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武器をいじる

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 ご飯を食べつつも俺がそわそわしている事に気がついたシルバリウスが気を利かせてくれて早めに帰り、先ほど購入した補助媒体を机の上に広げて魔力を通す。
 やはり、この銃擬き、属性は1つしか登録出来ないらしい。
 それから、魔法の登録だが、魔法名と発動条件と必要魔力と必要出力など一つずつ設定していかなきゃいけない……。
 使った事がないので詳しくは知らないが、普通は先程の店でも言っていた通り、設定作業など店側でやってくれる。その手間含めての値段ではあるのだが。
 実戦で補助媒体を使用する時は、どの魔力をどの発動条件で設定したか思い出す必要があるが、魔法の発動も早い俺なら、思い出している間にもう魔法の発動を終えている気がする。
 威力別に設定しなきゃいけないのも、面倒くさい。
 失敗したかなぁと眺めていた所に、”カスタム設定”の文字が小さく端っこに出ている事を発見。
 そこを押すと、入力ウィンドウが出てきて入力項目以外の設定項目も直接弄れる事が分かった。
 ……二丁あるし。どちらか使えなくなっても良いかと思い、取り敢えずひたすらいじってみる事にした。

「出来た」
 シルバリウスに何度も声をかけられた気はするが適当に返事をしていて、気がつけば陽の光が入る朝。
 どうやら徹夜してしまったようだ。
 だが、とても良いものが出来た気がする!
 設定項目から弄れたので、プログラミングの要領を思い出しつつ、設定。
 この補助媒体自体の個々の機能も大変優れており、上手く使えば伝説のアイテム並みに凄いことになるだろう。
 中身を知れば白金貨1枚じゃ足りない位の機能が付いているのだ、気がつけば夢中で設定をしていた。
 作った設定を簡単に説明すると”照準を合わせた相手に見合った魔力を出力する”である。
 銃にはダイアル式のつまみのようなものがある。
 それをそれぞれ”殺傷レベル”、”気絶レベル”、”足止めレベル”、”調査”の4つに分けて、その時ダイアルで選択していたレベルの「氷」属性魔法が出力されるようにしたのだ。
 そして、この銃の凄い機能の一つが”分析能力”である。
 照準を合わせた物に対して魔力量や魔力属性から大きさ心臓部位など分かるのだ。
 なので、照準を当てさえすれば自動で必要な魔力量などを計算し、氷属性魔法が放たれるのだ。
 それも”高速処理”と”命中”の機能もあった為、引き金を引いた瞬間に相手のどこかにでも照準を合わせていられれば基本的には相手にあたる。
 後は、ダイヤル含めて他者が使用できないようにする”認証制限”を設定した。

 まだ実際に試していないがエラーも起こしていないし、理論上は大丈夫そうなので、大満足だ。
 
 ……先程から背中がチリチリする。

 振り向くのが怖くて、無駄に銃身をもう一度触ろうとしたら声がかかった。

「出来たと聞こえたが?」
「うぇ、え、あ、う、うん……」
 声が冷たくて動揺する。
 恐る恐る後ろを振り返ると、シルバリウスが後ろの椅子に座って無表情でこちらを見ていた。
 腕と足を組んで座る格好はめちゃくちゃカッコ良いんだけど、最近見ていなかった無表情がめちゃくちゃ怖い。
 権力もお金もある坊ちゃんとして生きてきたこの人生、物凄く怒られたという記憶はほぼない。
 カタカタと体に震えが走る。
 ……真顔めっちゃ怖いです。
 ゲームではそれが標準だったはずなのに、いつの間にか俺の中ではシルバリウスの柔らかい表情が標準になっていたのだ。
 
 ……嫌われたくない。
 嫌われたらどうしよう。

 泣きそうになっていると、はぁとため息をつかれた。

 嫌われた?

 思わず涙が1粒こぼれ落ちる。

「……泣かせたいわけじゃない。心配なんだ。体調崩したばかりなんだぞ? それを病み上がり早々徹夜だなんて。また体調崩したらどうするんだ? それは本当に徹夜でやらなければいけない事だったか?」
「う、ううん。夢中になっちゃって。寝てからでも大丈夫な事だったです」
「そうだな? スチュアートも心配していたぞ。ただ、スチュアートはあくまで使用人だ。リューイの願いを優先するだろう。
 でも私は、世話にはなっているが使用人ではなく、生涯の伴侶としてお互い対等な立場になりたいと思っている。
 だからこそ、全てをリューイの思い優先にはしない。間違えているのではないかと思えば言う。
 今回はどうだ? 私が間違えているか?」
「ううん。病み上がりなのに無理した俺が悪い。……心配させてごめん」
「その集中力は凄い事だが、体も気をつけような」
 いつもの優しい言い方になった瞬間、ほっとして涙が止まらなくなった。
 そんな俺をゆっくり近付いてきたシルバリウスが抱え上げベッドに連れて行く。
 シルバリウスはそのままベッドに腰掛け、俺を膝上にのせたまま背中をぽんぽんゆっくり撫でられる。
 俺がシルバリウスの胸の中で泣いていると、困ったような声が聞こえた。
「そんなに怖かったか?」
「グスッ、うん。グスッ、怖か、った、前、みたいに、無表情だ、ったし、……きら、われた、と思った、グスッ」
「嫌う事は無い。ただ本当に心配したんだ。これからも健やかに過ごしていく為に自分の体は大事にしような」
 頭の上に何度もキスが降ってくる。
「うん、うん、ヴィーごめん。これからも一緒にいて」
「勿論、もうリューイを離してなんてやれない」

 シルバリウスが何か言っていたような気がしたが、安心したのと徹夜明けも相まって、またシルバリウスの胸の中で寝落ちした。
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