Endless Summer Night ~終わらない夏~

樹木緑

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第52話 合コン

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「そう言えばお前、光と一緒に合コンに行くんだってな。

一体何の因果なんだろうな。

あいつ、久々に張り切っててさ、
記憶をなくして以来初めてじゃないのか?

毎日鏡の前でにらめっこしてるぞ?
いい傾向なんじゃないか?」

そう言って佐々木君がプッと笑った。

「ちょっとぉ~ まじで笑い事じゃないから!

一体矢野君、何を考えてるの?!

この間までは合コンについてブウブウ言ってたのに、
知り合いのΩを連れてくるって?

僕、矢野君にΩの友達がいる事さえ知らなかったよ。

そのΩの友達って女の子なんでしょ?」

僕がそう尋ねると、
佐々木君は顰めっ面をして、

「俺だってアイツにそんな友達がいる事は知らなかったよ。

女の子、女の子いう割には、
女の影があったことは無いからな。

まあ、俺が見た限りではだけどな。

でも行ってる大学が城之内だからな~

アイツが本気で番を探したいって思ったら、
訳ないんじゃないか?」

佐々木君のそのセリフに、
これまではあまり考えようとはしなかった事が
現実として迫って来て、少しだけ焦る気持ちが出てきた。

「ねえ、αってさ、
番がいても他のΩを番にできるものなの?

佐々木君、その事について何か知ってる?」

「あぁ~? つがいの法則だろ?

αってどうなんだろうな?

やっぱり番がいれば他のΩには欲情しないんじゃ無いか?

経験した事無いし、
そばにそう言った人も居ないから分からないな~

Ωって番以外のαは……確か誘発出来ないんだよな?」

「そうだよ。
僕、前に外にいる時にヒートが来ちゃったけど、
なんて事は無かったんだよね。

ただ僕が少し辛いだけで……

番がいるのにヒートの時に番の物をもらえないせいかな?

最近は薬も効きにくくなってさ、
今度また新しい薬を試す事になってるんだ。

あ~あ、早く矢野君記憶を戻してくれないかな……

それか……番解消……

それだけは嫌だな……」

自分で言っておいて、
なんだか悲しくなってきてうなだれていると、

「あ、そう言えばさ、この間、
光の奴凄い血相で俺の所にやって来てさ、
何だったと思うか?」

と佐々木君が手をパーンと叩いて尋ねた。

「え? 矢野君が?
そんなの分かんないよ。

一体何事だったの?」

「あいつ、一花大叔母さんのチョーカーが無いって大騒ぎしてさ、
俺に一花大叔母さんのチョーカー取っただろうって
濡れ衣着せやがってよ。

知らねえよって言ったら、
記憶をなくす前に置き場所を変えたんだー
置き場所が分からないって今度は騒ぎだしてさ。

俺、もうちょっとでお前が持ってること言いそうになったよ」

佐々木君のその告白に、
僕は真剣な面持ちで、

「うん、言わないでいてくれてありがとう」

と彼の肩をポンポンとしてそう言った。

「でも、お前どうするんだ?

番になった事、光が記憶を取り戻すまで黙っておくつもりか?」

「それ以外選択義は無いでしょう?
彼、すべてを話して信じると思う?

男の、それも僕みたいなアホは嫌だって言ってる矢野君に
そんなこと言ったら、彼きっと発狂しちゃうよ?

記憶を戻すどころじゃ無いよ。

さらにトラウマを埋め込む事になっちゃうよ!」

僕がそう言うと、
矢野君はうん、うんと頷きながら、

「まあ、お前の選択が正しいな」

と一言言った。

「は~ 明日は遂に合コンか~
行きたくない~」

と騒いでいたのは昨日の事で、
僕は緊張した面持ちで今日は合コンの席に座っていた。

佐々木君の言った通りで、
矢野君が連れてきたのは城之内にいるΩの生徒達だった。

それも可愛い女の子ばかり。

Ωの女の子は飛び切り可愛いと有名だ。
恐らくDNAの時点でオメガは何か違うのだろう。

皆、フワフワとしたマシュマロみたいな感じで、
色白に頬がほんのりピンク色をしている。

それにΩなせいで、
ふんわりとした良い匂いがする。

これが1人だけだと話もわかるが、
ここにいるΩの女の子、
皆が皆だから信じられない。

じゃあ、男のΩは?
って聞かれると、そこは一から十までだと思う。

中には女の子みたいで色白でフワフワとした可愛い
Ωの男の子もいる。

かと思えば、αと見間違うようなΩもいる。

僕はと言うと、フワフワとまでは行かなくても、
普通の男性よりは可愛いタイプだと自負している。

でも矢野君にはそうは見えないみたいなので、
それは僕の自意識過剰なのかもしれない。

僕は周りを見回すと、
深いため息を吐いた。

勿論矢野君の両隣には可愛いΩの女性達が座っている。

見たところ、彼女達は矢野君の事が好きで付いて来たって感じだ。

更に周りを見回すと、
考えたくはないけど、
Ωの男性は僕1人の様だ。

「長谷川さん、
今日はこの合コンに呼んでくれて有難う~

男の子達のレベル、高くないですか?

私、T大医大生って言うくらいだから、
どんなのが来るか少し心配していたんですよね。

瓶底メガネのオタクっぽい人達ばっかりだったらどうしようって!

皆家柄も良さそうだし、
お持ち帰りされたら玉の輿に乗れるかもですね!」

そう言って本田さんはワクワクとしていた。

そんな本田さんも例外にもれず、
フワフワとした甘い香りのする可愛いΩの女の子だ。

そして早い事に、彼女は数人の男性に既に囲まれていた。

矢野君の方をチラッと見ると、
彼は相変わらず女の子に囲まれている。

“大丈夫。僕は数合わせ……”

そう自分に言い聞かせて冷静になろうとしても、
矢野君の女の子にチヤホヤされる姿は確かに頂けない。

それに比べ、僕の周りには誰もよってこない……

僕がジュースのカップをグイッと飲み干すと、

「何で俺とお前だけが残りものなんだ?」

そう言って立川君が僕の隣に座って来た。

僕は立川君をチラッと見ると、

「僕と立川君を一緒にしないでくださ~い!
僕はあくまでも、人数合わせで来たんですからね。

ゴリラな立川君には可愛い女の子はもったいないですよ!」

と言っている端からなんだかフワフワとして目が回りだした。

心なしか陽気にもなってきたような気がする。

横では立川君がギャーギャーと僕に文句を言っているけど、
頭が回らなくなってきていて、
彼がなんと言っているのか理解できない。

「ギャハハハ~
立川君、変な顔~」

そう言って笑っていると、

「あ~! お前、これオレンジジュースじゃなくて
オレンジカシスじゃないか?!

お前、こんなので酔ったのか?!」

そんな立川君の叫び声を最後に、
僕の意識は吹き飛んだ。

でもすぐにフワフワとする感覚で目を開けると、
僕の顔の直ぐそこに矢野君の顔があったのを確信したら、

“ムフフ~ フニャフニャ……
矢野君…… 好き……”

そう言ったような、言わなかったような記憶と一緒に
僕の意識はまた飛んでしまった。

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