消えない思い

樹木緑

文字の大きさ
102 / 201

第102話 再度クラブ見学

しおりを挟む
佐々木先輩は僕がステージに座っている事にまだ
気付かないようだ。
まったく! 運命の番が聞いて呆れる!
僕の視線に気付いてよ!

そう思って、何て乙女なんだと自分でがっかりとした。

自己嫌悪している時、
マネージャーの声が聞こえてきた。

「今日はね、青木君のクラスメイトの
お友達が応援に来てるんだよ。
皆頑張ろうね!」

そういって、僕の方を指差した。
一気に先輩たちが僕の方を見たので、
ギョッとしたけど、僕は恐縮しながら、

「インハイ出場おめでとうございます。
青木君のクラスメイトで
赤城要と言います。
今日はお邪魔します~」

と言うと、

「うわ、何この子。
男子だよな?
可愛いな?
何? 青木のクラスメイトだって?」

と、いきなり僕の周りに集まって来た。
僕は佐々木先輩の顔が見れなかった。

どうしよう……
いきなり来て迷惑だったかな?
怒ってないかな?

と少し心配になって来た。

「うわ~ 触ってみろよ。
肌モチモチ。
赤城要って言ったっけ?

奇麗な男子が入学して来たって噂になった子だよな?
な、恋人居るの?」

「どれ、どれ? うわ~
ホントにスベスベ……
女の子の肌みたい。
俺、この子だったら男でも全然いけるわ~
君、彼氏欲しくない?」

と、先輩たちにホッペをベタベタ触られながら質問されると、
いきなり佐々木先輩が僕の前に立ちはばかって、

「触るな!」

と大声で怒鳴った。

僕も含め、僕の周りに居た先輩たちは、
皆佐々木先輩をびっくりするように見ていたけど、

「あ、いや……ほら……
折角見学に来てくれてるのに、
びっくりさせたら悪いだろ?

バレー部は変態ばかりって思われたくもないし、
な? な?」

と頑張って取り繕っていた姿に、
皆は呆気に取られて見ていたけど、
僕がクスっと笑ったのと同時に、
皆の緊張が解けて、

「そうだよな、佐々木の言うとおりだな」

と、何故か旨く収まっていた。

皆んなが散って、準備運動に取り掛かろうとした時、佐々木先輩がそっと僕に話しかけた。

「お前な~ 来るなら来るって
前もって連絡ぐらいしろよ~
いきなり来られると俺の心臓が持たないだろ」

「いや、僕も最初は来る気無かったんですよ~
でも気付いたらいつの間にか学校まで来てて、
青木君にばったり会ったんです」

そう返すと、

「今日は最後まで居れるのか?」

と聞く先輩に、

「迷惑でなければ……」

と返すと、

「1時には練習終るから、
その後何か食べに行こうぜ」

と先輩にランチに誘われた。

「あ、でも僕、お財布も何も持ってきてません」

「おごるよ」

「じゃあ、今日はお言葉に甘えて!」

そう言うと、マネージャーのホイッスルの合図で、
今日の練習が始まった。

「ねえ、さっき裕也君と話してたけど、
裕也君の事、知ってるの?」

マネージャーが尋ねてきた。

「あ、僕、美術部なんです。
矢野先輩を通して知り合ったんですが……」

「あ~ 矢野くんね。
確か裕也君と幼馴染なんだよね」

「そう聞いてます」

「さっき裕也君と親しそうに話してたから、
知り合いなのかなって思って」

「知り合いというか……
何と言うか……」

そう言い淀んでいると、

「ねえ、彼に彼女いるか聞いた事ある?」

と尋ねてきた。
僕は、その質問を投げかけられた時に
いつも返す返答をマネージャーの先輩にも同じように返した。

「佐々木先輩、婚約者が居るって聞いてるんですけど」

「あ~ あの○ッチの優香女王様ね」

彼女のそのセリフに僕は思わずブ~ッと噴出した。
余りにもその言葉がぴったりだと思ったからだ。
でも絶対に僕からはそうとは言えなかった。

「佐々木先輩の婚約者が長瀬先輩だって知ってるんですか?」

「そりゃあ、自分で言いふらしてたからね。
今までは誰が婚約者なのか分からなかったけど、
あれは多分牽制するつもりなんだろうね。
急にばらし始めてさ、危機感を持ったんじゃない?」

「危機感?」

「うん、今までは裕也君も、
恋愛には興味無さそうだったけど、
誰かの影がちらつき始めたみたいよ。
それが誰か分からないから、
牽制し始めた見たい。
そんな事したって何の意味も無いのにね。
あ~ でも裕也君にいきなり現れた影って誰なんだろう?
ねえ、矢野くんから何か聞いた事ない?」

「え? いや、 僕達あまりそう言う話はしないので……」

「そうよね~
男子って恋愛とかそう言う話はあまりしないよね。
やった話とかは結構するみたいだけど!」

「え? え? やった話?????」

「セックスよ! セックス。
それくらい知ってるでしょう?」

僕は彼女のあまりにもの大胆な話しぶりに、
度肝を抜かれてしまった。

「なあに? そんなに真っ赤になって。
今どき中学生だってセックスしてるわよ!
あなたまだ童貞なの?」

僕は何て返したらいいのか分からなかった。
まさかここでそのような話になるとは
思ってもいなかった。

僕が言葉を無くしていると、

「あなた、童貞と言うか、
抱かれる側の匂いがするのよね……」

と、核心をついて来る。

余りにものあっけらかんとした態度に、
皆こうなのかな?と疑問に思ってしまった。
そして変な想像をしてしまって、
顔がカーッと熱くなった。

もしかしてもう青木君と奥野さんも、もう?????

