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【第8話】優しさが溶け込むフルーツフラッペ
【8-17】
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「……みんなの分も、ちゃんとある?」
目の前に置かれたトレーに鎮座するヒャココを見た後、ミカは心配そうに尋ねる。彼は自分のためだけに何かをされるというのが苦手なようで、喜ばしいことは皆で共有したがる性格だ。
「大丈夫だ。たくさん作ってある。お前がもうひと眠りしている間に俺たちも食べて休憩するから、気にするな」
「うん、分かった。じゃあ、お先に失礼して……、いただきます」
そっと手を合わせてから匙を握り直し、ミカはおずおずと、フワフワした氷の部分を掬った。そして、遠慮がちに一口食べる。彼は少し驚いたように目を瞬かせてから、幸せそうに目を細めて笑った。
「うん、美味しい! ジル、キカさん、すっごく美味しいよ。ありがとう」
「そうか、良かった」
「良かったわー! 冷たくて美味しいでしょ?」
「うん! ただの氷だけじゃなくて、凍った果物を削ったのも一緒だからかな、思っていたより味が濃厚で美味しいね。掛かってる蜜も、果汁が混ざって爽やかになって美味しい……!」
具体的な感想を述べた後、ミカは二口目、三口目、と続けて食べる。どうやら、気に入ったらしい。マレシスカは嬉しさと安心感と共に胸を撫で下ろした。
魔王と悪魔も微笑ましく見守っていたのだが、ミカがぽろりと零した、
「かき氷というより、フラッペって感じかなぁ」
──というのんびりとした一言を受け、揃って顔がわずかに強張る。ミカの口調も表情ものほほんとしたもので、ヒャココに満足しているのは確かなようだが、幼い頃のことを悪戯に思い出させただけで、記憶の穴埋めには至らなかったのだろうか。
気になるものの、ジルベールはそこまで踏み込んで尋ねていいものかと躊躇ってしまう。対照的に、カマルティユはさりげなく、かつ直球に質問を投げ掛けた。
「ミカさんが仰っていたカキゴーリと、こちらのヒャココは似ていないのですか? それよりも、その……、フ、フラ?」
「フラッペ?」
「ええ、それです。フラッペのほうが近しいものだと……?」
表情こそ穏やかだが、悪魔は真剣に尋ねている。ミカは意外そうに目を丸くして瞬きをした後、微笑んで首を振った。
「ううん、そんなことないよ。えっとね……、そもそも、かき氷もフラッペも似たようなもので、明確な違いっていうのもよく分からないんだけど……、僕の中では、氷に蜜が掛かっているだけのものが『かき氷』で、果物とか色々と載っててオシャレな感じのかき氷が『フラッペ』っていう印象かなぁ。砕いた氷が主体の飲み物をフラッペって呼んだりするし、フラッペの仲間はいっぱいいるんだよ。このヒャココも果物とか食用花とか鮮やかに飾ってあって綺麗だし、僕の中ではフラッペの仲間みたいって思っただけで、深い意味は無いんだ。ずっと食べてみたかったから、すごく嬉しいよ。ありがとう」
丁寧に説明をしたミカはそこで咳き込み、慌てたマレシスカが甲斐甲斐しく水を飲ませる。何口か水を飲んだミカが礼を言った頃を見計らって、ジルベールは静かに申し出た。
「……氷と蜜だけのものを作ってくるか?」
「えっ、どうして? ジルが食べるの?」
「いや……、ミカが食べてみたかったのは、フラなんとかではなくて、カキなんとかのほうじゃないかと思って」
「あっ……、僕の言葉が悪くて気を遣わせちゃったのかな。ごめんね」
「いや、謝らなくていい。氷は砕いてあるし、すぐに用意して来るぞ」
「そうよ、ミカ! せっかくだし、その、カキゴォイ? それっぽくして食べてみたら?」
魔王を後押しするようにマレシスカも明るく言ったのだが、ミカは笑って首を振る。遠慮しているわけではなさそうだ。
「ううん、僕はこのヒャココを、このままいただきたいな。遠慮しているわけじゃなくて、本当に。……あのね、かき氷のほうがいいとか、フラッペのほうがいいとか、そういうのは全然ないんだよ。どっちでも同じ嬉しさというか……、どっちにしても僕には縁が無かったから、こうしてヒャココを食べられて幸せなんだ。本当だよ?」
「ええ、ミカさんが仰っているのは本心でしょうとも。きちんと伝わっておりますよ」
遠慮しての言葉ではないと主張したがっている青年の気持ちを汲んで、カマルティユが優しく肯定して頷く。すると、ミカも嬉しそうに頷き返した。
「ミカのいた世界では、氷が貴重品だったの? だから、なかなか縁が無かったのかしら?」
今度はマレシスカが、素直に問い掛ける。思わず身構えたジルベールの心配をよそに、ミカはけろりとした顔で首を振った。
「ううん、そんなことないよ。まぁ、ものによっては高級品になっているかき氷とかフラッペもあったけど、子どものお小遣いで買えるようなのが多かったかな。……ただ、僕はずっとひとりぼっちだったから。こういうかき氷を食べる機会が無かったんだよ」
