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市場
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マグノリア達がサンクホルムから一番遠い島へ到着する頃、
アーレンハイム領ではジューク・アーレンハイムがイライラとしながら部下たちに当たり散らしていた。
「私の龍はまだ見つからないのか?! それにアーウィンとマグノリアはどうなっているのだ?!」
そう言ってその場にいた騎士たちに剣を向けた。
騎士達は
”ヒィッ”
と言っておののくと、自分たちに向けられた刃を目の前に唾をゴクリと飲み込んだ。
「陛下、剣をお納めください。
今、暴君国主と呼ばれるのは得策ではありません。
民達の中には数か月前の城の奇襲に疑問を持つ者達も出てきております。
今は民の支持を得る事に集中なさって下さい。
もうすぐ貴族たちを招集しての国家会議も開かれます」
そう言うと、ジェイク・アーレンハイムは剣を下ろした。
「もう良い、お前たちは下がれ!
引き続き奴らの捜索を続行せよ」
そう言うと、机をバン!と叩き、
「何故私達はあの時、あの龍が近づくまで誰も気が付かなかったのか?!
それに何故これだけ探しても奴らは見つからないのだ?!
大賢者は何をしているのだ!」
そう言って机の上に会った書類をクシャッと握りしめた。
「ランカス! 兄上からは何も連絡は入っていないのか?!」
そこに居合わせたランカスに尋ねても、ランカスは首を振るだけだった。
「お前、嘘はついていないだろうな?
兄上が連絡をしてくるとすれば、お前だけのはずだ……
もし兄上から連絡が来ても隠しているようだったら、
お前の家族の命は無いものと思え」
そう言うとランカスは深々と頭を下げた。
「マリオン、大賢者にはちゃんと奴らの検索はさせているのか?!」
ジューク・アーレンハイムはマリオンの方を向くと、
そう言いながら彼の方に近づいて行った。
「陛下、恐れながら、大賢者は長らく呪詛にかかっている為、
魔力の低下がみられます。
呪詛を掛けたままで居ると、これ以上は大賢者を頼るのは難しいかと……
それよりも、捜索の手を国内に留まらず国外にも向けて見られてはいかがでしょうか?
あちらにはあの龍が付いている故、国外に出るのもそう難しくは無いかと……」
マリオンがそう言うと、ジューク・アーレンハイムは首を振って、
「奴らの捜索はお前に任せる。
必ず奴らを見つけろ。
それと同時に兄上の安否の詳細も追え。
分かったら、もう行け!
ランカス、お前もだ!」
そう言うと、二人は深く敬礼をし、アーレンハイムの書斎を出た。
「全くどいつも、こいつも忌々しい!」
そう言うとジューク・アーレンハイムは椅子にドカッと座り両手で顔を覆った。
一方サンクホルムから遠く離れたマグノリア達一行は小さな島の小さな町にやってきていた。
人気のいない海岸に降り立ったデューデューはマグノリアとアーウィンを砂浜におろすと、
直ぐに姿を消して幼体に変化した。
「マグノリア、大丈夫? 少し木陰に行って休もう」
そう言うと、マグノリアを抱えて木陰にやって来た。
「流石に空気が少し冷たいわね」
マグノリアがそう言うと、
「まあ、ここはかなり北に来た所にある島だからな。
今まで居たところに比べるとけた違いだろう」
そうデューデューが声を発した。
「フフ、声だけ聞こえるってちょっと不思議ね。
そうね、ここの空気は澄んでいて、かえって気持ちがいいわ。」
マグノリアがそう言うと、アーウィンが、
「僕はデューデューの鱗が売れそうなところを見つけて売ってくるから、
マグノリアは此処でデューデューと待っていて。
直ぐに帰ってくるから。
デューデュー、マグノリアをお願い」
そう言い残してデューデューの鱗が入ったカバンをしっかりとわきに抱え込むと、
町の中を目指して駆けて行った。
”鱗を売るんだったらやっぱり冒険者ギルドか?
でもこんな小さな町に冒険者ギルドがあるのだろうか?”
辺りをキョロキョロとしながら町をウロウロしていると、
「お兄さん何か探し物?」
そう声をかけてきた小さな女の子がいた。
「君、ここら辺の子?」
アーウィンがそう尋ねると、その子は少し先を指さして、
「うん、私のお母さんがあそこで宿を開いてるの。
丁度市場へお使いに行くところだったのよ」
そう言ってにっこりと笑った。
「へー小さいのにもう働いてるんだね。
それはそうと、この町には冒険者ギルドってあるの?」
そう尋ねると、彼女は首を傾げた。
「冒険者ギルドって聞いたことない?」
そう尋ねると、彼女は首を振った。
「そっか、きっとこの町には無いんだね。
じゃあ、これを売るのは無理かな……」
そうポツリと言うと、
「何か売るものがあるの?
