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* 死神生活ニ年目 *
第130話 懇親会という名の
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「へい、そこの小花っち! ちょいとツラ貸しな!」
業務が終了し、魂刈置き場から出ようとした死神ちゃんは盛大に顔をしかめた。部屋の出口を塞ぐように、おんぶ紐でピエロのぬいぐるみを体に括りつけた銀髪の美少女が仁王立ちしていたからだ。ツラを貸せなどという物騒なことを言いながら、彼女はとても楽しそうに〈いじめられっ子から金品を巻き上げる不良〉のような雰囲気を演出していた。
死神ちゃんは呆れ眼でため息をつくと、小さく顎をしゃくった。
「ピエロ、お前、邪魔になってる。ほら、後ろ。人がいるから」
ぬいぐるみを背負う銀髪美少女――ピエロは慌てて横に飛び退くと、小さな声で「あっ、すみません」と言いながら先輩死神に頭を下げた。その隙に、部屋に入ってくる同僚とすれ違うように、死神ちゃんは部屋を出た。何事もなかったかのようにスタスタと去っていく死神ちゃんに驚愕すると、ピエロは焦って大声を上げた。
「ちょっ……小花っち! 待って待って! ――クリス~! ゴンザ~! プランC~!!」
**********
クリスにしっかりと抱きかかえられて、死神ちゃんは中華料理屋へと連れてこられた。ルンルン気分で先頭を歩くピエロは椅子に腰掛けるなり、蛙が踏み潰されたような無様な声を上げた。苦悶の表情を浮かべながらも死神ちゃんたちに着席を促すピエロに眉根を寄せると、死神ちゃんは大きな声をひっくり返した。
「横の椅子に本体置けばいいだろう! 何で背中に背負ったまま着席してるんだよ!」
「だって、そうするとみんなの顔やお料理が見えない――」
「お子様用の椅子を出してもらえばいいだろうが!」
どうやらピエロは、少女がぬいぐるみに触れている間は少女と視界を共有できるらしいのだが、反面、触れ合っていないとピエロ本体の視界でしかモノが見えないようだ。ほんの少しくらいの距離なら離れ離れの状態でも少女の身体を動かせるそうなのだが、視界が共有できなくなるのはたしかに不便だ。
しかしながら、普段だって相当なダミ声だというのに、それをさらに苦しげに押しつぶした声で始終会話されるのは、しかもぬいぐるみの苦しみが反映した表情でされるというのは、周りにとってもストレスである。死神ちゃんは苛々とした様子で店員を呼ぶと、お子様用の椅子を持ってきて欲しいと頼んだ。その間に土佐犬の獣人――権左衛門がピエロのおんぶ紐を解く手伝いをしてやった。
お子様用椅子を持ってきた店員は、死神ちゃんの前の椅子とそれとを交換しようとした。死神ちゃんは至って不機嫌という顔を浮かべると「俺は普通の椅子でも大丈夫なんで!」と唸るように言い、心の中で地団駄を踏んだ。
「――で。お前らが今回俺を拉致ったのはどういう意図があってなんだ。あと、プランCって何だ」
「簡単に言うと、懇親会やか」
権左衛門は照れくさそうに頭を掻いた。何でも、今死神ちゃんを取り囲んでいる新人三名は「一年先輩である死神ちゃんと仲良くなって、いろいろと教えてもらうように」ということを各々の班長に言われたそうだ。
「先輩にゃ同期がいないと聞いたがやき、教えを請うということを抜きにしたち、仲良くなりたいなと思って」
「だったら、普通に誘えよ……」
死神ちゃんがぐったりと肩を落とすと、ピエロが「だって」と頬を膨らませた。クリスが事前に死神ちゃんを食事に誘っておくというプランAが失敗したため、帰り際にピエロが誘うというプランBを実行したらしい。しかし、それでも駄目だったので、強硬手段のプランCを実行したのだそうだ。
