優しきジゼル

ニチカ

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ノアは果物の収穫や、魚を干したりと色々していた。ふと、ルークに「手伝え」と言われ、ルークの後ろをついて行った。ルークはバケットにたくさんの木の実が入っていた。

「クマのビーさんのところに果物を分けに行く」

そういえば昨日ジゼルが話していたなと、思い出した。 

「分かった」

ルークとノアは、大きな木の家の前で止まった。壁には魚が吊るされていた。

「ここが、ビーさんの家」

大きなドアをノックすると、大きなクマが出てきた。その大きなクマは前の開いた赤いジャケットを着て、丸メガネをつけていた。

「こんにちはビーさん。こいつ、新しい家族、ノア」

ビーさんというそのクマは優しく笑って、大きな手でノアの頭を撫でた。ノアは「うぉ…」と声が漏れた。

「はじめまして、ビーだよ」

「初めまして、ノアです」

ルークはビーさんに木の実の入ったバケットを渡した。
 
「木の実かい、ありがとう」

「寝床は大丈夫?」

「うん。それにしても、昨日の夜は風が強かったから、風の精がいたのを見たんだ」

ノアは首を傾げて、ルークは耳を上げて、目を丸くした。

「ほんとに?風の精がいたの?」

ルークはそういい、ビーさんに詰め寄った。

「そう慌てないで、昨日の夜魚釣りをしていたら、あの山に居たんだ」

ノアは話についていけないので「あの、風の精って?」と2人に聞いた。

「風の精っていうのは、この森にたまに現れる風の妖精。自由で、気まぐれで、孤独なんだ」

ルークはウキウキとしながら、ノアにそう説明した。ノアは「へぇ」とだけ言った。ルークはそれを聞き肩を落とした。

「興味もてよ」

「妖精なんて本の中の逸話か、なにかだろ」

ノアはビーさんや、ルークの話を信用しているよう出なかった。ルークはため息をついた。

「分かった。今夜風の精に会いに来よう。ビーさん、あそこで見たんでしょ?」

「そうだよ。あの山に居たんだ。風の精は1度出てくると数日は出てくるから」

ビーさんは小さく笑って、家の中に入っていった。



ノアとルークが家に帰ると、ジゼルとルイーズと、犬の耳を持つアンナと、猫の耳を持つビクトリアとで紅茶を飲んでケーキを食べていた。

「あら、女子会をしてたのに、男の子が来たらダメよ」

ビクトリアがしっぽを優雅にゆらゆらと揺らしながら言い、紅茶を飲んだ。

「リオはどこだ?」

「リオなら部屋にいますよ。一緒にケーキはいかがですか?クッキーもあります」

リオはテーブルからクッキーをいくつか皿に乗せて「これで結構」とノアと2階へ上がった。

「どんな秘密の会議をするんでしょうね」

ジゼルは「ふふふ」と小さく笑った。



リスのフサフサのしっぽを持つリオは1人部屋で本を読んでいた。まだたった6歳だが、本が三度の飯より好きなのだ。

「風の精…いつか会えないかな」

そこにルークとノアがやってきた。

「リオ、今夜、風の精に会いに行くぞ」

リオはその瞬間、目を丸くして輝かせた「ほんとに?」  と聞いた。

「ほんとだ。今夜行くぞ」

「うん!」









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