けて、その物体を確かめる。
それは、不揃いな土レンガが数多く積み重ねられた壁であった。
(こんな場所、裏小路にあったかな?)
記憶を辿ってみたが、思い当たる施設は思い浮かばなかった。
(うーん、思ったより移動してしまったのかなぁ)
悩んでいても、結論が出ないと考えた彼女は、この現象に至った理由を知っている者……エリカルを探すことにした。
足を進めるにつれて、周囲に漂っていた虹色の霧煙がスゥッと晴れていく。
続いて、ローヒールで踏みしめている地面が、アスファルトから踏み固められた土の道に変わっていることに気が付いたが、彼女はもう驚かなかった。
欲しいのは、真実のみ。
「エリー、こっちカル!」
霧煙が完全に晴れるのと、エリカルの声が耳に届いたのは、ほぼ同時だった。
彼女は改めて、自分がどこに立っているのかを確かめる。
果たしてそれは、瑛里の想定を遥かに超えるものであった。
雲ひとつない、青い空。
その下に広がっていたのは、石組みの城壁に囲まれた、中世風の街並みであった。
「ようこそ、『マテリアルワールド』の入り口へ!」
『ボウ・アンド・スクレープ』と呼ばれる、貴族社会特有の慇懃なお辞儀をしたエリカルは、戸惑う彼女の手を取ると、新しいセカイへと誘うような口調で高らかに宣言した。
「『伝説の弓遣い(アーチャー)』エリー・ミヤシタ。私たちは、このセカイの真の護り手である貴女を、心より歓迎します!」
つづく
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