龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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嘘でしょ?!

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「ちょっと待って!」

マグノリアが頭を抱えながら右手で僕達の会話を遮った。

僕とアーウィンはそんなマグノリアの動向をじっと見守っていた。

「私、今、凄く頭がこんがらがってるんだけど、
それって私だけ?!」

マグノリアがキョドキョドとした瞳を回しながら
混乱した様に僕達を見た。

アーウィンの方をチラッとみると、
アーウィンは少し冷や汗をかいたような、
血の気が引いた様な何とも言えない顔色になっていた。

“アーウィン、やけに静かだなと思っていたけど、
静かにパニックを起こしていたのか……”

二人の態度に少し安堵すると、

“フフッ……

やっぱりマグノリアとアーウィンなんだな”

そんな事を独り言の様に言って小さく笑った。

「ジェイド! 

貴方全て分かっていそうな笑みなんだけど、
まさか、知っていて私達に黙っていたって訳じゃ無いでしょうね?!」

僕の落ち着いた態度に、
マグノリアがジリジリと詰め寄って来た。

僕は慌てて、

「イヤイヤ、僕だってこんな状況は初めてだから知っていたって訳じゃ無いよ?

実際に自分が翠であってジェイドでもあるってことしか知らなかったし、
君の事はマグノリアとしてしか認識がなかったし、
それはアーウィンにも言えた事だけどね……」

そう言った後、

“でもそうか……

そう考えたら全て辻褄は合うよな……”

そうポツリと言うと、

「話しなさいよ~

ジェイドが知っている事は全て話して!」

そう言ってマグノリアが僕の肩を鷲掴みにしてグラグラと揺らした。

「うーん、じゃあ、まずマグノリアとアーウィンが知ってることを教えて?

恐らく僕の方がもっと情報を持っている様な気がする……」

そういうと、二人の顔を見た。

マグノリアの目はワクワクとしていたけど、
アーウィンは未だ青ざめた顔をしていた。

恐らく何か悟ったのだろう。

その後マグノリアをもう一度見たけど、
彼女の明日をも恐れない様なキラキラと何かを期待する様な目を見た時は、
少し救われた様な気がした。

僕だって平気で二人にこの話ができるとは思って居なかったから。

恐らく僕だけが知っている……いや、
予測しているこれから起こる、
いや、過去に僕たちに起こった出来事……

僕は当たりをキョロキョロと見回すと、

「きっと話は長くなるからあそこに座ろう」

そう言って嘗て皆で囲んで楽しい食事をした
焚火炉を囲んだ岩のベンチもどきを指差した。

「懐かしい……

此処は全然変わってないのね」

マグノリアがそう言いながらいつも彼女が腰掛けて居た指定席に座った。

その横にアーウィンが座り、
僕はフッとジャングルの方向を見ながら、

「変わってないか……

君達にはそうだろうね……」

そう言いながら、
僕は話がしやすい様に彼らの対角に座った。

これまでのやり取りから、
彼らにここで過ごした先の経験が無いことが薄っすらと分かった。

そんな僕のセリフに少しキョトンとした様な顔でマグノリアが、

「え? 貴方にとって此処は変わったって事?」

そう尋ねると、当たりをキョロキョロと見回した。

僕はフッと瞳を閉じると、
これまで僕が翠として経験して来たことを思い巡らした。

そしてそれをジェイドの記憶と絡め合わせた。

「まず一つ聞いておきたい事があるんだけど、
二人ともこれは夢だって認識してるんだよね?」

そう尋ねると、二人とも頷いた。

「じゃあ、君達は目覚めた後、
ここで……言い換えると、夢の中で起きた事覚えてる?」

そう尋ねると、二人は顔を見合わせ首を横に振った。

僕は深く息を吸い込み

“フ~”

