消えない思い

樹木緑

文字の大きさ
56 / 201

第56話 100M 走2

しおりを挟む
100M 走は男子から行われた。
僕達がスタート地点まで行くと、
100M 走用のラインがくっきりと見えて、
緊張が更に増した。

ふと客席に目が行くと、
客員席の横に設けられた、
生徒会役員席に居る佐々木先輩が目に入った。

「一番は俺が頂くから。
こう見えて走るのは早いから。
会長に良いところを見せるチャンスだな」

櫛田君は凄く挑戦的に宣言した。
確かに僕は走るのは早くないけれども、
こんなに敵対されたのは生まれて初めてだ。
櫛田君は僕が先輩から
“体操服を借りた”
という事実がどちらにしろ気にいらないらしい。

「位置について、よ~い」
という声と共にピストルの音がした。
その音と共に駆け出した僕は勿論、
一番最後でゴールをした。
そして櫛田君は宣言した通り、
1番でゴールした。

生徒会執行部のテントの前を通り過ぎる時、
ニヤニヤとした佐々木先輩の顔を僕は見逃さなかった。

ゴール間際では矢野先輩が、
「要く~んがんばって~!」
と僕にエールを送っていた。

「団が違うのに堂々と応援して何て勇気のある人だ」

と思った僕だけど、
感情表現の大らかな先輩に、
文句を言う人は誰も居なかった。

みな矢野先輩のそう言った性格は、
良く把握しているようだった。

青木君は彼が宣言した通り、
一番でゴールした。
奥野さんは3番だった。

僕は団の点数に貢献することは出来なかったけど、
予想道理だったので、
あまり気落ちはしなかった。

1年生に続いて次は2年生で、
その後は3年生と続いた。

僕は応援席についてワクワクと、
矢野先輩や佐々木先輩の活躍を待った。

佐々木先輩は一番最初の列の走者だった。
先輩の列には、いかにもαと言う様な、
体格の良い先輩たちが並んでいた。
背が高いからそう見えるのか、
実際彼らが皆αなのかは分からなかったけど、
本当に背格好だけを見ても、
誰も佐々木先輩に見劣りはしなかった。

スタートのピストルの音がして、
一斉に飛び出した第1列目は、
佐々木先輩がダントツだった。

走る先輩はやっぱりカッコよかった。
思った通りの出だしで、
ゴールも予想していた通り。
この人に怖い物ってあるんだろうか?
絶対スタート前に緊張して、
ドキドキなんてしなかっただろうな、と思った。

「は~ やっぱりαは違うんだな」

と思って応援していると、
矢野先輩の列の番になった。

佐々木先輩とは逆で、
矢野先輩は何だか自分の様にと言うか、
自分の時よりもドキドキとした。

先輩、転ばないかな?とか、
ビリになったら恥ずかしい思いしないかな?
など、心配で、心配で……

矢野先輩は運動は苦手と言っていたので、
あまり期待はしていなかったが、
当の矢野先輩はと言うと、
意外にも早く、僕はびっくりしてしまった。

「だまされた!」

矢野先輩は腐ってもα。
どんなにスポーツが苦手と言っても、
やっぱり他のβやΩに比べると、
ハッキリと違いは分かった。

矢野先輩が2番手とかなり引き離れて1番を取ったのは、
凄い驚きだった。

「みて下さい青木君!
矢野先輩早いですよ!」

僕はバカみたいにはしゃいで青木君の袖をつかみ、
興奮したように言った。

そんな僕を青木君はジーっと見て、
「お前知らなかったのか?
矢野先輩って走るのバカみたいに早いぞ?
あれだけ一緒にいて気付かなかったとはな」
と言ったので、僕は凄くびっくりした。

「いや、矢野先輩、何時も運動だめだ~って……」
と言いかけると、
「あ~、 まあ確かに全般的に得意ではなさそうだよな。
だが、走るのだけはインハイタイムだからな」

その言葉に僕は更にびっくりした。

「え~! 矢野先輩ってもしかして佐々木先輩より早い……?」

「多分な」
そう言って青木君は涼しい顔をしていた。

僕にとってそのニュースは凄いショッキングだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~

なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。 傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。 家のため、領民のため、そして―― 少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。 だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。 「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」 その冷たい声が、彼の世界を壊した。 すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。 そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。 人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。 アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。 失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。 今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 12/10 5000❤️ありがとうございます😭 わたし5は好きな数字です💕 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

処理中です...