消えない思い

樹木緑

文字の大きさ
126 / 201

第126話 初詣

しおりを挟む
朝、目が覚めると、先輩はすでに起きていて、
僕の髪を梳きながら、
僕の寝顔を愛おしそうに眺めていた。

先輩と目が合うと、
僕は一気に恥ずかしさがこみあげてきて、
先輩の目を直視することが出来なかった。

「おはよう」

先輩の声に、

「あ、おはようございます」

と、僕の声が上ずった。

「なんだ、緊張してるのか?」

「……」

「ハハハ、お前のそんなとこ
凄い可愛いよな。
なんだ? 今になって恥ずかしいのか?」

「だって、昨夜の事を考えるとそりゃ
恥ずかしいし、緊張しますよ!
なんだか僕、凄い事になってましたよね?
先輩引いてません?」

「ば~か!
あんな可愛いかった要は初めてだよ。
お前、あんな顔、誰にも見せるなよ?」

「いや~ 先輩、
僕、一体どんな顔してたんですかー?!」

「ハハハ、こんな顔だよ!」

そう言って先輩は
携帯で取った僕の寝顔を見せた。

寝顔よりも驚いたのは、
僕の露わになった上半身はとても舐めまかしく、
先輩に愛された跡がここ、あちらに付いていた。

「ギャ~ 先輩、それ、消してください!
僕、完全にアウトですよ!
それ、やった後ですって
直ぐに分かるじゃないですか~!」

僕は先輩の携帯を取ろうとしたけど、
先輩はヒョイヒョイと僕を避けて、
携帯を自分のカバンにしまった。

何時までも諦めずに奪い取ろうとする携帯をよそに、
先輩は軽々と僕にキスをすると、

「ほら、朝食が出来てるみたいだぞ。
お昼にはチェックアウトしないといけないから、
朝食を食べたら帰る前に
もう一風呂浴びるぞ」

そう言って食堂に向かって歩き出した。
僕は先輩の後を付いて歩きながら

「あ~あ、 先輩の至高のアイテムを使った必殺技、
とうとう披露することできませんでしたね。
僕、楽しみにしてたのに!」

と、僕がふざけた様に笑ってそう言うと、
先輩は僕の鼻を摘んで、

「また次があるさ」

そう言って、不敵にニヤッと笑って朝食へと急いだ。

その後僕達は、純粋にもう一風呂楽しんだ後、
電車の時間に合わせて、
少し早めにチェックアウトした。

帰りの電車は凄く疲れていて、
僕は先輩に寄り掛かって
ウトウトとしていた。

僕達の下車駅のアナウンスがされると、
先輩が易しく僕を起こしてくれた。

先輩と過ごした時間は、
瞬きの様に早かった。

クリスマスが来るのはあんなに、
あんなに永遠のように長ったのに、
振り返ってみると、
クリスマスを待つ間がワクワク、ドキドキして
一番楽しかったかもしれない。

でも、先輩との旅行から家に帰ると、
急激に現実に引き戻された。

「あ~ あまりにも余韻に浸りすぎて、
先輩にクリスマスプレゼント渡すの忘れた!」

気付いた時には後の祭りで、
僕は次、何時先輩に会えるのか分からなかった。

でも、僕の中にはまだ先輩の感覚が
ハッキリと残っていた。

それがとても特別で、
僕は先輩に愛された僕の体がとても愛おしかった。

でも、先輩が宣言した通り、
僕は冬休みの間、先輩に会う事はかなわなかった。

でも、矢野先輩や、青木君、奥野さんと一緒に
初詣に行くことが出来た。

今まで朝にしか初詣に行ったことがなっかた
青木君や奥野さんのリクエストを受けて、
僕達は夜中を過ぎて、近くの神社まで行った。

奥野さんは、青木君が家まで迎えに行って、
そのまま皆で公園で落ち合った。

除夜の鐘が鳴り始め、
ゆく年くる年が始まる頃、
僕はマンションの下に降りて来た。

マンションの入り口には、
懐かしい知った顔が指に息を吐きかけながら
立っている姿が見受けられた。

「あれ? 矢野先輩!
ここまで迎えに来てくれたんですか?」

僕は走って先輩の所まで近ずいて行った。

「久しぶりだね~
10日ぶりくらい?」

「そうですね、
終業式以来だからそうなりますね。
まずは明けましておめでとうございます!」

「おめでとう!
で? クリスマスにはちゃんと
裕也と旅行には行けたんでしょう?」

「はい!
先輩、ありがとうございました。
とても楽しかったです!」

「で? あっちの方はどうだったの?
何か新しい情報はあるの?」

「うわ~ 先輩、それ、
本気で聞きますか~?」

僕はそう言って先輩の背中を
バシバシと叩いた。

