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* 死神生活一年目 *
第113話 死神ちゃんとフリマ出店者
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死神ちゃんは四階の〈アイテム掘りスポット〉へとやって来た。ここはたしかに〈素晴らしく良い品〉がドロップするということで人知れず人気ではあるものの、反面、呪われた品や粗悪品などの〈ハズレ品〉が良品の数倍産出される。そして、ハズレ品は意外と高値で買い取ってもらえるため金策にはもってこいなのだが、凶悪なモンスターが低頻度で現れるだけのため、差し引きで考えると〈金策のためにここでアイテム掘りをする〉というのは美味しくない。そのため、ここは本当に欲しいものがあり粘り強い者がたまに訪れるくらいの場所であった。
そんな場所にここ最近ちょくちょく出動させられていた死神ちゃんは、不思議そうに首を傾げながら「またドMか、かわいこちゃんかな」とぼんやりと思った。そして現場に到着するなり、死神ちゃんはその場にいた人物を目視して盛大に顔をしかめた。
そこにいたのは、あのドM君主に勝るとも劣らない変態だった。そのノーム娘は実に破廉恥な格好をしており、上半身は簡素な鎧を身につけてはいたものの、下半身は腰鎧を巻かずにブーツだけを身に着けていた。そしてなんと、ズボンやスカートなどは一切履いておらず、本来腰鎧を巻いている場所とブーツとの間にはガーターベルトに網タイツが覗いていたのである。
死神ちゃんは思わず「破廉恥だな」と呻くように言った。すると彼女は顔を上げて死神ちゃんを見るなり、慌てて小指につけていた指輪を指でピンと弾いた。
「ああ、いけない。商売用の衣装のままだったわ。お目汚し失礼~」
「あれが〈商売用の衣装〉……? お前、娼婦か何かなのか?」
至って普通の〈冒険者スタイル〉へと姿を変えた彼女を、死神ちゃんは怪訝な表情で見つめた。すると彼女はケラケラと笑いながら〈否〉と答えた。
「私はフリマの出店者なんだ」
「フリマの出店者? あの格好で?」
依然疑いの眼差しで見てくる死神ちゃんに笑顔で頷くと、彼女は死神ちゃんを手招きしながら壁際に移動した。死神ちゃんに軽食を分けてやると、彼女は腰を下ろしながら「ここは宝の宝庫なんだよ」と言った。
「たしかにここは、いい装備品がドロップするらしいな」
「いやいや、そういうものじゃなくて。私が探しているのはこういうの」
そう言って、彼女は手にしていたドーナツを咥えて両手を開放すると、ポーチの中から武器を取り出した。――それは表面に何やらぬめぬめとした粘液を塗りこまれた、いわゆる〈粗悪品〉の一つだった。
彼女はぬめぬめとした棍棒をポーチに戻すと、ハンカチで手を綺麗に拭ってから、口に咥えていたドーナツを手にとった。
「これがねえ、法外な値段でも飛ぶように売れるのよね」
「一体、何故」
死神ちゃんが眉間にしわを寄せると、彼女はドーナツを頬張りながら話してくれた。
一階のセーフティーゾーンの一角には、冒険者が好きに露天を開くことができる場所がある。ここでは、様々なアイテムが冒険者達の〈自分にとって都合のいい価格〉で売りに出されているのだという。稀に掘り出し物などもあるため、結構な数の冒険者がこのフリーマーケット会場を利用しているそうなのだが、彼女はそこの常連出店者なのだそうだ。
彼女が現在熱心に売っているのは先ほど見せてくれた〈ぬめぬめとした棍棒〉で、これを先ほどの破廉恥な格好で〈ノームが一生懸命に振りました〉という看板を掲げて販売しているそうだ。
「こう、綺麗な棍棒に、まるで〈絵本の中の、箒で空を飛んでる魔法使い〉かのように足を絡ませてね。にっこり笑ってるだけで、あの汚らしい粗悪品が莫大な富に変わっていくわけよ」
