悪役令息なのにエロトラに好かれてる俺

あまはねまきあ

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幼少期編

終局の茶会

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「……だ、そうだ。ファルトのお陰で被害がなくて良かった。王室はこれを機にファルトを迎えたいと」
「お断りします。二度と痛い思いしたくないです」
「……だよね!」
 あれから、彼女に尋問をかけた結果を端的にまとめると、彼女が話した動機は第三者から唆された、と。
 俺の父親と結婚させてやるからカエメトとの子供を身籠れなんて無理難題にも程がある。現にカエメトは精通してないし。俺の母親を殺したことについては未遂だったらしい。未遂で済んだのだが、結果的に俺の母親は死亡した。第三者による他殺で。彼女……セラフィ・レイナード嬢は毒を盛る前に罰を受け、地下牢で拘束されていた中、俺の母親は毒によって殺された。それも古代から伝わる魔力を上げると謳われる麻薬のせいで。詳細は省くがとりあえず毒殺されたって訳だ。だから彼女が殺したという発言を誰も気にしていなかったのだが、第三者が現れたとなると話が違う。
 俺の母親の死を望む第三者はカエメトとの子供を欲していた。狙うならば王様の子種では無いのだろうか。もしかしたら、カエメトの魔力の高さに気付いている者の犯行。
 一先ず実行犯は捕まえたということで、王室は俺に第一王子を身を呈して護ってもらったという仮ができた。その仮を返すためと言わんばかりに婚約を勧められたが、丁重にお断りさせてもらう。パンツ食い野郎とはちょっと結婚できないかな。
「丁重にお断りのお手紙を書かせていただきますね」
「いや、いい。代筆するよ」

「紹介が遅くなってすまない。彼はレリック、お前の弟だ」
「よ、よろしくお願いします」
「よろしく。僕はファルトだよ」
 レリックの母、現ピューリティ公爵夫人の家系は代々蜘蛛を祀っている。家守としての蜘蛛。その為レリックは蜘蛛の先祖返りをしている。それがレリックがファルトに虐められる原因である公爵の血を継いでいないという話になるのだが、これには少しわけがある。先祖返りは代々混血してもその家系であれば一代に一人と相場が決まっているのだが、運の悪いことに夫人と父の間に生まれてしまった。先祖返りしている血族が一人いる間は血族の中で先祖返りが起きることはない。という訳でレリックはピューリティ公爵家でありながら本来は夫人の実家に戻って家守の家業をしなければいけないのだが、これがまた少し厄介で夫人は自分の実家が嫌いなんだよな。
 なんでも蜘蛛が気持ち悪いと。虫嫌いなのはわかるが蜘蛛だからと自分の息子にまで手を挙げていたのはどうかと思う。てか俺もいじめなきゃいけないじゃん。
 可愛い子をいじめるのは気が引けるけどここで性癖を歪めてかなたんに出会ったときによしよしを強くしてもらわないとな。優しく手を差し伸べてあげた。親の前ではいい子ちゃんでいて影でいじめる典型的な男、それがファルトだ。
 断罪されるのは嫌だけど、かなたんの為だ。逃げ道をしっかり用意しておこう。
 とりあえずレリックとファルトの最悪の出会いをしなければ。確かレリックは先祖返りの影響で目に変異が起きている。ファルトはそれを気持ち悪いと一蹴し、彼の心に深い傷をつけることになる。
「……お前の目、蓮コラみたいだな」
「蓮、コラ……」
「気持ち悪い、僕のことをそんな目で見るな」
「はい……」
「ファルト、なんてことを。ファルトはそんなこと言う子じゃないだろう? ……見る目は正しいけどね」
 見る目は正しいってなんだ?
 ただ弟が気持ち悪い! って言うクズムーブしてるだけじゃないか。これのどこが……。まぁあまり深いことは突っ込まずにおこう。世の中は誰かの妥協で成り立っている。ケセラセラなんとかなる。
 ヴォル様は俺を窘めるように肩に手を置いてから、膝をついてレリックと視線を合わせてゆっくりと話しかける。
「君も先祖返りしたものの仲間だ。仲良くしようね。先祖返りの事でなにか相談があったら言っておくれ。力になろう」
「……っ! はいっ」
 先祖返りしたものは自ずと家督になる事が義務付けられている。俺には全く関係の無い話なのでスルーしておこう。
 カエメトとの婚約が阻止できた為に今の殿下はフリーとなる。令嬢との婚約が結びつかないように俺は家督になれない恨みを殿下に抱きつつも、そのカリスマ性に惹かれてしまったという設定で殿下に悪い虫がつかないようにしよう。絶対童貞がいいもん。かなたんと殿下のハジメテ。おどおどしてる二人を壁になってみたい!




「なんで殿下はここに……?」
「お前の怪我の様子を確認しに来たんだ。それに、婚約も断られてしまったからな。お前ほどの忠誠心があれば必ず立派な王妃になれると思ったのだが」
「良き友人でありましょう」
「しかし……悪いが友人では居られなくなりそうなのだ」
「詳しく、お願いします」
 体の傷が無くなった頃、殿下はピューリティ公爵邸を訪れた。それも、俺に会いに来た。何やら重要な話があるらしく、まず先に俺と二人きりで茶会をすることを持ちかけ、今に至る。
 気まずくなり、置いたばかりでゆらゆらと揺れるティーカップの中を見つめていると、殿下は口を開いた。
「正直な話、俺は恋愛結婚をしたい」
「僕もです」
「だろう? だが……俺の父上は義理堅い人でな。今回のことをきっかけにお前に体の傷をつけてしまった。その責任を俺との婚約という形で取らせるつもりだ。表面上はお前に怪我をさせてしまった責任をとるということにはなっているが、実際は俺のことを身を呈して守るお前を買ったんだ。何かあれば俺を守るように。それが婚約者の立場であれば自然と俺の近くになる。……あとはわかるな?」
「つまり僕を盾にしたいんですね」
「明け透けだな」
 呆れた表情で見てくるカエメト。それに申し訳なさを感じつつも思ったことは止められない。
 くそっ……!
 異世界転移あるあるのゲームのシナリオの修正力にやられてしまった!
 まぉいい。こうなればかなたんをいじめることに正当性ができるし……。童貞殿下のままかなたんにお出しできる最高のコンディションじゃないのか。あとはいい感じに俺が婚約破棄されて国外へサラダバーすればいい事。俺の人生は至って順調である。そう、順調。
「怪しいこと考えてないな?」
「何も。殿下の婚約者ですか……王妃教育とかあるんですかね。うぇ」
「勿論ある。俺もお前とは婚約破棄したいからな。まぁ大丈夫だ。俺が十分に成長したら婚約を破棄してやろう」
 感謝。ゲームの通りになってかなたんに罵られたい気もするけど……死なないのが先決。いや厳密に言えば死にはしないけど性拷問は受けたくない。でも、ゲームからズレさせてしまった手前この物語の行方が少し不明になってしまった。
 それでも、ゲーム開始の出会いまでは大筋にしてかなたんが出てきて引き合わせたら大人しく身を引けば……いや俺が虐めることによってエロイベントが起きるんだ。それだけ、そのイベントだけ……生で、生BLをね、見させてくれれば……。
 寧ろ婚約破棄されたら早々に国外逃亡すればいい。……今から準備しよう。
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