魔王の果実Ⅲ【砂の棺】

亜坊 ひろ

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魔王の果実Ⅲ【砂の棺】第1話

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 わしの名はベルル・ユナイリ。ここ魔境薬方の女主人じゃ…。とある事情で魔界から追放され、ここ人間界で出稼ぎを余儀なくさせられとる。まぁ…好きで人間界にいるのじゃが…。

 さて、今回はどんな輩と出会うことやら…。リリラウア…リリラウア…。


“カラン、カラン”

 「おばさんいる?ベルおばさ~ん!」

 奥から渋々出てくるベルル。

 「なんじゃ、ラナリュ!お前はいつまでここにいる気だ?マドリア討伐の命は果たしたはずじゃろ?こっちはこっちで忙しいんじゃ、用事が無いならさっさと魔界へ帰れ!」

 「え?帰れって、随分だねおばさん。せっかくカルムを解かせたのは誰だい?」

 「なっ…そ、それは自分の…」

 「あれぇ?実力だとでも?メヒストのオッサンを呼びよせたから、マドリアの馬鹿女を倒せたんだよなぁ~。魔界に帰ってもすることなくってさ~つまんないし。やっぱ人間界の方が色々面白いことありそうだしさ」

 「ええい!勝手にしろ!」

“カラン、カラン“

 「ヘックシッ!ありゃ?風邪ひいたかな?」

 店に入って来たメヒストを見て頭を手にあて首を横に振るベルル。

 「またややこしいのが…」

 ベルルの態度に訳が分からない様子のメヒスト。

 「なんか…しました?ラナリュ坊っちゃんも一緒に…。内緒話はダメですよ。わたしも仲間に入れてくださ~い」

 「わかった、わかった。お前はまたタダ飯を食いに来ただけだろうに…」

 「そんなぁ~。こっちはベル様の機嫌を損ねない様に気をつけているのに。あんまりです~。で、朝食はまだ?ですよね?」

 メヒストの天然の緊張感の無さにウケるラナリュ。

 「プッ…。オッサン相変わらずだね~。意識を無くしてた時も、こっちがハラハラしながらマドリアとの闘っていたのに、一番美味しい所持っていくしさ~。ま、元が元だから仕方ないか」

 「ば、馬鹿者!ラナリュ、何を余計な事を言ってるんじゃ!」

 「い?何のことです?」

 ベルルと同一人物なのを知らない不思議そうなメヒスト。

 「何でもない!お前は知らんでいい。仕方ない…。朝食にするか…ラナリュも一緒にどうじゃ?」

 「いや俺はいいよ。それよりおばさん、俺たちで新しい魔法考えようよ。」

 するとそこにまたベルルの頭を悩ませる種がやって来た。

”カラン、カラン。”

 「邪魔するぞ…」

 「ミハエル?なんじゃお前まで…今日は厄介者ばかり集まる日じゃな…」

 「な、なんだと?誰が厄介者…。やや?ラナリュ様も来ていらしたのですか」

 更にウケるラナリュ。

 「ミハエル、天下の魔界監獄長もここでは厄介者あつかいとはな…。アハハ…」

 「ラナリュ様…。笑い事では…。ベルルよ魔王様からのお言葉を言い伝えに来た」

 「なんじゃ?刑期の延長か?わしは別に構わんぞ。人間界で禁術を使った罰はどんな罰でも受ける覚悟じゃ…」

 「いや…。魔王様は今回のマドリアの一件は大層喜んでおられ、お前の刑期の延長は無い…。だが…」

 ミハエルの顔つきが変わる。ベルルもその変化に嫌な感じを持っていた。

 「だが…?また無理難題を言うつもりなんか?だから厄介者だと言うのじゃ…」

 「ハクア…。この名を知ってるな…ベルル…」

“ガチャン!“

 震えながら食器を床に落とすベルル。ベルルの表情の変化に戸惑うラナリュとメヒスト。

 「おばさん?大丈夫?」

 「ベル様…」

 「ミハエル…。その名がどうかしたか…」

 「今朝…脱獄した…。監守を8人死傷させてな…」

 顔が真っ青になるベルル。

 「馬鹿な…。何故あやつが…」

 「ミハエル、ハクアって何者だい?」

 ミハエルを静止する様にベルルが口を開く。

 「わしの…かつての師匠であり…。そしてわしの恋人だった男じゃ…」

 「!?」

第2話に続く


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