「凄まじく悪どいな! しかも、見た目だけじゃなくて売り方も卑猥なのかよ!」
「私はどうしてぬめぬめになったのかまでは言及していないよ。だから、そんなこと考えるあなたや、買っていく冒険者のほうがよっぽど破廉恥なわけで」
「いやいや、お前、それ、狙ってやってるじゃないか!」
死神ちゃんが苦々しげな顔で彼女を睨みつけると、彼女はケラケラと笑ってそれを受け流した。
フリマ出店者は先ほどとは別の味のドーナツを取り出して半分に割りながら、死神ちゃんに「あなたもアイテム掘りに来たの?」と尋ねた。自分は死神であるということを死神ちゃんが伝えると、彼女は一瞬苦虫を噛み潰したような顔で嫌そうにしていたが、すぐさま何やら考え事でもしているかのような表情を浮かべた。そして嗚呼と声を上げると、笑顔を浮かべて言った。
「ああ! あの噂の〈死神ちゃん〉かあ! 〈見た目が可愛いだけで、何の効果もかかってない〉っていう極レアアイテムのモチーフにもなってるっていう!」
「あれか、スライム責めに遭ってるやつか」
「そうそう、それ! 本当にレアすぎて、私も実物は見たことないんだけど! 本当に何の役にも立たないアイテムらしいんだけど、えらい人気らしいのよね。それこそ、凄まじい値段で取引されてるみたいで!」
死神ちゃんは心底嫌そうに顔を歪めた。そんなことなど気にも留めず、フリマ出店者はニヤニヤとした笑みを浮かべてウンウンと頷き、ガッツポーズをとった。
「なんだ、そのガッツポーズは」
「いやだって、そんな人気者を手に入れちゃったわけでしょう? だから、あなたを非売品マスコットとして陳列しておけば、今まで以上にお客さんが来てくれるようになるはずでしょ? これは、ビッグウェーブの到来の予感! フリマ御殿も夢じゃないね!」
「はあ!?」
死神ちゃんが頓狂な声を上げるも彼女の耳には届いてはおらず、彼女は「これで人生勝ち組!」と叫びながら両腕を振り上げて勝利宣言した。死神ちゃんは血相を変えると、それは得策ではないということを熱心に説き始めた。具体的には、自分を養うにはどれほどの金銭がかかるか、つまるところ、食費がどれだけ嵩むかを一生懸命に語った。
しかし、フリマ出店者は動じるどころかヘラヘラと笑って言った。
「どれだけエンゲル係数がうなぎ上りになろうと、それを上回るほどの収入があれば問題ナッシーング!」
「いや、問題だらけだろう! お前、自分の生活どうすんだよ!? ダンジョンから出られないんだぞ!?」
「まあ、それもどうにかなるでしょ。うふふ、どれだけ稼げるかなあ。楽しみ!」
「冗談じゃない! そんなもんに付き合わされてたまるか! とっとと死ね! 死んでくれ!」
「いやーん、物騒!」
そんなことを言い合っていると、どこからともなく短刀が飛んできて、フリマ出店者の頬をかすめた。彼女が身を硬直させるのを見て、死神ちゃんは慌てて自分の腕輪を確認した。そして、「げっ」と呻きながら表情を強張らせた。
「お前と口論してて気づかなかった! あいつ、すぐ近くにいやがる!」
「あいつって、誰」
「俺、ある冒険者にストーカーされてるんだよ! 今飛んできた短刀も、多分、そいつの仕業じゃないかな」
「そういうことは早く言ってよ! 被害に巻き込まれたんじゃあ、ちっとも美味しくないじゃん!」
フリマ出店者が噛みつくようにそう言うと、二本目の短刀が飛んできて彼女の角に少しばかりの傷をつけた。彼女は目に涙を溜めると、悲痛な叫び声を上げた。
「いやー! 私の自慢の角に傷がー!」
彼女のその叫びに紛れて、ヤツの「その子はボクのだ」だの「いくら出せばいい」だのという声が暗がりからボソボソと聞こえてきた。姿を見せることなく気持ちの悪い声だけを低く轟かせるヤツに、死神ちゃんもフリマ出店者もギャアと叫んだ。