可愛らしく誘ったのに断られたと口を尖らせるピエロに、死神ちゃんは口をあんぐりとさせると、目を剥いて眉根を寄せた。
「あれのどこが可愛いんだよ! あれじゃあカツアゲか何かと変わらないだろうが! クリスも、こういうことなら『この日、暇?』だけじゃなくてきちんと〈誘った理由〉を言えよ! 分かってたら別に断らなかったのに!」
「だって薫、用事があるって言うし、そもそも『ご飯に行こう』って言うと他の人も誘ってみんなで行こうとするでしょう? それだと、私たちの懇親会の意味が無くなるし」
「用事なんて〈図書館に行く〉程度だったから、飯くらい大丈夫だよ! 『何で?』って聞き返したときに用件言えよ! それで済む話だっただろう! ていうか〈用事がある〉って知ってて拉致ったってことだよな? それはそれで、おかしいだろう!」
死神ちゃんに説教されて、三人はしょんぼりと肩を落とした。死神ちゃんはフンと鼻を鳴らすと、店員を呼んで適当に注文を行った。
注文を取り終えた店員が去って行くと、死神ちゃんはお冷を一気に飲み干した。そして小さくため息をつくと「何を教えればいい」とぶっきらぼうに言った。新人三人はコップを抱え込むように手にしながら思案顔を浮かべると、ここでの生活に馴染むまでに大変だったことや先輩たちから何か洗礼のようなものは受けたかというようなことを聞いてきた。死神ちゃんはしばし考えこむと、じっとピエロを見つめて口を開いた。
「入社して一ヶ月ほど経つと、広報の人が新入社員に対して密着取材しに来るんだよ。ピエロ、お前はこの三人の中で一番ターゲットにされるだろうから、覚悟しておくといいかもな」
そう言って、死神ちゃんは密着取材の際に自分の身に起きたことをかいつまんで説明した。新人たちは「あー……」と呻くような声を上げ、そしてクリスと権左衛門が〈それはたしかに、ピエロが被害に遭いそうだ〉と言いたげにピエロをじっとりと見つめた。
そうこうしているうちに、料理が運ばれてきた。テーブルを回しながら、各々好きなモノを好きにとって食べ始めたのだが、ピエロ――というよりも、それが操る少女――がフカヒレばかりを黙々と皿に取った。クリスが眉根を寄せてピエロに声をかけた。
「一人で駆逐しないでよ。ていうか、フカヒレばかり食べてないで他のも食べなよ」
ピエロはもくもくと口を動かしながらも、口の端だけでニヤリと笑った。そして口の中のものを飲み下すと、より一層顔をニヤリとさせた。
「あちしの美貌のためには大量のコラーゲンが必要不可欠なんだよ」
「美貌って、ぬいぐるみのくせに何言ってるんだか」
「こう見えて、あちし、絶世の美女だったんだからね! 美貌を保ちたくて、新しい体をこさえては乗り換えてを繰り返してた中で、本体をぬいぐるみにせざるを得なかったことがたまたまあって! ――ていうか、魔道士様も昔の〈美しいあちし〉の姿でこの世界に送ってくれれば良かったのに」
「へえ。ていうか、コラーゲンが必要だって言うなら、この骨付きの角煮も食べなよ。軟骨がトロットロで美味しいよ。――ほら、ほら」
「ああああん! そんなに盛らないでよ! お肉食べ過ぎになっちゃうじゃん! おデブになっちゃうよ!」
女性陣が勝手に盛り上がる中、死神ちゃんと権左衛門も盛り上がっていた。勤勉な権左衛門は今回の趣旨をきちんと踏まえ、仕事のあれこれや寮での生活、社内行事についてなど様々なことを死神ちゃんからリサーチしていた。それだけでなく、戦いとはだの筋肉とはだのという〈漢の会話〉などにも熱を入れていた。
マイペースにくるくるとテーブルを回しながら、楽しそうに語り合う死神ちゃんと権左衛門のことをクリスはじっとりと見つめた。そしてピエロに向き直ると、彼はピエロを睨みつけた。
「ねえ、ちょっと。あんたに構ってる合間に、あっちとこっちとの間に壁が出来上がってるんだけど。どういうことなの」
