17 / 23
第4章
戦士の役目 1
しおりを挟む
その日カミンはマリオに会いに行った。
彼はギルドの近く、表通りを一本入った閑静な住宅に住んでいた。
カミンが思っていたよりも良い場所だ。
二階建てで、同じ大きさの家が並ぶ。
家自体は小さいが、一応門があり庭があり、その先に玄関がある。。
ある程度の収入があれば、職業に関係なく購入できると聞いた。
平民でも裕福層になるのだろう。
ギルドで聞いたマリオの家は、青い屋根に、赤い玄関ドアの家だ。
庭にはピンクの花が一面に咲いていた。
ベランダの洗濯物が幸せそうに風に揺れている。
門を開け、庭の花を横目に玄関の扉をノックする。
「はーい」
軽やかな女性の声がして、ドアが開いた。
「どなた?」
首をかしげてカミンを見た。
年のころはカミンと同じくらいと思うが、向こうから見たらカミンは随分年下に見えるだろう。
カミンはまだ成長期を迎えていない。
目の前にいる女は、マリオが一緒に暮らしていると話した女性に間違いない。
「冒険者のカミンといいます。マリオいますか?」
マリオが居るか確認した。
「もうすぐ帰ってくると思うんだけど、、、上がって待ってて」
幼い冒険者はギルドからの使いの仕事をすることがある。
カミンもギルドの用事で来たのだと思ったようで、女性の愛想が良い。
「ありがとうございます」
丁寧に礼を言うと、言われるまま家の中に入る。
「椅子、、、、掛けてね」
カミンの見た目から、まだ子供だと思っているようだ。
彼女の名前はリンダ。
マリオと暮らして2年になると話した。
緩いくせ毛を後ろで三つ編みにして肩に回し、エプロンをかけている。
花柄のエプロンは彼女に良く似合っていた。
「お子さんは?」
一緒に暮らして二年になるのならば、子供が居てもおかしくはない。
「まだ若いから、、、ってマリオがもう少し二人の生活を楽しみたいって」
頬を赤く染めて答えた。
可愛らしい女性だ。
暖炉の上には二人の結婚写真があった。
2年前のマリオだ。
大人の青年に見える。
崖の穴で見つけたアメリの骨から考えると、アメリの身長はカミンと同じほど。
彼女の成長期はまだだった。
2年前、マリオの方が先に大人になっていたことを知った。
「ただいま」
マリオの声にリンダは跳ねるように玄関へ迎えに出た。
入り口でカミンが来ていることを聞いたのだろう。
入れ替わりにマリオがリンダを使いに出した。
ぱたぱたと彼女の足音が遠ざかる。
カミンとの話を、リンダには聞かれたくないようだ。
「何の用だ」
腕を組み、部屋の入り口に立ったままマリオは、不快そうに椅子に座っているカミンに言った。
「アメリを見つけた」
カミンは取り繕うことなく直球で言った。
マリオは一瞬驚いたが、直ぐに顔を取り繕った。
「生きていたのか?」
心臓はバクバクしていたが、カミンに気取られるわけにはいかない。
「いや、、、骨になっていた」
「そうか」
ホッとした。
死んでいたのなら、アメリに真実を話す口は無い。
あの日の事は闇の中だ。
「そのことを伝えに来たのか?」
「それもあるが、、、マリオの従魔に会いたい。何処に居る?」
「はあ、、、こんな街中に連れて来れるはずがないじゃないか。外の森の中に置いて居る」
「近いうちに会えるか?」
「明日でいいか?」
「ああ」
「今日は帰ってくれ、明日10時に城門を出た所で落ち合おう」
「わかった」
カミンはマリオに追い出されるように家を出た。
リンダは何処まで使いに行ったのか、カミンが帰るまで戻ってこなかった。
翌日、カミンは城門の外でマリオを待った。
時間丁度に表れたマリオは顎をクイッと動かし、カミンについてくるように言うと先に歩き始めた。
一定の間を空けてカミンも続く。
マリオは信用できない。
近づきすぎては攻撃を避けられない可能性がある。
カミンは身を守るために用心していた。
二人が森の中に入り、周りに人の気配がないことを確かめると、
マリオは従魔のパタキラを呼び出した。
土が盛り上がり顔を出す。
パタキラは丸長い体形をした魔物で、一メートルほどの小型の魔物だ。