市場へ行けば誰か買ってくれるかもよ?」
とその子が進めてくれた。
「分かった、じゃあ、市場へ行ってみよう。
君、案内してくれる?」
「うん! こっちだよ!」
そう言って女の子はアーウィンの手を取った。
瞬く歩くと、大きな市場か開かれているのが見えた。
「へー割と大きいんだね」
「うん、あそこに案内所があるからそこで聞いてみたらいいよ!
じゃあ私はここで!」
「うん、ありがとう! 僕はアーウィン。君は?」
「私はスー! お兄さん、今夜の宿が必要だったら是非立ち寄ってね!
おいしいご飯もあるし、安くしとくわよ!
じゃあ、またね!」
そう言うと、スーは手を振って人ごみの中へと消えていった。
アーウィンはスーが見えなくなってから案内所へ向かうと、
「ここに品物を売れるところがありますか?」
そう受付に座っていた女性に尋ねた。
「どのようなものをお売りですか?」
「あの……龍の鱗なんですが……」
アーウィンがそう言うと、そのセリフを聞いていた周りに居た人々が、
「龍の鱗?!
龍って本当に存在している生き物なのか?!」
とザワザワと噂し始めた。
”あれ? もしかしてこの町では龍の鱗は需要が無い?”
受付を見ても、彼女はあんぐりと大きく口を開けて目を丸くするだけで、
彼女の態度からアーウィンはこの町で龍の鱗を売るのは無理だという事を悟った。
”ヤバイな…… 売らなくちゃいけないのに……”
諦めて戻ろうとした時、アーウィンの肩に手をポンと置いた人がいた。
後ろを振り返ると、フードを深くかぶり、
いかにも怪しげな男がアーウィンの後ろに居た。
「龍の鱗を持っているというのは真か?」
その男はアーウィンに尋ねた。
”ヤバイな……見た目は怪しいけど、大丈夫な人なのかな……?”
ちょっと戸惑っていると、
「ああ、失礼。 私は世界中を旅してまわっているシュウと申すものです」
そう言ってシュウは深くかぶったフードを取った。
シユウの姿を見てアーウィンの瞳が潤んだ。
シュウは真っ黒なサラサラの長い髪を後ろで一纏めにし、
綺麗な真っ黒な瞳をしていた。
シュウの姿に釘付けになるアーウィンに、
「私の顔に何か?」
そう言うシュウに、
「すみません! 知り合いに似ていたもので」
そう言って謝ると、
「もしかしてあなたの知り合いは黒い髪に黒い瞳をしていましたか?」
そう尋ねるシユウに、目を伏せるように、
「はい、でも彼は亡くなりました……」
そう言って下を向いた。
「それは言いづらいことを聞いてしまいましたね。
申し訳ない」
「いえ、貴方のせいではありません!」
そう言って首を振ると、
「そう言っていただけで幸いです。
そう言えば、先ほど龍の鱗がと聞こえたのですが、
貴方は龍の鱗を持っているのですか?」
そう尋ねた。
「はい、旅の途中で路銀に困ったら売ろうと私の家の物置にあったものを持ってきたのですが……」
そう言いながら、
”デューデュー、物置にあったなんて言ってゴメン!”
そう言って心の中で謝った。
「龍の鱗を物置……ですか?」
少し訝し気に尋ねるシユウに、
「あ……はい! 家は代々冒険者の家系で家には色んな物がゴチャゴチャと有って!」
苦し紛れにそう言うと、
「あー成程」
と何とかごまかせたようだ。
「それでは龍の鱗やらと言う物を見せていただけませんか?」
シユウに尋ねられ、アーウィンは小脇に抱えたカバンの口をそっと開けた。
シユウは目をパーッと輝かせると、
「ほぉ、これは間違いなく龍の鱗ですね。
それも灰色……」
そう言って顎に手をやった。
「もしかして灰色の龍の鱗は価値がありませんか?」
「いえ、灰色の龍の鱗は初めてです!
