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第二話ー姉弟の誓い
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次の日、目覚めてセレノアは机に着いた。覚えていることを書き出す。
(6年しかないのよ。時間を無駄に出来ないわ。グレイス大公家が、安全に生き延びる方法を考えなければ)
1時間ほど没頭していると、メイドのマチルダの声がした。
「おはようございます。お嬢様····あら」
起きて自分で着替えているセレノアに驚いてる。
「お早いお目覚めですね。お支度もご自分で?」
驚くマチルダに、セレノアは言った。
「おはようマチルダ。何も聞かず、集めてもらいたいものがあるの」
それから数日、セレノアは書庫に籠もった。最初の3日間は邸宅中の人達が驚いたが、4日目にもなると、お嬢様は勉学に目覚めたのだ。と皆受け入れるようになった。
ルシアンも心配して書庫に足を運んだが、最後には慣れて書庫の隅で本を読むようになった。
1週間後、大公夫妻は王城から戻って驚いた。
「なんだって?子供たちが書庫に入り浸っている?」
「ルシアンはまだしも、セレノアまで?」
夫人も驚く。
「お母様、失礼じゃありませんか。私だって本くらい読みます」
セレノアは口を尖らせた。
夫人が笑顔で謝る。
「ごめんなさい。小さなお姫様。許してちょうだい」
久しぶりに聞く母の言葉に、セレノアは思わず泣きそうになった。
(お母様が昔から言う"小さなお姫様"大好きだったわ)
セレノアはすぐに許し、母に抱きついた。
「おかえりなさいお母様。王城はどうでした?」
セレノアの頭を撫でながら、言いにくそうに応えた。
「陛下の返事が良くなくてね。粘ってみたけれど、決定的な事にはならなかったわ。ひとまず、婚約者候補と言うことで、他家に釣り合う令嬢がいれば候補からも外れるそうよ」
隣で父もしょんぼりしている。
「ありがとう。それで充分です」
とにもかくにも、前回よりは良い。王太子はセレノアの事が気に入らなかったようなので、そのうち破棄になるだろう。
晩餐は久しぶりに家族4人で食事がとれた。とは言っても、使用人たちもいるのだが。
大公家の使用人はみな家族のように優しく、とても幸せな晩餐だった。
次の日の朝、セレノアは父の仕事部屋を訪れた。
「お父様、私ももう12歳になりました。領地のことを学びたいのです。お父様の書斎に出入りすることをお許しください」
父は呆気にとられた。
「どうしたんだセレノア。急に大人びたな」
「ええ。勉学の幅を広げたいの」
熱意を帯びた眼に、父は「ふぅむ」と腕を組んだ。
「いいだろう。許可しよう。分からないことがあれば聞きなさい。執事のノックスにも聞くといい」
「ありがとうお父様!」
そうしてセレノアはグレイス大公家と王家の実情を調べた。確執はないか。前生でグレイス大公家に濡れ衣を着せたのは誰か。
ーーーそうして1年が過ぎた。
1年の間に、父が専用の書斎を作ってくれた。書類をまとめ、ため息を付く。
「生き残るには、これしかないわ」
結局、こうなるのだ。王家に反旗を翻すしかない。
1年で色々な事が分かった。反逆は濡れ衣ではなかった。父は、グレイス大公はレグナント王家に反逆を試みていたのだ。前生では早くに王太子妃教育を受けていたので、王宮の部屋に閉じこもり父の反逆を知る由もなかった。
父は反逆に失敗したのだ。原因はわからないが、今生では同じ過ちを繰り返す訳には行かない。
(父ではなく、私たちがやらないと。無理のない、健全で確実な反逆を!)