土の中を自在に動き、その顔はモグラの顔を長くしたようで、鼻に特徴がある。
口から飛び出した前歯が二本、どんなものでもかみ砕き、
地上に出れば、前足の長い爪を上手く使い、木の間を自由に飛び回る。
気配を消すことが得意で、諜報に向いた魔物だ。
人懐こいパタキラは、カミンを見てすり寄ってきた。
「珍しいな、こいつが懐くなんて」
無邪気にすり寄ってくるパタキラの頭を、カミンはワシワシと撫でる。
パタキラは小さな丸い目でじっとカミンを見つめた。
「、、、おまえ、、、」
カミンはパタキラから、言いようのない苦悩を感じた。
明らかにマリオから離れたがっている。
マリオに正義が無くなったことを、従魔が一番よく知っていた。
「行って、、、いいよ」
カミンはマリオに聞こえないようにつぶやいた。
パタキラの瞳は、驚いたようにカミンを見た。
カミンは静かにうなづく。
「マリオ、、、私帰る。」
カミンはマリオの従魔の心が知りたかった。
パタキラは、マリオがアメリを殺したことを知っている。
裏切りを知り、離れたくても解放されない。
従魔に産まれた以上、自分の意志ではマリオの傍を離れることが出来なかった。
マリオに罪の意識があったら、或いは後悔の念があれば、
従魔もマリオの元に居ようと思ったのかもしれない。
彼は自分の欲望に負けた。
少年から青年になったマリオは、男の欲に負けアメリが邪魔になり殺したのだ。
安易で愚かな考えだ。
カミンは従魔をマリオから解放するためにここに来た。
用事は済んだ。
アメリを殺した時点で、マリオは戦士ではなくなり、従魔を持つ資格が無くなった。
パタキラは夕方までマリオと共に狩りをし、その日を最後にマリオの前から姿を消した。
彼らは知らない。
戦士の中で最強の従魔を持つ者は、全ての従魔を従える事が出来ることを。
それは従魔と心を交わすことが出来て初めて得る力だった。
パタキラは全て見ていた。
あの日、アメリはチョウガリアの巣を確認して崖の上に上がってきた。
腰に巻いた命綱を解くと、綱をマリオに渡そうと手を伸ばした。
片手は縄を持ちふさがっていた。
下を向いていたアメリはマリオの行動が見えなかった。
音もなく剣を抜いたマリオは、力も籠めずにすうっと剣をアメリの脇腹に差し込んだ。
肋骨の隙間肺の根元を狙った。
肺は少しでも傷をつけると、息が漏れて長くは生きられない。
マリオが剣で刺した場所は、傷が小さく見えにくい。
もしも誰かが見ても、気づく者はいない、自信があった。
瞬間アメリは驚いた顔をしマリオを見た。
マリオの表情は何も変わらない。
アメリは数歩後ろに退くと、そのまま崖から落ちた。
マリオの剣には血の一滴ついていない。
アメリが落ちると何処から現れたのか、キイウイラがアメリを追いかけるように崖を飛び降りた。
もう一匹の従魔、パタキラはその様子を森の中からじっと見ていた。
マリオはリンダの為にアメリを裏切った。
マリオがリンダと再会したのは偶然だった。
その日は依頼を受けて、アメリと二人でミグールの街から一日かかる草原に居た。
馬車が行きかう街道からは少し離れていた。
依頼された仕事を終えての帰り道、魔物に襲われていた馬車を見かけた。
二人で駆けつけ、魔物を倒し助けたのは奴隷商人だった。
その商品の中にリンダはいた。
お礼にー。といわれて、マリオは迷わずリンダを開放してほしいと頼んだ。
リンダは若い、金になる。
渋った商人に現金もつけると話し、アメリと二人冒険者をしてためていた金を全て使った。
アメリは知らなかった。
リンダは商人を助けたお礼として開放してもらったと聞いていた。
その日から三人の共同生活が始まった。
彼はギルドの近く、表通りを一本入った閑静な住宅に住んでいた。
カミンが思っていたよりも良い場所だ。
二階建てで、同じ大きさの家が並ぶ。
家自体は小さいが、一応門があり庭があり、その先に玄関がある。。
ある程度の収入があれば、職業に関係なく購入できると聞いた。
平民でも裕福層になるのだろう。
ギルドで聞いたマリオの家は、青い屋根に、赤い玄関ドアの家だ。
庭にはピンクの花が一面に咲いていた。
