72 / 362
* 死神生活一年目 *
第72話 死神ちゃんと知的筋肉
しおりを挟む
死神ちゃんの前方を、冒険者の集団が歩いていた。死神ちゃんは後方を歩く女の背中めがけて飛行速度を加速させた。しかし、死神ちゃんが触れるかどうかの既のところで、彼女はスッと身を翻した。彼女を驚かせてとり憑いてやろうと目星をつけていた死神ちゃんは呆気にとられ、そのまま彼女の横を通過した。そして――
「僕の胸に飛び込んでくるだなんて、なんて積極的で情熱的な子だ! しかもこの僕を選ぶだなんて、君はとても見る目があるね!」
筋肉隆々そうな若い聖騎士は振り返りざまに死神ちゃんをホールドすると、そのままギュウギュウと抱きしめ、そして頬に軽いキスをした。その様子を見ていた冒険者仲間達は苦い顔で溜め息をついた。
* 聖騎士の 信頼度が 5 下がったよ! *
「いやだなあ。〈知的〉かつ〈がっちり体型〉であるこの〈男前〉な僕が、〈可愛い〉女の子の心を奪ってしまうのは〈日常茶飯事〉だろう?」
「いや、その子、死神だから」
ぶ厚めのマントに身を包んだ女が、死神ちゃんに頬ずりする聖騎士と、そしてそれを嫌がって抵抗している死神ちゃんを呆れ顔で見つめながら言った。
死神ちゃんは聖騎士の頬を必死に押しやりながら、マントの彼女――元々死神ちゃんがとり憑こうと思っていた相手を見つめて顔をしかめた。
「あんた、俺が近づいて行ったら既で避けたよな。一体、何者なんだ?」
「彼女は熟練の司教だよ。このパーティー内では、僕に次ぐ〈知性の優れた〉女性さ。魔法使いの彼女と二人で、我がパーティーの〈癒やし担当〉も務めてくれているよ」
「いやあ、司教があんな身のこなし、するかあ……?」
死神ちゃんは聖騎士を横目に、司教をじっとりと見つめた。司教は苦笑いを浮かべると「とりあえず、お祓いのために一旦戻ろう」と提案した。
聖騎士は死神ちゃんのことを気に入ったのか、一階へと戻る道すがら、死神ちゃんのことを抱っこしたまま歩いていた。そして、ニコニコと死神ちゃんへと笑いかけながら、自分がいかに知的であるかを語ってきかせた。
彼は地元では結構有名な大学に在学し、休みのたびにダンジョンに来ては修行を兼ねて探索に勤しんでいるのだそうだ。将来は王宮の聖騎士を希望しているため、今のうちに少しでも経験を積んでおきたいらしい。
無駄にプライドばかり高い彼の自慢話に飽き飽きしているパーティーの仲間達は、嬉しそうにおしゃべりを続ける聖騎士を鬱陶しそうに眺めた。そのうちの誰かがモンスターと遭遇した旨を合図し全員が戦闘態勢に入ると、聖騎士は慌てて死神ちゃんを解放して剣に手をかけた。
彼らの戦闘風景を見て、死神ちゃんは首を捻った。そして、戦闘が終えた彼らにポツリとこぼした。
「なあ、この聖騎士さ、言うほど知的か? こいつの戦い方を見てて、全然知性の欠片も感じなかったんだが。知性って、お勉強できてりゃあ身についてるってものでもないだろう。知識ばっか豊富で、知性があるように勘違いしてるだけなんじゃないのか? それに、マッシブというほど攻撃に威力もないし……」
聖騎士は常に、立ち位置を誤り仲間達に迷惑をかけていた。そんな空気を読めない彼のために周りが合わせてやっているようだったが、そのせいでベストタイミングでの攻撃ができないでいたのだ。しかも魔法の威力も中途半端で、本当に知性に溢れているのか甚だ疑問だった。さらに体の使い方がなっていないのか、それとも〈マッシブ〉というのははったりなのか、剣撃がとても軽かった。
死神ちゃんに疑いの眼差しを向けられた聖騎士は、ショックで顔を青ざめさせると声をわななかせた。
「僕は今、〈深い悲しみ〉を覚えたよ」
「そもそもその喋り方が鼻につくっていうか、正直頭が悪そうに感じるんだがな。どこの芸人だよ」
死神ちゃんが鼻をフンと鳴らすと、聖騎士は失意で肩を落とした。そんな彼をパーティーのアイドル二人が一生懸命に励ましていた。
