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* 死神生活ニ年目 *
第239話 死神ちゃんとパンク野郎③
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「お前、人の話、ちゃんと聞いてんのかよ? 食ってばかりでよお!」
「あ、女将さん。牛すじ煮込み、お替わり頂けますか?」
「また牛すじかよ! お前、ホント、どんだけ筋肉好きなんだよ! そんなに好きってんなら、俺様のキレッキレの腹筋も触らせてやんよ。毎日欠かさず腹筋千回やってるんだぜ。ほらほら」
「割れてないどころか、プニップニじゃないか。正しい方法でやれていないんだろう。お前、筋トレ舐めてんのか?」
「すみません、やめて刺さないで。痛い痛い痛い! 口からなんか出る!」
死神ちゃんは鉄砲玉が悶絶するのもお構いなしに、手刀を彼の脇腹に差し続けた。彼は〈死神ちゃんは日本人であるにも関わらず、日本でほとんど生活したことがないために、日本のリアルを知らない〉ということを知って以来、死神ちゃんをよく食事に誘うようになった。日本文化を教えてやると豪語して、手始めに死神ちゃんを寿司屋に連れて行って散財させられたにもかかわらず、先輩風を吹かすことの心地よさを覚えた彼はめげずに死神ちゃんを連れ回した。
本日は、天狐の街にあるジャパニーズな小料理屋を訪れていた。彼はキンミヤを煽りながら、死神ちゃん相手にああだこうだと管を巻いていた。死神ちゃんが三杯目の牛すじ煮込みの小鉢を女将から受け取ったところで、鉄砲玉はグラスを置いてデレデレとした笑みを浮かべた。
「さっきの話の続きだけど。まさかこのダンジョンに堕天使が降臨なさるとは、思ってもみなかったんだよ」
「はあ?」
「だから、堕天使! 女だったんだけどよ、クールな表情にSM風の装備がすごくよく似合ってて。多分〈天使と人間のハーフ〉だとは思うんだが、あれはもう本当に〈堕天使〉と呼ぶに相応しかったな。――ああ、あんなナイス美女に罵られてパシられたい」
「……お前、三下の鑑みたいなやつだよな、本当に」
死神ちゃんは呆れて目を細めると、女将に四杯目のお替わりを頼んだ。鉄砲玉は「なにおう!?」と声を荒らげると、死神ちゃんの牛すじ煮込みを奪い取って平らげた。
それから数日後。死神ちゃんが〈担当のパーティー〉を求めてダンジョン内を彷徨っていると、前方からおどろおどろしい装備で身を固めた青年が嬉々とした表情で走り寄ってきた。彼は死神ちゃんに飛びついて抱きかかえると、楽しそうに死神ちゃんをブンブンとスイングさせた。
「死神ちゃんさんじゃあないっすかー! チッス! チッス!! お久しぶりっスー!」
「おう、パンクじゃあないか。相変わらず、呪わしげな格好してんなあ」
「いやあ、死神ちゃんさんも相変わらず、存在がまるごとパンクっすねー!」
死神ちゃんはにこやかな笑みを浮かべると、パンク野郎な彼の背中をポンポンと叩いた。彼はこう見えて腕利きの錬金術師で、その類まれな能力を活かして〈装備にかけられた呪いを解呪する〉ということを行っている。普通、呪われた装備というものは解呪を行うと砕け散って使い物にならなくなるのだが、彼の特殊な技術を用いれば砕けることがない。そのため、ロックでパンクなものが大好きな彼は、自らの素晴らしい技術でもって解呪した〈見るからに呪われていそうな、髑髏や悪魔のモチーフが描かれた装備〉を好んで着用していた。
彼は休憩するのに良さそうな拓けた場所へと移動すると、お手製のお菓子を死神ちゃんに分け与えた。料理は錬金術に似ているということで、彼はとても料理上手なのである。