ベランダの洗濯物が幸せそうに風に揺れている。
門を開け、庭の花を横目に玄関の扉をノックする。
「はーい」
軽やかな女性の声がして、ドアが開いた。
「どなた?」
首をかしげてカミンを見た。
年のころはカミンと同じくらいと思うが、向こうから見たらカミンは随分年下に見えるだろう。
カミンはまだ成長期を迎えていない。
目の前にいる女は、マリオが一緒に暮らしていると話した女性に間違いない。
「冒険者のカミンといいます。マリオいますか?」
マリオが居るか確認した。
「もうすぐ帰ってくると思うんだけど、、、上がって待ってて」
幼い冒険者はギルドからの使いの仕事をすることがある。
カミンもギルドの用事で来たのだと思ったようで、女性の愛想が良い。
「ありがとうございます」
丁寧に礼を言うと、言われるまま家の中に入る。
「椅子、、、、掛けてね」
カミンの見た目から、まだ子供だと思っているようだ。
彼女の名前はリンダ。
マリオと暮らして2年になると話した。
緩いくせ毛を後ろで三つ編みにして肩に回し、エプロンをかけている。
花柄のエプロンは彼女に良く似合っていた。
「お子さんは?」
一緒に暮らして二年になるのならば、子供が居てもおかしくはない。
「まだ若いから、、、ってマリオがもう少し二人の生活を楽しみたいって」
頬を赤く染めて答えた。
可愛らしい女性だ。
暖炉の上には二人の結婚写真があった。
2年前のマリオだ。
大人の青年に見える。
崖の穴で見つけたアメリの骨から考えると、アメリの身長はカミンと同じほど。
彼女の成長期はまだだった。
2年前、マリオの方が先に大人になっていたことを知った。
「ただいま」
マリオの声にリンダは跳ねるように玄関へ迎えに出た。
入り口でカミンが来ていることを聞いたのだろう。
入れ替わりにマリオがリンダを使いに出した。
ぱたぱたと彼女の足音が遠ざかる。
カミンとの話を、リンダには聞かれたくないようだ。
「何の用だ」
腕を組み、部屋の入り口に立ったままマリオは、不快そうに椅子に座っているカミンに言った。
「アメリを見つけた」
カミンは取り繕うことなく直球で言った。
マリオは一瞬驚いたが、直ぐに顔を取り繕った。
「生きていたのか?」
心臓はバクバクしていたが、カミンに気取られるわけにはいかない。
「いや、、、骨になっていた」
「そうか」
ホッとした。
死んでいたのなら、アメリに真実を話す口は無い。
あの日の事は闇の中だ。
「そのことを伝えに来たのか?」
「それもあるが、、、マリオの従魔に会いたい。何処に居る?」
「はあ、、、こんな街中に連れて来れるはずがないじゃないか。外の森の中に置いて居る」
「近いうちに会えるか?」
「明日でいいか?」
「ああ」
「今日は帰ってくれ、明日10時に城門を出た所で落ち合おう」
「わかった」
カミンはマリオに追い出されるように家を出た。
リンダは何処まで使いに行ったのか、カミンが帰るまで戻ってこなかった。
翌日、カミンは城門の外でマリオを待った。
時間丁度に表れたマリオは顎をクイッと動かし、カミンについてくるように言うと先に歩き始めた。
一定の間を空けてカミンも続く。
マリオは信用できない。
近づきすぎては攻撃を避けられない可能性がある。
カミンは身を守るために用心していた。
二人が森の中に入り、周りに人の気配がないことを確かめると、
マリオは従魔のパタキラを呼び出した。
土が盛り上がり顔を出す。
パタキラは丸長い体形をした魔物で、一メートルほどの小型の魔物だ。
土の中を自在に動き、その顔はモグラの顔を長くしたようで、鼻に特徴がある。
口から飛び出した前歯が二本、どんなものでもかみ砕き、
地上に出れば、前足の長い爪を上手く使い、木の間を自由に飛び回る。
気配を消すことが得意で、諜報に向いた魔物だ。
人懐こいパタキラは、カミンを見てすり寄ってきた。
「珍しいな、こいつが懐くなんて」
無邪気にすり寄ってくるパタキラの頭を、カミンはワシワシと撫でる。
パタキラは小さな丸い目でじっとカミンを見つめた。
「、、、おまえ、、、」
