魔王の果実

亜坊 ひろ

文字の大きさ
9 / 9

魔王の果実【最終話】

しおりを挟む


 「これで…あなたは私のもの…。」

 篤志が見た顔は満足げに微笑みを浮かべた以前の梨華子の顔だった。

 「お、お前…。」

 だがその顔が見る間に肉が削げ、髪が抜け、目玉が落ち、ミイラから白骨へと変貌する。

 「あ…り…が…ど…う…。」

 その恐怖のあまり、篤志は捕まえていたコンクリートの端を手放してしまった。

 「ぎゃあああああ!…。」

 暗闇の中に響きわたる悲鳴。吸い込まれて行くように橋の下へ消えて行った。二人一緒に…。


そして2日後の朝-

 「ふぁああ…。よく眠ったわい…。どれ、コーヒーでもいれようか…それと~ウフッ…昨日手に入れたライ麦パンを味わうとするかのぅ…。」

“カラン、カラン”

 「おっはよーございま~す!」

 「な、あの声は?」

 匂いにつられて居間に上がり込んできたメヒスト。

 「いや~まだ朝食前だったんですかぁ?奇遇だなぁ~私も…まだなんですよ…ウフフ。」

 「な~にがウフフじゃ!気味の悪い笑いを浮かべおって!最初から朝飯が目当てだったくせに…。」

 「あり?変だなぁ…なんでわかったんだろぅ…。アハハ…。」

 「そんなもん見え見えじゃ!…。ふっ、まあよい。お前の分のコーヒーも…。って…おい!勝手にそのパンを食うなぁ!」

 「いただきま~ハグッ“モグモグ”おいひいですよ~ベル様。ついでにテレビもポチッと…。」

 「貴様ぁ!」

 「あ!?ベル様、テレビ、テレビ。」

 テレビのニュースが目に入ってきた。

“今朝、都内某所の河川敷で男性の溺死体が発見されました…男性の身元は遺留品から都内の無職、鈴木篤志さん25歳とおもわれ、警察の調べでは死後1日が経過していて上流での自殺と事故の両面で捜査している模様ですが…遺体は不思議なことに既に白骨化した女性の遺体と一緒に発見され、女性の死を苦に自殺したのではないかとの事、女性の死因は病死の模様で、身元は不明…次のニュース。”

 「…。時がすべてでは無い…。人であるがゆえ、時に苛まれて生きるが運命ではない…。死ぬのが運命である以上人は時に苛まれず、もがき苦しみ時の流れに逆らい生きていかなければ…。」

 「ですね…。モグモグ…。あ~おいしかった!」

 「メヒスト!あぁ~?!全部食いやがって~!貴様ぁ!そこへなおれ!成敗してくれる~!」


 “娘…これで良かったのか?…今度生まれ変わったら必ず幸せになるんじゃぞ…リリラウア…リリラウア…。”


終わり



しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

竜ヶ崎霊夢
2021.10.02 竜ヶ崎霊夢

面白いです。
お気に入り登録しました。

2021.10.16 亜坊 ひろ

ありがとうございます。シリーズも楽しんで下さい。

解除

あなたにおすすめの小説

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/25:『がんじつのおおあめ』の章を追加。2026/1/1の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/24:『おおみそか』の章を追加。2025/12/31の朝4時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。