フリマ出店者はボタボタと涙を滴らせながら必死に走って逃げた。死神ちゃんもまた、彼女の横を全速力で飛び続けた。彼女は死神ちゃんのほうを向くことなく、死神ちゃんに抗議した。
「何でついてくるの! どっか行ってよ!」
「無理言うなよ! とり憑いてるんだから!」
「あああ、そうだった! こんなマスコット、マジで割に合わない!」
「お前、凶悪モンスターを独りで狩れるくらい強いんだから、あいつ倒しちまえよ! そうすれば追いかけられることもないだろ!?」
「そんなこと言ったって! 何て言うの!? 姿確認してないけど、生理的に無理っていうか!」
飛んでくる短刀を巧みに躱しながら、フリマ出店者は一心不乱に走っていた。しかし、避けるためにジャンプした先に落とし穴があり、彼女は悔しげな叫びを上げながら暗い穴の中へと消えていった。
死神ちゃんは彼女の声が消えるのを待たずに、慌てて壁の中へと引っ込んだ。
**********
「そんなわけだから、アラート機能にバイブレーションとかも付けられないかな」
「そのほうが、うっかり気づかなかったってことも減らせるでしょうしね。――いいわ、ビット所長に確認してみるわね」
待機室に戻ってきた死神ちゃんはしょんぼりと肩を落とすと、マッコイにあいつの件を相談した。ビットへの掛け合いを請け負ってくれた彼に死神ちゃんが感謝の言葉を述べると、彼は「それにしても」と言いながらクスクスと笑い出した。
「〈ダンジョンから出られない〉とかそういう面よりもまず、エンゲル係数の高さを説明しだすとは思わなかったわ」
グッと息を詰めてしかめっ面を浮かべた死神ちゃんは、一転して再びしょんぼりと肩を落とした。
「あー……安心したら腹が減ったよ。景気付けに、こう、ガッツリ食いたいな。――夕飯、ビュッフェに行かないか?」
疲れ果てた顔で見上げてくる死神ちゃんをジッと見つめると、マッコイはこみ上げてくる笑いを耐えることができずにプッと吹き出した。そして身を折って腹を抱えながら「エンゲル係数!」と言って笑い転げた。死神ちゃんは苦みばしった表情で地団駄を踏んだのだった。
――――商売とは、お客との駆け引きだけではなく、様々なところで計算が必要。いろんな意味で〈プラスを出す〉というのは大変なことなのDEATH。
そんな場所にここ最近ちょくちょく出動させられていた死神ちゃんは、不思議そうに首を傾げながら「またドMか、かわいこちゃんかな」とぼんやりと思った。そして現場に到着するなり、死神ちゃんはその場にいた人物を目視して盛大に顔をしかめた。
そこにいたのは、あのドM君主に勝るとも劣らない変態だった。そのノーム娘は実に破廉恥な格好をしており、上半身は簡素な鎧を身につけてはいたものの、下半身は腰鎧を巻かずにブーツだけを身に着けていた。そしてなんと、ズボンやスカートなどは一切履いておらず、本来腰鎧を巻いている場所とブーツとの間にはガーターベルトに網タイツが覗いていたのである。
死神ちゃんは思わず「破廉恥だな」と呻くように言った。すると彼女は顔を上げて死神ちゃんを見るなり、慌てて小指につけていた指輪を指でピンと弾いた。
「ああ、いけない。商売用の衣装のままだったわ。お目汚し失礼~」
「あれが〈商売用の衣装〉……? お前、娼婦か何かなのか?」
至って普通の〈冒険者スタイル〉へと姿を変えた彼女を、死神ちゃんは怪訝な表情で見つめた。すると彼女はケラケラと笑いながら〈否〉と答えた。
「私はフリマの出店者なんだ」
「フリマの出店者? あの格好で?」
依然疑いの眼差しで見てくる死神ちゃんに笑顔で頷くと、彼女は死神ちゃんを手招きしながら壁際に移動した。死神ちゃんに軽食を分けてやると、彼女は腰を下ろしながら「ここは宝の宝庫なんだよ」と言った。
