龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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目の前で起きた事

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僕達4人は焚き火を囲みながら
他愛も無い話をしていた。

「後ね、ウサギ5匹で新しいお布団が出来るの~」

マグノリアが嬉しそうに言うと、

「じゃあ僕、明日5匹頑張るよ!」

アーウィンが気張って答えていた。

「大っきいのをお願いね!」

マグノリアがそう言うと、アーウィンは

”任せてよ!”

とでもいうように親指を立てて見せた。

最近はアーウィンもダリルと一緒に狩を頑張っている。

それに少し逞しくなって、男らしくなったところがある。

身長もダリル程とは言わなくても、
すらりと伸びて筋力も付き、一見見ではとても神官には見えない。

神官と言えば、つつましく、貧相な体つきのイメージがある。

僕も割と身長が伸び、12歳とは思えない体つきになっていた。

ここでは良く動き、健康な食べものをたくさん食べているせいだろう。

「あ、僕、もうちょっとこのスープ貰っていいかな?」

今日もいつものようにたくさん食べようとそう尋ねると、

「あ、殿下、それでは私が!」

そう言ってダリルが僕のボウルを受け取った。

ダリルがスープを装ってくれる間、
僕はパンにかぶりりついた。

「このパン、外はカリカリで中はモチモチで美味しいね~」

このパンは最近密林で見つけた小麦に似た穀物を引いて作ったものだ。

「ホント、ビックリよね。

最初は食べれるのか怪しかったけど、
アヒルがパクパク食べてたから大丈夫だとは思ったけど、
こんなに美味しいなんて~」

そう言ってマグノリアは頬を両手で抱えて口を蕩けさせたようにして微笑んだ。

「殿下、熱いので気を付けてください」

そう言ってダリルがボウルいっぱいに装ったスープを渡してくれた。

「ハフハフ、熱いけど美味しいね。

豆とトウモロコシのスープがこんなに美味しいことも、
此処にくるまでは全然知らなかったよ~」

僕は一口食べてその味を噛みしめた。

「確かに! 私も此処へ来るまで豆のスープなんて食べたこと無かったけど、
今はすごく好きな料理の一つよ!」

マグノリアが僕に同意した。

「豆のスープなんて、平民にとっては毎日の主食だよ!」

アーウィンが自慢げにそう言ったので、

「ダリルもよく豆のスープ食べてたの?」

そう尋ねると、彼は気まずそうに、

「いえ、私が食べてたのは……

中身のないスープにカビの生えたようなパンでした…」

ダリルのその答えに僕は絶句した。

「中身のないスープ?! 

それって味の着いたお湯って意味だよね?!

人間ってたったそれだけで生きていけるの?!

それにカビの生えたパン?!」

僕が仰天していると、

「孤児院ではそれがご馳走なんです」

ダリルが恥ずかしそうに微笑んだ。

前に孤児院での生活の事とか聞いた事あったけど、
そこまで酷い食生活だとは思わなかった。

「父上はそんな事知ってるのかな?!

孤児院には支給がいってるはずだよね?!」

何故支給が十分に行き届いてないのか疑問に思った。

「陛下はもちろん知っておられます。

良く自ら偵察にいらして居られましたので、
今ではかなり改善されたはずです」

ダリルのそのセリフを聞いて安堵した。

「そうなんだ…… 良かった~」

僕はもう一度スープを口に運ぶと、
沈みかけた太陽を見つめた。

見かけは凄く平和そうなのに、
裏で確実に何かが起きて居る。

それがすごく気がかりで、
でも何の情報も掴めてないのが歯がゆかった。

「そう言えばデューデュー遅いね」

そう言って僕は遠くの方を見た。

普通だったら、何処にいても食事前には戻って来て、
食べ始めるのと同時に僕達の横で伏せて座り会話を聞いて居る。

「女の子の龍を見つけちゃったとか?」

マグノリアが少し冗談っぽく言った。

「デューデューって繁殖期があるんだよね?

もしかして繁殖期なのかな?」

デューデューも人間の歳にすると適齢期っぽい。

今までそんな素振りは見せたことは無いんだけど、
今日に限って帰って来てないことが気に掛かった。

まあ、大きな龍だから、
よっぽどの事がないと大丈夫とは思うけど、
前に一度捕まった経験がある。

その時は身体が小さかった上に油断していたらしいので、
もうそんなヘマはしないとは言っていた。

僕は空になったボウルを横に置くと、

「ご馳走様。

今日も凄く美味しかったよ」

そうマグノリアに伝えた。

今では料理はマグノリアの独占担当だ。

「どういたしまして!」

マグノリアは一言そう言うと、
遠くを見て、

「でも本当にデューデュー遅いね。

一体どうしちゃったんだろう?!」

と心配そうな顔をした。

その頃は陽もすっかり沈んでしまい、
辺りは真っ暗になっていた。

焚き火の日だけが明るく周りを照らし出し、
僕達は食後のお茶を楽しんでいた。

「そう言えばさ、僕今日凄い呪文を見つけたんだ」

そう言うとアーウィンが、

「そうそう、神殿でも聞いた事ないような呪文なんだよ」

と僕のセリフに付け足した。

「どんな呪文なんですか?」

ダリルが尋ねると、
アーウィンが興奮したようにして、

「何とその呪文、時戻しの術って言って、
時間を戻す事ができる呪文なんです!」

そう言って手をパチパチと叩いた。

「時戻し? 聞いた事ないわね」

マグノリアがそう言うと、

「私も聞いた事がありませんね」

と、ダリルもマグノリアも初耳のようだ。

「で? 時間を戻す呪文って…
言葉の通り、唱えると昨日に戻るとか?」

マグノリアがそう尋ねるとアーウィンが、

「惜しい! 基本的にはそうなんだけど、
これって、死ぬ間際でないと発動しないみたい…

それに、どれくらい前に戻るのかとかも不規則みたいだよ?

