龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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デューデューの子育て

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「ハウ、アウ、ウウウウ~」

デューデューは悶えた様な声を出すと、

「翠! くすぐったいのだ!

そんなに私の乳を吸うで無い!

何にも出てこないぞ!」

翠に露わになった胸をチュパチュパ吸われていた
デューデューはそう言うと、
翠を自分の胸から引き剥がした。

デューデューに抱え上げられた手の中で
未だデューデューの胸目掛けてモゴモゴ動く翠を見ると、

「ハテ? 人の子は乳がないと何を飲むのだ?」

と、頭を捻った。

”う~む……

翠はどんな食事をしていた?!

どんなに思い出そうとしても、
マグノリアの乳を吸っていた姿しか思い浮かばんな?

全くあの女は恥ずかしげもなく!


………………



イヤ、いかん、いかん、今はそれどころでは無い!

もう夜も明けるし、翠もソロソロ本格的に腹が空く頃だろう……“

しきりにデューデューの乳を吸おうとする翠を見てデューデューが呟いた。

デューデューは

“う~む”

と唸ると、

「翠よ、お前の食を探さねばならないが、
お前を連れて街をウロウロするわけにはいかないのだ。

私は帝国まで一っ飛びしてショウとスーに会ってこようと思うのだが、
お前はどう思うか?

と言ってもお前には分からぬな。

だがな、きっと奴らが良い知恵を絞ってくれる筈だ。

お前を暫く一人にするのは心許無いが、
此処でちと留守番をしていてくれないか……」

デューデューはそう翠に言うと、
先ほど作っておいた囲いの中に翠を入れた。

「ほら、これはマグノリアの古い洋服だ。

未だマグノリアの匂いが残っているぞ。

お前にも分かるか?

だから暫くこれで遊んでいると良い。

それと馬車から持ってきた荷物の中に
お前のオモチャもあった」

デューデューはそう言うと、
マグノリアの服とマグノリアが翠の為に
荷物に詰め込んでいたオモチャを囲いの中に入れた。

そして龍の姿に変わると、
す~っと姿を消して暫く翠の様子を見ていた。

翠はオモチャを口に入れたり、
吸ったり、
床に投げつけたりして遊んだ後、
マグノリアの服を寄せ集めてその上に頭を乗せウトウトし始めた。

“そうだな、疲れているよな。

色々あった夜だったからな。

どれ、何時もだったら未だ寝ている時間だな。

このまま寝落ちしてくれたら、あと少しは大丈夫だろう。

サッと行って夜が明ける前に帰ってこよう”

デューデューはそう呟くと、
静かに帝国のショウとスーの屋敷目掛けて飛び立った。

ショウの屋敷は前に一度来ているので、
勝手は何と無く覚えていた。

ショウの邸宅に到着すると、
デューデューは彼らの寝室の窓をコツコツと爪で叩いた。

さすがスーは夜中の授乳に起きるせいか、
少しの音にも敏感になっていた。

窓のコツコツと言う音で目を覚ますと、
ショウを揺り起こした。

「ショウ! 起きて!」

スーがショウを揺り起こすと、

「う~ん」

と言って寝返りを打ち、

「もうオッパイの時間?」

と少し寝ぼけていた。

スーはショウの頬をペチペチと叩くと、

「違うのよ。

窓の外で誰かが窓を叩く音がするの!」

スーがそう言うと、ショウはガバッと起き上がった。

そんなショウにびっくりしたスーは、

「貴方、赤ちゃん達の授乳の時より、起きるのが素早いわね」

そう笑って言うと、

「きっとデューデュー様だ!」

ショウはそう言ってガウンを羽織ると、
ベットから飛び出して窓へとスタスタと歩いて行くと、
その窓をあけた。

ビューッと風が絵吹き抜けて、
デューデューは窓から中へ入ると、
ス~っと姿を現した。

「矢張りデューデュー様!

このような夜更けに何か起こったんですか?!」

ショウが尋ねると、デューデューは率直に、

「アーウィンとマグノリアが死んだ」

そう二人に伝えた。

「な……何ですって!

お兄様とお姉様が亡くなった?!

