白姫さまの征服譚。

潤ナナ

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第一章 二節。

第26話 聖女白姫、帝国領へ。

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◇◇◇

 帝国。
 皆、その国を只、『帝国』と呼ぶ。
 『グランディス・フルーメン帝国』と言うのが、正式な呼称だと言う。
 『大河』と言う意味だそうだ。
 そうカロリーヌ殿下に教えて頂いた。ってまぁ、ホントは知っていたのだが、ご教授願ったこともあるし、エルフのアデルハイト、アーデも勉強になったようだから、結果オーライです。

 日々、冒険者のお仕事を行いつつ………の予定ではあったが、冬はあんまり、魔物も魔獸も出て下さらない。
 どうしようか?皆で、相談して、ギルドのテーブルに突っ伏しているところに、、、スイマセン。突っ伏して居たのだから、相談何てしていなかったところに、依頼が来た。

 どうやら、商隊キャラバンの護衛らしい。「帝国の……」っと聞こえる。

「そ、それ、わたし達に任せて下さる?」
 声を掛けたミリディアに対し、胡乱げな目で見るお兄様。

「なんだあ?女子どもじゃねーかぁ。お呼びじゃねーよお嬢ちゃん?」
「あら?『プワロ商会』さん、彼女達ですのよ。噂のパーティーは。」
「はあ?こんな子どもがぁ?噂の『オセロのチンp』だってぇー!」
「何を無理矢理、下ネタ方向へ振り切ろうとしてるんですかぁー。彼女が『オールランカー』のミリディア嬢。で、後の方は、銀赤赤緑のパーティーですよぉー。」

「へえぇー。こんなちっこい嬢ちゃんが、金。どうか、さっきは無礼だったな。ゴメンよ。
 ちょっと、信じきれねーんだが、少し実力っての見せてくんない?」
「では、お兄様、銅貨か銭貨がございましたら、ちょっと投げて下さいません?」

「おう、いいとも。大銅貨じゃ無くてちっさい銅貨だぜ?いいのか?じゃあ行くぜぇ、ほらよっ!」
――――シャキーンパシッ!

「え?終わり?」
「はい、お兄様。お兄様の銅貨です。」
 と、真っ二つになった銅貨を握らされるプワロ商会のお兄さん。

「―――何だあんたぁースッゲーなぁ!よし、決めた、嬢ちゃん達にお願いする!
 てか、義手の仕込み剣とか、カッケーなっ!!」
「だしょう?ミリディアちゃん、カッケーッスわぁ!ねぇお兄さん。」
「おう、エルフの嬢ちゃんまで居んのか?何かスゲーな。まぁ出発は明後日だ。朝7時に南門で待ち合わせ。でいいか?詳細は受付のねーちゃんに渡してある。じゃあよろしくな!」
 と言う感じにあっさり、帝国方面の護衛に着いたミリディア達、『オセロの疾風』だった。

 余談だが、『疾風』と言うとどうしても、愛妻家のあの方を思い浮かべるのは、何もわたしだけでは無いはず。銀河英雄電鉄。ちょっともじったら何処かの私鉄みたいになっちゃった。

 余計なことは置いておいて、翌々日の朝、約束の通り、『プワロ商会』の馬車が、三台。二頭立ての馬車が二台、四頭立ての馬車一台だ。
 ミリディア達は三台に分乗。前衛のミリディアが先頭。もう一人の前衛であるカロンが三台目の馬車。三台目の馬車には、弓使いのアーデも乗った。
 暗器使いであるアリエルとマリーは二台目の馬車で、遊撃担当。前にも後ろにも行ける位置取りだ。

 と言う訳で今現在、暇だ。
 だから、ミリディアは、あのお兄様と歓談中。
 お兄様は、『プワロ商会』の御曹子で、御者様達に『坊っちゃん』呼ばわりされている。
 その都度、「参ったね。」と言って苦笑いするのだった。

 で、商会の商売先と言うのが、国境の町『マント』だと言う。売り物は、塩やお砂糖、お酒に医薬品。
 何でも『風邪』が流行っているのだそうだ。

「普通の風邪なら治せるかも、ですわ。」
「はっはっ、そんな聖女さんじゃあるまいし………白い髪だねえミリディアちゃん。。。」
――――あーこれ知ってるわ。バレたっぽい。

「オスカー様、お願いです。内緒にして下さいませ!」
「メンバー知ってんの?」
「はい。」

「―――スッゲー俺付いてるわあああ。こんなところで、本物の聖女さんと会えて、お話ししてるだとかー!感動してるぅぅぅ!」
「ホント内密に………。」

 マントの町まで、5~6日。
 最初の二日は、小さな集落に泊まることが出来た。今日からは、国境を越えて尚、町も村も無い、とオスカー・プワロは仰っている。
 野営だ。

 ちょっとかなりワクワクするミリディアであった。
 なんせ、野営とか、竜の島の洞窟で経験はあるのだが、何か本格的な『野営』だと思うのであった。

「ねえ、竈作る?薪拾って来る?お水出そうか?何手伝う?(ワックワク)」
「ミリディア、マジウザイッス。ああ、それいいから、薪拾って来いッスわぁー。擬音ウザイ。」
「マリーってば、つれないわ?」
「ほら、ミリディア行きますよ。薪拾いッス!」
 と右手をアーデに引っ張られて、、、
――――あっ、手取れた。
「キャアアアアアーーー!」
 と言うアデルハイト、アーデの悲鳴に御者も驚いて見たミリディアの腕がもげていたものだから、少しの間、阿鼻叫喚の地獄絵図になるのだった。

 夕食も商隊からの提供である。契約書に、『三食付き。護衛料一日辺り銀貨四枚。』と書いてある。
 お貴族様は、お金に疎い。「この料金って多いの少ないの?」と、アーデに訊いて来るのだ。「普通よりか安いッス。でも、食事付きッスから、食事の内容によりますかね?」と答えてくれた。
 本当にアーデが居て助かった。もしも彼女がいなかったら………恐ろしい想像しか出来ないマリーとアリエルであったのだ。

 夕食は、何かの鶏肉を魚醤タレに漬け込んで焼いた物と野菜スープに黒パン。
 最近、庶民ナイズしていると自負しているミリディアであったが、この固くてボソボソな黒パンが苦手であるのだ。
 そう言うミリディアに気が付いたオスカー。

「こうやって、スープに浸して食べてご覧。―――どお?」
「―――うわああー凄い凄いです。オスカー様!苦手なパンが食べられます。オスカー様って、博識なのですねー!」
 プワーーっと笑顔になったミリディア。

「(―――可愛い……。とか、無い無い、俺はロリコンじゃねーぇってのぉ!)美しい笑顔ですね。」
 って何を言っているのだオスカー。

 商会の御曹子オスカーは、一人で悶絶するのであった。


 御者が、三名と商会の番頭、従業員、丁稚の12歳の男の子、そして若様『坊っちゃん』オスカー。御者三名なのは、オスカー達、商会の人も御者が、出来るから。12歳の男の子は、雑用だと言う。

 サンレノを出発して四日目の昼過ぎ、盗賊が現れたのだ。
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