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旅の始まり
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“サンクホルムの王子が銀の髪に緑の瞳?!”
急に僕の心臓が跳ね上がった。
僕はそっといつも胸に掛けている
父さんから貰った母さんのアミュレットと
実の父さんの指輪を服の上からそっと触れ握りしめた。
そんな僕を見かねたセシルが、
「翠、大丈夫?
胸なんか押さえて気分でも悪いの?!」
心配そうにそう尋ねた。
ローティからの思いがけない情報は、
“気分が悪い”
と言っても過言では無いほど僕を動揺させた。
“生まれ変わりとまではいかなくても、
もしかしたら本当に僕はサンクホルムの王子の血縁かも知れない……”
そう言う思いが頭を過り始めた。
僕はセシルとローティを交互に見ると、
“きっと今がそうなんだ!”
そう言う思いを強く感じた。
僕は思い切って、
「あのさ、僕、サンクホルムに行ってみたいんだけど……」
当然そう伝えたら、
ローティもセシルもびっくりしたように僕を見た。
「翠、サンクホルムって……
私達帝都へ行くんじゃなかったの?」
セシルが心配した様に尋ねるので、
「あ、いや、今すぐと言うわけではなくて、
出来れば帝都でルーと合流した後で行ければと……」
そう言い変えると、
「その……翠がサンクホルムに行きたがるのって
やっぱり俺の推理のせいか?」
そうローティが尋ねて来た。
僕は髪を指でそっと梳きながら、
「実は2人に見てもらい物があるんだ」
そう言うと、セシルとローティは顔を見合わせた。
「何か夢の事で思い出した事があるの?!」
セシルが直ぐに食いついて来た。
僕は一つため息をついて、
「いや、全然」
そう言って首を振ると、
セシルは少しがっかりした様にして、
「そうか、夢での事を思い出したんでは無いのか……」
そう言って俯き、ため息をついた。
でも直ぐに顔をあげ僕を見ると、
「じゃあ、何? 見せたい物って何?! 今知りたいんだけど?!
ここじゃ話せないの?」
そう言っていつもの如く突っ込んできた。
僕は辺りの状況を目で見渡すと、
「う~ん、ここは人が多すぎてちょっと……」
そう言って肩を窄めた。
セシルは目の前にある丼に手を伸ばすと、
一気に食事を口の中に掻き込んだ
「ねえ、早く食べて帰りましょう!
翠が何を見せたいのか気になって、気になって、
食事どころじゃ無いわ!」
そう言って僕の丼を僕の前に押しやった。
ハッキリ言って僕はまだ食事どころでは無い。
これから2人に伝える事を考えると、
緊張で胃がキリキリとしてくる。
「何? 食べないの?」
そう尋ねるセシルに、
「あまりお腹が空いたと感じなくて……」
そう伝えると、
「じゃあ、包んでもらって持って帰る?
ストレージに入れてたら悪くならないわよ」
そう言うセシルに、
「え? 翠ってストレージ持ち?!」
ローティがビックリした様にして尋ねた。
「そうよ、ローティはもう仲間だから言うけど、
私も翠もストレージ持ちなの」
セシルがそう返すと、
「そりゃ凄い!
そうか、2人ともストレージ持ちか!
ドロップアイテムの運びが楽になるな!」
そう言ってローティは喜んでいた。
確かに何でも入れれるし、
重さも感じない。
食料も保存できて腐らないと言う事は初耳だ。
僕が食欲がなくグズグズとしている間にセシルは直ぐに、
「すみませ~ん!
これ、お持ち帰りに包んでいただけますか?!」
そう言ってテキパキと帰る準備をしていた。
僕が手を付けなかった夕食が箱に入って戻ってくると、
直ぐにそれをストレージに入れた。
ローティはそれを見ながら
「凄いな! 凄いな!」
そう言いながらニコニコとしていた。
「俺、サンクホルムを出た頃は、
こんな仲間が出来るなんて思ってもいなかったよ!
ずっと足踏み状態だったレベルも上がりそうだし、
冒険者としてこれからやっていけそうだし、
2人には本当に感謝してもしきれないな!」
そう言いながらテーブルを立った。
「そんな事は良いのよ!
困った時はお互い様でしょ!