と思っていると、
バレー部のコーチがやって来た。

「あ~あ、 タヌキがやってきちゃった。
じゃあ、また後でね」

そう言ってマネージャーはコーチの所へ、
今日の練習の打ち合わせに行った。

僕は凄くドキドキした。
僕の周りにはああいう風に
性に対してあっけらかんと話す人は誰も居ない。

これって普通の事だろうか?

そしてチラッと佐々木先輩の方を見た。



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ

樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー 消えない思いをまだ読んでおられない方は 、 続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。 消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が 高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、 それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。 消えない思いに比べると、 更新はゆっくりになると思いますが、 またまた宜しくお願い致します。

〔完結済〕この腕が届く距離

麻路なぎ
BL
気まぐれに未来が見える代わりに眠くなってしまう能力を持つ俺、戸上朱里は、クラスメイトであるアルファ、夏目飛衣(とい)をその能力で助けたことから、少しずつ彼に囲い込まれてしまう。 アルファとかベータとか、俺には関係ないと思っていたのに。 なぜか夏目は、俺に執着を見せるようになる。 ※ムーンライトノベルズなどに載せているものの改稿版になります。  ふたりがくっつくまで時間がかかります。

僕と貴方と君と

五嶋樒榴
BL
カッコいい&可愛い年下ふたりに翻弄されてます。 柊木美峰は28歳。 不動産屋に勤務する宅地建物取引士。 顔見知りの24歳の融資担当の銀行員、葉山優星から食事に誘われ、そのまま自宅に招待される。 優星のマンションに着くと、そこには優星の年の離れた異母弟、小学2年生の明星が居て………。 恋愛に臆病な主人公が、ふたりの年下男子に振り回されるハートフルML。

君に会いに行こう

大波小波
BL
 第二性がアルファの九丈 玄馬(くじょう げんま)は、若くして組の頭となった極道だ。  さびれた商店街を再開発するため、玄馬はあるカフェに立ち退きを迫り始める。  ところが、そこで出会ったオメガの桂 幸樹(かつら こうき)に、惹かれてしまう。  立ち退きを拒むマスターの弱みを握ろうと、幸樹に近づいた玄馬だったが、次第に本気になってゆく……。

たしかなこと

大波小波
BL
 白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。  ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。  彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。  そんな彼が言うことには。 「すでに私たちは、恋人同士なのだから」  僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

すれ違い夫夫は発情期にしか素直になれない

和泉臨音
BL
とある事件をきっかけに大好きなユーグリッドと結婚したレオンだったが、番になった日以来、発情期ですらベッドを共にすることはなかった。ユーグリッドに避けられるのは寂しいが不満はなく、これ以上重荷にならないよう、レオンは受けた恩を返すべく日々の仕事に邁進する。一方、レオンに軽蔑され嫌われていると思っているユーグリッドはなるべくレオンの視界に、記憶に残らないようにレオンを避け続けているのだった。 お互いに嫌われていると誤解して、すれ違う番の話。 =================== 美形侯爵長男α×平凡平民Ω。本編24話完結。それ以降は番外編です。 オメガバース設定ですが独自設定もあるのでこの世界のオメガバースはそうなんだな、と思っていただければ。

あなたの家族にしてください

秋月真鳥
BL
 ヒート事故で番ってしまったサイモンとティエリー。  情報部所属のサイモン・ジュネはアルファで、優秀な警察官だ。  闇オークションでオメガが売りに出されるという情報を得たサイモンは、チームの一員としてオークション会場に潜入捜査に行く。  そこで出会った長身で逞しくも美しいオメガ、ティエリー・クルーゾーのヒートにあてられて、サイモンはティエリーと番ってしまう。  サイモンはオメガのフェロモンに強い体質で、強い抑制剤も服用していたし、緊急用の抑制剤も打っていた。  対するティエリーはフェロモンがほとんど感じられないくらいフェロモンの薄いオメガだった。  それなのに、なぜ。  番にしてしまった責任を取ってサイモンはティエリーと結婚する。  一緒に過ごすうちにサイモンはティエリーの物静かで寂しげな様子に惹かれて愛してしまう。  ティエリーの方も誠実で優しいサイモンを愛してしまう。しかし、サイモンは責任感だけで自分と結婚したとティエリーは思い込んで苦悩する。  すれ違う運命の番が家族になるまでの海外ドラマ風オメガバースBLストーリー。 ※奇数話が攻め視点で、偶数話が受け視点です。 ※エブリスタ、ムーンライトノベルズ、ネオページにも掲載しています。

処理中です...