死神ちゃんは聖騎士を励ます司教をぼんやりと眺めながら、彼女の戦闘中の立ち振舞いについて思い返していた。彼女は難解な魔法も涼やかな顔でこなし、仲間の状態を見極めて完璧なタイミングで支援や回復を行っていた。そして、時折メイスを手にモンスターと対峙していたのだが、そのメイス捌きも素晴らしいものがあった。マッシブかどうかは分からないが、彼女こそ、真の〈知的〉に相応しいと死神ちゃんは思った。
一行が再び帰路を辿りだしてしばらくすると、モンスターの群れと再度遭遇した。いまだショックから立ち直らない聖騎士に足を引っ張られまくり、彼らは先ほどよりも手強いモンスター達に押されていた。
前衛で抑えきれなかったモンスターの一匹が後衛の魔法使いに向かって駆けて行き、男どもは顔を青ざめさせた。他のモンスターに向かって魔法攻撃をすることに夢中になっていた彼女は、男性陣の「逃げろ」という言葉でようやく自分がモンスターに狙われていることに気がついた。
彼女は突然のことに思わず一瞬硬直し、足をもつれさせて尻もちをついた。そして、一巻の終わりとばかりに目を瞑ったが、モンスターの攻撃が彼女に当たることはなかった。
モンスターの一撃を、司教がメイスで受け止めていた。そして彼女はモンスターを押し返すと、重い蹴りを敵に食らわせた。
ズシンと地に沈むモンスターと彼女の背中を魔法使いがぽかんと見つめていると、振り返った司教が「大丈夫?」と言いながら魔法使いに笑いかけた。司教はそのまま軽々と魔法使いをお姫様抱っこすると、一行とは少し離れた安全な場所まで彼女を運んでいき、壁にもたれかかるように座らせた。
依然呆気にとられたままの魔法使いに笑いかけると、司教は魔法のポーチにメイスを仕舞い、代わりにグローブを取り出した。そしてバサリとマントを脱ぎ捨てると、駆け足で戦闘に戻っていった。魔法使いは、そんな彼女の後ろ姿をうっとりとした表情で見つめていた。
司教はモンスターに手こずっている男性陣の横を颯爽と駆け抜け背後に回ると、モンスターの腹に向かって重たい一撃を食らわせた。そのままキレのある殴りと蹴りで彼女は一体、また一体と敵を薙ぎ倒していった。
丈の短いブラトップに短パンという、まるでプロレスラーのような出で立ちで敵を葬っていく司教を目にして、男性陣は思わず攻撃の手を休めた。彼女は苦笑いを浮かべると、目の前の敵を殴りつけながら告白した。
「いつも利用している宿の近くにある僧兵の道場前を通るたびに〈カッコいいなあ。私もああなりたいな〉って思ってたら、この血が騒ぐのを抑えられなくなって。勢い余って転職しちゃった。黙っててごめんね。あ、でも、主要な魔法はきちんと引き継いできてるから安心してね!?」
てへと可愛らしく笑いながらモンスターを地に沈める彼女の姿に、前衛の男性のうち一人が惚れ惚れとし、二人が愕然とした。
愕然としているほうの一人は、彼女の可愛らしい笑顔の下にさながら合成写真のように存在する完璧な上腕筋に、綺麗に割れた腹筋、素晴らしいハムを舐めるように見ながら「俺のアイドルがムキムキに……」と呟き目に涙を浮かべた。その男に対して、ときめき顔の男と死神ちゃんが抗議の声を上げた。
「何でだよ! すげえイイじゃん! 司教――じゃなかった、僧兵ちゃん、めっちゃ最高だよ!」
「ああ、彼女はとても美しいよ! 戦士A、お前、見る目があるな! 彼女こそ、真の〈知的筋肉〉だよ! それが分からないだなんて、戦士Bは何て可哀想なヤツなんだ!」
戦士達と死神ちゃんが騒がしく言い合いをしている横で、もう一人の〈愕然としていた男〉――聖騎士が静かに膝をついた。まだ戦闘が終わっていないということをすっかり忘れ敵に隙を見せた彼は、仲間達が助けの手を差し伸べるのも間に合わず、モンスターの渾身の一撃を食らった。そして、彼は無駄に高かったプライドとともにサラサラと崩れ落ちていったのだった。
**********
「〈第三〉のお風呂に入りに来るのはいいけれど、アンタ、これから夜勤でしょう?」
「マッコイのケチ! 私だって、こうやって定期的に可愛いものを抱えながらほっこり温まって癒やされたいんだよ! それに、出勤前だからこそじゃあないか! 気合が入るだろうが、気合が!」
