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第19話 分かり易い僕達

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“やった~ やった!

初めての彼氏ゲット!

携帯ないから沢山の思い出を残すためにカメラ買わなくちゃ!

ちょっと痛い出費になっちゃうけど、
背に腹は変えられない!”

僕はこれまでにもなく浮かれていた。

何せ、18年の恋人いない歴にピリオドを打ち、
まさか自分に東京在住の、
こんなにカッコいい彼氏が出来るなんて思っても居なかった。

それも、まぐれで受かったようなこの一夏のバイトで。

“本当にこれは運命かもしれない”

そう思うと、僕の頭の中はもう矢野君で一杯だった。

事あるごとにに手を止めると、
台風の間の二日間を反芻していた。

“恋って落ちちゃうもんなんだな~
スト~ンといっちゃったよ~

今でも信じられないや~

もしかして仕事中に目で合図なんかしちゃったりして~

それともオフィス風に
今夜の予定をメモにして通り側にサッと渡されたりとか~“

などとニヤニヤとしていると、

「長谷川く~ん、何か良い事あったの~
顔がユルユルだよ~“

と伊藤さんがやって来て、
すぐに気付いたようにして話し掛けてきた。

「いや、実はですね~

聞きたいですか?
聞きたいですか?」

と本当は大声で言いたかったのに、
勿体ぶって見せると、
伊藤さんは興味深そうに、

「何々? もしかして!」

ときたので、

「そうなので~す! 
僕、初めての彼氏が出来ました!」

と大胆にも告げてしまった。
そして後になって、

“あれ? これってバラしても良かったのかな?”

と不安になった。
でもそれは、伊藤さんのセリフで打ち消された。

「相手ってもしかしてほら、
あそこで、ここ最近ウキウキし始めた
もう1人の彼でしょう?」

と伊藤さんが向こうを指差した。

伊藤さんが指さした方を見ると、
思い出し笑いをしているのか、
一人でニヤニヤとしながら作業している矢野君が目に入った。

「彼、変わったわよね。
言い方に変わってくれてすごく嬉しい!

私にとっては長谷川君も、矢野君も可愛い弟みたいなもんだからね~」

そう伊藤さんに言われ

「うわ~ん、伊藤さん、ラブ」

と抱きつくと、
後ろからスパーンと頭を叩かれた。

「離れろ痴漢! 変態!」

と後ろに立っていたのは矢野君だった。

「あら、あら、嫉妬~? 
早くも痴話喧嘩なの?
仲良くしないと~」

とからかう伊藤さんを横目に、
矢野君は

“バラしたのか?!”

と言うような目で僕をみていたので、

“言ってない、言ってない”

と手を振ると、横で伊藤さんがわらいながら、

「ハハハ~ 二人とも何も言わなくってもただ漏れよ~

これじゃ隠していたって私じゃなくても分かるわよ~」

と言う言葉に、矢野君は恥ずかしそうにバツが悪そうにしていた。

「矢野君、余計なお世話かもしれないけど、
去年ここに来た時からずっと気にかけていたのよ?

でも良かったわね、長谷川君みたいな
明るくて優しい子と出会えて……

矢野君も少しずつ打ち解けて来てくれて、
私は本当に自分の事のように嬉しいのよ」

伊藤さんがそう言うと、
矢野君は照れたようにして頭を下げた。

「本当、若いって良いわね~

二人ともお似合いよ。

私もまたあなた達のような年頃に戻りたいわ~

本当、羨ましい~」

と冷やかしながら
伊藤さんは詰所へと戻って行った。

「矢野君、聞いた?
ぼくたち、お似合いだって!」

そう言って彼の腕に絡みつくと、

「お前、暑いんだよ、
離れろよ!」

と言って僕を押し除けた。

「も~ ツンデレさん!
愛してるって言って良いんだよ?」

そう言うと、
スタスタと歩いて行ってしまったけど、
彼は耳元まで赤くなって
照れたようにしているのが遠くからでも分かった。
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