「あちしだって小花っちといろいろと喋りたかったんだけど。あんたは寮が一緒なんだから、まだいいよ。だけど、あちしはそうはいかないじゃん。なのに」
「あんたは薫と一緒で早番しか入っちゃ駄目って言われてるんだから、いつだって夕飯に誘えるじゃん。私は中番・夜勤も普通にあるんだよ。だから、寮が同じだからっていつでも一緒ってわけでもないんだけど」
険悪なムードをまといだした女性陣を、死神ちゃんと権左衛門は「どうしたのだろう?」と不思議そうに首を傾げながらぼんやりと見つめた。そしてフカヒレばかりがごっそりと無くなっていることと、ピエロの取り皿にどっさりとフカヒレが乗っていることに気がつくと、死神ちゃんは〈しょうがないなあ〉と言うかのような苦笑いを浮かべた。
「ピエロ、お前、一人でそんなに取ったらみんなが食えないだろう。クリスも、そんな怒るなよ。追加で頼めば済むことなんだし」
「いや、あの、そうじゃなくて――」
「あー、金の心配をしているのか? お前ら、初給料もまだだから、今月分の食費がどれだけ天引きされて、どれだけ手元に金が残るのか、不安にもなるよな。俺も最初の一月はそうだったし。――でも、気にするなよ。この場は俺が持つから」
「いや、その、そうじゃなくて――」
「だから、気にするなって。初めてできた後輩だものな。その後輩たちとの初めての食事の代金くらい、俺に出させてくれよ」
朗らかに笑う死神ちゃんに、クリスもピエロもこれ以上〈本当のこと〉は言えなかった。死神ちゃんは店員を呼んで追加注文を済ませると、ピエロとクリスを交互に見つめた。
「――で。お前ら、俺といろいろとおしゃべりしたいんだって?」
ニヤリと笑うと、死神ちゃんは「だったら、ほら、もっと話そうぜ」と付け足した。その追加の言葉を聞きながら、クリスもピエロもむせ返った。二人はほんのりと顔を赤らめると、今むせたのはエビチリが思っていたよりも辛かったからだと取り繕ったのだった。
――――可愛い後輩が一気に三人もできて、死神ちゃんの死神ライフはより一層騒がしくなりそうなのDEATH。
業務が終了し、魂刈置き場から出ようとした死神ちゃんは盛大に顔をしかめた。部屋の出口を塞ぐように、おんぶ紐でピエロのぬいぐるみを体に括りつけた銀髪の美少女が仁王立ちしていたからだ。ツラを貸せなどという物騒なことを言いながら、彼女はとても楽しそうに〈いじめられっ子から金品を巻き上げる不良〉のような雰囲気を演出していた。
死神ちゃんは呆れ眼でため息をつくと、小さく顎をしゃくった。
「ピエロ、お前、邪魔になってる。ほら、後ろ。人がいるから」
ぬいぐるみを背負う銀髪美少女――ピエロは慌てて横に飛び退くと、小さな声で「あっ、すみません」と言いながら先輩死神に頭を下げた。その隙に、部屋に入ってくる同僚とすれ違うように、死神ちゃんは部屋を出た。何事もなかったかのようにスタスタと去っていく死神ちゃんに驚愕すると、ピエロは焦って大声を上げた。
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クリスにしっかりと抱きかかえられて、死神ちゃんは中華料理屋へと連れてこられた。ルンルン気分で先頭を歩くピエロは椅子に腰掛けるなり、蛙が踏み潰されたような無様な声を上げた。苦悶の表情を浮かべながらも死神ちゃんたちに着席を促すピエロに眉根を寄せると、死神ちゃんは大きな声をひっくり返した。
「横の椅子に本体置けばいいだろう! 何で背中に背負ったまま着席してるんだよ!」
「だって、そうするとみんなの顔やお料理が見えない――」
「お子様用の椅子を出してもらえばいいだろうが!」