「でも、だからって、いちいち抱きかかえなくたっていいでしょう!? ほらまた、薫ちゃん、鼻の下伸ばしちゃっていやらしいったら!」
ケイティーとマッコイがギャンギャンと言い合うのに苦笑いを浮かべながら、死神ちゃんはケイティーの膝から降りた。ケイティーは若干悲しそうにしていたが、マッコイの機嫌のほうはほんの少しだけだが回復したようだった。しかし、それも束の間、マッコイは再び死神ちゃんを睨みつけた。
「ちょっと、薫ちゃん! 膝から降りたと思ったら、何もっと破廉恥なことしてるのよ!」
「あ、いや、今日の担当の中に僧兵の女性がいてさ。すごく、いい筋肉してたんだよ。ケイティーと負けず劣らずのさ。それを思い出したら、ついうっかり」
死神ちゃんは謝罪の言葉を述べながら、バツが悪そうにケイティーの腹筋から手を引いた。すると、彼女は弾けるように笑い出した。
「別に、腹筋くらいならいくらでも触っていいよ。ていうか、その冒険者、そんなにいい筋肉してたんだ?」
「すごかった。そして、美しかった。元々は司教だったからか魔法とかも得意で。〈知的筋肉〉って言葉は、彼女のためにあるんだなと」
「筋肉に一家言ある小花が言うなら、相当いい身体してたんだろうね。いいなあ、いつか私も見てみたい。むしろ、戦ってみたい。――でも、それも叶わぬ夢だろうから、ひとまず目の前のマッシブで我慢しとく」
いきなりケイティーに笑顔を向けられ、マッコイは憮然とした顔を浮かべた。そんな彼に、ケイティーと死神ちゃんは爽やかな笑顔を浮かべると、両の手をわきわきと動かしながら声を揃えて言った。
「腹筋、触らせて」
第三死神寮の浴室内に、オカマの羞恥の悲鳴が切々とこだましたのだった。
――――いつか、〈知的筋肉〉な彼女とハムを会わせてみたいのDEATH。
「僕の胸に飛び込んでくるだなんて、なんて積極的で情熱的な子だ! しかもこの僕を選ぶだなんて、君はとても見る目があるね!」
筋肉隆々そうな若い聖騎士は振り返りざまに死神ちゃんをホールドすると、そのままギュウギュウと抱きしめ、そして頬に軽いキスをした。その様子を見ていた冒険者仲間達は苦い顔で溜め息をついた。
* 聖騎士の 信頼度が 5 下がったよ! *
「いやだなあ。〈知的〉かつ〈がっちり体型〉であるこの〈男前〉な僕が、〈可愛い〉女の子の心を奪ってしまうのは〈日常茶飯事〉だろう?」
「いや、その子、死神だから」
ぶ厚めのマントに身を包んだ女が、死神ちゃんに頬ずりする聖騎士と、そしてそれを嫌がって抵抗している死神ちゃんを呆れ顔で見つめながら言った。
死神ちゃんは聖騎士の頬を必死に押しやりながら、マントの彼女――元々死神ちゃんがとり憑こうと思っていた相手を見つめて顔をしかめた。
「あんた、俺が近づいて行ったら既で避けたよな。一体、何者なんだ?」
「彼女は熟練の司教だよ。このパーティー内では、僕に次ぐ〈知性の優れた〉女性さ。魔法使いの彼女と二人で、我がパーティーの〈癒やし担当〉も務めてくれているよ」
「いやあ、司教があんな身のこなし、するかあ……?」
死神ちゃんは聖騎士を横目に、司教をじっとりと見つめた。司教は苦笑いを浮かべると「とりあえず、お祓いのために一旦戻ろう」と提案した。
聖騎士は死神ちゃんのことを気に入ったのか、一階へと戻る道すがら、死神ちゃんのことを抱っこしたまま歩いていた。そして、ニコニコと死神ちゃんへと笑いかけながら、自分がいかに知的であるかを語ってきかせた。
彼は地元では結構有名な大学に在学し、休みのたびにダンジョンに来ては修行を兼ねて探索に勤しんでいるのだそうだ。将来は王宮の聖騎士を希望しているため、今のうちに少しでも経験を積んでおきたいらしい。
無駄にプライドばかり高い彼の自慢話に飽き飽きしているパーティーの仲間達は、嬉しそうにおしゃべりを続ける聖騎士を鬱陶しそうに眺めた。そのうちの誰かがモンスターと遭遇した旨を合図し全員が戦闘態勢に入ると、聖騎士は慌てて死神ちゃんを解放して剣に手をかけた。
彼らの戦闘風景を見て、死神ちゃんは首を捻った。そして、戦闘が終えた彼らにポツリとこぼした。