っと吐き出すと、

「やっぱり君達も覚えて居ないんだね」

僕がそういうと、

「そういうって事はジェイドも覚えてないって事よね?」

そうマグノリアが尋ねた。

僕は頷くと、

「目覚めると、ここでの記憶は無くなるけど、
この夢の中で翠としての今の僕の記憶はあるんだ」

そう言うと、二人とも、
コクコクと力強く頷いた。

「じゃあ、マグノリア、君は翠としての僕が一緒にいるセシルって事で良いんだよね?」

そう尋ねると、

「そうよ、この夢から覚めると私はセシルって女の子になるの……

私、時々どちらが本当の世界か分からなくなるんだけど、
今のマグノリアが夢の世界って事であってるのよね?」

そう尋ねたので、僕は頷いた。

マグノリアは何かに気付いたのか、

「そうか……」

そう言うと、少し涙ぐんだ。

僕はアーウィンの方を見ると、

「アーウィンもこれが夢だと言う事はわかってるよね?

本当の君は今はスー……リュシアン皇太子であるって……」

そう言うと、アーウィンは袖で涙を脱ぐいながら、

「アーウィンはどうなったの?!

マグノリアは?!

セシルとルーが存在してるって事は……僕達は……」

そう言うと、ゴシゴシと涙を拭いた。

アーウィンに続いて、

「私達もそうだけど、
翠が存在してるって事はジェイドもそうなんでしょ?」

マグノリアがそう尋ねたので、僕はジャングルの方を見た。

二人もつられてそっちの方向を見た。

「ねえ、さっきも密林の方を見ながら、
何か呟いてたわよね?

あそこに何か秘密があるの?」

鋭いマグノリアがそう尋ねて来た。

「そうだね、じゃあ、夢の中の世界の君達は何処まで経験した事になってるの?」

僕が尋ねると、二人は顔を見合わせ頭を捻った。

「あ、僕の言い方が悪かったね、
君達がマグノリアやアーウィンとして覚えてる事はどんな事があるの?」

そう尋ね返すと、

「そうよね、セシルが存在してるって事はマグノリアの終わりがあるって事よね……

でもその事については私はちっとも知らないわ。

私が知っているのはって言うか、
夢で戻ってくるのは此処で皆んなで生活をして居たところまで……

でも今日は少し変だったの。

同じ場所なのに人が住んでいる様な気配がなくて……

皆を探して歩き回って居たらアーウィンに会って……

で、ジェイドに会ったってとこだけど、
いつもだったらデューデューやダリルも……」

そう言ってマグノリアが俯いて口を継ぐんだ。

そして肩を振るわせると、

「ねえ、向こうの世界にダリルはいないわよね?!

デューデューも……

二人はどうなってるの?!

生きてるの?!

貴方は今でもダリルと……?!」

そう言って僕を見た。

僕は静かに微笑むと、アーウィンの方を見た。

「アーウィン、君も大体はマグノリアと同じ様な感じなのかな?」

そう尋ねると、頷きながら、

「僕達の事は後でも良いよ。

僕もさっきからソワソワとしてるんだ!

マグノリアが言った様にデューデューやダリルはどうしてるの?!

翠は知っているの?!」

そう言って立ち上がった。

僕も立ち上がると、

「立ち上がったところでちょうど良い……

マグノリアも一緒に来てくれるかな?」

そう尋ねると、彼女もスクッと立ち上がった。

マグノリアが立ち上がった後は、

「有り難う。

じゃあ、二人とも僕について来てくれるかな?

そこまで歩きながら少し話をしよう」

そう言うと、僕は歩き出した。

二人が僕についてくるのを確認すると、

「僕は赤ちゃんの時から1匹の龍に育てられたんだ」

そう言うと二人はお互い見合って、

「え? それって……」

そう言って足を止めた。

「ほら、僕について来ないと話が聞こえなくなるよ」

そう言うと、二人はまた歩き始めた。

「僕を育ててくれた龍は~ あ、恐らく、
いや、今だとはっきりとわかるけど、
デューデューだね」

そう言うと、マグノリアは、

「翠! じゃあ、貴方の両親は貴方を捨てたって事なの?!」

そう言って怒った様な声を出した。

僕は足を止めて後ろを振り返ると、
マグノリアが涙をボロボロと流しながら、

「私がヌクヌクと何も知らずに両親に愛情を注がれ育てられている時、
貴方は龍に育てられてたのよね?!