本の中で説明されていたのは、一秒かもしれないし、
10分かもしれない、5年や、10年ってこともあるらしいよ。

でも生まれる前には戻れないみたい……」

そう言って説明した。

「死ぬ間際って……それじゃ全然役に立たないじゃない!

私、まだ死ぬ気ないし!

それにヘタすると、もう一度赤ちゃんからって言われてもちょっとね~」

そうマグノリアが言うと、

「まあ、実践しようと思っても無理だよ」

とアーウィンが答えた。

「え? どうして? 呪文なんでしょう?

凄くレベルの高い呪文とか?」

そうマグノリアが尋ねると、

「レベルの高さとかはわかんないけど、
呪文が古代文字で書かれてるんだ。

今まで見たこともないような文字で、
あれ、絶対読めないよ…

それに、解読できる人も、
今の世には居ないんじゃないかな?

アーウィンと色々と試したけど、
全然だったもん」

と僕が答えた。

「何だあ~ じゃあ、全然役に立たないんじゃない!」

そう言った後マグノリアが大きく欠伸をした。

「私今日は色々と力仕事して疲れちゃったから、
もう寝る準備をするわ」

マグノリアがそう言うと、アーウィンも、

「じゃあ僕も一緒にマグノリアと行くよ」

そう言って立ち上がった。

「ジェイド達はどうする?」

マグノリアが尋ねたので、

「うーん、ダリルはどうするか分かんないけど、
僕はもうちょっと此処でデューデューを待ってみる」

そう言うと、

「では私も殿下と此処に残ります。

後片付けはやっておきますので、
ゆっくりとお休み下さい」

ダリルがそう言って一礼した。

「分かったわ。 ありがとう。

じゃあ、お二人ともお休み」

「うん、マグノリアもね」

そう言うと、アーウィンも続けて

「お休み~」

と言ってマグノリアと手を繋いで洞穴の中へと消えていった。

僕は洞窟の中にスッと小さな灯りが付くのを確認して、
ダリルのすぐ隣に移動した。

そして彼の肩にもたれ掛かると、目を閉じた。

「殿下もお疲れでしたらお休みになって結構ですよ?

私がデューデュー様をお待ちしますので」

全然ロマンチックじゃないダリルがそう語りかけて来た。

「何でダリルはわかんないかな~

もっとダリルと2人だけの時間が欲しいのに!

何時も誰かそばにいるから、ほとんど2人きりってなれないし…」

「いえ、すみません、未だ何だか信じられなくて……

それに殿下だと思うと、何だか恐れ多くて…」

真っ赤になりながらダリルが答えた。

「プフッ、ダリルってホント変わらないよね。

まあ、そんな所も大好きなんだけど」

そう言うと、

「ハッ、いえ、大変に光栄です」

とまあ、返ってくる返事はいつもこんな感じだ。

僕はパチパチと燃える焚き火を見つめた。

「ダリル、大好きだよ、
此処まで着いて来てくれてありがとう。

折角お城でのいい生活が手に入ったのに、
僕の我儘に付き合わせてごめんね」

そう言うとダリルは僕の腰に腕を回して、

「私だって殿下の事を心から思っています。

殿下について来たのは私の意志ですので、
お気になさらないで下さい。

此処での生活もとても快適で暮らしやすいです。

それに此処には殿下がいらっしゃいますし…

私は何があっても、必ず殿下をお守りします」

そう言うと、ギュッとその腕に力を込めた。

僕がダリルを見上げると、
ダリルはそのまま僕の顔に近づきそっとキスをした。

僕達はもう何度も何度もキスをしてる。

僕としては次に進みたいけど、
ダリルとしては少しケジメのようなものを自分でつけて居るところがある。

まあ、皆がいるから難しい所はあるけど、
多分一番のネックは僕がまだ未成年だと言う事だろう。

でも来年で僕も成人する。

それは色々な意味を持つことになるけど、
とりあえず今はこれから起こることに耐えれるだけの力をつけなくてはいけない。

ダリルが一緒にいてくれて本当によかった。

僕はダリルにもたれ掛けながら、
燃える焚き火を見ていたら、だんだんとウツロウツロとして来た。

「殿下、お休みになられますか?」

ダリルが僕の眠そうな顔を覗き込んだ。

「いや、僕はデューデューを待つんだ!」

そう言いながら眠気と戦った。

「それにしても、デューデュー様は何処に行かれたのでしょうか?」

ダリルの優しい低い声を聞いていたら、
いつの間にか僕は眠りに入っていた。

そして結局はデューデューが帰ってくるのを待てずに、
ダリルの腕の中で眠ってしまった。

恐らくダリルもデューデューを待つ間、そこで寝落ちしたのだろう。

焚き火の火が消えかける頃僕は寒さで目を覚ました。

”あ、火が消えそうだ……”

ぼんやりと思いながら、ブルっと少し震えて辺りを見回した。

“デューデューまだ帰ってない……もう夜も明けるのに……

どうして?!”

そう思った時、真上からゴーッという風の音と突風が吹いて、
僕は上を見上げた。

”えっ?!”

っと思った瞬間、大きな黒い塊がドーンと言う音と共に目の前に落ちて来た。


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