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本編
紫音
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「シオンごめんね。俺が悪かったから戻っておいで……シオン愛してるよ。また後でね」
ライオネルはいつものように1人紫音に語りかけると執務室へ戻って行った。
紫音の熱が下がってから2週間経っていた。
紫音はというと、
「(今日もよくやるなぁー。とっとと諦めれば良いのに。早く打ち捨ててくれないかなぁ)」
実は体は全く動かないが、宮廷医師の見解に反して起きている時に話しかけられた事は全部聞こえていた。
自分から娼館へ行って“シロ”になり、確かにだんだん壊れていくのを感じていた。
壊れていくのは救いでそのまま壊れていたかったのに、気が付いたら引き戻されていたのだ。
紫音の自己治癒能力の高さ故か、国1番の魔道士の回復魔法の影響か。
紫音はまさか心まで回復させられるとは思わなかったのでどちらの影響も相互に働いてしまったような気がするが。
意識が戻った今、体が頑丈な”ドール”は動かそうと思えばすぐに動き出す事は可能だろう。
だが、目覚めてからライオネルに反応を返すことはしない。
何故ライオネルの言葉が聞こえているのに反応を返さないのか。
それは、反応する気にならないからだ。
幸せを味わってからの失うという”喪失感”はとても辛い事だと分かった。
ライオネルも今は罪悪感と責任感から面倒を見ているのだろうが、目覚めたらまたポイッと捨てられるのだろう。
それならば最初からいらない。
それに、娼館での働きは無駄にならず、何となく寿命はあと半年位だと感じる。以前同僚が1年を切ると寿命を感じるようになると言っていたが、本当にその通りだ。
あと半年動かなければ人生が終わる。
ライオネルが途中で世話に飽きて、このまま何処かにうち捨ててくれれば、もっと早く逝ける。
今度こそお母さんの元に逝けるのだ。
と、思っていたのに。
♢♢♢
早いもので紫音が動かなくなって2ヶ月経った。
その間ライオネルは諦めなかった。
そんなライオネルの事を紫音は馬鹿だなぁと思う。
紫音のことなど構わずに早く次へ行けば良いのに。
ライオネルは初めて見たとき天使と見間違える程
キラキラしていて格好良いんだから、こんなただ生きているというだけの“人形”さっさと捨てれば良いのにと。
ここ1ヶ月で新しい試みも増えた。
何も怪我していないのに毎日回復魔法をかけられることに加えて、今日も真昼間に庭園に連れていかれて強制日向ぼっこだ。
「流石に秋も終わりだから冷えはじめてきたなー。でもやっぱり日向はあったかいな。そうそう、冬になると外での日向ぼっこはキツくなるから、シオンと過ごせる温室作ろうと思ってるんだよー。植物のなー。」
ライオネルの語りかける言葉は最初は懺悔が多かったが、次第に愛の言葉や日常の他愛もない話が増えた。
そして、紫音は
「(もったいないなぁ。俺はそんなに居られないのに。まぁ、植物植えるのなら誰かが遊びには行くか)」
声に出すことは無いが、ライオネルの言葉に心中で返答をするようになっていた。
そんなまったりした時間が進む中、誰かが近付いてくる。
「お忙しい中すみません。少し確認したいことがありまして執務室までよろしいでしょうか」
「(この声はルイスだな)」
「……シオンちょっと行ってくるよ。もうちょっとここで日向ぼっこしてて」
「(はいはい。いってらっしゃい)」
ライオネルはルイスに連れられて離れて行った。
“時は悲しみを薄れさせる”“前へ進む為に人は忘れる生き物だ”と何かの本で読んだことがあったけど、確かにそうなのかもしれないと紫音は思った。
記憶力が良いから忘れる事は出来ないけど、いつの間にか“感情”を理解して、流暢に思考する事が出来ている。人間とは不思議なものだな。
……この2ヶ月ちょっと思考する事しかやる事がなかった影響かもしれないが。
「……だ。……でも、……だから……」
「……とはいえ、……だから」
何かを話しながら近付いてくる集団がいる。二手に分かれたようで片方の集団が隣の生垣まできていた。