一体何があったあったのですか!」

スーがベットから飛び降りてきた。

デューデューは遠くを見たようにすると、

「アーレンハイムに見つかった。

最後まで抵抗したのだが、
奴の方が一枚……いや、何倍も上手だった……

済まない、お前の馬をダメにしてしまった」

そう言って目を伏せた。

「私の馬なんてどうでもいいのです!」

そう言ってショウは拳を握りしめた。

「デューデュー様は大丈夫だったのですか?!」

ショウが尋ねると、デューデューは黙り込んだ。

「申し訳ありません。

不躾な事を申しました」

ショウがそう言うと、

「いや、私も危なかったのだ……

だがアーウィンとマグノリアが翠を助けてくれと翠を私に託し
その代わり奴らが犠牲になった」

そう言って頭を落とした。

「では、翠様は大丈夫だったのですね?!

翠様はどこに?!

一緒に来られたのですか?!」

ショウはそう言うと、辺りをキョロキョロと見回した。

「いや、翠は安全な所で今は眠っている……が………

翠がもうソロソロ腹を空かして起きてくる………

彼奴はいつもマグノリアの乳を飲んでいた。

だから私は翠に何を与えればいいのか分からないのだ……」

デューデューがそう言うと、

「ではデューデュー様が翠様をお育てになられるのですか?!」

ショウがそう尋ねると、

「翠を連れてきてください!

私たちが育てましょう!

龍のデューデュー様に人の子を育てるのは難しすぎます!」

スーがそう言うと、デューデューはス~っと人の姿に変わった。

「まあ! デュー様はいつ人の姿に変われるように!

それにショウの様に東の大陸の方々の様な綺麗な黒髪で………」

スーが両手で口を塞いで驚いていると、

「私もまさか人の姿になれるとは思っていなかったが、
そうだな。

言われるまで気が付かなかったが、
この髪は東の大陸の者と同じ色だな……



実を言うと、私はアーウィンやマグノリア同様、
先の戦いでかなりの重傷を負ったのだが……

翠を連れて逃げ回っているうちに気を失って、
その間に翠に回復魔法を掛けられていたのだ……

完全に回復したら人の姿になれるようになっていた……」

デューデューはそう説明すると続けて、

「そう言うわけだから、翠は私が育てる。

翠はアーウィンとマグノリアが死の間際に私に託したのだ。

私はそこに居たものとして奴らの願いを全うしたい。

その為に私は人の姿になれる様になったのかも知れない……

それに翠は……」

デューデューが言いかけると、

「翠様がどうかされたのですか?」

ショウが何かを感じたように尋ねた。

デューデューは唇を噛み締めると、

「翠は銀色の髪をしている。

それに緑色の瞳で赤子と言うのに、
かなりの回復魔法の使い手だ」

デューデューがそう言うと、

「それでは翠様は……

サンクホルムの正当な後継者なのですね」

ショウがすかさずそう言った。

スーはショウの腕を引っ張ると、

「あの……それはどう言う意味なのでしょうか?

人の世界では銀色の髪は珍しいのですか?」

そう言って話に割り込んできた。

ショウは頷くと、

「そうなんだ。

銀色の髪に緑の目は聖龍の現し身と言って
サンクホルム王国の聖龍の後を継ぐ事ができる
正当な後継ぎにしかでないのだ」

そう言ってスーに説明をすると、

「それでは翠は王国に見つかったら命を狙われることになるのですね」

とスーは直ぐに理解することができた。

「ああ、だから私は人里離れた地で翠を育てなければならない。

だが龍でさえおろか、翠は人の子……

今となってはマグノリアの乳無しに何を与えればいいのかサッパリなのだ」

そう言うと、

「事情は理解致しました。

それではこれをお持ちください」

スーはそう言うと、
寝室のクーゼットから箱を持ってくると、

「これは哺乳瓶と言って赤ちゃん用のカップです。

そしてこちらが粉ミルク……

お湯と混ぜると、人の乳と同じような栄養価のある、
赤ちゃん専用の飲み物になります。

これを哺乳瓶に入れて翠にお与えください」

スーはそう言うと、
粉ミルクの沢山入った箱をデューデューに渡した。

「済まない。

恩に着る!」

デューデューがそう言って礼をすると、

「粉ミルクがなくなれば、
いつでもいらして下さい!