目の前に置かれたトレーに鎮座するヒャココを見た後、ミカは心配そうに尋ねる。彼は自分のためだけに何かをされるというのが苦手なようで、喜ばしいことは皆で共有したがる性格だ。
「大丈夫だ。たくさん作ってある。お前がもうひと眠りしている間に俺たちも食べて休憩するから、気にするな」
「うん、分かった。じゃあ、お先に失礼して……、いただきます」
そっと手を合わせてから匙を握り直し、ミカはおずおずと、フワフワした氷の部分を掬った。そして、遠慮がちに一口食べる。彼は少し驚いたように目を瞬かせてから、幸せそうに目を細めて笑った。
「うん、美味しい! ジル、キカさん、すっごく美味しいよ。ありがとう」
「そうか、良かった」
「良かったわー! 冷たくて美味しいでしょ?」
「うん! ただの氷だけじゃなくて、凍った果物を削ったのも一緒だからかな、思っていたより味が濃厚で美味しいね。掛かってる蜜も、果汁が混ざって爽やかになって美味しい……!」
具体的な感想を述べた後、ミカは二口目、三口目、と続けて食べる。どうやら、気に入ったらしい。マレシスカは嬉しさと安心感と共に胸を撫で下ろした。
魔王と悪魔も微笑ましく見守っていたのだが、ミカがぽろりと零した、
「かき氷というより、フラッペって感じかなぁ」
──というのんびりとした一言を受け、揃って顔がわずかに強張る。ミカの口調も表情ものほほんとしたもので、ヒャココに満足しているのは確かなようだが、幼い頃のことを悪戯に思い出させただけで、記憶の穴埋めには至らなかったのだろうか。
気になるものの、ジルベールはそこまで踏み込んで尋ねていいものかと躊躇ってしまう。対照的に、カマルティユはさりげなく、かつ直球に質問を投げ掛けた。
「ミカさんが仰っていたカキゴーリと、こちらのヒャココは似ていないのですか? それよりも、その……、フ、フラ?」
「フラッペ?」
「ええ、それです。フラッペのほうが近しいものだと……?」
表情こそ穏やかだが、悪魔は真剣に尋ねている。ミカは意外そうに目を丸くして瞬きをした後、微笑んで首を振った。
「ううん、そんなことないよ。えっとね……、そもそも、かき氷もフラッペも似たようなもので、明確な違いっていうのもよく分からないんだけど……、僕の中では、氷に蜜が掛かっているだけのものが『かき氷』で、果物とか色々と載っててオシャレな感じのかき氷が『フラッペ』っていう印象かなぁ。砕いた氷が主体の飲み物をフラッペって呼んだりするし、フラッペの仲間はいっぱいいるんだよ。このヒャココも果物とか食用花とか鮮やかに飾ってあって綺麗だし、僕の中ではフラッペの仲間みたいって思っただけで、深い意味は無いんだ。ずっと食べてみたかったから、すごく嬉しいよ。ありがとう」
丁寧に説明をしたミカはそこで咳き込み、慌てたマレシスカが甲斐甲斐しく水を飲ませる。何口か水を飲んだミカが礼を言った頃を見計らって、ジルベールは静かに申し出た。
「……氷と蜜だけのものを作ってくるか?」
「えっ、どうして? ジルが食べるの?」
「いや……、ミカが食べてみたかったのは、フラなんとかではなくて、カキなんとかのほうじゃないかと思って」
「あっ……、僕の言葉が悪くて気を遣わせちゃったのかな。ごめんね」
「いや、謝らなくていい。氷は砕いてあるし、すぐに用意して来るぞ」
「そうよ、ミカ! せっかくだし、その、カキゴォイ? それっぽくして食べてみたら?」
魔王を後押しするようにマレシスカも明るく言ったのだが、ミカは笑って首を振る。遠慮しているわけではなさそうだ。
「ううん、僕はこのヒャココを、このままいただきたいな。遠慮しているわけじゃなくて、本当に。……あのね、かき氷のほうがいいとか、フラッペのほうがいいとか、そういうのは全然ないんだよ。どっちでも同じ嬉しさというか……、どっちにしても僕には縁が無かったから、こうしてヒャココを食べられて幸せなんだ。本当だよ?」
「ええ、ミカさんが仰っているのは本心でしょうとも。きちんと伝わっておりますよ」
遠慮しての言葉ではないと主張したがっている青年の気持ちを汲んで、カマルティユが優しく肯定して頷く。すると、ミカも嬉しそうに頷き返した。
「ミカのいた世界では、氷が貴重品だったの? だから、なかなか縁が無かったのかしら?」
今度はマレシスカが、素直に問い掛ける。思わず身構えたジルベールの心配をよそに、ミカはけろりとした顔で首を振った。
「ううん、そんなことないよ。まぁ、ものによっては高級品になっているかき氷とかフラッペもあったけど、子どものお小遣いで買えるようなのが多かったかな。……ただ、僕はずっとひとりぼっちだったから。こういうかき氷を食べる機会が無かったんだよ」
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