「やはり、“紫瞳の君”に去って貰うのが1番だよな」
「そうだ。数少なくなった龍人の血を引くあの方には子孫を残していただかないと」
「この間、心の広い西の侯爵令嬢様が“紫瞳の君がいても良い“と言ったにも関わらず、婚約を断ったらしいぞ。そんなに”紫瞳の君”が良いのかね。何も喋らず反応もせず、そんな相手に毎日喋りかけてるとか。殿下は人形遊びにでもハマってしまったのかね」
「お前、声が大きいぞ。もうちょっと声を抑えろ」
「(ん? これは俺達の話で、”紫瞳の君“とは俺の事か。確かに毎日人形遊びしてるな。本当さっさと辞めれば良いのに)」
「ここだけの話、あの方は王を味方につけているからな。婚約の話を一切合切断っていてこのままでは拉致があかないと、”紫瞳の君“の暗殺計画が上がっているらしい」
「(おー。俺の暗殺計画。それはぜひとも頑張って欲しいな)」
「ただ、”紫瞳の君“の守りは最強って聞いたぞ」
「それなんだよな。この国1番の魔道士のあの方が率先して守られているし、あの方が”紫瞳の君”から離れる時は、国2番目の魔道士と、最優秀騎士が常に守ってるという」
「(今ならガラ空きだよー)」
「この間あった誘拐未遂事件も、犯人のアジトはなんか溶岩化してて、資金提供してたって噂の貴族は局所的竜巻が発生して屋敷は崩壊したらしいぞ。ここだけの話、あの方の報復じゃないかと言われてる」
「(誘拐未遂なんてあったのか、全く知らなかったし、報復が苛烈だな)」
「だから、“紫瞳の君”の暗殺計画も上がってるが、あの方自身の暗殺計画も上がってるらしい。最近はやり過ぎで恨みを買いすぎだと」
「噂じゃあの方も少しずつ壊れてきてるんじゃないかと言われているらしい」
「あの方の刃がこちらに向いたら、国は滅亡するだろうからな。周りも大変だな」
集団は再び歩いて去って行った。
足音と共に、ライオネルの気配が近付いてくる。
「全く、シオンに何てこと聞かせてくれるんだ。シオンは気にしないで寝ておいで」
そう言うと、ライオネルは紫音の頭を撫で、眠りの魔法をかけたのか紫音の意識が遠のいてった。
「俺の最愛を害するものは許さない」
意識が完全に落ちる前にそんな言葉を聞いた気がした。
ライオネルはいつものように1人紫音に語りかけると執務室へ戻って行った。
紫音の熱が下がってから2週間経っていた。
紫音はというと、
「(今日もよくやるなぁー。とっとと諦めれば良いのに。早く打ち捨ててくれないかなぁ)」
実は体は全く動かないが、宮廷医師の見解に反して起きている時に話しかけられた事は全部聞こえていた。
自分から娼館へ行って“シロ”になり、確かにだんだん壊れていくのを感じていた。
壊れていくのは救いでそのまま壊れていたかったのに、気が付いたら引き戻されていたのだ。
紫音の自己治癒能力の高さ故か、国1番の魔道士の回復魔法の影響か。
紫音はまさか心まで回復させられるとは思わなかったのでどちらの影響も相互に働いてしまったような気がするが。
意識が戻った今、体が頑丈な”ドール”は動かそうと思えばすぐに動き出す事は可能だろう。
だが、目覚めてからライオネルに反応を返すことはしない。
何故ライオネルの言葉が聞こえているのに反応を返さないのか。
それは、反応する気にならないからだ。
幸せを味わってからの失うという”喪失感”はとても辛い事だと分かった。
ライオネルも今は罪悪感と責任感から面倒を見ているのだろうが、目覚めたらまたポイッと捨てられるのだろう。
それならば最初からいらない。
それに、娼館での働きは無駄にならず、何となく寿命はあと半年位だと感じる。以前同僚が1年を切ると寿命を感じるようになると言っていたが、本当にその通りだ。
あと半年動かなければ人生が終わる。
ライオネルが途中で世話に飽きて、このまま何処かにうち捨ててくれれば、もっと早く逝ける。
今度こそお母さんの元に逝けるのだ。
と、思っていたのに。
♢♢♢
早いもので紫音が動かなくなって2ヶ月経った。
その間ライオネルは諦めなかった。
そんなライオネルの事を紫音は馬鹿だなぁと思う。
紫音のことなど構わずに早く次へ行けば良いのに。
ライオネルは初めて見たとき天使と見間違える程