「先輩、冷たいですよ!
どれくらいここに立っていたんですか?」

「いや、そんなに長くは無いよ。
でも今夜はちょっと冷えるね」

そう言って今まで息を吐きかけていた
手をポケットの中に入れた。
そして僕に腕を差し出すと、

「どうぞ」

と言って僕が腕を組むよう誘ってくれた。
なので僕は先輩の腕を取って歩き出した。

「先輩はクリスマス、
どうしていたんですか?
僕、先輩にお土産あるんですよ。
でも今日は持ってきませんでした。
今度渡しますね」

「ハハ、ありがとう。
で、裕也との旅行はどうだったの?
何か進展あった?」

僕が真っ赤になっていると、

「ハハハ、そうなんだね、
分かったよ」

と先輩が笑いながら言った。

「え~ 何が分かったんですか!
何か佐々木先輩から聞いたんですか?!
先輩!」

矢野先輩は僕のドギマギする態度に、
ただ笑うばかりだった。

「あ、青木く~ん、
奥野さ~ん!
こっちだよ」

公園に入るなり、直ぐに
青木君と奥野さんを見つけた。

「あ~ 赤城君、
あけましておめでとう!
矢野先輩もおめでとうございます!
相変わらず仲いいですね~
これでカップルじゃないなんて詐欺ですよね~
でも今日は大学合格祈願、一杯しましょうね!」

「ハハハ、ありがとう。
奥野さんは何時も元気だね。
大丈夫?
眠くない?」

先輩がそう言うと、

「私、勉強は出来ないけど、
夜更かしは得意なんですよ!」

と、奥野さんは得意げに返していた。

「瞳、それ、何の自慢にもならないから。
お前、結構俺とラインしながら寝落ちしてるじゃないか。
それってまだ夜中にもなってないと思ったが……」

青木君がそう言うと、奥野さんは、

「だって、猛の返事直ぐに返って来ないんだもん!」

とブウブウ言っていた。

矢野先輩は二人の間に入って、

「まあ、まあ、今日はめでたい席なんだから、
仲良く、仲良く。
ほら、多分、人出多いだろうから早く行こうか?」

そう言って僕達は神社目指して歩き出した。

神社の近くまで来ると、先輩が言った様に、
既に沢山の人出があった。

「うわ~ 本殿まで付くのに
どれくらいかかるかな~?」

「ほら、猛、あなた背高いんだから、
ちょと周り見まわしてよ!」

そう奥野さんが言うと、
青木君はちょっと背伸びをして、辺りを見回した。

「まあ、他にも背ぇ高い奴ゴロゴロいるから、
そんな草原見渡すようにはいかないぞ?」

そう言った後、青木君は一所に目を止めて、

「あれ? あれは……」

と言った。

「誰か知ってる人でも居るんですか?」

僕がそう尋ねると、ちょっと戸惑った様にして、
もう一度その場所を見直すと、

「あ、いや、そう思ったんだが違う人だったみたい」

そう言って目をそらした。

怪しい……

そう思って青木君の目をやった方を見たけど、
余りにもの人で、僕には全然その先は見えなかった。

人は多いけど、進むのも割と早かった。
色々と話をしているうちに、
僕達は本堂へと着いた。

皆で祈願をしてそれからおみくじを引こうと言う事になった。
そして、お守りや、破魔矢なども買って行こうと言う事になり、
売り場へと向かって行った。

そこでばったりと、佐々木先輩の腕に
しっかりと絡み付いた
長瀬先輩と佐々木先輩に鉢合った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ

樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー 消えない思いをまだ読んでおられない方は 、 続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。 消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が 高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、 それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。 消えない思いに比べると、 更新はゆっくりになると思いますが、 またまた宜しくお願い致します。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

