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第50話 戻に戻れる?
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“ねえ、何故そんな大切なことを僕に話すの?”
うつぶせた矢野君の頭のつむじが目に入った。
柔らかそうなその髪に手を差し伸ばそうとした瞬間、
「お、光、そんなところにうつ伏せて、
どうしたんだ?
まさか泣いてるって訳じゃないよな?」
佐々木君がそう言いながら
おトイレから戻って来たので、
ハッとして矢野君の頭に差し出そうとした手を引いた。
矢野君は顔を上げて
一度チラッと佐々木君の方を見たけど、
またうつ伏せて黙った。
“アイツ、どうしたんだ?”
佐々木君が僕の耳元で囁いたけど、
僕は肩を窄めて誤魔化すしかなかった。
佐々木君はふ~んとしたような顔をしたけど、
あまり気にしないような態度で席に着いた。
「あの~ もう出ようか?」
あまりにもの気まずさに、
僕は早くこの場を去りたかった。
「お前、チーズケーキは?
まだ一口しか口を付けてないみたいだけど?」
テーブルに目を落とすと、お皿の上には、
まだそのままと言ってもいい程のチーズケーキが残っていた。
「へへ 何だか一口食べたらお腹いっぱいでさ……」
そう言ってはごまかしたけど、更に気まずい。
あのさ…… 僕…… もう帰らなくちゃいけないけど、
佐々木君達はどうする?」
そう言ってゆっくりとコーヒーを飲む
佐々木君の方をチラッと見た。
「お前な~ 人の事叩き起こして呼び出しておいて
もう帰るだ~?!」
仕事休みでまだ寝ていた佐々木君を、
叩き起こしてここに呼び出したのは僕だ。
最近の矢野君の態度に
悶々としていたから愚痴を聞いてもらいたかっただけだ。
きっとスッキリすると思ったのに、
まさかこんな展開になるとは思いもしなかった。
「実はさ~ 俺、
これから用事があるんだよ。
陽向、お前さ、本当は暇なんだろ?
光の事頼めるか?」
そう言って矢野君の方をチラッと見た。
「えっ? えっ? え~~~っ!!!」
僕は思わず大声を出してしまた。
一斉に周りにいた人達が僕を見たので、
“すみません、すみません”
と言ってペコペコと謝る羽目になってしまった。
佐々木君は他人事だと思って、
「ホラ、チャンスだろ?
じっくりと思い出して貰えよ」
とニヤニヤしながら耳打ちしてきた。
“何ですとー?! 頭は正気ですか~?
全く、トイレに行ってる間に
僕たちが何を話してたか知りもしない良くそんなことが言えますね!“
佐々木君に愚痴を言おうと思っても埒が明かない。
僕をため息を吐くと、うなだれて
「分かったよ、
もう行ってもいいよ。
今日は付き合ってくれて有難う」
と諦めた。
佐々木君は伝票を掴むと、
「じゃあ、ここは俺が払っておくから」
そう言って足取り軽く、颯爽とカフェを後にした。
佐々木君の姿が見えなくなるや否や、
「仁のやろう、行ったか?」
と矢野君が普通の面持ちで顔を上げた。
僕は目を丸くして、
「な……、な……」
とワナワナとした。
「は~ アイツいい奴だけど、
時々息が詰まるんだよな」
とのセリフに僕は何も言えずに、
只横目で矢野君を見る事しか出来なかった。
佐々木君はあんなに矢野君の事を気にして
世話してるのに親の心、子知らずとはこの事だろうか?
でももしかしたら、
僕にも分からない矢野君の思いもあるのかも知れない。
矢野君は
“ハ~っ”
と一つ伸びをすると、
「仁にはさ、お前、どこまできいてるんだ?」
と急に訪ねてきた。
「え~? 何処まで聞いてるんだって……
記憶喪失の事?
そんなに詳しくは聞いてないよ」
そう言うと、矢野君は舌打ちをして、
「ちぇっ、使えない奴だな」
とまた文句を言い始めた。
でもその言い方が矢野君と始めてあった時そのままで、
すぐにあの日の僕達に引き戻してくれた。
「君、使えない奴って失礼だな~
仕事先ではもう早く卒業して、
うちに就職してくれないかっていわれてるんだよ!」
と嘘八百である。
「へ~ お前、この間まで小間使いじゃ無かったか?
言わば、丁稚だな。
ホラ、あい~って言ってみな?」
「何それ? あい~?」
「ハハハハ、昔な、あっちこっち丁稚って番組があってな、
俺の大好きだった大叔母さんと一緒によく見たんだよ」
「あ~ 一花大叔母さんだね」
そう言った時、矢野君が変な顔をしたので、
“しまった!”
と思った。でも直ぐに、
「何だ? 仁の奴、
一花大叔母さんの事までお前に話してたのか?」
と勝手に勘違いしてくれたので助かった。
“気付いてないよね?
もっと気を付けなければ……”
ドキドキとしなから僕は
「そ…… そ…… そうだよ。
佐々木君と一緒に良く尋ねてたんでしょう?
良く花冠を作ってたって聞いたよ?」
そう言うと、矢野君は僕をチラッと見ると、
「お前、花好きなのか?」
と聞いて来た。
僕はポカーンとして矢野君を見ていたけど、
「うん、そうそう、花に携わる仕事がしたくてね、
だから大学もフラワーアレンジメントの専門にしたんだ!」
そう言うと、
「専門か……
じゃあ、お前じゃ無いな……」
そう矢野君がぽつりと言った時に、
『アイツ、城之内に行くって譲らなかったんだ。
きっと潜在意識の中に
会わなければいけない奴が
そこに行くと言った事を覚えていたんだろうな』
そう言った佐々木君の言葉を思い出した。
うつぶせた矢野君の頭のつむじが目に入った。
柔らかそうなその髪に手を差し伸ばそうとした瞬間、
「お、光、そんなところにうつ伏せて、
どうしたんだ?