キラキラしていて格好良いんだから、こんなただ生きているというだけの“人形”さっさと捨てれば良いのにと。
ここ1ヶ月で新しい試みも増えた。
何も怪我していないのに毎日回復魔法をかけられることに加えて、今日も真昼間に庭園に連れていかれて強制日向ぼっこだ。
「流石に秋も終わりだから冷えはじめてきたなー。でもやっぱり日向はあったかいな。そうそう、冬になると外での日向ぼっこはキツくなるから、シオンと過ごせる温室作ろうと思ってるんだよー。植物のなー。」
ライオネルの語りかける言葉は最初は懺悔が多かったが、次第に愛の言葉や日常の他愛もない話が増えた。
そして、紫音は
「(もったいないなぁ。俺はそんなに居られないのに。まぁ、植物植えるのなら誰かが遊びには行くか)」
声に出すことは無いが、ライオネルの言葉に心中で返答をするようになっていた。
そんなまったりした時間が進む中、誰かが近付いてくる。
「お忙しい中すみません。少し確認したいことがありまして執務室までよろしいでしょうか」
「(この声はルイスだな)」
「……シオンちょっと行ってくるよ。もうちょっとここで日向ぼっこしてて」
「(はいはい。いってらっしゃい)」
ライオネルはルイスに連れられて離れて行った。
“時は悲しみを薄れさせる”“前へ進む為に人は忘れる生き物だ”と何かの本で読んだことがあったけど、確かにそうなのかもしれないと紫音は思った。
記憶力が良いから忘れる事は出来ないけど、いつの間にか“感情”を理解して、流暢に思考する事が出来ている。人間とは不思議なものだな。
……この2ヶ月ちょっと思考する事しかやる事がなかった影響かもしれないが。
「……だ。……でも、……だから……」
「……とはいえ、……だから」
何かを話しながら近付いてくる集団がいる。二手に分かれたようで片方の集団が隣の生垣まできていた。
「やはり、“紫瞳の君”に去って貰うのが1番だよな」
「そうだ。数少なくなった龍人の血を引くあの方には子孫を残していただかないと」
「この間、心の広い西の侯爵令嬢様が“紫瞳の君がいても良い“と言ったにも関わらず、婚約を断ったらしいぞ。そんなに”紫瞳の君”が良いのかね。何も喋らず反応もせず、そんな相手に毎日喋りかけてるとか。殿下は人形遊びにでもハマってしまったのかね」
「お前、声が大きいぞ。もうちょっと声を抑えろ」
「(ん? これは俺達の話で、”紫瞳の君“とは俺の事か。確かに毎日人形遊びしてるな。本当さっさと辞めれば良いのに)」
「ここだけの話、あの方は王を味方につけているからな。婚約の話を一切合切断っていてこのままでは拉致があかないと、”紫瞳の君“の暗殺計画が上がっているらしい」
「(おー。俺の暗殺計画。それはぜひとも頑張って欲しいな)」
「ただ、”紫瞳の君“の守りは最強って聞いたぞ」
「それなんだよな。この国1番の魔道士のあの方が率先して守られているし、あの方が”紫瞳の君”から離れる時は、国2番目の魔道士と、最優秀騎士が常に守ってるという」
「(今ならガラ空きだよー)」
「この間あった誘拐未遂事件も、犯人のアジトはなんか溶岩化してて、資金提供してたって噂の貴族は局所的竜巻が発生して屋敷は崩壊したらしいぞ。ここだけの話、あの方の報復じゃないかと言われてる」
「(誘拐未遂なんてあったのか、全く知らなかったし、報復が苛烈だな)」
「だから、“紫瞳の君”の暗殺計画も上がってるが、あの方自身の暗殺計画も上がってるらしい。最近はやり過ぎで恨みを買いすぎだと」
「噂じゃあの方も少しずつ壊れてきてるんじゃないかと言われているらしい」
「あの方の刃がこちらに向いたら、国は滅亡するだろうからな。周りも大変だな」
集団は再び歩いて去って行った。
足音と共に、ライオネルの気配が近付いてくる。
「全く、シオンに何てこと聞かせてくれるんだ。シオンは気にしないで寝ておいで」
そう言うと、ライオネルは紫音の頭を撫で、眠りの魔法をかけたのか紫音の意識が遠のいてった。
「俺の最愛を害するものは許さない」
意識が完全に落ちる前にそんな言葉を聞いた気がした。
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