それよりも早く宿に戻りましょ。
私、さっきから翠の見せたいものが気になって、気になって」
そう言ってセシルがクスッと笑った。
食事処を出ると、
僕達はセシルの急き立てで、あっと言う間に宿についた。
取り敢えず少し広めの男性陣の部屋で
僕達は一息ついた。
僕が未だ靴も脱がないうちから、
セシルは
「早く、早く!」
と僕のベッドに座り、
いかにも横に座れと言う様に自分の横を
ポンポンと叩いた。
そうすると、ローティも
向かい合わせで自分のベッドに腰掛けた。
「それで? それで? それで?!」
セシルが目をキラキラとさせて尋ねると、
僕も堪忍して靴を履いたままベッドに腰を下ろした。
「あのさ、実は2人に見てもらいたいものがあって……」
そう言うと、自分に向けひらりと手を翳した。
するとたちまち2人の顔が強張った。
「え? え? 翠…… それって……」
最初に声を出したのがセシルだった。
「うん、ごめん、実は訳あって髪の色を変えていたんだ。
これが僕の本当の髪の色だよ」
僕がそう言うと、
「こりゃ間違いないな。
翠、お前はジェイド王子の生まれ変わりだ」
そうローティが断言した。
「僕、まだ生まれ変わりって言っても俄かには信じられないんだけど、
ジェイド王子の血縁って確率は?」
そう尋ねると、ローティは
“う~ん”
と唸って、
「いや、それは確率が低いだろう。
王は早くに王妃を無くているからジェイド王子以外に子は無かったはずだ。
現王も結婚はしておらず、
浮いた話もこれまで一度もなかったそうだぞ?
もし翠がジェイド王子の血縁だとすると考えられるのは、
行方不明になった王が何処かで子を生したか、
行方不明になった王女がジェイド王子の子を孕っていたか……
それしか考えられないが、
どちらも確率としては低いだろう……
今のジェイドは聖龍の現し身そのものだ。
考えられるのはやはり、
お前がジェイド王子の生まれ変わりだと言う事だ!」
そうローティが言い切った。
僕は少し戸惑いながら、
「そんな話ってある?!
これは現実なの?!
生まれ変わりだなんて……
そんな事、神か、大賢者でない限りは!」
そう言いかけて何かが頭の中を過った。
“うっっ……”
っと言って頭を抱えた様にすると、
「ジェイド、お前はサンクホルムに行くべきだ!
そこには必ずお前の見つけなければいけない答えがあるはずだ」
そう言ってローティが僕の肩をポンと叩いた。
“サンクホルムへ行けば、
この訳のわからない衝動から解放されるのだろうか?!
この思い出しそうで思い出せない何かも、
思い出す事が出来るのだろうか?!”
僕はそう思いセシルを見た。
「翠、サンクホルムへ行きましょう!
帝都に立ち寄ったあとはスーを仲間にして、
私達……」
セシルがそう言ってローティを見ると、
「俺も一緒に行くよ。
俺は俺の推理が正しいのか見届けたい」
そう言ってローティが頷いた。
「それじゃあ、ローティがレベルを上げる事が出来るのか、
朝一でギルドに出かけてパーティー登録して、
その足で魔獣狩りに行きましょう。
それから真っ直ぐに帝都行きね。
レベル上げをしながら帝都へ向かおうと思ったけど、
それは今は辞めておきましょう。
サンクホルム行きは早い方がいいかもしれない……
私も何故か心が流行るの……
翠の心配が移ったのかしら……?
真っ直ぐ速攻で帝都へ向かえば後五日程で到着だけど、
それまでにはルーの問題も片付いていれば良いのだけど……」
そう言ってセシルが僕の目を見た。
僕もセシルの提案に賛成する様に頷いた。
「それじゃあ明日は早いし、
これでお開きにしましょう。
明日は一番鶏が鳴いたら私の部屋まで来て」
そう言ってセシルは自分の部屋へと帰っていった。
その夜はとても眠れる状態では無いと思ったけど、
割と早く眠りについた。
そして次の日の朝は一番鶏が鳴くのと同時にセシルの部屋のドアをノックした。
「2人とも準備はいい?」
そう言ってセシルが部屋から出て来た。
僕達は宿を引き払うとギルドでパーティー登録をして、
駆け出し冒険者が狩りをする野へ来た。
流石に早朝から狩りをする者は居ないだろうと思ったけど、
思ったよりも多くの冒険者が既に狩りを始めていた。
「う~ん、参ったわね。
こんな早朝から皆んな狩りをするとは思わなかったわ……」
セシルのそのセリフに、
「俺たち三人だし、
少し奥まで行ってみないか?