手に取ってみても良いですか?」
「あ、はいどうぞ」
そう言ってアーウィンはカバンを彼に手渡した。
シユウはデューデューの鱗をカバンから取り出して日にかざすと、
うっとりとしたような顔をして、
「日に透けると虹色に光ってなんて綺麗なんだ。
こんな色の鱗は初めて見ます!」
そう言ってデューデューの鱗に頬擦りをし始めた。
”ヒー この人、ヤバイ人?! このまま鱗持って逃げないよね?!”
少し心配になったけど、
「これ、売りたくてここへ来たんですよね?
是非これを私に買わせていただけませんか?!
貴方の言い値で買い取ることにしましょう!」
そう言ってアーウィンにアプローチし始めた。
「あの……売るのは良いのですが…… 私は龍の鱗の価値が分からなくて……
お幾らで売ればいいのか全然分からなくて……」
「それでは1万カヤールでは如何でしょうか?」
そう言われ、
”うっ、通貨が違う…… カヤールってどれくらいなんだ?!”
そう思っても、自分たちがどこから来たのか言う訳にはいかない。
1万カヤールがどれくらいの値段なのか分からなかったけど、
背に腹は代えられない。
「分かりました。それで売りましょう!」
と承諾した。
「今は1000カヤールしか持ち合わせが無いのですが、
今夜家まで受け取りに来ていただけませんか?
それまでには残りをお渡し出来るよう準備していましょう。
これが私の住まいです」
そう言ってシユウは自分の住所を書いたメモと1000カヤールをアーウィンに渡した。
シユウは丁寧にお礼を言うと、
浮足立ったまま鱗を抱えて走って行った。
アーウィンはもらった1000カヤールをバッグに入れると、
”これで病院の費用が払えればいいのだけど……”
そう思いながらマグノリアとデューデューを残してきた浜辺へと急いだ。
浜辺へ戻ると、マグノリアはシュロにもたれ掛かり眠っていた。
”デューデュー、居る?”
デューデューも眠っていたようで、
”ミュ~?”
と変な声で起き出して来た。
”デューデューの鱗売れたよ!
幾らで売ればいいか分からなかったから、
向こうの言い値で売ったんだけど、
1万カヤールで売れたんだ!
この国はサンクホルムとは通貨が違うんだね”
そう言うと、
”あー確か此処の通貨は1カヤール=1万ロデオ(日本円で1万円)だ”
のデューデューの答えに、僕は
”じゃあ、ロデオで言うと……1億?!”
と僕の方が倒れそうになった。
アーレンハイム領ではジューク・アーレンハイムがイライラとしながら部下たちに当たり散らしていた。
「私の龍はまだ見つからないのか?! それにアーウィンとマグノリアはどうなっているのだ?!」
そう言ってその場にいた騎士たちに剣を向けた。
騎士達は
”ヒィッ”
と言っておののくと、自分たちに向けられた刃を目の前に唾をゴクリと飲み込んだ。
「陛下、剣をお納めください。
今、暴君国主と呼ばれるのは得策ではありません。
民達の中には数か月前の城の奇襲に疑問を持つ者達も出てきております。
今は民の支持を得る事に集中なさって下さい。
もうすぐ貴族たちを招集しての国家会議も開かれます」
そう言うと、ジェイク・アーレンハイムは剣を下ろした。
「もう良い、お前たちは下がれ!
引き続き奴らの捜索を続行せよ」
そう言うと、机をバン!と叩き、
「何故私達はあの時、あの龍が近づくまで誰も気が付かなかったのか?!
それに何故これだけ探しても奴らは見つからないのだ?!
大賢者は何をしているのだ!」
そう言って机の上に会った書類をクシャッと握りしめた。
「ランカス! 兄上からは何も連絡は入っていないのか?!」
そこに居合わせたランカスに尋ねても、ランカスは首を振るだけだった。
「お前、嘘はついていないだろうな?
兄上が連絡をしてくるとすれば、お前だけのはずだ……
もし兄上から連絡が来ても隠しているようだったら、
お前の家族の命は無いものと思え」
そう言うとランカスは深々と頭を下げた。
「マリオン、大賢者にはちゃんと奴らの検索はさせているのか?!」
ジューク・アーレンハイムはマリオンの方を向くと、
そう言いながら彼の方に近づいて行った。
「陛下、恐れながら、大賢者は長らく呪詛にかかっている為、
魔力の低下がみられます。
呪詛を掛けたままで居ると、これ以上は大賢者を頼るのは難しいかと……
それよりも、捜索の手を国内に留まらず国外にも向けて見られてはいかがでしょうか?