ロックでパンクな見た目にそぐわぬ可愛らしいラッピングの施されたお菓子を受け取って上機嫌な死神ちゃんに笑いかけると、彼は自分の分のお菓子のラッピングを解きながら「今日は素材探しに来たんスよ」と言った。
彼の行う解呪は、特別な魔法素材を用いて錬金術を行い、さらにそこに複雑な魔法をかけるということを行うらしい。話によると、街で食堂を営むマンマがとうとう〈呪われた刺身包丁〉を手に入れたのだとか。マンマの食堂は彼も行きつけにしており、包丁が手に入ったら解呪を行うという約束を彼はしていた。
「マンマの包丁を解呪すべくいろいろと調べてみたら、これがまあしつこくて。何なんスかね、あの包丁にとり憑いている魚屋のおばちゃんは。マンマもかなり手強い相手っスけど、あの呪いのおばちゃんも相当っスよ」
死神ちゃんは、その魚屋のおばちゃんご本人が、本日も元気に鉄砲玉をしばき倒していたのを思い出して苦笑いを浮かべた。すると、まるで示し合わせたかのように、骸骨姿の彼女が近くをスウと通り過ぎていった。パンクが「うわ、死神!」と呻きながら心なしか怯えるのを眺めながら、死神ちゃんは心の中で「そいつが魚屋のご本人だよ」だの「俺も死神なんだが」だのとツッコミを入れた。
パンクは休憩を終えると、死神ちゃんを伴って五階の〈火炎地区〉へと降りていった。他の地区と比べて、ここが比較的鉱物が産出しやすいのだ。
彼は岩石を真剣な面持ちで見定めつつ、モンスターを避けながら辺りを散策した。時折モンスターに発見されやむを得ず戦闘を行っていたのだが、彼は腰が引けてはいたもののしっかりと勝利を収めていた。彼が錬金で作る爆弾は、それだけ優秀なものだった。
しかし、彼の爆弾は度重なる戦闘で底を尽きかけていた。彼は不安げな表情を浮かべると、一旦四階に戻り、涼しくて安全な場所で追加調合を行いたいと呟いた。直後、彼はモンスターに囲まれた。敵の数が多く、戦闘は爆弾に頼りきりな彼はすぐさまピンチに見舞われた。
彼が悲鳴を上げ、万事休すと腹を括ったその時、辺り一面に突風が吹き荒れた。そして、モンスターの数体が爆発して消えていった。パンクが動転して目を白黒とさせていると、彼の目の前に〈天使と人間のハーフ〉が一人、羽根を振りまきながら地面へと降り立った。黒のボンテージに黒ブーツ、そして髑髏や悪魔の意匠のついたゴテゴテとした装飾品を身につけた彼女は、手には黒い皮の鞭を持って、その姿はさながらSMの女王様だった。
彼女は広げていた翼を折り畳むと、鞭をしならせて皮の乾いた音を鳴らしながら高慢な笑みを浮かべて叫んだ。
「黄昏よりも暗き混沌の中に棲みし我が下僕よ! この愚かな者ども食らいつくし、呵責の時を授けよ!」
彼女の眼前に厳しい大門が出現すると、中から大きなケルベロスが一体のっそりと姿を現した。ケルベロスは目の前の敵を踏み潰し、噛みちぎり、尾で薙ぎ払って蹂躙の限りを尽くすと、ポンと音を立てて子犬ほどの大きさになった。
死神ちゃんは、突如現れて中二なセリフを得意げに宣った彼女を呆然と見つめた。彼女は小さくなったケルベロスを抱き上げると、先ほどまでの高慢ちきな女王様な態度を一変させて、相好を崩してケルベロスに頬ずりをした。
「ココアちゃん、いい子でしゅねー。ママたん、とても助かりましたよー。はあい、ご褒美のささみ燻でしゅよー」
キャンキャンと子犬のように可愛らしい鳴き声を上げるケルベロスの三つの頭それぞれに、彼女はささみの燻製を与えた。美味しそうにささみを頬張るケルベロスの三つの額に、嬉しそうに目尻を下げた彼女はキスを落とした。
彼女が現れてから今まで、身を硬直させて呆然としていたパンクはハッと我に返ると、頬を上気させて叫んだ。
「やべえ! すげぇパネエ! 天使のような見た目なのに、悪魔的な言葉で敵を一掃とか! すげぇロック! お姉さん、まるで堕天使のようっスわ! しかもケルベロスの名前がココアちゃんとか! 見た目によらず、すげぇ可愛い! やべぇパンクっしょ! シビれるっスわ!」