どうやらピエロは、少女がぬいぐるみに触れている間は少女と視界を共有できるらしいのだが、反面、触れ合っていないとピエロ本体の視界でしかモノが見えないようだ。ほんの少しくらいの距離なら離れ離れの状態でも少女の身体を動かせるそうなのだが、視界が共有できなくなるのはたしかに不便だ。
しかしながら、普段だって相当なダミ声だというのに、それをさらに苦しげに押しつぶした声で始終会話されるのは、しかもぬいぐるみの苦しみが反映した表情でされるというのは、周りにとってもストレスである。死神ちゃんは苛々とした様子で店員を呼ぶと、お子様用の椅子を持ってきて欲しいと頼んだ。その間に土佐犬の獣人――権左衛門がピエロのおんぶ紐を解く手伝いをしてやった。
お子様用椅子を持ってきた店員は、死神ちゃんの前の椅子とそれとを交換しようとした。死神ちゃんは至って不機嫌という顔を浮かべると「俺は普通の椅子でも大丈夫なんで!」と唸るように言い、心の中で地団駄を踏んだ。
「――で。お前らが今回俺を拉致ったのはどういう意図があってなんだ。あと、プランCって何だ」
「簡単に言うと、懇親会やか」
権左衛門は照れくさそうに頭を掻いた。何でも、今死神ちゃんを取り囲んでいる新人三名は「一年先輩である死神ちゃんと仲良くなって、いろいろと教えてもらうように」ということを各々の班長に言われたそうだ。
「先輩にゃ同期がいないと聞いたがやき、教えを請うということを抜きにしたち、仲良くなりたいなと思って」
「だったら、普通に誘えよ……」
死神ちゃんがぐったりと肩を落とすと、ピエロが「だって」と頬を膨らませた。クリスが事前に死神ちゃんを食事に誘っておくというプランAが失敗したため、帰り際にピエロが誘うというプランBを実行したらしい。しかし、それでも駄目だったので、強硬手段のプランCを実行したのだそうだ。
可愛らしく誘ったのに断られたと口を尖らせるピエロに、死神ちゃんは口をあんぐりとさせると、目を剥いて眉根を寄せた。
「あれのどこが可愛いんだよ! あれじゃあカツアゲか何かと変わらないだろうが! クリスも、こういうことなら『この日、暇?』だけじゃなくてきちんと〈誘った理由〉を言えよ! 分かってたら別に断らなかったのに!」
「だって薫、用事があるって言うし、そもそも『ご飯に行こう』って言うと他の人も誘ってみんなで行こうとするでしょう? それだと、私たちの懇親会の意味が無くなるし」
「用事なんて〈図書館に行く〉程度だったから、飯くらい大丈夫だよ! 『何で?』って聞き返したときに用件言えよ! それで済む話だっただろう! ていうか〈用事がある〉って知ってて拉致ったってことだよな? それはそれで、おかしいだろう!」
死神ちゃんに説教されて、三人はしょんぼりと肩を落とした。死神ちゃんはフンと鼻を鳴らすと、店員を呼んで適当に注文を行った。
注文を取り終えた店員が去って行くと、死神ちゃんはお冷を一気に飲み干した。そして小さくため息をつくと「何を教えればいい」とぶっきらぼうに言った。新人三人はコップを抱え込むように手にしながら思案顔を浮かべると、ここでの生活に馴染むまでに大変だったことや先輩たちから何か洗礼のようなものは受けたかというようなことを聞いてきた。死神ちゃんはしばし考えこむと、じっとピエロを見つめて口を開いた。
「入社して一ヶ月ほど経つと、広報の人が新入社員に対して密着取材しに来るんだよ。ピエロ、お前はこの三人の中で一番ターゲットにされるだろうから、覚悟しておくといいかもな」
そう言って、死神ちゃんは密着取材の際に自分の身に起きたことをかいつまんで説明した。新人たちは「あー……」と呻くような声を上げ、そしてクリスと権左衛門が〈それはたしかに、ピエロが被害に遭いそうだ〉と言いたげにピエロをじっとりと見つめた。
そうこうしているうちに、料理が運ばれてきた。テーブルを回しながら、各々好きなモノを好きにとって食べ始めたのだが、ピエロ――というよりも、それが操る少女――がフカヒレばかりを黙々と皿に取った。クリスが眉根を寄せてピエロに声をかけた。