デューデューは凄い奴だってしってるけど、
でもそれは余りにも……!」

そう言って肩を震わせた。

アーウィンも何かを思ったのか肩を震わせて俯いて居た。

「二人とも心配しなくても大丈夫だよ。

僕は父さん……あ、デューデューの事だね。

僕は彼を父さんと呼んで本当に自分の父親だと思ってたから……

それにデューデューにも凄く愛されて育ったから」

そう言うと、マグノリアもアーウィンもワーワー声を出して泣き出した。

「でも……でも……」

そう言いながらしゃくり上げ始めたマグノリアを見ると、
思わず顔が綻んだ。

「そんなに悲しまなくても大丈夫だよ。

父さんが僕の本当の両親も僕の事を凄く愛してくれてたって教えてくれたから!

僕は全然寂しく無かったし今では両親の事も凄く愛してるから」

そう言う僕の頭をマグノリアはポンポンと手で叩いてくれた。

その手が懐かしいのかマグノリアに頭をポンポンされながら僕は俯いて少し顔を赤らめ微笑んだ。

「でも、デューデューが翠を育てたって事は翠の両親はどうなったの?

何か育てられない理由でもあったの?」

僕の頭をポンポンしながらそう尋ねるマグノリアの手を取り、

「ほら、もう直ぐだから。

そしたら分かるよ」

そう言って開けた先にはジャングルへと入る入り口があった。

「やっぱり密林へ来てたのね。

こっちの方向だったから此処だとは思って居たけど、
此処がどうしたの?

私達の事と関係があるの?

それとも翠の両親と?!」

そう尋ねるマグノリアに、僕は入り口を指差してみせた。

そんな僕の指先を見て首を傾げるマグノリアに、

「翠の世界では此処に四つの墓があるんだ」

そう言うと、マグノリアがアーウィンの顔を見た。

そして二人ともその場を凝視して震え出した。

「それって……やっぱりそう言う事だよね?!」

そう言うアーウィンに、

「やっぱり君は気付いてたんだね」

そう言うと、僕はその入口に近付いて行った。

僕の後を恐る恐る二人も付いてくると、
マグノリアはその場にしゃがみ込んで、

「此処にあるお墓ってもしかして私達の?」

そう言って地面をペタペタと触り始めた。

僕はマグノリアの隣に跪くと、

「父さんが翠を此処に連れて来た事があるんだ。

翠が余りにも両親の事を尋ねるから……」

そう言うと、マグノリアが

“えっ?”

とした様に僕を見た。

「此処に二つ、
そしてジャングルの入り口を挟んで向こうに二つお墓があってね、
父さんは向こうのお墓の事は教えてくれなかったけど、
今ではもう分かってるよ。

向こうにあったのは僕とダリルの墓だ。

そしてもう分かってると思うけど、
此処が君とアーウィンの墓だ」

僕がそう言うとマグノリアが後ろに立つアーウィンを見上げた。

アーウィンはもう察知した様で両手を震わせ泣いていた。

アーウィンは僕を見下ろすと、

「ジェイド、いや、翠……ごめん。

僕は君の母を守れなかったんだね」

そう言って泣き崩れたアーウィンをマグノリアはオロオロした様にして
僕の方を見た。

僕は隣で泣き崩れているアーウィンの背をさすりながらマグノリアの方を見ると、

「父さんが僕を此処に連れて来た時に言った事は、
此処は僕の両親の墓でずっとかれらと此処で生活をしてたって事。

そしてそれは凄く楽しい思い出だったって事」

そこまで言うとマグノリアも察知したのか、

「うそ……! じゃあ、私達が貴方よりも年下なのは……」

そう呟いて唇を震わせながら眉間に皺を寄せ涙をいっぱいに溜めて僕を見た。








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