「なあ、この聖騎士さ、言うほど知的か? こいつの戦い方を見てて、全然知性の欠片も感じなかったんだが。知性って、お勉強できてりゃあ身についてるってものでもないだろう。知識ばっか豊富で、知性があるように勘違いしてるだけなんじゃないのか? それに、マッシブというほど攻撃に威力もないし……」
聖騎士は常に、立ち位置を誤り仲間達に迷惑をかけていた。そんな空気を読めない彼のために周りが合わせてやっているようだったが、そのせいでベストタイミングでの攻撃ができないでいたのだ。しかも魔法の威力も中途半端で、本当に知性に溢れているのか甚だ疑問だった。さらに体の使い方がなっていないのか、それとも〈マッシブ〉というのははったりなのか、剣撃がとても軽かった。
死神ちゃんに疑いの眼差しを向けられた聖騎士は、ショックで顔を青ざめさせると声をわななかせた。
「僕は今、〈深い悲しみ〉を覚えたよ」
「そもそもその喋り方が鼻につくっていうか、正直頭が悪そうに感じるんだがな。どこの芸人だよ」
死神ちゃんが鼻をフンと鳴らすと、聖騎士は失意で肩を落とした。そんな彼をパーティーのアイドル二人が一生懸命に励ましていた。
死神ちゃんは聖騎士を励ます司教をぼんやりと眺めながら、彼女の戦闘中の立ち振舞いについて思い返していた。彼女は難解な魔法も涼やかな顔でこなし、仲間の状態を見極めて完璧なタイミングで支援や回復を行っていた。そして、時折メイスを手にモンスターと対峙していたのだが、そのメイス捌きも素晴らしいものがあった。マッシブかどうかは分からないが、彼女こそ、真の〈知的〉に相応しいと死神ちゃんは思った。
一行が再び帰路を辿りだしてしばらくすると、モンスターの群れと再度遭遇した。いまだショックから立ち直らない聖騎士に足を引っ張られまくり、彼らは先ほどよりも手強いモンスター達に押されていた。
前衛で抑えきれなかったモンスターの一匹が後衛の魔法使いに向かって駆けて行き、男どもは顔を青ざめさせた。他のモンスターに向かって魔法攻撃をすることに夢中になっていた彼女は、男性陣の「逃げろ」という言葉でようやく自分がモンスターに狙われていることに気がついた。
彼女は突然のことに思わず一瞬硬直し、足をもつれさせて尻もちをついた。そして、一巻の終わりとばかりに目を瞑ったが、モンスターの攻撃が彼女に当たることはなかった。
モンスターの一撃を、司教がメイスで受け止めていた。そして彼女はモンスターを押し返すと、重い蹴りを敵に食らわせた。
ズシンと地に沈むモンスターと彼女の背中を魔法使いがぽかんと見つめていると、振り返った司教が「大丈夫?」と言いながら魔法使いに笑いかけた。司教はそのまま軽々と魔法使いをお姫様抱っこすると、一行とは少し離れた安全な場所まで彼女を運んでいき、壁にもたれかかるように座らせた。
依然呆気にとられたままの魔法使いに笑いかけると、司教は魔法のポーチにメイスを仕舞い、代わりにグローブを取り出した。そしてバサリとマントを脱ぎ捨てると、駆け足で戦闘に戻っていった。魔法使いは、そんな彼女の後ろ姿をうっとりとした表情で見つめていた。
司教はモンスターに手こずっている男性陣の横を颯爽と駆け抜け背後に回ると、モンスターの腹に向かって重たい一撃を食らわせた。そのままキレのある殴りと蹴りで彼女は一体、また一体と敵を薙ぎ倒していった。
丈の短いブラトップに短パンという、まるでプロレスラーのような出で立ちで敵を葬っていく司教を目にして、男性陣は思わず攻撃の手を休めた。彼女は苦笑いを浮かべると、目の前の敵を殴りつけながら告白した。
「いつも利用している宿の近くにある僧兵の道場前を通るたびに〈カッコいいなあ。私もああなりたいな〉って思ってたら、この血が騒ぐのを抑えられなくなって。勢い余って転職しちゃった。黙っててごめんね。あ、でも、主要な魔法はきちんと引き継いできてるから安心してね!?」
てへと可愛らしく笑いながらモンスターを地に沈める彼女の姿に、前衛の男性のうち一人が惚れ惚れとし、二人が愕然とした。