あちらにはあの龍が付いている故、国外に出るのもそう難しくは無いかと……」
マリオンがそう言うと、ジューク・アーレンハイムは首を振って、
「奴らの捜索はお前に任せる。
必ず奴らを見つけろ。
それと同時に兄上の安否の詳細も追え。
分かったら、もう行け!
ランカス、お前もだ!」
そう言うと、二人は深く敬礼をし、アーレンハイムの書斎を出た。
「全くどいつも、こいつも忌々しい!」
そう言うとジューク・アーレンハイムは椅子にドカッと座り両手で顔を覆った。
一方サンクホルムから遠く離れたマグノリア達一行は小さな島の小さな町にやってきていた。
人気のいない海岸に降り立ったデューデューはマグノリアとアーウィンを砂浜におろすと、
直ぐに姿を消して幼体に変化した。
「マグノリア、大丈夫? 少し木陰に行って休もう」
そう言うと、マグノリアを抱えて木陰にやって来た。
「流石に空気が少し冷たいわね」
マグノリアがそう言うと、
「まあ、ここはかなり北に来た所にある島だからな。
今まで居たところに比べるとけた違いだろう」
そうデューデューが声を発した。
「フフ、声だけ聞こえるってちょっと不思議ね。
そうね、ここの空気は澄んでいて、かえって気持ちがいいわ。」
マグノリアがそう言うと、アーウィンが、
「僕はデューデューの鱗が売れそうなところを見つけて売ってくるから、
マグノリアは此処でデューデューと待っていて。
直ぐに帰ってくるから。
デューデュー、マグノリアをお願い」
そう言い残してデューデューの鱗が入ったカバンをしっかりとわきに抱え込むと、
町の中を目指して駆けて行った。
”鱗を売るんだったらやっぱり冒険者ギルドか?
でもこんな小さな町に冒険者ギルドがあるのだろうか?”
辺りをキョロキョロとしながら町をウロウロしていると、
「お兄さん何か探し物?」
そう声をかけてきた小さな女の子がいた。
「君、ここら辺の子?」
アーウィンがそう尋ねると、その子は少し先を指さして、
「うん、私のお母さんがあそこで宿を開いてるの。
丁度市場へお使いに行くところだったのよ」
そう言ってにっこりと笑った。
「へー小さいのにもう働いてるんだね。
それはそうと、この町には冒険者ギルドってあるの?」
そう尋ねると、彼女は首を傾げた。
「冒険者ギルドって聞いたことない?」
そう尋ねると、彼女は首を振った。
「そっか、きっとこの町には無いんだね。
じゃあ、これを売るのは無理かな……」
そうポツリと言うと、
「何か売るものがあるの?
市場へ行けば誰か買ってくれるかもよ?」
とその子が進めてくれた。
「分かった、じゃあ、市場へ行ってみよう。
君、案内してくれる?」
「うん! こっちだよ!」
そう言って女の子はアーウィンの手を取った。
瞬く歩くと、大きな市場か開かれているのが見えた。
「へー割と大きいんだね」
「うん、あそこに案内所があるからそこで聞いてみたらいいよ!
じゃあ私はここで!」
「うん、ありがとう! 僕はアーウィン。君は?」
「私はスー! お兄さん、今夜の宿が必要だったら是非立ち寄ってね!
おいしいご飯もあるし、安くしとくわよ!
じゃあ、またね!」
そう言うと、スーは手を振って人ごみの中へと消えていった。
アーウィンはスーが見えなくなってから案内所へ向かうと、
「ここに品物を売れるところがありますか?」
そう受付に座っていた女性に尋ねた。
「どのようなものをお売りですか?」
「あの……龍の鱗なんですが……」
アーウィンがそう言うと、そのセリフを聞いていた周りに居た人々が、
「龍の鱗?!
龍って本当に存在している生き物なのか?!」
とザワザワと噂し始めた。
”あれ? もしかしてこの町では龍の鱗は需要が無い?”
受付を見ても、彼女はあんぐりと大きく口を開けて目を丸くするだけで、
彼女の態度からアーウィンはこの町で龍の鱗を売るのは無理だという事を悟った。
”ヤバイな…… 売らなくちゃいけないのに……”
諦めて戻ろうとした時、アーウィンの肩に手をポンと置いた人がいた。
後ろを振り返ると、フードを深くかぶり、
いかにも怪しげな男がアーウィンの後ろに居た。
「龍の鱗を持っているというのは真か?」
その男はアーウィンに尋ねた。
”ヤバイな……見た目は怪しいけど、大丈夫な人なのかな……?”