「あらやだ、嬉しい。私の周りには、理解してくれる人があまりいないのよ。――ていうか、大丈夫だった? すごく囲まれていたけど」
「っス! あざっス! マジ感謝っス! にしても、マジでいいっスわ! すげぇリスペクトするっスよ! 最高っス!」
パンクは堕天使の空いた片手を思わず握りしめた。同士を得た二人がそこはかとなく嬉しそうな恥ずかしそうな笑みを浮かべていると、堕天使の腕に抱かれたココアちゃんが〈ご主人を取られた〉とでも言いたげに唸りだした。不思議そうにきょとんとした顔を浮かべた二人がココアちゃんに視線を移すと、ココアちゃんの真ん中の頭が突如火を噴いた。
ココアちゃんが満足気にフスウと鼻から息を吐くと、地獄の業火に飲まれたパンクがボロボロと灰となって崩れ落ちた。見た目によらず謙虚で人の良い堕天使は慌てふためくと、彼の灰を集めながら「どうしましょう」と動揺していた。
〈飼い犬〉に牙を剥かれたこともロックだと思ったようで、霊界ではパンクが「フウゥ!」と歓声を上げていた。死神ちゃんは表情もなく鼻を鳴らすと、その場からひっそりと姿を消した。
待機室に戻ってくると、鉄砲玉が悔しそうな表情を浮かべて「俺も、堕天使様の獰猛な番犬に焼き払われたい」とこぼしていた。そんな彼を、死神ちゃんよりも先に帰還していた魚屋が「馬鹿なことを言ってないで、仕事しな」としばき倒したのだった。
後日、パンクな彼と中二を少々患ったロックな彼女が、例の中二病忍者とも出会って互いにさらなるリスペクトをし合うのだが、それはまた別のお話。
――――〈密かに人気〉であるため、本人たちはそのことを残念ながら知らないそうなのだが。なりきり系冒険者の中では、堕天使様はくっころと一、二を争う人気でファンクラブもあるという。彼女たちがちてきんのようにスポットライトを浴びる日も、そう遠くはないみたいDEATH……?
「あ、女将さん。牛すじ煮込み、お替わり頂けますか?」
「また牛すじかよ! お前、ホント、どんだけ筋肉好きなんだよ! そんなに好きってんなら、俺様のキレッキレの腹筋も触らせてやんよ。毎日欠かさず腹筋千回やってるんだぜ。ほらほら」
「割れてないどころか、プニップニじゃないか。正しい方法でやれていないんだろう。お前、筋トレ舐めてんのか?」
「すみません、やめて刺さないで。痛い痛い痛い! 口からなんか出る!」
死神ちゃんは鉄砲玉が悶絶するのもお構いなしに、手刀を彼の脇腹に差し続けた。彼は〈死神ちゃんは日本人であるにも関わらず、日本でほとんど生活したことがないために、日本のリアルを知らない〉ということを知って以来、死神ちゃんをよく食事に誘うようになった。日本文化を教えてやると豪語して、手始めに死神ちゃんを寿司屋に連れて行って散財させられたにもかかわらず、先輩風を吹かすことの心地よさを覚えた彼はめげずに死神ちゃんを連れ回した。
本日は、天狐の街にあるジャパニーズな小料理屋を訪れていた。彼はキンミヤを煽りながら、死神ちゃん相手にああだこうだと管を巻いていた。死神ちゃんが三杯目の牛すじ煮込みの小鉢を女将から受け取ったところで、鉄砲玉はグラスを置いてデレデレとした笑みを浮かべた。
「さっきの話の続きだけど。まさかこのダンジョンに堕天使が降臨なさるとは、思ってもみなかったんだよ」
「はあ?」
「だから、堕天使! 女だったんだけどよ、クールな表情にSM風の装備がすごくよく似合ってて。多分〈天使と人間のハーフ〉だとは思うんだが、あれはもう本当に〈堕天使〉と呼ぶに相応しかったな。――ああ、あんなナイス美女に罵られてパシられたい」
「……お前、三下の鑑みたいなやつだよな、本当に」
