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第57話 人だかり
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100M 走が終わった後、僕は矢野先輩に言い寄ってやろうと、
先輩を探してグラウンドを歩き回った。
歩き回っている時に、
少し死角になったグラウンドの端で、
少しの人だかりが出来ている事に気付いた。
そのセンターに佐々木先輩が居て、
誰かと何か話をしているようだった。
僕はソロソロと人だかりの方に歩み寄って、
一体何が起きているのだろうと覗き込むと、
そこには見知った顔が……
そう、変装してカメラを持ったお父さんが、
佐々木先輩から尋問を受けていた。
僕はびくっりして、
「お父さん!」と叫んでしまった。
その瞬間、その人だかりが一斉に僕の方を見た。
勿論お父さんも一緒に。
お父さんは、“しまった!” と言う様な顔をして、
僕に視線を移した人ごみの中から
抜き足でこっそりと分からない様に後ずさろうとした。
でも、そんなお父さんの腕をガッチリと掴んでいたのは
佐々木先輩だった。
「この人、赤城君のお父さんですか?」
先輩は他人行儀の様に僕に質問してきた。
恐らく、僕達の関係がバレない様にするためだとは思ったけど、
凄い違和感だった。
「間違いなく、僕の父親ですが、
何か問題でもあったのですか?」
「あ……イヤ、木陰で怪しそうな人が望遠で
生徒の写真を撮っているって通報があって
尋問していたところなんですが……」
「すみません。
僕が体育祭にどうしても来るなって言ったので、
恐らくこっそりと覗きに来たんだと思います。
お騒がせしてすみません。
父には僕からちゃんと言って聞かせますので」
そう言って僕は人だかりに謝った。
そこには先ほど僕に敵意を向けた櫛田君も居た。
櫛田君は佐々木先輩に腕を絡めて、
僕を見下したように見ていた。
僕は佐々木先輩に腕を絡める櫛田君を見てムッとした。
「カエルの子はカエルだね」
そう言って櫛田君が僕のお父さんと僕を見比べて、
くすっと笑った。
僕には櫛田君の言ってる意味が直ぐに分かった。
恐らく、この人込みの皆も同じことを思っただろう。
只、佐々木先輩を除いては。
「馨!」
彼の名を呼んで佐々木先輩が櫛田君をいさめたので、
櫛田君は可愛く舌を出して、
「ゴメ~ン、 先輩。
僕……只……
赤城君ってお父さんに似てるのかな?
って思って……」
上目使いに茶目っ気たっぷりの声で
嫌味のように言って更に先輩に絡みついた。
馨?
か・お・る?
呼び捨て?
僕にも呼び捨てだけど、ちょっと違くない?
訳の分からない感情に僕はイライラとしてきた。
僕とお父さんをバカにされた事よりも、
先輩が櫛田君を呼び捨てにした事が、
僕にとっては大ごとだった。
佐々木先輩から少し目をそらして横を向いていると、
「あれ~? そこに居るのは要君のお父さん?」
そう言って矢野先輩が通りかかった。
お父さんは矢野先輩を見て、
「矢野ク~ン、 丁度良い処に~
不審者と間違われて捕まっちゃった。
助けて~」
と猫なで声をだした。
そんなお父さんを僕はキッと睨んだけど、
僕のお父さんと矢野先輩の親密さを見て、
明らかに佐々木先輩は害を扮したような顔をしていた。
先輩を探してグラウンドを歩き回った。
歩き回っている時に、
少し死角になったグラウンドの端で、
少しの人だかりが出来ている事に気付いた。
そのセンターに佐々木先輩が居て、
誰かと何か話をしているようだった。
僕はソロソロと人だかりの方に歩み寄って、
一体何が起きているのだろうと覗き込むと、
そこには見知った顔が……
そう、変装してカメラを持ったお父さんが、
佐々木先輩から尋問を受けていた。
僕はびくっりして、
「お父さん!」と叫んでしまった。
その瞬間、その人だかりが一斉に僕の方を見た。
勿論お父さんも一緒に。
お父さんは、“しまった!” と言う様な顔をして、
僕に視線を移した人ごみの中から
抜き足でこっそりと分からない様に後ずさろうとした。
でも、そんなお父さんの腕をガッチリと掴んでいたのは
佐々木先輩だった。
「この人、赤城君のお父さんですか?」
先輩は他人行儀の様に僕に質問してきた。
恐らく、僕達の関係がバレない様にするためだとは思ったけど、
凄い違和感だった。
「間違いなく、僕の父親ですが、
何か問題でもあったのですか?」
「あ……イヤ、木陰で怪しそうな人が望遠で
生徒の写真を撮っているって通報があって
尋問していたところなんですが……」
「すみません。
僕が体育祭にどうしても来るなって言ったので、
恐らくこっそりと覗きに来たんだと思います。
お騒がせしてすみません。
父には僕からちゃんと言って聞かせますので」
そう言って僕は人だかりに謝った。
そこには先ほど僕に敵意を向けた櫛田君も居た。
櫛田君は佐々木先輩に腕を絡めて、
僕を見下したように見ていた。
僕は佐々木先輩に腕を絡める櫛田君を見てムッとした。
「カエルの子はカエルだね」
そう言って櫛田君が僕のお父さんと僕を見比べて、
くすっと笑った。
僕には櫛田君の言ってる意味が直ぐに分かった。
恐らく、この人込みの皆も同じことを思っただろう。
只、佐々木先輩を除いては。
「馨!」
彼の名を呼んで佐々木先輩が櫛田君をいさめたので、
櫛田君は可愛く舌を出して、
「ゴメ~ン、 先輩。
僕……只……
赤城君ってお父さんに似てるのかな?
って思って……」
上目使いに茶目っ気たっぷりの声で
嫌味のように言って更に先輩に絡みついた。
馨?
か・お・る?
呼び捨て?
僕にも呼び捨てだけど、ちょっと違くない?
訳の分からない感情に僕はイライラとしてきた。
僕とお父さんをバカにされた事よりも、
先輩が櫛田君を呼び捨てにした事が、
僕にとっては大ごとだった。
佐々木先輩から少し目をそらして横を向いていると、
「あれ~? そこに居るのは要君のお父さん?」
そう言って矢野先輩が通りかかった。
お父さんは矢野先輩を見て、
「矢野ク~ン、 丁度良い処に~
不審者と間違われて捕まっちゃった。
助けて~」
と猫なで声をだした。
そんなお父さんを僕はキッと睨んだけど、
僕のお父さんと矢野先輩の親密さを見て、
明らかに佐々木先輩は害を扮したような顔をしていた。
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