それと、今翠は月齢幾つですか?」

スーが尋ねると、

「生まれたのが3月だから今はざっと数えて5ヶ月頃か?」

デューデューがそう言うと、

「それではこれもお持ち下さい」

そう言って小さな瓶を沢山箱の中に付け足した。

「これは何だ?!」

デューデューが瓶を一つとって透かしてみると、

「それは赤ちゃん用の食べ物です。

翠はもう5ヶ月だと離乳食始めてもいい頃です」

スーがそう説明すると、

「離乳食とは何だ?」

デューデューが瓶を開け中の匂いを嗅ぎながら尋ねた。

「離乳食とはミルクの後に赤ちゃんが食べ始める
ドロドロとした飲み込んでも良い食べ物です。

大体は一つの植物又は果物から作られています。

これはいろんな味を混ぜないって事で、
初めてミルク以外を食べる赤ちゃんに食べの物の味を覚えさせる為です。

此処にあるのは全て野菜をドロドロにしたもので
自然の甘みで調味料は一切使ってない赤ちゃんに優しい物です。

1日一度、同じ時間にお与えください。

慣れてきましたら、
1日の回数を増やして段々と硬くしてゆきます。

まずはこれを与え、
無くなればまた取りにいらして下さい。

それと色々と子育てのノウハウも伝授いたしましょう。

私も人の子育てを学んでいる所ですので」

スーはそう言うと、エルフの姿になった。

「おお、レイクスの魔法は解けたのか?!」

デューデューが尋ねると、

「はい、出産と同時に父上の魔法は解けてしまいました。
ですが代わりに私自身が自分で変化できるようになりました。

デューデューさまと同じですね」

スーはそう言うと微笑んだ。

「あの……私達の赤ちゃんを見て行かれますか?

隣の部屋で眠っています。

是非お兄様やお姉さまの分まで顔を眺めてやって下さい」

そう誘われて、デューデューは帰る前に子供の顔を見て行く事にした。

「此方です。

まだ眠っていますが……」

そう言って通された子供用の部屋には、
二つのベビーベッドが置いてあった。

“ん? 二つ?”

デューデューが少し顔を顰めて二つのベッドを見比べると、
スーがクスッと笑って、

「双子だったんですよ」

そう言ってベッドの前に立った。

デューデューは中を覗き込み赤ちゃんの顔を見てビックリした。

「この子は……」

「そうなんです、真っ二つに別れてしまいました……

どちらもショウに似て真っ黒な髪なのですが、
一人は私の血を濃く受け継いでしまったようです……」

そう言うと、エルフの耳をした赤子の頬をなでた。

「魔法で変化させないのか?」

デューデューが尋ねると、

「ダメなんです。

私も父上も試したのですが、
変化の魔法がこの子には効かなかったのです」

そう言って微笑んだ。

「それではこの子はどうするのだ?!」

デューデューが困惑げに尋ねると、

「今の所、片方との成長に違いは見られませんが、
恐らくこの子はある程度の年まで普通に成長していくと、
その後からは少しずつゆっくりになって行くと思われます。

幸い耳も普通のエルフよりは短いですし、
髪を伸ばせば目立たなくなるでしょう」

そう言ってその子のブランケットを胸まで掛け直した。

「お前達も難儀だな……

エルフと人間の子か……」

デューデューはそう言うと、
エルフの耳を持った赤子をジーッと見つめた。

そして微笑むと、

「どれ、私も翠が起きてくる前に帰る事としよう。

早くに起こして済まなかった」

デューデューがそう言うと、

「いえ! 困ったことがありましたら、
いつでも尋ねにらしてください!

翠にも会いたいですが、今は安全が第一ですね。

今は我慢しています。

でも、いつかは翠にも会わせて下さいね」

スーがそう言うと、

「デューデュー様、
これもお持ちください!」

そう言ってショウが袋いっぱいのお金を持ってきた。

「これは何だ?」

デューデューが尋ねると、

「セロンと言って、帝国の金貨です!

翠様を育てるに、必ず入りようになります!

もし足りなければ、いつでも言って下さい!

街へ買い物に行く必要があれば、
何時でも仰って頂ければお供いたします!」

ショウがそう言うと、

「済まない。

此れはありがたく受け取っておく。

恐らく必要になってくるだろうからな」

そう言うと、デューデューはお金の入った袋を箱の中に入れた。

「じゃあ私はこれでお暇させてもらう。

お前達もアーウィンやマグノリアと知り合いだったと言う事で
アーレンハイムに目をつけられているやもしれん。

十分に注意をする様に」

デューデューはそう言い残すとす~っと龍の姿に戻り箱を鷲掴みにすると、
姿を消してショウの屋敷から飛び去った。

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