まさか泣いてるって訳じゃないよな?」
佐々木君がそう言いながら
おトイレから戻って来たので、
ハッとして矢野君の頭に差し出そうとした手を引いた。
矢野君は顔を上げて
一度チラッと佐々木君の方を見たけど、
またうつ伏せて黙った。
“アイツ、どうしたんだ?”
佐々木君が僕の耳元で囁いたけど、
僕は肩を窄めて誤魔化すしかなかった。
佐々木君はふ~んとしたような顔をしたけど、
あまり気にしないような態度で席に着いた。
「あの~ もう出ようか?」
あまりにもの気まずさに、
僕は早くこの場を去りたかった。
「お前、チーズケーキは?
まだ一口しか口を付けてないみたいだけど?」
テーブルに目を落とすと、お皿の上には、
まだそのままと言ってもいい程のチーズケーキが残っていた。
「へへ 何だか一口食べたらお腹いっぱいでさ……」
そう言ってはごまかしたけど、更に気まずい。
あのさ…… 僕…… もう帰らなくちゃいけないけど、
佐々木君達はどうする?」
そう言ってゆっくりとコーヒーを飲む
佐々木君の方をチラッと見た。
「お前な~ 人の事叩き起こして呼び出しておいて
もう帰るだ~?!」
仕事休みでまだ寝ていた佐々木君を、
叩き起こしてここに呼び出したのは僕だ。
最近の矢野君の態度に
悶々としていたから愚痴を聞いてもらいたかっただけだ。
きっとスッキリすると思ったのに、
まさかこんな展開になるとは思いもしなかった。
「実はさ~ 俺、
これから用事があるんだよ。
陽向、お前さ、本当は暇なんだろ?
光の事頼めるか?」
そう言って矢野君の方をチラッと見た。
「えっ? えっ? え~~~っ!!!」
僕は思わず大声を出してしまた。
一斉に周りにいた人達が僕を見たので、
“すみません、すみません”
と言ってペコペコと謝る羽目になってしまった。
佐々木君は他人事だと思って、
「ホラ、チャンスだろ?
じっくりと思い出して貰えよ」
とニヤニヤしながら耳打ちしてきた。
“何ですとー?! 頭は正気ですか~?
全く、トイレに行ってる間に
僕たちが何を話してたか知りもしない良くそんなことが言えますね!“
佐々木君に愚痴を言おうと思っても埒が明かない。
僕をため息を吐くと、うなだれて
「分かったよ、
もう行ってもいいよ。
今日は付き合ってくれて有難う」
と諦めた。
佐々木君は伝票を掴むと、
「じゃあ、ここは俺が払っておくから」
そう言って足取り軽く、颯爽とカフェを後にした。
佐々木君の姿が見えなくなるや否や、
「仁のやろう、行ったか?」
と矢野君が普通の面持ちで顔を上げた。
僕は目を丸くして、
「な……、な……」
とワナワナとした。
「は~ アイツいい奴だけど、
時々息が詰まるんだよな」
とのセリフに僕は何も言えずに、
只横目で矢野君を見る事しか出来なかった。
佐々木君はあんなに矢野君の事を気にして
世話してるのに親の心、子知らずとはこの事だろうか?
でももしかしたら、
僕にも分からない矢野君の思いもあるのかも知れない。
矢野君は
“ハ~っ”
と一つ伸びをすると、
「仁にはさ、お前、どこまできいてるんだ?」
と急に訪ねてきた。
「え~? 何処まで聞いてるんだって……
記憶喪失の事?
そんなに詳しくは聞いてないよ」
そう言うと、矢野君は舌打ちをして、
「ちぇっ、使えない奴だな」
とまた文句を言い始めた。
でもその言い方が矢野君と始めてあった時そのままで、
すぐにあの日の僕達に引き戻してくれた。
「君、使えない奴って失礼だな~
仕事先ではもう早く卒業して、
うちに就職してくれないかっていわれてるんだよ!」
と嘘八百である。
「へ~ お前、この間まで小間使いじゃ無かったか?
言わば、丁稚だな。
ホラ、あい~って言ってみな?」
「何それ? あい~?」
「ハハハハ、昔な、あっちこっち丁稚って番組があってな、
俺の大好きだった大叔母さんと一緒によく見たんだよ」
「あ~ 一花大叔母さんだね」
そう言った時、矢野君が変な顔をしたので、
“しまった!”
と思った。でも直ぐに、
「何だ? 仁の奴、
一花大叔母さんの事までお前に話してたのか?」
と勝手に勘違いしてくれたので助かった。
“気付いてないよね?
もっと気を付けなければ……”
ドキドキとしなから僕は
「そ…… そ…… そうだよ。
佐々木君と一緒に良く尋ねてたんでしょう?
良く花冠を作ってたって聞いたよ?」
そう言うと、矢野君は僕をチラッと見ると、
「お前、花好きなのか?」
と聞いて来た。
僕はポカーンとして矢野君を見ていたけど、
「うん、そうそう、花に携わる仕事がしたくてね、
だから大学もフラワーアレンジメントの専門にしたんだ!」
そう言うと、
「専門か……
じゃあ、お前じゃ無いな……」
そう矢野君がぽつりと言った時に、
『アイツ、城之内に行くって譲らなかったんだ。
きっと潜在意識の中に
会わなければいけない奴が
そこに行くと言った事を覚えていたんだろうな』
そう言った佐々木君の言葉を思い出した。
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