愕然としているほうの一人は、彼女の可愛らしい笑顔の下にさながら合成写真のように存在する完璧な上腕筋に、綺麗に割れた腹筋、素晴らしいハムを舐めるように見ながら「俺のアイドルがムキムキに……」と呟き目に涙を浮かべた。その男に対して、ときめき顔の男と死神ちゃんが抗議の声を上げた。
「何でだよ! すげえイイじゃん! 司教――じゃなかった、僧兵ちゃん、めっちゃ最高だよ!」
「ああ、彼女はとても美しいよ! 戦士A、お前、見る目があるな! 彼女こそ、真の〈知的筋肉〉だよ! それが分からないだなんて、戦士Bは何て可哀想なヤツなんだ!」
戦士達と死神ちゃんが騒がしく言い合いをしている横で、もう一人の〈愕然としていた男〉――聖騎士が静かに膝をついた。まだ戦闘が終わっていないということをすっかり忘れ敵に隙を見せた彼は、仲間達が助けの手を差し伸べるのも間に合わず、モンスターの渾身の一撃を食らった。そして、彼は無駄に高かったプライドとともにサラサラと崩れ落ちていったのだった。
**********
「〈第三〉のお風呂に入りに来るのはいいけれど、アンタ、これから夜勤でしょう?」
「マッコイのケチ! 私だって、こうやって定期的に可愛いものを抱えながらほっこり温まって癒やされたいんだよ! それに、出勤前だからこそじゃあないか! 気合が入るだろうが、気合が!」
「でも、だからって、いちいち抱きかかえなくたっていいでしょう!? ほらまた、薫ちゃん、鼻の下伸ばしちゃっていやらしいったら!」
ケイティーとマッコイがギャンギャンと言い合うのに苦笑いを浮かべながら、死神ちゃんはケイティーの膝から降りた。ケイティーは若干悲しそうにしていたが、マッコイの機嫌のほうはほんの少しだけだが回復したようだった。しかし、それも束の間、マッコイは再び死神ちゃんを睨みつけた。
「ちょっと、薫ちゃん! 膝から降りたと思ったら、何もっと破廉恥なことしてるのよ!」
「あ、いや、今日の担当の中に僧兵の女性がいてさ。すごく、いい筋肉してたんだよ。ケイティーと負けず劣らずのさ。それを思い出したら、ついうっかり」
死神ちゃんは謝罪の言葉を述べながら、バツが悪そうにケイティーの腹筋から手を引いた。すると、彼女は弾けるように笑い出した。
「別に、腹筋くらいならいくらでも触っていいよ。ていうか、その冒険者、そんなにいい筋肉してたんだ?」
「すごかった。そして、美しかった。元々は司教だったからか魔法とかも得意で。〈知的筋肉〉って言葉は、彼女のためにあるんだなと」
「筋肉に一家言ある小花が言うなら、相当いい身体してたんだろうね。いいなあ、いつか私も見てみたい。むしろ、戦ってみたい。――でも、それも叶わぬ夢だろうから、ひとまず目の前のマッシブで我慢しとく」
いきなりケイティーに笑顔を向けられ、マッコイは憮然とした顔を浮かべた。そんな彼に、ケイティーと死神ちゃんは爽やかな笑顔を浮かべると、両の手をわきわきと動かしながら声を揃えて言った。
「腹筋、触らせて」
第三死神寮の浴室内に、オカマの羞恥の悲鳴が切々とこだましたのだった。
――――いつか、〈知的筋肉〉な彼女とハムを会わせてみたいのDEATH。
0
あなたにおすすめの小説
悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました
ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公
某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生
さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明
これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語
(基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
転生?したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