カミンはパタキラから、言いようのない苦悩を感じた。
明らかにマリオから離れたがっている。
マリオに正義が無くなったことを、従魔が一番よく知っていた。
「行って、、、いいよ」
カミンはマリオに聞こえないようにつぶやいた。
パタキラの瞳は、驚いたようにカミンを見た。
カミンは静かにうなづく。
「マリオ、、、私帰る。」
カミンはマリオの従魔の心が知りたかった。
パタキラは、マリオがアメリを殺したことを知っている。
裏切りを知り、離れたくても解放されない。
従魔に産まれた以上、自分の意志ではマリオの傍を離れることが出来なかった。
マリオに罪の意識があったら、或いは後悔の念があれば、
従魔もマリオの元に居ようと思ったのかもしれない。
彼は自分の欲望に負けた。
少年から青年になったマリオは、男の欲に負けアメリが邪魔になり殺したのだ。
安易で愚かな考えだ。
カミンは従魔をマリオから解放するためにここに来た。
用事は済んだ。
アメリを殺した時点で、マリオは戦士ではなくなり、従魔を持つ資格が無くなった。
パタキラは夕方までマリオと共に狩りをし、その日を最後にマリオの前から姿を消した。
彼らは知らない。
戦士の中で最強の従魔を持つ者は、全ての従魔を従える事が出来ることを。
それは従魔と心を交わすことが出来て初めて得る力だった。
パタキラは全て見ていた。
あの日、アメリはチョウガリアの巣を確認して崖の上に上がってきた。
腰に巻いた命綱を解くと、綱をマリオに渡そうと手を伸ばした。
片手は縄を持ちふさがっていた。
下を向いていたアメリはマリオの行動が見えなかった。
音もなく剣を抜いたマリオは、力も籠めずにすうっと剣をアメリの脇腹に差し込んだ。
肋骨の隙間肺の根元を狙った。
肺は少しでも傷をつけると、息が漏れて長くは生きられない。
マリオが剣で刺した場所は、傷が小さく見えにくい。
もしも誰かが見ても、気づく者はいない、自信があった。
瞬間アメリは驚いた顔をしマリオを見た。
マリオの表情は何も変わらない。
アメリは数歩後ろに退くと、そのまま崖から落ちた。
マリオの剣には血の一滴ついていない。
アメリが落ちると何処から現れたのか、キイウイラがアメリを追いかけるように崖を飛び降りた。
もう一匹の従魔、パタキラはその様子を森の中からじっと見ていた。
マリオはリンダの為にアメリを裏切った。
マリオがリンダと再会したのは偶然だった。
その日は依頼を受けて、アメリと二人でミグールの街から一日かかる草原に居た。
馬車が行きかう街道からは少し離れていた。
依頼された仕事を終えての帰り道、魔物に襲われていた馬車を見かけた。
二人で駆けつけ、魔物を倒し助けたのは奴隷商人だった。
その商品の中にリンダはいた。
お礼にー。といわれて、マリオは迷わずリンダを開放してほしいと頼んだ。
リンダは若い、金になる。
渋った商人に現金もつけると話し、アメリと二人冒険者をしてためていた金を全て使った。
アメリは知らなかった。
リンダは商人を助けたお礼として開放してもらったと聞いていた。
その日から三人の共同生活が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
黒の聖女、白の聖女に復讐したい
夜桜
恋愛
婚約破棄だ。
その言葉を口にした瞬間、婚約者は死ぬ。
黒の聖女・エイトは伯爵と婚約していた。
だが、伯爵は白の聖女として有名なエイトの妹と関係をもっていた。
だから、言ってはならない“あの言葉”を口にした瞬間、伯爵は罰を受けるのだった。
※イラストは登場人物の『アインス』です
【完結】離縁など、とんでもない?じゃあこれ食べてみて。
BBやっこ
恋愛
サリー・シュチュワートは良縁にめぐまれ、結婚した。婚家でも温かく迎えられ、幸せな生活を送ると思えたが。
何のこれ?「旦那様からの指示です」「奥様からこのメニューをこなすように、と。」「大旦那様が苦言を」
何なの?文句が多すぎる!けど慣れ様としたのよ…。でも。
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる