私と義弟の安全は確保出来たので、ゆっくり恋人を探そうと思います

織り子

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第四話ールシアンの選択

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帰りの馬車でセレノアはルシアンに言った。
「ルシアン、来てくれてありがとう。でも、大丈夫かしら。貴方、来年から王太子と同じ貴族院に入るのよ。今回の件で目をつけられたに違いないわ」

「姉上、そうだとしても、あの状況で何もしないのは無理だよ。王太子も、命があっただけ良しとしてほしいな」

「ルシアンっ!」
セレノアは慌ててルシアンの口を塞いだ。
「まだ王宮の近くなのよ」
発言が過激すぎる。ルシアンは普段落ち着いているが、怒ると怖い。ルシアンが怒りをあらわにするのは、自分が関係した事が多いことはセレノアも気付いている。
(少し可愛がりすぎたかしら?シスコン気味に育っている気がするわ)


「あ、あねうえっ」
もごもごと聞こえる声に顔を上げると、口を塞がれたルシアンが真っ赤になって抗議している。

「わ、分かりましたから離してください」

セレノアはぽかんとして手を離した。
(こんなことで真っ赤になるなんて、なんて可愛いのかしら)

離そうと思えば、すぐ離せるのに、セレノアの手を心配してか、ルシアンはされるがままだ。
ルシアンの見た目にそぐわない力は、王家の者だけに与えられる祝福が関係しているのだろう。

ルシアンは昔、セレノアと2人でふざけ合っていてセレノアを怪我させたことがある。それ以来、強すぎる力でセレノアを傷付けないように、じゃれ合うのを止めた。鬼ごっこも、かくれんぼもしてくれず、セレノアは少し悲しかった。


「とりあえず、貴族院に入るまで大人しくしておきましょう。お城に近づかないように」
「ああ。姉上もまだ婚約者ではないし、城に行く理由なんてないから大丈夫だよ」

既に事業に参加しているセレノアとルシアンは、お城でのお茶会や催しなどを、事業を理由に断った。





ーだが、1度だけ断れない案件が起き、ルシアンは大公と一緒に登城した。


「ルシアン!」
城から帰ってきたルシアンを見てセレノアは激昂した。
ずぶ濡れで帰ってきたのである。もちろん雨など降っていない。

「お父様、どういうことですか?」
娘に詰め寄られ、大公は頭を下げた。
「すまない。王太子の機嫌が悪くてね。矛先がルシアンに行ってしまった」

当の本人は、落ち着いていた。
「気にしないで姉上、いずれ何倍にもして返すから。それより、ちょっとしたいことが出来てしまって、明日から半年くらい留守にするよ」

「何ですって?どういうこと?」
怒っていたセレノアは慌てて聞いた。

「魔塔に行ってくる。心配しないで、貴族院の入学までには戻るから」

魔塔?魔塔はセレノアも未だ行ったことがなく、縁をつなげたくても無理だと諦めていた場所だ。
魔塔の魔術師たちは会うのですら誓約があると聞く。


「ルシアン、魔塔に行って何をするの?あと半年で貴族院も始まるのよ?」

「後で手紙を送るよ。ちょっと準備があるから行くね」
ルシアンはセレノアからそそくさと離れ、部屋に籠もった。
次の日の朝、宣言通り出掛けていた。

セレノア16歳、ルシアン14歳。ルシアンは魔塔に出掛けて半年、そこからそのまま貴族院に入り、会うことが出来なくなった。

(ルシアンはどうしたのかしら。1度も大公家に戻らず、魔塔からそのまま貴族院に入学するなんて)

セレノアは心配したが、ルシアンが魔塔へ発ってから数日後に届いた手紙を思い出した。

《姉上、僕はなんとかやれそうです。心配しないで。目的を全うできるよう努力します》

ルシアンはルシアンのやり方で頑張っているのだ。知性、武力、魔力、ルシアンはあらゆる物を吸収していく。
(私も負けていられないわ)
命を奪われないために。

セレノアは目を閉じ、3年前に書いた箇条書きを見た。

(残り3年ー)
セレノアは気合いを入れなおし、電卓を弾いた。

(私は私の出来ることをやろう)

反乱は戦争だ。戦争に勝つには十分な資金が要る。
セレノアは事業に力を入れ、莫大な財産を手に入れた。それこそ、一国に匹敵するほどに。

2年でセレノアの持つ商会は、帝国で1番大きなものになった。




ーーーーそしてセレノア17歳、ルシアン15歳。

前回の生で命を落とす1年前に、唐突に王政は崩れた。

王が崩御したのである。齢15歳の少年の手によって。







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