出発は少し遅くなるが、
奥の方だと少し強めの魔獣が出るはずだ」
とのローティの提案で僕達はもう少し奥の方へと進んで行った。
相変わらず野原は続いたけど、
少し奥へ進むと、コボルド達が群れをなして彷徨っていた。
「アレは何?
強いの? 経験値入る魔獣?」
僕がそうたずねると、
「シメシメ、アレはコボルドだ。
おそらくこの辺りにアイツらのデンがあるのかもしれない。
この辺りだとレベル8~10くらいではないか?」
そう言うローティに、
「じゃあ、僕達に打って付けの相手だな」
僕がそう返すと、彼は既に一目散にコボルド目掛けて走って行った。
ローティは
「ハイーヤッ!」
と声を掛けると、
剣を振り回しながらコボルドに切り付けて行った。
「1匹! 2匹! さ~ん匹!」
そう言ったかと思うと、
“シュン、シュン”
と風が斬るようにコボルド達を薙倒して行った。
「信じられない!
体がすごく軽い!
剣がバターナイフのようだ!」
そう言うローティは言葉の如くまるでバターナイフでバターでも切るように
コボルド達を次から次へとスライスして行った。
そんなローティを僕は呆気に取られながら見つめ、
セシルは
“キャー 魔石よ~ それにこん棒やナイフもドロップ~!
や~ん、こっちはペリドットにローズクヲーツ!!
ラッキーのセシルちゃんとは私の事よ~!」
そう、きいろい声を上げながらドロップを拾ってはストレージに放り込んでいた。
そこらにいたコボルドを全て短時間で狩ってしまったローティは、
息も切らさず僕のところへ走って来て、
「どうだ?! レベルは上がったか?!」
そう尋ねたので
「ステータス」
そう言うと、ローティのステータスが目の前に広がった。
そしてレベルのところには
“8”
と出ていた。
僕は嬉しくなって、
「ローティ、レベル8だよ!
レベルが上がってるよ!」
そう興奮して伝えると、
ローティは僕を抱き上げ、
そのままクルクルと舞った。
「ローティ、下ろして、下ろして!
目が……目が……~~~」
僕が目を回しながらそう言うと、
「あ、すまん、すまん! つい嬉しすぎて!
なあ、本当に俺のレベルが上がってるのか?!
本当にか?! 俺を喜ばせるために嘘は言ってないよな?!」
そう言って一瞬疑いに目で僕を見た。
僕は首を振ると、
「嘘じゃ無いよ!
嘘だと思うなら、教会へ行って魔道具で調べておいでよ!」
そう言うと、ローティは震えたように縮こまったかと思うと、
両手を上げて
「うわー!!!」
と叫んで飛び上がった。
「ほら、喜びたい気持ちは分かるけど、
僕達もう行かなきゃ。
目的地まで行けなくなるよ?!」
僕がそう言うと、セシルはラストスパートとでも言うようにドロップ品を速攻で回収し、
ローティは歌い踊りながら僕の周りを飛び跳ねていた。
全てが終わると僕達は急いで街の広場まで行き、
魔獣の住む森の手前の街まで行く馬車を拾い乗り込んだ。
現地点から森の手前の街までは2日掛かったが、
僕達は何事も無くその街に着いた。
その街に着くと、
やる事は沢山あった。
先ずは森の中を走ってくれる馬車を見つける事。
そしてギルドへ行き、
用心棒として森を一緒に抜けてくれる冒険者を見つける事。
一緒に森を抜けてくれる冒険者は割と早く見つかったけど、
馬車が中々見つからなかった。
取り敢えず10万セロンで募集したけど、
見つからなっかたので15万セロンに引き上げた。
勿論かかる費用は割り勘だったけど、
2人の出世払いでという事で僕が全て立て替えた。
中々馬車が見付からなかった僕達は
結局僕たちは5日間の時間ロスで15万まで上げて
やっと森を抜けてくれる馬車を見つけた。
一緒に行ってくれる冒険者達に連絡を取り、
次の日の朝一で僕たちは森へと入って行った。
森の中は薄暗くて気味悪かったけど、
冒険者達を唸らせるような魔獣は1匹も出ず、
僕達は無事に森の向こう側へと渡った。
残る危険な場所は山脈。
此処は帝都に近いせいか山賊が頻繁に旅行者や商隊を襲うと聞いた。
僕達は又新たに山を抜けてくれる馬車と
同行してくれる冒険者を見つけなければいけなかったけど、
雇った冒険者の質が悪かったのか山脈を抜ける時、
僕達にとんでもない事が起こった。
急に僕の心臓が跳ね上がった。
僕はそっといつも胸に掛けている
父さんから貰った母さんのアミュレットと
実の父さんの指輪を服の上からそっと触れ握りしめた。
そんな僕を見かねたセシルが、
「翠、大丈夫?