【BL】『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした

圭琴子
BL
 この世界は、αとβとΩで出来てる。  生まれながらにエリートのαや、人口の大多数を占める『普通』のβにはさして意識するほどの事でもないだろうけど、俺たちΩにとっては、この世界はけして優しくはなかった。  今日も寝坊した。二学期の初め、転校初日だったけど、ワクワクもドキドキも、期待に胸を膨らませる事もない。何故なら、高校三年生にして、もう七度目の転校だったから。    βの両親から生まれてしまったΩの一人息子の行く末を心配して、若かった父さんと母さんは、一つの罪を犯した。  小学校に入る時に義務付けられている血液検査日に、俺の血液と父さんの血液をすり替えるという罪を。  従って俺は戸籍上、β籍になっている。  あとは、一度吐(つ)いてしまった嘘がバレないよう、嘘を上塗りするばかりだった。  俺がΩとバレそうになる度に転校を繰り返し、流れ流れていつの間にか、東京の一大エスカレーター式私立校、小鳥遊(たかなし)学園に通う事になっていた。  今まで、俺に『好き』と言った連中は、みんなΩの発情期に当てられた奴らばかりだった。  だから『好き』と言われて、ピンときたことはない。  だけど。優しいキスに、心が動いて、いつの間にかそのひとを『好き』になっていた。  学園の事実上のトップで、生まれた時から許嫁が居て、俺のことを遊びだと言い切るあいつを。  どんなに酷いことをされても、一度愛したあのひとを、忘れることは出来なかった。  『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとだったから。

【完結】番になれなくても

加賀ユカリ
BL
アルファに溺愛されるベータの話。 新木貴斗と天橋和樹は中学時代からの友人である。高校生となりアルファである貴斗とベータである和樹は、それぞれ別のクラスになったが、交流は続いていた。 和樹はこれまで貴斗から何度も告白されてきたが、その度に「自分はふさわしくない」と断ってきた。それでも貴斗からのアプローチは止まらなかった。 和樹が自分の気持ちに向き合おうとした時、二人の前に貴斗の運命の番が現れた── 新木貴斗(あらき たかと):アルファ。高校2年 天橋和樹(あまはし かずき):ベータ。高校2年 ・オメガバースの独自設定があります ・ビッチング(ベータ→オメガ)はありません ・最終話まで執筆済みです(全12話) ・19時更新 ※なろう、カクヨムにも掲載しています。

愛させてよΩ様

ななな
BL
帝国の王子[α]×公爵家の長男[Ω] この国の貴族は大体がαかΩ。 商人上がりの貴族はβもいるけど。 でも、αばかりじゃ優秀なαが産まれることはない。 だから、Ωだけの一族が一定数いる。 僕はαの両親の元に生まれ、αだと信じてやまなかったのにΩだった。 長男なのに家を継げないから婿入りしないといけないんだけど、公爵家にΩが生まれること自体滅多にない。 しかも、僕の一家はこの国の三大公爵家。 王族は現在αしかいないため、身分が一番高いΩは僕ということになる。 つまり、自動的に王族の王太子殿下の婚約者になってしまうのだ...。

あなたの家族にしてください

秋月真鳥
BL
 ヒート事故で番ってしまったサイモンとティエリー。  情報部所属のサイモン・ジュネはアルファで、優秀な警察官だ。  闇オークションでオメガが売りに出されるという情報を得たサイモンは、チームの一員としてオークション会場に潜入捜査に行く。  そこで出会った長身で逞しくも美しいオメガ、ティエリー・クルーゾーのヒートにあてられて、サイモンはティエリーと番ってしまう。  サイモンはオメガのフェロモンに強い体質で、強い抑制剤も服用していたし、緊急用の抑制剤も打っていた。  対するティエリーはフェロモンがほとんど感じられないくらいフェロモンの薄いオメガだった。  それなのに、なぜ。  番にしてしまった責任を取ってサイモンはティエリーと結婚する。  一緒に過ごすうちにサイモンはティエリーの物静かで寂しげな様子に惹かれて愛してしまう。  ティエリーの方も誠実で優しいサイモンを愛してしまう。しかし、サイモンは責任感だけで自分と結婚したとティエリーは思い込んで苦悩する。  すれ違う運命の番が家族になるまでの海外ドラマ風オメガバースBLストーリー。 ※奇数話が攻め視点で、偶数話が受け視点です。 ※エブリスタ、ムーンライトノベルズ、ネオページにも掲載しています。

獣人王と番の寵妃

沖田弥子
BL
オメガの天は舞手として、獣人王の後宮に参内する。だがそれは妃になるためではなく、幼い頃に翡翠の欠片を授けてくれた獣人を捜すためだった。宴で粗相をした天を、エドと名乗るアルファの獣人が庇ってくれた。彼に不埒な真似をされて戸惑うが、後日川辺でふたりは再会を果たす。以来、王以外の獣人と会うことは罪と知りながらも逢瀬を重ねる。エドに灯籠流しの夜に会おうと告げられ、それを最後にしようと決めるが、逢引きが告発されてしまう。天は懲罰として刑務庭送りになり――

処理中です...