決意をして3ヶ月後、セレノアはルシアンを書斎に呼んだ。
読むと危険のある書類があるので、ルシアンを書斎に入れるのは初めてだ。
緊張の面持ちで椅子に座ったルシアンに、セレノアは言った。
「ルシアン。帝王学を学びなさい」
ルシアンは大きな紫色の瞳を見開いた。
「え?姉上それはどういう····」
「今の王家は衰退しています。数年後、父はレグナント王家を見限るでしょう」
セレノアの言葉に、動揺していたルシアンは小さな深呼吸をした。
「大丈夫?」
11歳の子に聞かせる言葉ではないのは分かっている。だが時間は待ってくれない。
「続けてください」
ルシアンは落ち着きを取り戻し、冷静な瞳でセレノアを見た。
(やはり、この子は王家の子だわ。この子が最初から王位継承者だったらどんなに良かったか)
ルシアンはレグナント王の私生児だった。母がメイドな為に王族には属さず、グレイス大公が引き取った。レグナント王は女性にだらしなく、私生児が何人いるのか分からない。
「お父様は恐らく、王家と密になり過ぎて手の内が読まれている。万が一、お父様が達成出来なかった場合を考えて、私たちも準備しておかなければならないわ」
ルシアンは頷いた。
「今の王家が崩れれば、姉上は王太子と結婚せずにすみますか?」
「え?」
思いも寄らない質問に聞き返してしまった。
婚約を拒否して1年経ったが、望む結果は得られなかった。このままでは数年のうちにセレノアは王太子の婚約者になるだろう。
「そうね。そうなるでしょうね」
ルシアンの瞳に力が宿る。
「姉上、僕は頑張ります」
王太子の評判の悪さが、ルシアンの耳にまで入ったのだろうか?姉を守ろうとしてくれる気概に、セレノアは嬉しくなって微笑んだ。
(優しい子··)
「ありがとうルシアン。2人でお父様や、お母様を守りましょうね」
「姉上、だけど誰から学べばいいの?お父様に内緒で先生を呼べるかな?」
セレノアはにっこり笑って言った。
「私が教えます」
前回の生で、早めから始めた王太子妃教育。実際はほとんどが帝王学だった。王太子の教育を諦めた城の側近達が、婚約者であるセレノアに帝王学を学ばせたのだ。
最初は半信半疑で聞いていたルシアンも、セレノアの知識の深さにすぐに気付き、真面目に学んでいった。
ルシアンも書庫に籠もるようになり、大公は邸宅にルシアンの書庫も作った。
大公邸にはたくさんの書物が集まるようになる。
有能な公女と公子の話は社交界で広まり、あらゆる要人が大公邸に集うようになった。
セレノアは独自に味方を付けていく。金鉱山を持つ領主。武器や薬を扱う商人まで、セレノアは人脈を増やした。
ーーーーそうしてまた2年が経った頃、ルシアンの知識がセレノアを追い越した。
セレノアは15歳、ルシアンは13歳になった。
(6年しかないのよ。時間を無駄に出来ないわ。グレイス大公家が、安全に生き延びる方法を考えなければ)
1時間ほど没頭していると、メイドのマチルダの声がした。
「おはようございます。お嬢様····あら」
起きて自分で着替えているセレノアに驚いてる。
「お早いお目覚めですね。お支度もご自分で?」
驚くマチルダに、セレノアは言った。
「おはようマチルダ。何も聞かず、集めてもらいたいものがあるの」
それから数日、セレノアは書庫に籠もった。最初の3日間は邸宅中の人達が驚いたが、4日目にもなると、お嬢様は勉学に目覚めたのだ。と皆受け入れるようになった。
ルシアンも心配して書庫に足を運んだが、最後には慣れて書庫の隅で本を読むようになった。
1週間後、大公夫妻は王城から戻って驚いた。
「なんだって?子供たちが書庫に入り浸っている?」
「ルシアンはまだしも、セレノアまで?」
夫人も驚く。
「お母様、失礼じゃありませんか。私だって本くらい読みます」
セレノアは口を尖らせた。
夫人が笑顔で謝る。
「ごめんなさい。小さなお姫様。許してちょうだい」
久しぶりに聞く母の言葉に、セレノアは思わず泣きそうになった。
(お母様が昔から言う"小さなお姫様"大好きだったわ)
セレノアはすぐに許し、母に抱きついた。
「おかえりなさいお母様。王城はどうでした?」
セレノアの頭を撫でながら、言いにくそうに応えた。
「陛下の返事が良くなくてね。粘ってみたけれど、決定的な事にはならなかったわ。ひとまず、婚約者候補と言うことで、他家に釣り合う令嬢がいれば候補からも外れるそうよ」
隣で父もしょんぼりしている。