胸なんか押さえて気分でも悪いの?!」
心配そうにそう尋ねた。
ローティからの思いがけない情報は、
“気分が悪い”
と言っても過言では無いほど僕を動揺させた。
“生まれ変わりとまではいかなくても、
もしかしたら本当に僕はサンクホルムの王子の血縁かも知れない……”
そう言う思いが頭を過り始めた。
僕はセシルとローティを交互に見ると、
“きっと今がそうなんだ!”
そう言う思いを強く感じた。
僕は思い切って、
「あのさ、僕、サンクホルムに行ってみたいんだけど……」
当然そう伝えたら、
ローティもセシルもびっくりしたように僕を見た。
「翠、サンクホルムって……
私達帝都へ行くんじゃなかったの?」
セシルが心配した様に尋ねるので、
「あ、いや、今すぐと言うわけではなくて、
出来れば帝都でルーと合流した後で行ければと……」
そう言い変えると、
「その……翠がサンクホルムに行きたがるのって
やっぱり俺の推理のせいか?」
そうローティが尋ねて来た。
僕は髪を指でそっと梳きながら、
「実は2人に見てもらい物があるんだ」
そう言うと、セシルとローティは顔を見合わせた。
「何か夢の事で思い出した事があるの?!」
セシルが直ぐに食いついて来た。
僕は一つため息をついて、
「いや、全然」
そう言って首を振ると、
セシルは少しがっかりした様にして、
「そうか、夢での事を思い出したんでは無いのか……」
そう言って俯き、ため息をついた。
でも直ぐに顔をあげ僕を見ると、
「じゃあ、何? 見せたい物って何?! 今知りたいんだけど?!
ここじゃ話せないの?」
そう言っていつもの如く突っ込んできた。
僕は辺りの状況を目で見渡すと、
「う~ん、ここは人が多すぎてちょっと……」
そう言って肩を窄めた。
セシルは目の前にある丼に手を伸ばすと、
一気に食事を口の中に掻き込んだ
「ねえ、早く食べて帰りましょう!
翠が何を見せたいのか気になって、気になって、
食事どころじゃ無いわ!」
そう言って僕の丼を僕の前に押しやった。
ハッキリ言って僕はまだ食事どころでは無い。
これから2人に伝える事を考えると、
緊張で胃がキリキリとしてくる。
「何? 食べないの?」
そう尋ねるセシルに、
「あまりお腹が空いたと感じなくて……」
そう伝えると、
「じゃあ、包んでもらって持って帰る?
ストレージに入れてたら悪くならないわよ」
そう言うセシルに、
「え? 翠ってストレージ持ち?!」
ローティがビックリした様にして尋ねた。
「そうよ、ローティはもう仲間だから言うけど、
私も翠もストレージ持ちなの」
セシルがそう返すと、
「そりゃ凄い!
そうか、2人ともストレージ持ちか!
ドロップアイテムの運びが楽になるな!」
そう言ってローティは喜んでいた。
確かに何でも入れれるし、
重さも感じない。
食料も保存できて腐らないと言う事は初耳だ。
僕が食欲がなくグズグズとしている間にセシルは直ぐに、
「すみませ~ん!
これ、お持ち帰りに包んでいただけますか?!」
そう言ってテキパキと帰る準備をしていた。
僕が手を付けなかった夕食が箱に入って戻ってくると、
直ぐにそれをストレージに入れた。
ローティはそれを見ながら
「凄いな! 凄いな!」
そう言いながらニコニコとしていた。
「俺、サンクホルムを出た頃は、
こんな仲間が出来るなんて思ってもいなかったよ!
ずっと足踏み状態だったレベルも上がりそうだし、
冒険者としてこれからやっていけそうだし、
2人には本当に感謝してもしきれないな!」
そう言いながらテーブルを立った。
「そんな事は良いのよ!
困った時はお互い様でしょ!