死神ちゃんは呆れて目を細めると、女将に四杯目のお替わりを頼んだ。鉄砲玉は「なにおう!?」と声を荒らげると、死神ちゃんの牛すじ煮込みを奪い取って平らげた。
それから数日後。死神ちゃんが〈担当のパーティー〉を求めてダンジョン内を彷徨っていると、前方からおどろおどろしい装備で身を固めた青年が嬉々とした表情で走り寄ってきた。彼は死神ちゃんに飛びついて抱きかかえると、楽しそうに死神ちゃんをブンブンとスイングさせた。
「死神ちゃんさんじゃあないっすかー! チッス! チッス!! お久しぶりっスー!」
「おう、パンクじゃあないか。相変わらず、呪わしげな格好してんなあ」
「いやあ、死神ちゃんさんも相変わらず、存在がまるごとパンクっすねー!」
死神ちゃんはにこやかな笑みを浮かべると、パンク野郎な彼の背中をポンポンと叩いた。彼はこう見えて腕利きの錬金術師で、その類まれな能力を活かして〈装備にかけられた呪いを解呪する〉ということを行っている。普通、呪われた装備というものは解呪を行うと砕け散って使い物にならなくなるのだが、彼の特殊な技術を用いれば砕けることがない。そのため、ロックでパンクなものが大好きな彼は、自らの素晴らしい技術でもって解呪した〈見るからに呪われていそうな、髑髏や悪魔のモチーフが描かれた装備〉を好んで着用していた。
彼は休憩するのに良さそうな拓けた場所へと移動すると、お手製のお菓子を死神ちゃんに分け与えた。料理は錬金術に似ているということで、彼はとても料理上手なのである。
ロックでパンクな見た目にそぐわぬ可愛らしいラッピングの施されたお菓子を受け取って上機嫌な死神ちゃんに笑いかけると、彼は自分の分のお菓子のラッピングを解きながら「今日は素材探しに来たんスよ」と言った。
彼の行う解呪は、特別な魔法素材を用いて錬金術を行い、さらにそこに複雑な魔法をかけるということを行うらしい。話によると、街で食堂を営むマンマがとうとう〈呪われた刺身包丁〉を手に入れたのだとか。マンマの食堂は彼も行きつけにしており、包丁が手に入ったら解呪を行うという約束を彼はしていた。
「マンマの包丁を解呪すべくいろいろと調べてみたら、これがまあしつこくて。何なんスかね、あの包丁にとり憑いている魚屋のおばちゃんは。マンマもかなり手強い相手っスけど、あの呪いのおばちゃんも相当っスよ」
死神ちゃんは、その魚屋のおばちゃんご本人が、本日も元気に鉄砲玉をしばき倒していたのを思い出して苦笑いを浮かべた。すると、まるで示し合わせたかのように、骸骨姿の彼女が近くをスウと通り過ぎていった。パンクが「うわ、死神!」と呻きながら心なしか怯えるのを眺めながら、死神ちゃんは心の中で「そいつが魚屋のご本人だよ」だの「俺も死神なんだが」だのとツッコミを入れた。
パンクは休憩を終えると、死神ちゃんを伴って五階の〈火炎地区〉へと降りていった。他の地区と比べて、ここが比較的鉱物が産出しやすいのだ。
彼は岩石を真剣な面持ちで見定めつつ、モンスターを避けながら辺りを散策した。時折モンスターに発見されやむを得ず戦闘を行っていたのだが、彼は腰が引けてはいたもののしっかりと勝利を収めていた。彼が錬金で作る爆弾は、それだけ優秀なものだった。
しかし、彼の爆弾は度重なる戦闘で底を尽きかけていた。彼は不安げな表情を浮かべると、一旦四階に戻り、涼しくて安全な場所で追加調合を行いたいと呟いた。直後、彼はモンスターに囲まれた。敵の数が多く、戦闘は爆弾に頼りきりな彼はすぐさまピンチに見舞われた。
彼が悲鳴を上げ、万事休すと腹を括ったその時、辺り一面に突風が吹き荒れた。そして、モンスターの数体が爆発して消えていった。パンクが動転して目を白黒とさせていると、彼の目の前に〈天使と人間のハーフ〉が一人、羽根を振りまきながら地面へと降り立った。黒のボンテージに黒ブーツ、そして髑髏や悪魔の意匠のついたゴテゴテとした装飾品を身につけた彼女は、手には黒い皮の鞭を持って、その姿はさながらSMの女王様だった。