「ありがとう。それで充分です」
とにもかくにも、前回よりは良い。王太子はセレノアの事が気に入らなかったようなので、そのうち破棄になるだろう。
晩餐は久しぶりに家族4人で食事がとれた。とは言っても、使用人たちもいるのだが。
大公家の使用人はみな家族のように優しく、とても幸せな晩餐だった。
次の日の朝、セレノアは父の仕事部屋を訪れた。
「お父様、私ももう12歳になりました。領地のことを学びたいのです。お父様の書斎に出入りすることをお許しください」
父は呆気にとられた。
「どうしたんだセレノア。急に大人びたな」
「ええ。勉学の幅を広げたいの」
熱意を帯びた眼に、父は「ふぅむ」と腕を組んだ。
「いいだろう。許可しよう。分からないことがあれば聞きなさい。執事のノックスにも聞くといい」
「ありがとうお父様!」
そうしてセレノアはグレイス大公家と王家の実情を調べた。確執はないか。前生でグレイス大公家に濡れ衣を着せたのは誰か。
ーーーそうして1年が過ぎた。
1年の間に、父が専用の書斎を作ってくれた。書類をまとめ、ため息を付く。
「生き残るには、これしかないわ」
結局、こうなるのだ。王家に反旗を翻すしかない。
1年で色々な事が分かった。反逆は濡れ衣ではなかった。父は、グレイス大公はレグナント王家に反逆を試みていたのだ。前生では早くに王太子妃教育を受けていたので、王宮の部屋に閉じこもり父の反逆を知る由もなかった。
父は反逆に失敗したのだ。原因はわからないが、今生では同じ過ちを繰り返す訳には行かない。
(父ではなく、私たちがやらないと。無理のない、健全で確実な反逆を!)
決意をして3ヶ月後、セレノアはルシアンを書斎に呼んだ。
読むと危険のある書類があるので、ルシアンを書斎に入れるのは初めてだ。
緊張の面持ちで椅子に座ったルシアンに、セレノアは言った。
「ルシアン。帝王学を学びなさい」
ルシアンは大きな紫色の瞳を見開いた。
「え?姉上それはどういう····」
「今の王家は衰退しています。数年後、父はレグナント王家を見限るでしょう」
セレノアの言葉に、動揺していたルシアンは小さな深呼吸をした。
「大丈夫?」
11歳の子に聞かせる言葉ではないのは分かっている。だが時間は待ってくれない。
「続けてください」
ルシアンは落ち着きを取り戻し、冷静な瞳でセレノアを見た。
(やはり、この子は王家の子だわ。この子が最初から王位継承者だったらどんなに良かったか)
ルシアンはレグナント王の私生児だった。母がメイドな為に王族には属さず、グレイス大公が引き取った。レグナント王は女性にだらしなく、私生児が何人いるのか分からない。
「お父様は恐らく、王家と密になり過ぎて手の内が読まれている。万が一、お父様が達成出来なかった場合を考えて、私たちも準備しておかなければならないわ」
ルシアンは頷いた。
「今の王家が崩れれば、姉上は王太子と結婚せずにすみますか?」
「え?」
思いも寄らない質問に聞き返してしまった。
婚約を拒否して1年経ったが、望む結果は得られなかった。このままでは数年のうちにセレノアは王太子の婚約者になるだろう。
「そうね。そうなるでしょうね」
ルシアンの瞳に力が宿る。
「姉上、僕は頑張ります」
王太子の評判の悪さが、ルシアンの耳にまで入ったのだろうか?姉を守ろうとしてくれる気概に、セレノアは嬉しくなって微笑んだ。
(優しい子··)
「ありがとうルシアン。2人でお父様や、お母様を守りましょうね」
「姉上、だけど誰から学べばいいの?お父様に内緒で先生を呼べるかな?」
セレノアはにっこり笑って言った。
「私が教えます」
前回の生で、早めから始めた王太子妃教育。実際はほとんどが帝王学だった。王太子の教育を諦めた城の側近達が、婚約者であるセレノアに帝王学を学ばせたのだ。
最初は半信半疑で聞いていたルシアンも、セレノアの知識の深さにすぐに気付き、真面目に学んでいった。
ルシアンも書庫に籠もるようになり、大公は邸宅にルシアンの書庫も作った。
大公邸にはたくさんの書物が集まるようになる。
有能な公女と公子の話は社交界で広まり、あらゆる要人が大公邸に集うようになった。
セレノアは独自に味方を付けていく。金鉱山を持つ領主。武器や薬を扱う商人まで、セレノアは人脈を増やした。
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