「たしかにここは、いい装備品がドロップするらしいな」
「いやいや、そういうものじゃなくて。私が探しているのはこういうの」
そう言って、彼女は手にしていたドーナツを咥えて両手を開放すると、ポーチの中から武器を取り出した。――それは表面に何やらぬめぬめとした粘液を塗りこまれた、いわゆる〈粗悪品〉の一つだった。
彼女はぬめぬめとした棍棒をポーチに戻すと、ハンカチで手を綺麗に拭ってから、口に咥えていたドーナツを手にとった。
「これがねえ、法外な値段でも飛ぶように売れるのよね」
「一体、何故」
死神ちゃんが眉間にしわを寄せると、彼女はドーナツを頬張りながら話してくれた。
一階のセーフティーゾーンの一角には、冒険者が好きに露天を開くことができる場所がある。ここでは、様々なアイテムが冒険者達の〈自分にとって都合のいい価格〉で売りに出されているのだという。稀に掘り出し物などもあるため、結構な数の冒険者がこのフリーマーケット会場を利用しているそうなのだが、彼女はそこの常連出店者なのだそうだ。
彼女が現在熱心に売っているのは先ほど見せてくれた〈ぬめぬめとした棍棒〉で、これを先ほどの破廉恥な格好で〈ノームが一生懸命に振りました〉という看板を掲げて販売しているそうだ。
「こう、綺麗な棍棒に、まるで〈絵本の中の、箒で空を飛んでる魔法使い〉かのように足を絡ませてね。にっこり笑ってるだけで、あの汚らしい粗悪品が莫大な富に変わっていくわけよ」
「凄まじく悪どいな! しかも、見た目だけじゃなくて売り方も卑猥なのかよ!」
「私はどうしてぬめぬめになったのかまでは言及していないよ。だから、そんなこと考えるあなたや、買っていく冒険者のほうがよっぽど破廉恥なわけで」
「いやいや、お前、それ、狙ってやってるじゃないか!」
死神ちゃんが苦々しげな顔で彼女を睨みつけると、彼女はケラケラと笑ってそれを受け流した。
フリマ出店者は先ほどとは別の味のドーナツを取り出して半分に割りながら、死神ちゃんに「あなたもアイテム掘りに来たの?」と尋ねた。自分は死神であるということを死神ちゃんが伝えると、彼女は一瞬苦虫を噛み潰したような顔で嫌そうにしていたが、すぐさま何やら考え事でもしているかのような表情を浮かべた。そして嗚呼と声を上げると、笑顔を浮かべて言った。
「ああ! あの噂の〈死神ちゃん〉かあ! 〈見た目が可愛いだけで、何の効果もかかってない〉っていう極レアアイテムのモチーフにもなってるっていう!」
「あれか、スライム責めに遭ってるやつか」
「そうそう、それ! 本当にレアすぎて、私も実物は見たことないんだけど! 本当に何の役にも立たないアイテムらしいんだけど、えらい人気らしいのよね。それこそ、凄まじい値段で取引されてるみたいで!」
死神ちゃんは心底嫌そうに顔を歪めた。そんなことなど気にも留めず、フリマ出店者はニヤニヤとした笑みを浮かべてウンウンと頷き、ガッツポーズをとった。
「なんだ、そのガッツポーズは」
「いやだって、そんな人気者を手に入れちゃったわけでしょう? だから、あなたを非売品マスコットとして陳列しておけば、今まで以上にお客さんが来てくれるようになるはずでしょ? これは、ビッグウェーブの到来の予感! フリマ御殿も夢じゃないね!」
「はあ!?」
死神ちゃんが頓狂な声を上げるも彼女の耳には届いてはおらず、彼女は「これで人生勝ち組!」と叫びながら両腕を振り上げて勝利宣言した。死神ちゃんは血相を変えると、それは得策ではないということを熱心に説き始めた。具体的には、自分を養うにはどれほどの金銭がかかるか、つまるところ、食費がどれだけ嵩むかを一生懸命に語った。
しかし、フリマ出店者は動じるどころかヘラヘラと笑って言った。
「どれだけエンゲル係数がうなぎ上りになろうと、それを上回るほどの収入があれば問題ナッシーング!」