それよりも早く宿に戻りましょ。
私、さっきから翠の見せたいものが気になって、気になって」
そう言ってセシルがクスッと笑った。
食事処を出ると、
僕達はセシルの急き立てで、あっと言う間に宿についた。
取り敢えず少し広めの男性陣の部屋で
僕達は一息ついた。
僕が未だ靴も脱がないうちから、
セシルは
「早く、早く!」
と僕のベッドに座り、
いかにも横に座れと言う様に自分の横を
ポンポンと叩いた。
そうすると、ローティも
向かい合わせで自分のベッドに腰掛けた。
「それで? それで? それで?!」
セシルが目をキラキラとさせて尋ねると、
僕も堪忍して靴を履いたままベッドに腰を下ろした。
「あのさ、実は2人に見てもらいたいものがあって……」
そう言うと、自分に向けひらりと手を翳した。
するとたちまち2人の顔が強張った。
「え? え? 翠…… それって……」
最初に声を出したのがセシルだった。
「うん、ごめん、実は訳あって髪の色を変えていたんだ。
これが僕の本当の髪の色だよ」
僕がそう言うと、
「こりゃ間違いないな。
翠、お前はジェイド王子の生まれ変わりだ」
そうローティが断言した。
「僕、まだ生まれ変わりって言っても俄かには信じられないんだけど、
ジェイド王子の血縁って確率は?」
そう尋ねると、ローティは
“う~ん”
と唸って、
「いや、それは確率が低いだろう。
王は早くに王妃を無くているからジェイド王子以外に子は無かったはずだ。
現王も結婚はしておらず、
浮いた話もこれまで一度もなかったそうだぞ?
もし翠がジェイド王子の血縁だとすると考えられるのは、
行方不明になった王が何処かで子を生したか、
行方不明になった王女がジェイド王子の子を孕っていたか……
それしか考えられないが、
どちらも確率としては低いだろう……
今のジェイドは聖龍の現し身そのものだ。
考えられるのはやはり、
お前がジェイド王子の生まれ変わりだと言う事だ!」
そうローティが言い切った。
僕は少し戸惑いながら、
「そんな話ってある?!
これは現実なの?!
生まれ変わりだなんて……
そんな事、神か、大賢者でない限りは!」
そう言いかけて何かが頭の中を過った。
“うっっ……”
っと言って頭を抱えた様にすると、
「ジェイド、お前はサンクホルムに行くべきだ!
そこには必ずお前の見つけなければいけない答えがあるはずだ」
そう言ってローティが僕の肩をポンと叩いた。
“サンクホルムへ行けば、
この訳のわからない衝動から解放されるのだろうか?!
この思い出しそうで思い出せない何かも、
思い出す事が出来るのだろうか?!”
僕はそう思いセシルを見た。
「翠、サンクホルムへ行きましょう!
帝都に立ち寄ったあとはスーを仲間にして、
私達……」
セシルがそう言ってローティを見ると、
「俺も一緒に行くよ。
俺は俺の推理が正しいのか見届けたい」
そう言ってローティが頷いた。
「それじゃあ、ローティがレベルを上げる事が出来るのか、
朝一でギルドに出かけてパーティー登録して、
その足で魔獣狩りに行きましょう。
それから真っ直ぐに帝都行きね。
レベル上げをしながら帝都へ向かおうと思ったけど、
それは今は辞めておきましょう。
サンクホルム行きは早い方がいいかもしれない……
私も何故か心が流行るの……
翠の心配が移ったのかしら……?
真っ直ぐ速攻で帝都へ向かえば後五日程で到着だけど、
それまでにはルーの問題も片付いていれば良いのだけど……」
そう言ってセシルが僕の目を見た。
僕もセシルの提案に賛成する様に頷いた。
「それじゃあ明日は早いし、
これでお開きにしましょう。
明日は一番鶏が鳴いたら私の部屋まで来て」
そう言ってセシルは自分の部屋へと帰っていった。
その夜はとても眠れる状態では無いと思ったけど、
割と早く眠りについた。
そして次の日の朝は一番鶏が鳴くのと同時にセシルの部屋のドアをノックした。
「2人とも準備はいい?」
そう言ってセシルが部屋から出て来た。
僕達は宿を引き払うとギルドでパーティー登録をして、
駆け出し冒険者が狩りをする野へ来た。
流石に早朝から狩りをする者は居ないだろうと思ったけど、
思ったよりも多くの冒険者が既に狩りを始めていた。
「う~ん、参ったわね。
こんな早朝から皆んな狩りをするとは思わなかったわ……」
セシルのそのセリフに、
「俺たち三人だし、
少し奥まで行ってみないか?