ちょっと戸惑っていると、
「ああ、失礼。 私は世界中を旅してまわっているシュウと申すものです」
そう言ってシュウは深くかぶったフードを取った。
シユウの姿を見てアーウィンの瞳が潤んだ。
シュウは真っ黒なサラサラの長い髪を後ろで一纏めにし、
綺麗な真っ黒な瞳をしていた。
シュウの姿に釘付けになるアーウィンに、
「私の顔に何か?」
そう言うシュウに、
「すみません! 知り合いに似ていたもので」
そう言って謝ると、
「もしかしてあなたの知り合いは黒い髪に黒い瞳をしていましたか?」
そう尋ねるシユウに、目を伏せるように、
「はい、でも彼は亡くなりました……」
そう言って下を向いた。
「それは言いづらいことを聞いてしまいましたね。
申し訳ない」
「いえ、貴方のせいではありません!」
そう言って首を振ると、
「そう言っていただけで幸いです。
そう言えば、先ほど龍の鱗がと聞こえたのですが、
貴方は龍の鱗を持っているのですか?」
そう尋ねた。
「はい、旅の途中で路銀に困ったら売ろうと私の家の物置にあったものを持ってきたのですが……」
そう言いながら、
”デューデュー、物置にあったなんて言ってゴメン!”
そう言って心の中で謝った。
「龍の鱗を物置……ですか?」
少し訝し気に尋ねるシユウに、
「あ……はい! 家は代々冒険者の家系で家には色んな物がゴチャゴチャと有って!」
苦し紛れにそう言うと、
「あー成程」
と何とかごまかせたようだ。
「それでは龍の鱗やらと言う物を見せていただけませんか?」
シユウに尋ねられ、アーウィンは小脇に抱えたカバンの口をそっと開けた。
シユウは目をパーッと輝かせると、
「ほぉ、これは間違いなく龍の鱗ですね。
それも灰色……」
そう言って顎に手をやった。
「もしかして灰色の龍の鱗は価値がありませんか?」
「いえ、灰色の龍の鱗は初めてです!
手に取ってみても良いですか?」
「あ、はいどうぞ」
そう言ってアーウィンはカバンを彼に手渡した。
シユウはデューデューの鱗をカバンから取り出して日にかざすと、
うっとりとしたような顔をして、
「日に透けると虹色に光ってなんて綺麗なんだ。
こんな色の鱗は初めて見ます!」
そう言ってデューデューの鱗に頬擦りをし始めた。
”ヒー この人、ヤバイ人?! このまま鱗持って逃げないよね?!”
少し心配になったけど、
「これ、売りたくてここへ来たんですよね?
是非これを私に買わせていただけませんか?!
貴方の言い値で買い取ることにしましょう!」
そう言ってアーウィンにアプローチし始めた。
「あの……売るのは良いのですが…… 私は龍の鱗の価値が分からなくて……
お幾らで売ればいいのか全然分からなくて……」
「それでは1万カヤールでは如何でしょうか?」
そう言われ、
”うっ、通貨が違う…… カヤールってどれくらいなんだ?!”
そう思っても、自分たちがどこから来たのか言う訳にはいかない。
1万カヤールがどれくらいの値段なのか分からなかったけど、
背に腹は代えられない。
「分かりました。それで売りましょう!」
と承諾した。
「今は1000カヤールしか持ち合わせが無いのですが、
今夜家まで受け取りに来ていただけませんか?
それまでには残りをお渡し出来るよう準備していましょう。
これが私の住まいです」
そう言ってシユウは自分の住所を書いたメモと1000カヤールをアーウィンに渡した。
シユウは丁寧にお礼を言うと、
浮足立ったまま鱗を抱えて走って行った。
アーウィンはもらった1000カヤールをバッグに入れると、
”これで病院の費用が払えればいいのだけど……”
そう思いながらマグノリアとデューデューを残してきた浜辺へと急いだ。
浜辺へ戻ると、マグノリアはシュロにもたれ掛かり眠っていた。
”デューデュー、居る?”
デューデューも眠っていたようで、
”ミュ~?”
と変な声で起き出して来た。
”デューデューの鱗売れたよ!
幾らで売ればいいか分からなかったから、
向こうの言い値で売ったんだけど、
1万カヤールで売れたんだ!
この国はサンクホルムとは通貨が違うんだね”
そう言うと、
”あー確か此処の通貨は1カヤール=1万ロデオ(日本円で1万円)だ”
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