彼女は広げていた翼を折り畳むと、鞭をしならせて皮の乾いた音を鳴らしながら高慢な笑みを浮かべて叫んだ。
「黄昏よりも暗き混沌の中に棲みし我が下僕よ! この愚かな者ども食らいつくし、呵責の時を授けよ!」
彼女の眼前に厳しい大門が出現すると、中から大きなケルベロスが一体のっそりと姿を現した。ケルベロスは目の前の敵を踏み潰し、噛みちぎり、尾で薙ぎ払って蹂躙の限りを尽くすと、ポンと音を立てて子犬ほどの大きさになった。
死神ちゃんは、突如現れて中二なセリフを得意げに宣った彼女を呆然と見つめた。彼女は小さくなったケルベロスを抱き上げると、先ほどまでの高慢ちきな女王様な態度を一変させて、相好を崩してケルベロスに頬ずりをした。
「ココアちゃん、いい子でしゅねー。ママたん、とても助かりましたよー。はあい、ご褒美のささみ燻でしゅよー」
キャンキャンと子犬のように可愛らしい鳴き声を上げるケルベロスの三つの頭それぞれに、彼女はささみの燻製を与えた。美味しそうにささみを頬張るケルベロスの三つの額に、嬉しそうに目尻を下げた彼女はキスを落とした。
彼女が現れてから今まで、身を硬直させて呆然としていたパンクはハッと我に返ると、頬を上気させて叫んだ。
「やべえ! すげぇパネエ! 天使のような見た目なのに、悪魔的な言葉で敵を一掃とか! すげぇロック! お姉さん、まるで堕天使のようっスわ! しかもケルベロスの名前がココアちゃんとか! 見た目によらず、すげぇ可愛い! やべぇパンクっしょ! シビれるっスわ!」
「あらやだ、嬉しい。私の周りには、理解してくれる人があまりいないのよ。――ていうか、大丈夫だった? すごく囲まれていたけど」
「っス! あざっス! マジ感謝っス! にしても、マジでいいっスわ! すげぇリスペクトするっスよ! 最高っス!」
パンクは堕天使の空いた片手を思わず握りしめた。同士を得た二人がそこはかとなく嬉しそうな恥ずかしそうな笑みを浮かべていると、堕天使の腕に抱かれたココアちゃんが〈ご主人を取られた〉とでも言いたげに唸りだした。不思議そうにきょとんとした顔を浮かべた二人がココアちゃんに視線を移すと、ココアちゃんの真ん中の頭が突如火を噴いた。
ココアちゃんが満足気にフスウと鼻から息を吐くと、地獄の業火に飲まれたパンクがボロボロと灰となって崩れ落ちた。見た目によらず謙虚で人の良い堕天使は慌てふためくと、彼の灰を集めながら「どうしましょう」と動揺していた。
〈飼い犬〉に牙を剥かれたこともロックだと思ったようで、霊界ではパンクが「フウゥ!」と歓声を上げていた。死神ちゃんは表情もなく鼻を鳴らすと、その場からひっそりと姿を消した。
待機室に戻ってくると、鉄砲玉が悔しそうな表情を浮かべて「俺も、堕天使様の獰猛な番犬に焼き払われたい」とこぼしていた。そんな彼を、死神ちゃんよりも先に帰還していた魚屋が「馬鹿なことを言ってないで、仕事しな」としばき倒したのだった。
後日、パンクな彼と中二を少々患ったロックな彼女が、例の中二病忍者とも出会って互いにさらなるリスペクトをし合うのだが、それはまた別のお話。
――――〈密かに人気〉であるため、本人たちはそのことを残念ながら知らないそうなのだが。なりきり系冒険者の中では、堕天使様はくっころと一、二を争う人気でファンクラブもあるという。彼女たちがちてきんのようにスポットライトを浴びる日も、そう遠くはないみたいDEATH……?
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