出発は少し遅くなるが、
奥の方だと少し強めの魔獣が出るはずだ」
とのローティの提案で僕達はもう少し奥の方へと進んで行った。
相変わらず野原は続いたけど、
少し奥へ進むと、コボルド達が群れをなして彷徨っていた。
「アレは何?
強いの? 経験値入る魔獣?」
僕がそうたずねると、
「シメシメ、アレはコボルドだ。
おそらくこの辺りにアイツらのデンがあるのかもしれない。
この辺りだとレベル8~10くらいではないか?」
そう言うローティに、
「じゃあ、僕達に打って付けの相手だな」
僕がそう返すと、彼は既に一目散にコボルド目掛けて走って行った。
ローティは
「ハイーヤッ!」
と声を掛けると、
剣を振り回しながらコボルドに切り付けて行った。
「1匹! 2匹! さ~ん匹!」
そう言ったかと思うと、
“シュン、シュン”
と風が斬るようにコボルド達を薙倒して行った。
「信じられない!
体がすごく軽い!
剣がバターナイフのようだ!」
そう言うローティは言葉の如くまるでバターナイフでバターでも切るように
コボルド達を次から次へとスライスして行った。
そんなローティを僕は呆気に取られながら見つめ、
セシルは
“キャー 魔石よ~ それにこん棒やナイフもドロップ~!
や~ん、こっちはペリドットにローズクヲーツ!!
ラッキーのセシルちゃんとは私の事よ~!」
そう、きいろい声を上げながらドロップを拾ってはストレージに放り込んでいた。
そこらにいたコボルドを全て短時間で狩ってしまったローティは、
息も切らさず僕のところへ走って来て、
「どうだ?! レベルは上がったか?!」
そう尋ねたので
「ステータス」
そう言うと、ローティのステータスが目の前に広がった。
そしてレベルのところには
“8”
と出ていた。
僕は嬉しくなって、
「ローティ、レベル8だよ!
レベルが上がってるよ!」
そう興奮して伝えると、
ローティは僕を抱き上げ、
そのままクルクルと舞った。
「ローティ、下ろして、下ろして!
目が……目が……~~~」
僕が目を回しながらそう言うと、
「あ、すまん、すまん! つい嬉しすぎて!
なあ、本当に俺のレベルが上がってるのか?!
本当にか?! 俺を喜ばせるために嘘は言ってないよな?!」
そう言って一瞬疑いに目で僕を見た。
僕は首を振ると、
「嘘じゃ無いよ!
嘘だと思うなら、教会へ行って魔道具で調べておいでよ!」
そう言うと、ローティは震えたように縮こまったかと思うと、
両手を上げて
「うわー!!!」
と叫んで飛び上がった。
「ほら、喜びたい気持ちは分かるけど、
僕達もう行かなきゃ。
目的地まで行けなくなるよ?!」
僕がそう言うと、セシルはラストスパートとでも言うようにドロップ品を速攻で回収し、
ローティは歌い踊りながら僕の周りを飛び跳ねていた。
全てが終わると僕達は急いで街の広場まで行き、
魔獣の住む森の手前の街まで行く馬車を拾い乗り込んだ。
現地点から森の手前の街までは2日掛かったが、
僕達は何事も無くその街に着いた。
その街に着くと、
やる事は沢山あった。
先ずは森の中を走ってくれる馬車を見つける事。
そしてギルドへ行き、
用心棒として森を一緒に抜けてくれる冒険者を見つける事。
一緒に森を抜けてくれる冒険者は割と早く見つかったけど、
馬車が中々見つからなかった。
取り敢えず10万セロンで募集したけど、
見つからなっかたので15万セロンに引き上げた。
勿論かかる費用は割り勘だったけど、
2人の出世払いでという事で僕が全て立て替えた。
中々馬車が見付からなかった僕達は
結局僕たちは5日間の時間ロスで15万まで上げて
やっと森を抜けてくれる馬車を見つけた。
一緒に行ってくれる冒険者達に連絡を取り、
次の日の朝一で僕たちは森へと入って行った。
森の中は薄暗くて気味悪かったけど、
冒険者達を唸らせるような魔獣は1匹も出ず、
僕達は無事に森の向こう側へと渡った。
残る危険な場所は山脈。
此処は帝都に近いせいか山賊が頻繁に旅行者や商隊を襲うと聞いた。
僕達は又新たに山を抜けてくれる馬車と
同行してくれる冒険者を見つけなければいけなかったけど、
雇った冒険者の質が悪かったのか山脈を抜ける時、
僕達にとんでもない事が起こった。
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彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。
姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。
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