「いや、問題だらけだろう! お前、自分の生活どうすんだよ!? ダンジョンから出られないんだぞ!?」
「まあ、それもどうにかなるでしょ。うふふ、どれだけ稼げるかなあ。楽しみ!」
「冗談じゃない! そんなもんに付き合わされてたまるか! とっとと死ね! 死んでくれ!」
「いやーん、物騒!」
そんなことを言い合っていると、どこからともなく短刀が飛んできて、フリマ出店者の頬をかすめた。彼女が身を硬直させるのを見て、死神ちゃんは慌てて自分の腕輪を確認した。そして、「げっ」と呻きながら表情を強張らせた。
「お前と口論してて気づかなかった! あいつ、すぐ近くにいやがる!」
「あいつって、誰」
「俺、ある冒険者にストーカーされてるんだよ! 今飛んできた短刀も、多分、そいつの仕業じゃないかな」
「そういうことは早く言ってよ! 被害に巻き込まれたんじゃあ、ちっとも美味しくないじゃん!」
フリマ出店者が噛みつくようにそう言うと、二本目の短刀が飛んできて彼女の角に少しばかりの傷をつけた。彼女は目に涙を溜めると、悲痛な叫び声を上げた。
「いやー! 私の自慢の角に傷がー!」
彼女のその叫びに紛れて、ヤツの「その子はボクのだ」だの「いくら出せばいい」だのという声が暗がりからボソボソと聞こえてきた。姿を見せることなく気持ちの悪い声だけを低く轟かせるヤツに、死神ちゃんもフリマ出店者もギャアと叫んだ。
フリマ出店者はボタボタと涙を滴らせながら必死に走って逃げた。死神ちゃんもまた、彼女の横を全速力で飛び続けた。彼女は死神ちゃんのほうを向くことなく、死神ちゃんに抗議した。
「何でついてくるの! どっか行ってよ!」
「無理言うなよ! とり憑いてるんだから!」
「あああ、そうだった! こんなマスコット、マジで割に合わない!」
「お前、凶悪モンスターを独りで狩れるくらい強いんだから、あいつ倒しちまえよ! そうすれば追いかけられることもないだろ!?」
「そんなこと言ったって! 何て言うの!? 姿確認してないけど、生理的に無理っていうか!」
飛んでくる短刀を巧みに躱しながら、フリマ出店者は一心不乱に走っていた。しかし、避けるためにジャンプした先に落とし穴があり、彼女は悔しげな叫びを上げながら暗い穴の中へと消えていった。
死神ちゃんは彼女の声が消えるのを待たずに、慌てて壁の中へと引っ込んだ。
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「そんなわけだから、アラート機能にバイブレーションとかも付けられないかな」
「そのほうが、うっかり気づかなかったってことも減らせるでしょうしね。――いいわ、ビット所長に確認してみるわね」
待機室に戻ってきた死神ちゃんはしょんぼりと肩を落とすと、マッコイにあいつの件を相談した。ビットへの掛け合いを請け負ってくれた彼に死神ちゃんが感謝の言葉を述べると、彼は「それにしても」と言いながらクスクスと笑い出した。
「〈ダンジョンから出られない〉とかそういう面よりもまず、エンゲル係数の高さを説明しだすとは思わなかったわ」
グッと息を詰めてしかめっ面を浮かべた死神ちゃんは、一転して再びしょんぼりと肩を落とした。
「あー……安心したら腹が減ったよ。景気付けに、こう、ガッツリ食いたいな。――夕飯、ビュッフェに行かないか?」
疲れ果てた顔で見上げてくる死神ちゃんをジッと見つめると、マッコイはこみ上げてくる笑いを耐えることができずにプッと吹き出した。そして身を折って腹を抱えながら「エンゲル係数!」と言って笑い転げた。死神ちゃんは苦みばしった表情で地団駄を踏んだのだった。
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