「一人で駆逐しないでよ。ていうか、フカヒレばかり食べてないで他のも食べなよ」
ピエロはもくもくと口を動かしながらも、口の端だけでニヤリと笑った。そして口の中のものを飲み下すと、より一層顔をニヤリとさせた。
「あちしの美貌のためには大量のコラーゲンが必要不可欠なんだよ」
「美貌って、ぬいぐるみのくせに何言ってるんだか」
「こう見えて、あちし、絶世の美女だったんだからね! 美貌を保ちたくて、新しい体をこさえては乗り換えてを繰り返してた中で、本体をぬいぐるみにせざるを得なかったことがたまたまあって! ――ていうか、魔道士様も昔の〈美しいあちし〉の姿でこの世界に送ってくれれば良かったのに」
「へえ。ていうか、コラーゲンが必要だって言うなら、この骨付きの角煮も食べなよ。軟骨がトロットロで美味しいよ。――ほら、ほら」
「ああああん! そんなに盛らないでよ! お肉食べ過ぎになっちゃうじゃん! おデブになっちゃうよ!」
女性陣が勝手に盛り上がる中、死神ちゃんと権左衛門も盛り上がっていた。勤勉な権左衛門は今回の趣旨をきちんと踏まえ、仕事のあれこれや寮での生活、社内行事についてなど様々なことを死神ちゃんからリサーチしていた。それだけでなく、戦いとはだの筋肉とはだのという〈漢の会話〉などにも熱を入れていた。
マイペースにくるくるとテーブルを回しながら、楽しそうに語り合う死神ちゃんと権左衛門のことをクリスはじっとりと見つめた。そしてピエロに向き直ると、彼はピエロを睨みつけた。
「ねえ、ちょっと。あんたに構ってる合間に、あっちとこっちとの間に壁が出来上がってるんだけど。どういうことなの」
「あちしだって小花っちといろいろと喋りたかったんだけど。あんたは寮が一緒なんだから、まだいいよ。だけど、あちしはそうはいかないじゃん。なのに」
「あんたは薫と一緒で早番しか入っちゃ駄目って言われてるんだから、いつだって夕飯に誘えるじゃん。私は中番・夜勤も普通にあるんだよ。だから、寮が同じだからっていつでも一緒ってわけでもないんだけど」
険悪なムードをまといだした女性陣を、死神ちゃんと権左衛門は「どうしたのだろう?」と不思議そうに首を傾げながらぼんやりと見つめた。そしてフカヒレばかりがごっそりと無くなっていることと、ピエロの取り皿にどっさりとフカヒレが乗っていることに気がつくと、死神ちゃんは〈しょうがないなあ〉と言うかのような苦笑いを浮かべた。
「ピエロ、お前、一人でそんなに取ったらみんなが食えないだろう。クリスも、そんな怒るなよ。追加で頼めば済むことなんだし」
「いや、あの、そうじゃなくて――」
「あー、金の心配をしているのか? お前ら、初給料もまだだから、今月分の食費がどれだけ天引きされて、どれだけ手元に金が残るのか、不安にもなるよな。俺も最初の一月はそうだったし。――でも、気にするなよ。この場は俺が持つから」
「いや、その、そうじゃなくて――」
「だから、気にするなって。初めてできた後輩だものな。その後輩たちとの初めての食事の代金くらい、俺に出させてくれよ」
朗らかに笑う死神ちゃんに、クリスもピエロもこれ以上〈本当のこと〉は言えなかった。死神ちゃんは店員を呼んで追加注文を済ませると、ピエロとクリスを交互に見つめた。
「――で。お前ら、俺といろいろとおしゃべりしたいんだって?」
ニヤリと笑うと、死神ちゃんは「だったら、ほら、もっと話そうぜ」と付け足した。その追加の言葉を聞きながら、クリスもピエロもむせ返った。二人はほんのりと顔を赤らめると、今むせたのはエビチリが思っていたよりも辛かったからだと取り繕ったのだった。
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